著者
中沢 正治 小佐古 敏荘 高橋 浩之 持木 幸一 井口 哲夫 長谷川 賢一
出版者
東京大学
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1988

本研究は、CR-39固体飛跡検出器にポリエチレンなどの適当なラジエ-タを組み合わせ、ラジエ-タ物質と中性子の核反応で生じた荷重粒子CR-39への入射量を調整することで、全体として中性子感度曲線が、中性子線量当量換算係数のエネルギ-依存性をできるだけ再現するような最適ラジエ-タの組み合わせと飛跡計数方式を見出すことを目的としている。咋年度までに、標準的なラジエ-タ付きCR-39線量計および飛跡読み取りシステムの試作と予備的な中性子感度曲線の校正(検証)実験を行なった。本年度は、まず中性子検出効率の理論的検討を行ない、実験的に確証するため、東大原子力工学研究施設内の重照射設備およびブランケットにおいて中性子照射実験を行った。試料として、CR-39プラスチックに厚さがそれぞれ0.86,1.90,4.02mg/cm^2のポリエチレン、および厚さ5mmの^6Li_2CO_3を密着させたものを使用し、人体のアルベド効果を模擬するため、後方にポリエチレンブロックを置いて行なった。その結果、各ラジエ-タ厚で、中性子エネルギ-に依存する検出効率の実験値は、誤差の範囲内で比較的良く計算値と一致した。つぎに、これら4種の感度特性と、ラジエ-タ無しの特性からレムレスポンスを近似的に求めるため、重み係数を最小2乗法により求めた。これによると再現性は良好である。特に、中性子線量当量換算係数が大きく変化する100KeVから1MeVの中性子エネルギ-領域の再現性に優れていることが明らかとなった。しかし、10MeVを超えると、検出器感度が低下するため、レムレスポンスの再現性が悪くなる。この対策として、薄いアルミ板をCR-39プラスチックの前面に置くことのより、感度を高められることが確認されている。以上より、小型・計量で取り扱いが容易な中性子個人被爆線量計の実用化の見通しがついた。
著者
竹内 利行 石川 英一 小暮 公孝 堀内 龍也
出版者
群馬大学
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1989

成長ホルモンやプロラクチンは、粗面小胞体でシグナルペプチド部分が切断されるだけで生理活性ペプチドとなるが、インスリンなど多くの生理活性ペプチドは前駆体として産生され、分泌顆粒に入る過程で、そのペプチドに隣接する塩基性アミノ酸対が限定分解をうけ、生理活性ペプチドとなる。この限定分解は内分泌細胞に特異的で、線維芽細胞、上皮細胞、リンパ球のような非内分泌細胞では、インスリン遺伝子を組み込んでもインスリンは前駆体として産生され、生理活性型には変換されない。ところで血液凝固因子や成長因子のあるものは、非内分泌細胞中で前駆体として産生され、生理活性蛋白に変換されるが、最近この変換はーArg^<ー4>ーXーLys/Arg^<ー2>ーArg^<ー1>配列がFurinという蛋白分解酵素で分解されることが分った。更にインスリン受容体や補体第3因子、第5因子の前駆体はサブユニット間に4つの塩基性アミノ酸配列を持ち、線維芽細胞やリンパ球で限定分解をうけて複数のサブユニットから成る成熟型蛋白となることが知られている。そこで我々はラットプロインスリン前駆体cDNAをB鎖ーArgーArgーLysーArgーCペプチドーArgーArgーLysーArgーA鎖となるようにした変異インスリンcDNAを作製しアフリカ緑毛猿腎上皮細胞由来COSー7に導入し、発現させたところ、培養液中の免疫活性は約60%がインスリン分画に移行してい。更にFurin遺伝子を同時発現させると、成熟型インスリンへの変換はほぼ100%となった。又インスリン分画の生物活性はヒトインスリン製剤とほぼ同等であった。以上の実験からCOSー7のような非内分泌細胞でもプロセシング部位が4つの塩基性アミノ酸配列になるように変異を加えたcDNAを発現させると、変異プロインスリンは生理活性型インスリンへ変換することが分かった。このことは非内分泌細胞でインスリンを発現させることによって、代用インスリン産生細胞として用いることができる可能性を示している。
著者
梅村 晃由 谷内 宏 内倉 章夫 白樫 正高 AKIO Uchikura HIROSHI Taniuchi
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1987

二年間にわたり、装置の設計、試作、実験を繰返えした結果として、まず水力輸送の各装置について、(1)雪分率測定機:管内を流れる雪水混合体中の雪の割合いを、試料を採取することなく、連続的に測定する装置として、実用化の目途を得た。(2)雪分率調整機:管内を流れる雪水混合体から水のみを抽出する(あるいは水を加える)ことにより、それより下流の雪の分率を調整する装置として、実用化の目途を得た。(3)雪押込機:雪を水と混合してポンプに吸い込ませるための攪はん混合装置の制御系の改善を行った。また市販のスラリーポンプの雪水混合特性を調べ、雪の水力輸送に適するものを選んだ。両者を結合して、市民の使用に適する雪押込機を製作した。つぎに、これらの装置を組合わせて、高い雪分率の輸送実験を行い、雪水二相流の流動特性について、つぎのような点を解明した。(1)流速一定の条件の下の、高い雪分率における直管内圧力損失(2)仕切り弁における圧力損失と閉塞の発生機構(3)雪塊の間欠的投入に伴う、輸送系内の雪分率の変動挙動開発された装置の市内現場における実用試験は、小雪年が続いたため、山から雪を運んで行われ、つぎのことを確認した。(1)装置は所期の輸送能力を有する。(2)閉塞は管路の収縮部における雪塊の停滞によって起る。(3)雪の投入を制御するための警報装置は所期の作動をする。しかし、この装置を市民に使ってもらって、稼動率や信頼性を知る試験は小雪のため行うことができず、今後の課題として残された。
著者
内藤 林 高木 健 細田 龍介
出版者
大阪大学
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1986

