著者
赤崎 勇 橋本 雅文 天野 浩 平松 和政 澤木 宣彦
出版者
名古屋大学
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1987

1.前年度に引続き、GaNの高品質MOVPE結晶成長条件下でZnを添加することによりMIS構造に必要な抵抗率の高いi層を実現し、MOVPE法による高性能MIS型青色LED(発光効率0.3%)を実現した。2.カソ-ドルミネッセンス(CL)法によりZn添加GaNの発光微細特性及び発光スペクトルを評価した結果、「GaH表面微細構造」と「発光波長及び発光強度」の間に密接な関係があることを見出し、面内で均一な青色発光を得るための成長条件を明らかにした。3.MOVPE法によりMg添加GaNの結晶成長を行い、以下の結果を得た。(1)Mg濃度はMg原料流量に対し線形的に制御できる。(2)Zn添加の場合と異なりMgの添加効率は基板温度によらず一定である。(3)Mg濃度を制御することにより室温のPL測定において青色発光(440〜460nm)を得た。(4)電子線照射処理を施すことにより、青色発光強度が1桁以上も増加すること、かつp形GaN(正孔濃度〜10^<16>cm^<-3>)が得られることを見出した。(5)pn接合形LEDを試作し、その発光スペクトルを測定したところ、青紫色及び紫外発光が観測された。以上の結果、Mg添加はGaN系短波波長発光素子の作製に極めて有効な方法であることが明らかになった。4.GaN上にGaAlNを成長させヘテロ接合の作製を行った結果、GaAlN層にクラックが発生することが分かった。このクラック発生はGaAlN層の組成及び膜厚を制御することにより抑制できることが明らかになった。またこのクラック抑制技術に基づきGaNとGaAlNの多層構造を作製した結果、表面平坦性の優れた多層膜が得られた。
著者
金川 弘司
出版者
北海道大学
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1983

生物材料や受精卵の凍結用に冷却曲線を自動的にプログラムできる装置は数種類開発されているが、これらの装置は植氷時の制御が不十分であり、試料を入れてある冷凍室を開放して、外部から冷媒や冷体で刺激を加えたり、氷晶片を投入したりして植氷を行っているために、冷凍室の温度が変動する欠点がある。また、植氷に伴う著しい温度の上昇がみられるのが普通である。これらの温度変動が凍結しようとする受精卵に何らかの悪影響を与えるものと考えられる。今回の研究で開発した凍結装置は、恒温槽、温度制御盤および加圧式液体窒素容器からなっている。恒温槽は、断熱槽、液体窒素槽、ヘリウムスペースおよびフレオン槽からできている。フレオン槽は気相部および液相部(フレオン11)の2つに分かれ、両部の冷却は液体窒素の冷熱によって行われる。液体窒素槽からの冷熱はヘリウムスペースに密封されている熱交換用ヘリウムガスによって、一定速度でフレオン槽内に伝達される。この冷却とフレオン槽内ヒーターの作動は槽内の温度を測定するモニター用温度センサーからの読み取りを通じてヒーター電流をPID制御(比例積分微分動作制御)する温度制御盤のマイクロコンピューターによって制御され、設定した任意の温度と冷却速度が保持される。この温度と速度は数段階に分けてキー入力できるようにプログラミングされている。気相部には凝固点温度(植氷)を予め検知できるように温度測定センサーが付属されており、液相部は温度勾配がほとんどないように撹拌機によって常に撹拌されている。本凍結装置は、植氷時に工夫を加えて、冷凍室を開放したり、外部から操作することなしに植氷を行い、植氷に引続いて起る温度上昇を1.0°C以内に抑えることができた。また、下降時の温度も変動範囲が0.1°C以内に制御できた。本装置を使用して、耐凍剤としての各種糖類および急速凍結法の検討を行った。
著者
大西 正俊 大月 佳代子 一條 尚
出版者
山梨医科大学
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1987

