著者
柴田 隆史
出版者
日本眼光学学会
雑誌
視覚の科学 (ISSN:09168273)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.79-84, 2019 (Released:2019-12-25)
参考文献数
26
被引用文献数
1

学校教育ではICT活用が推進され,子どもたちが教室でタブレット端末を利用する機会が増えている。しかしその一方で,子どもの視力低下や視覚疲労などの健康面への影響が懸念されている。実際に,学校保健統計調査によると,小学生の裸眼視力における1.0未満の割合は毎年増加している。本稿では,学校教育における情報化の状況や,児童のタブレット端末利用による身体疲労,学校でデジタル機器を安全安心に用いるために検討されている指針について解説した。
著者
曽根原 寿明 井澤 康哲 祁 華 神津 和磨 向山 浩行 広田 雅和 遠藤 高生 神田 寛行 森本 壮 不二門 尚
出版者
日本眼光学学会
雑誌
視覚の科学 (ISSN:09168273)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.114-121, 2017 (Released:2017-12-29)
参考文献数
20

眼疲労を定量化するための方法として, 自然な両眼視下での測定を利用した報告はあまりされていない。そこで我々は, 18名の被験者に視負荷として市販の携帯型3Dゲーム機を30分間使用させ, 両眼波面センサーを用いて視負荷前後での調節および輻湊応答の変化を調べた。測定時の固視標の動きは, 奥行き方向に反復する定屈折駆動刺激(±0.25D/秒)およびステップ状刺激(2.0/0.2D)を与えた。定屈折の反復刺激において, 輻湊と開散の潜時が視負荷後に統計的に有意に長くなることがわかった(P<0.05)。ステップ状刺激では, 調節弛緩応答量の80%から10%に変化するのに要する時間が視負荷後に長くなった(P<0.05)。以上より, 両眼波面センサーによって測定された調節と輻湊の応答は, 眼の疲労の客観的評価に適用できることが示唆され, とくに年齢の影響を受けにくい輻湊は中高年者への適用に有望であると考えられる。
著者
巻田 修一
出版者
日本眼光学学会
雑誌
視覚の科学 (ISSN:09168273)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.42-43, 2020

<p>この度,東京医科大学茨城医療センター病院眼科教授の三浦雅博先生にインタビューをさせていただきたいと思います。三浦先生は眼科イメージング装置の臨床研究に携わってこられました。学生時代の話から,現在の研究に関わっていかれた経緯,光工学やエンジニアとの共同研究にまつわるお話をお伺いしました。</p>
著者
加藤 欣也
出版者
日本眼光学学会
雑誌
視覚の科学 (ISSN:09168273)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.40-44, 2015 (Released:2015-12-09)
参考文献数
3

収差は理想結像からのずれである。理想結像は次の3条件を満たす。  1)点物体は点像を形成する。  2)光軸に垂直な平面物体は平面に結像する。  3)光軸に垂直な平面図形の像はそれと相似な図形となる。  収差には単色収差と色収差の2種類ある。球面収差,コマ収差,非点収差によって像がぼけ,像面湾曲と歪曲収差によって図形の像は歪む。これらはザイデル収差と呼ばれ,単色収差である。  色収差は媒質の屈折率が波長の関数になるため生ずる。色収差には軸上色収差と倍率色収差の2種類ある。  正弦条件は収差ではないが,コマ収差をなくすためにレンズにとって非常に重要である。それは,β=n1sin u1/(n2sin u2)ここで,βは横倍率,n1,u1とn2,u2はそれぞれ物空間,像空間における,屈折率と光線の傾き角である。
著者
大沼 一彦 椎名 達雄
出版者
日本眼光学学会
雑誌
視覚の科学 (ISSN:09168273)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.82-87, 2017

<p>眼の中の前方散乱を測定する方法は80年以上前に提案されて実験がなされているが, 実用的な装置となったのはつい最近である。前方散乱の散乱特性についての基礎知識を得るための多くの文献はTJ van den Bergのものがあるが, それを理解するためには, 更なる基礎的な知識がいると思われる。ここでは, 散乱の理解のための入門的知識と人眼の前方散乱の測定手法について述べる。</p>
著者
山成 正宏
出版者
日本眼光学学会
雑誌
視覚の科学 (ISSN:09168273)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.98-106, 2017 (Released:2017-12-29)
参考文献数
49
被引用文献数
2