船舶が大洋中を航行し種々の事態に遭遇した時、船舶としての機能を喪失しないように航行するためには高度に知能化された船舶にする必要がある。従来、船長を始めとする人間がこの役割を果たしていたが無人化船を考えた場合にこの代役をどのようにシステム化するか考えることが重要な課題となる。本研究成果の概要は次のとおりである。(1)大洋航行中の船舶の航海能力という概念を明確にすることができ、そのことによって評価方式に一つの指針を与えることができた。(2)船体運動、抵抗増加、船速低下及びそれらの計算の基礎になる流体力の計算、船体主要目の入力、計算結果の出力形式など既開発プログラムの統合化を行い、一貫した計算が可能になった。(3)荒天中を航行する船舶にとって台風(低気圧)情報は大切である。この台風情報の精度がどの位の精度で必要なのか、情報の不正確さの度合が船速などの予測精度にどのように効いてくるのか等を数量的に明確にした。(4)船長の持っている知能をプロダクションルールの形式で表現した。次に数理計算(SUMUT法)で求められた最適航路(最短時間航路)に一致するように前記のプロダクションルールを修正あるいは付加した。その結果、多大な時間を要する数理計算の結果とほとんど変わらない航路をプロダクションルールの方法で決定でき、計算時間の短縮を実現できた。(5)計算結果をデータベース化して「データベース型避航システム」を作成した。これにより経験をデータベースの型で保存でき学習能力を身につけることになった。(6)これらの研究を通じて、船舶耐航性分野の研究成果と持絶操船分野の研究成果を容易に取り込めるシステムの考え方を操縦することができた。
著者
伊藤 驍 山崎 宣悦 矢野 勝俊 佐藤 幸三郎 長谷川 武司
出版者
秋田工業高等専門学校
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1987

本研は雪害防災対策上、不可欠な降雪・積雪の性状情報を安価で即時的に入手できる高性能な機器を開発し、雪害防除の指針を得るために行われたものである。本研究で行われた主な項目を挙げると1)既存の降雪検知器で沿岸および豪雪山間部で降雪現象の比較観測を行いその性能を調べ、併せて積雪の物理試験を行って地域特性を整理した。2)既存の観測装置はまず高価で精度に問題点がある。本研究ではこの点を検討し、低廉で測定簡易なセンサ赤外線発光ダイオ-ドを素材とする次の4つの方式による装置を作製した。(1)スリット方式(2)複数スリット方式(3)シルエット方式(4)受雪板反射方式これらはそれぞれで特徴をもつがそれを総括すると、従来式の降雪有無の確認に留まらず粒度分布や形状も認識し吹雪の降雪片も捕捉できるように開発した。その性能は従来の機器より優れ安く作製できる見通しを得た。3)上とは別に、情報工学的方法としてビデオカメラ、イメ-ジプロセッサ及び演算処理高速コンピュ-タ-を使って降雪片の性状を分析できるシステムを確立した。4)降積雪の観測から雪害発生の予測に関する指標を提案した。以上の詳細は研究成果報告書して一冊にまとめ印刷製本し、関連研究機関に郵送配布した。
著者
見上 彪 内貴 正治 松田 治男 板倉 智敏 平井 莞二 加藤 四郎 森口 良三
出版者
北海道大学
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1985

本研究はマレック病(MD)のワクチンブレイクに対抗しうる有効なワクチンの開発を最終目標としている. 以下に3年間で得られた成績の概要を述べる.1)MDウイルス(MDV)・七面鳥ヘルペスウイルス(HVT)のウイルス群は血清型として3型に分類されている. それぞれの血清型あるいは免疫原として用いたウイルス株に特異的な単クローン性抗体が班員により, 多数樹立され, これら抗体を用いることにより野外分離ウイルスの同定が容易になった. また, MD腫瘍細胞を免疫原として用いて, MDに特異的な単クローン抗体も作出され腫瘍細胞の同定に有用と思われた.2)ニホンウズラにおけるMDの浸潤状況とHVTによるワクチン予防効果を検討したところ, 実質臓器のリンパ腫瘍を主病変としたMDがウズラの間で多数発生していること, リンパ腫病変とMDV羽包抗原との間に正の相関が, またリンパ腫病変とHVT血清抗体との間に負の相関があることが明らかとなった. MDワクチンブレイクの発生をみたウズラ群から4種のMDVが分離され, これらウイルスは単クローン性抗体により血清型1に属し, 鶏に対しても強い腫瘍原性が示された. 同様にニワトリ群からも5種のウイルスが分離された.3)MDに対するワクチン候補株として, 非腫瘍原性MDVの分離が急がれている. 我々はニワトリ及びキジ類それぞれ13羽, 10羽からウイルス分離を試みたところ, 調べたすべてのニワトリからウイルスが分離され, 単クローン性抗体により血清型2に属していることが明らかとなった. 今後, これらウイルスを用いてワクチンブレイクに対抗しうるワクチンが開発されることが期待される.