本研究ではハイドロキシアパタイトの臨床応用、特に下顎骨再建について検討し以下の結論を得た。I.動物実験による検討成犬下顎骨による顎骨欠損部への補填実験の結果、下顎臼歯部15mmの欠損部の補填では約8週でアパタイト多孔体は近心、遠心両側からの気孔内に至る骨形成により埋めつくされる所見を得た。この場合の骨形成性は顎骨とアパタイト多孔体との固定に大きな関連性があることから、動物実験系での顎骨、頬舌側固定法であるダブルプレ-ト法を開発した。II.臨床応用-下顎骨再建症例の経過観察動物実験の結果をふまえて、臨床応用したアパタイト多孔体ブロックによる下顎骨再建例は現在までに29例、そのうち区域切除後の架橋補填7例での検討から、補填部の骨形成状態はX線所見、骨シンチグラムより推測しうること、またそのうちの1剖検例(73才女性)より高齢者に於ても骨形成が行なわれていることが明らかとなった。これらのことから、一定期間後のX線、骨シンチグラム所見から骨形成性を診断し、その結果によっては補填材としての再建プレ-トの除去が可能となる症例を経験した(35才男性、59才女性)。III.再建下顎骨に対する補綴的処置の検討下顎骨再建29例に対してはほぼ全例再建部への通常の補綴装置の装用を行っており、良好な結果を得ている。以上の検討より、アパタイト多孔体の補填部は骨伝導による骨形成が期待しうること、骨形成がある程度行われた時点で補強材チタンプレ-トの除去は可能で相応の物性が得られること、術式は骨移植に準じるが、人工骨との強固な固定が重要であることなどが確認された。本研究からもアパタイト多孔体は下顎骨再建用の人工骨として十分に臨床適用可能な材料であることが明らかとなった。
著者
清水 康敬 前迫 孝憲 坂本 昂 高野 綏 森 政弘
出版者
東京工業大学
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1985

9.研究成果の概要(最終まとめ) 本研究は, 留学生が日本語を習得するためのCAIシステムの構築を目的としている. すなわち光ビデオディスクに書き込んだ画像を動画教材とし, パーソナルコンピュータによる提示画像とのスーパーインポーズの制御を行っているが, 機器類の操作を学習者が自らの意思でインタラクティブに行うことができるよう構成したことに特徴がある. 本システムにより, 学習者は主体的に学習に取り組むことが可能となった. 本研究により, 書き込み可能な光ディスクをパーソナルコンピュータで制御するためのソフトウェアシステムの構築と改善を行った. また, 世界有数のCAIオーサリングシステムであるPLATOシステムに, 本研究で実現したインタラクティブ制御機能を組み込む実験を行った. そして, これらのCAIシステムの学習コースを作成し, ビデオディスクに付加したインタラクティブな制御機能が, 学習成績と深い相関を持ってょいることを実証するなど, インタラクティブなCAI環境でビデオディスクを利用する際の基本的な要件を明らかにした. また遠隔教育における通信量の適正化を図るため, ビデオテックス・NAPLPSを利用するCAIシステムの可能性を調査し, 色再現性の支持等適切な制御を行うことで高い効果の得られることを確認した. そして入力インタフェースとしての手書き漢字入力装置の可能性について調査研究を行った. 今後は, 本研究の成果に基づき, 学習コースの開発と利用を進めていく予定である.
著者
下村 義治 吉田 博行 吉田 直亮 桐谷 道雄
出版者
広島大学
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1984