偏光optical coherence tomography(OCT)は通常のOCT強度画像に加え, 繊維組織のもつ複屈折やメラニン色素のもつ偏光スクランブル効果を可視化し, 新たなコントラストを加えることができる。本稿では偏光OCT技術の概要をできるだけ平易に解説する。偏光がOCTに本質的に関わる重要な概念であり, 通常のOCTでは偏光にまつわるアーティファクトが発生することや, 偏光OCTを用いることで通常のOCTでは見えないコントラストを追加できることを示す。応用としてトラベクレクトミー術後の濾過胞瘢痕化の例を紹介する。
著者
宇治 彰人
出版者
日本眼光学学会
雑誌
視覚の科学 (ISSN:09168273)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.24-29, 2016 (Released:2016-05-03)
参考文献数
20
著者
森 秀樹
出版者
日本眼光学学会
雑誌
視覚の科学 (ISSN:09168273)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.122-129, 2016 (Released:2017-01-18)
参考文献数
6

前眼部光干渉断層計であるCASIAがSS-1000からCASIA2となり撮影範囲や機能性が向上した。CASIAのトポグラファー機能は, 高度な角膜不正乱視に対しても正確かつ良好な再現性で評価可能である。更に角膜形状をフーリエ解析すると, 非対称性乱視成分や高次不正乱視成分で角膜不正乱視が評価できる。角膜不正乱視に対する白内障手術では苦慮することが多い。眼内レンズ(IOL)度数計算の問題もその一つであるが, CASIAを用いると正確な角膜形状データに基づいたIOL度数を求めることができる。
著者
小島 隆司
出版者
日本眼光学学会
雑誌
視覚の科学 (ISSN:09168273)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.1-6, 2016 (Released:2016-05-03)
参考文献数
10

円錐角膜の診断, 治療は近年著しく進歩している。診断面では角膜前後面を測定できる器機が開発され, より初期から診断が可能になっている。収差の解析では角膜, 眼内と分離して把握が可能になっている。これらの診断器機開発により治療面でも大きな変化が起きている。進行予防の角膜クロスリンキング治療や角膜リング, コンタクトレンズ治療, 角膜移植なども光学的な変化を考慮して論じられるようになってきている。
著者
中村 亮一
出版者
日本眼光学学会
雑誌
視覚の科学 (ISSN:09168273)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.98-102, 2018 (Released:2018-12-26)
参考文献数
21

我々は,外科医療手技の管理に工程分析的技術を応用し,医療の品質向上(効用・効率・安全の向上)を達成するための手術工程解析技術の創世を目的とした研究を行っている。品質管理/向上・省力化のための機械情報工学的技術をシステムと人間の調和的技術に昇華して医療に導入し,過酷な外科医療環境によりよい業務環境と安全で効果の高い治療結果をもたらすことを目指したこの取り組みにおいて,手術工程解析のためのデジタル作業情報取得技術,情報解析技術,解析結果提示・応用技術の開発研究を実施している。本稿では手術ナビゲーションの基礎を踏まえ,これまでに行ってきた我々の取り組み,術中動態に対応した手術ナビゲーションと,ナビゲーション情報を応用した手術工程・技能分析技術について紹介する。
著者
広原 陽子
出版者
日本眼光学学会
雑誌
視覚の科学 (ISSN:09168273)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.54-60, 2014 (Released:2015-01-20)
参考文献数
15

波面センサーは眼の波面収差を測定する装置である。結果をどのようにみればよいのか,症例ごとの特徴を紹介しながらわかりやすく説明し,臨床で有効に活用できる情報を提供する。
著者
前川 ほのか 稗田 牧 中村 葉 小泉 範子 外園 千恵 木下 茂
出版者
日本眼光学学会
雑誌
視覚の科学 (ISSN:09168273)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.60-65, 2017 (Released:2017-11-03)
参考文献数
13

【目的】近視を有する小学生におけるオルソケラトロジー(オルソ)の近視進行抑制効果と波面収差の関係性を検討する。【方法】対象は異なる3社のオルソレンズを装用した72例144眼である。2年間のレンズ装用後, 最低3週間レンズを外した。レンズ装用2年後の波面収差(角膜と眼球4mmのコマ様収差, 球面様収差, 球面収差, 全高次収差)と装用前後の屈折度数, 眼軸長の変化量の相関関係を検討した。【結果】角膜の球面様収差と屈折度数変化量に正の相関を認めた(R=0.17, Pearson検定)。角膜と眼球のコマ様収差, 球面様収差, 球面収差, 全高次収差と眼軸長変化量に負の相関を認めた(R=-0.20, -0.24, -0.19, -0.23, -0.22, -0.23, -0.21, -0.23, Pearson検定)。【結論】近視を有する小学生において, オルソレンズ装用により, 角膜と眼球の高次収差が増加することで眼軸長の伸長が抑制され, 近視進行抑制効果を生じることが示唆された。