前年度迄に開発製作した極低温中性子照射した金属試料の電子顕微鏡用の4.2Kクライオ・トランスファー・ホルダーを改良して現在9K迄試料装填部の温度を下げる事に成功し4.2Kに今一歩に迫る性能向上をはたした。更に本年度はこのホルダーの先端試料部にクライオ・トランスファー時に取り付ける真空チェンバーの製作を完了した。これらホルダーおよび真空チェンバーを装備して中性子照射済の試料を中性子極低温照射用クライオスタットからホルダーに極低温にて移し変えてクライオ・トランスファー・チェンバーで真空引きしたままのせて電子顕微鏡試料室まで移動するための車およびそれに関連する装置も完成した。回転ターゲット核融合中性子源(RTNS-【II】)にて照射のための装置を総て開発完了後,日米科学技術協力事業(核融合)の実験の実施のため本試験研究にて開発した装置は昭和61年4月米国ローレンス・リバモア国立研究所に送り昭和61年6月及び昭和62年1月の二度にわたり本研究代表者らが派遣されて極低温核融合中性子照射した金属試料の極低温クライオ・トランスファー電子顕微鏡観察法による中性子照射損傷の基本単位である変位カスケード損傷欠陥の形成直後の観察に成功して、損傷過程の基礎過程の解明に大きく寄与した。核分裂中性子による極低温照射した試料のクライオ・トランスファーのための試料クライオ移送室の開発も考え方の点ではほぼ終了しているが、一部装置の製作を経費不足の点で残している。現在米国より送り返されているクライオ・トランスファー装置の日本への致着を待って残りの装置の製作を完了して京都大学原子炉実験所にて核分裂中性子照射実験をスタートする予定である。また重イオンによる低温照射した電子顕微鏡試料の極低温クライオ・トランスファー電子顕微鏡観察可能な照射試料室も今後製作して変位カスケード損傷過程の研究を行うよう続いて計画している。
著者
市川 厚
出版者
京都大学
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1984

研究実施計画に従い、以下の研究成果を得た。1. 融電電気泳動による細胞融合条件の検討:融合用装置を組み立てた。装置の概略は、白金電極をプラスチック製スライドに距離200μMの間隙で固定し、一定の周波数とサイン波形を出力するファンクションジェネレーターと、高出力パルス(方形波)を1MHz,20μsecで放出するパルスジェネレータの順に連撃する。細胞の前処理としては、緩衝液の替りに0.32Mマニトールを用い、0.1mM Ca【Cl_2】存在下、プロナーゼ0.5〜1.0mg/mlで室温10分間インキュベートを行って、遠心洗浄をくり返して細胞を洗浄する。融合反応条件は、【Ca^(2+)】存在下に0.5〜1又は2MHz、5〜20μsec範囲で細胞によって条件を選択し用いる。融合の可否は、用いる細胞と組み合させる細胞によって異なる。一般に、同種細胞同士の方が高い融合効率を得ることができる。しかし、異種細胞間においては、融合は可能であるが条件の選択性に晋偏性が認められない。細胞の回収はマニュピレーターを用い、庶糖密度勾配遠心法で密度の高い肥満細胞と細胞密度を利用して 分離する。肥満細胞同上の融合細胞は、増殖能を有さないのでコロニーを形成しないことから、癌化肥満細胞と肥満細胞の融合体のみを回収する。線維芽細胞やリンパ球と肥満細胞の融合についても検討を加えた。2. 融電電気泳動によるリポゾームの細胞への封入:癌化肥満細胞より、S-アデノシルホモシスチンヒドロラーゼを精製し、膜よりPG【D_2】レセプターを単離して、各々を酸性リン脂質含量の低いリポゾームに包含させる。細胞内への融電電気泳動による移行は10%内外でとくに高収率ではなかったが、細胞への傷害を考えると他の薬剤を用いる方法よりも明らかに優れている。1),2)を通じ、異種細胞間の融合条件が確定できなかった点は今後の問題である。
著者
梅谷 陽二 広瀬 茂男
出版者
東京工業大学
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1985

本研究は、顕微鏡下において、プレパラート上に置かれた真核をもつ生物細胞を操作対象とし、この細胞を微小操作器で切断,切除,開口などの手術を行ない、さらに細胞内の核を吸出して他の断片を注入するなどの操作を、非熟練者でも自由に行なえるようなマイクロマニピュレータ(微小操作器を含む)を開発することを目的としている。咋年度にひき続き、本年度は3自由度のバイモルフ型微小操作器の性能向上を目的として試作を重ねた。この微小操作器はピエゾ素子(セラミック素材)をバイモルフ形に構成しており、微小並進運動を実行させるとき、極めて感度の高い位置制御が可能となり、最終試作器では容易に1/10ミクロンメータの感度を実現させることができた。微小操作器の先端には、通常ガラス製の針やピペットが取り付けられ、これを介してプレパラート上の細胞と接触している。そこで、この微小操作器システムをサーボ化するに必須とされる接触反力信号検出を行なうため、咋年度に確認した自律振動形に微小歪ゲージ機構を適用した方式を採用し、針先端での印加力の検出感度を【10^(-3)】dyne域にまで高めるべく解析と設計試作を繰り返したが、実際の操作條件では、針やピペットが液浸状態となるため、目標よりも2桁低い感度にならざるを得ないことが分った。画像処理系による自動位置決め系は予定通りの機能をもつことが分った。しかし画像処理系とマイクロマニピュレータ系との連けいについては問題がある。つまり顕微鏡の視野は非常に狭いから、マニピュレータの一連の作業動作の大半は視野外となるため、この画像処理系が有効に働くのは実際に細胞操作を行なっている期間に限られている。このため、シーケンス制御回路によって駆動するように設計した。総合試験の結果、おおむね予期された充分な性能を有することが検証された。
著者
小平 眞次 稲谷 順司 石川 雅之
出版者
木更津工業高等専門学校
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1989

本研究では、バル-ン搭載可能な小型軽量のロ-カル用サブミリ波発振源の設計、試作により、その実用化を模索することを目的とした。(1)周波数逓倍器の試作と性能限界の考察 逓倍器動作のコンピュ-タによるシミュレ-ションを行い、逓倍回路の最適条件を模索し、その出力限界を明らかにした。そして、サブミリ波帯逓倍器を試作し、2逓倍器については、ほば予想通りの特性結果を得ることができた。ただし、3逓倍器以上の出力電力測定については、サブミリ波電力計の開発が必要となり、パイロ検出器を液体窒素冷却デュア-内にセットして、サブミリ波電力計を試作したが、直読で1μW程度の感度であり、電力の校正が正確でないなど、高感度化と併せて今後の課題として残った。(2)フラックスフロ-発振器の開発 Nb/AlO_X/Nb接合によるフラックスフロ-発振器(FFO)の開発を行い、発振器出力をアンテナにより放射し、387GHzにて1μWの発振出力を得た。また、高周波数化として、NbN/MgO/NbN接合によるFFOの試作を行い、バイアス電圧2mV以上で速度整合ステップが得られ、1000GHzの発振を確認した。ただし、注入同期とピュリティ-の測定は、今後の課題となった。今後、さらに、FFOとアンテナの整合回路の低損失化、発振周波数の安定化、出力ビ-ム系の改良等の開発を進めれば実用的なサブミリ波発振源になるものと考える。以上により、本研究においては、ほぼ計画どうり目標を達成することができた。これにより、サブミリ波発振源の実用化の見通しを得ることが出来た。
著者
緒方 規矩雄
出版者
新潟大学
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1983

二次元アクリルアミドゲルで分画し単離した動物のリボゾール蛋白から蛋白を抽出して微量のシクエンサーでN末端附近のアミノ酸配列を決定することを試みた。小亜粒子1.8mgを大型の二次元アクリルアミドゲル電気泳動装置で分画したものを、ギ酸で抽出Biogel P-2で精製した21μgを微量のシクエンサーでN末端から32アミノ酸配列を決定しえてS26に対するcDNAのクローンの確認を用いた。蛋白に特異のcDNAの確認に蛋白のアミノ酸組成も重要である。そこで二次元アクリルアミドゲル電気泳動法で分画したArtemia salinaのリボゾーム蛋白0.1μg-1μgについて水解後、ダブシル誘導体に加え、逆相の高速液体クロマトグラフィーを用いることによってアミノ酸を分離定量してアミノ酸組成を測定した。この際微量定量の為蛋白の試量に外からのアミノ酸の爽雑が問題になるが、蛋白分子篩高速液体クロマトグラフィーで目的を達することができた。この様にしてえたアミノ酸組成をチトクロームC、Artemia salinaのリボゾーム蛋白S6、S8について従来のアミノ酸自動分析計によるものと比較したが、チロシンを除いて極めて近い価をえて信頼できる分析法であることがわかった。従来のものが蛋白30-40μg必要なのに0.1-1μgあれば充分である。尚アミノ酸組成をリボゾーム蛋白に対するcDNAの同定に使ったものとしてS11、S26、S35aがある。合成ヌクレオチドをプローブにしてcDNAのクローニングは最近多く行われているが、私共は牛のオプシンについての一次構造かつ18塩基のプローブを作成しcDNAをえることができた。これを組み合わせて、(1)二次元アクリルアミドゲルでの蛋白の分離とN末端附近のアミノ酸配列の決定、(2)それを基にした合成ヌクレオチドプローブの作成、(3)蛋白に対するcDNAのクローン化、(4)(1)又はアミノ酸組成からのクローンの確認、(5)クローンのヌクレオチド配列からの蛋白質のアミノ酸配列の推定というシステム化が考えられた。
著者
伊沢 久夫 根路銘 国昭 児玉 道 見上 彪 藤原 公策 久保 周一郎 KODAMA Michi
出版者
北海道大学
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1984

ボツリヌス中毒:動物のボツリヌス中毒の原因毒素であるボツリヌス菌【C_1】型およびD型毒素、その重鎖および軽鎖を精製して單クローン性抗体(以下MAb)を作出し、本邦で保存する菌株の全ての毒素と反応させ、毒素が4つのグループに別れることを明らかにした。マウス肝炎:1株のマウス肝炎ウイルスに対するMAbを作出し、1部MAbはウイルスポリマーと、残るMAbはウイルス核酸と特異性を示すこと、また両MAbは他のマウス肝炎ウイルス株とも反応することを見い出した。マレック病:本病による腫瘍に由来する株化細胞の表面抗原に対するMAbを作出した。MAbは野外発病鶏の腫瘍細胞とも野外飼育鶏の末梢血細胞とも大差なく反応し、陽性例にあっても腫瘍また末梢血細胞を問わず陽性細胞の出現率は低率であることが分った。豚コレラ(以下HC):ブタ白血病由来腫瘍細胞とHC免疫豚の系、また精製HCウイルス免疫マウス脾細胞とP3U1細胞の系では融合は不成功に終ったが、HC感染豚腎細胞免疫マウスの脾細胞を供試し抗体産生細胞を最近樹立した。インフルエンザとパラミクソウイルス感染症:インフルエンザウイルスのHAとNAに対するMAbを用い、本ウイルスの抗原変異と組換え体の起源を、またパラミクソウイルスのMAbを供試して本ウイルスのエピトームの安定性と抗原変異を明らかにした。ウシ白血病:作出した地方病性ウシ白血病腫瘍関連抗原のMAbは、野外発病牛の腫瘍細胞全例と反応し、本病の生前診断や予知に使用しうる可能性を示唆した。伝染性膵臓壊死症:作出した抗体産生細胞はいずれも継代不能あるいは微生物によるコンタミネーションのために維持しえず、研究は不成功に終った。
著者
富田 眞治 富田 真治 (1987) 吉田 紀彦 谷口 倫一郎 村上 和彰 福田 晃 末吉 敏則
出版者
九州大学
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1987

本研究の主な成果を以下に示す。1.QA-2の総合的性能評価とアーキテクチャの再設計:研究代表者らが以前開発した超長形式機械命令型計算機QA-2のアーキテクチャを評価した結果、機械命令処理の高度パイプライン化、演算器個数に依存しない汎用の機械命令形式などの必要性が明らかになった。この結果、超長形式機械命令型計算機の発展形である単一命令流/多重命令パイプライン(SIMP)方式を考案した。この方式は、短形式機械命令を実装した演算器個数分づつまとめて同時にパイプライン処理することにより、命令処理の時間的かつ空間的な並列度を更に高めようとするものである。2.超長形式機械命令型計算機の試作機開発:SIMP方式に基づく試作機を開発した。開発した試作機は、浮動小数点演算器および固定小数点演算器それぞれ1個を1本の命令パイプラインの核として、4本の多量命令パイプラインを有するものである。命令実行の障害となるデータ依存関係および制御依存関係を実行時に解決するための動的コード・スケジュールリング・アルゴリズムを開発し、試作機に実装している。その結果、命令実行順序がオブジェクト・コード上の命令出現順序と異なるアウト・オブ・オーダー実行となる。本アルゴリズムは他のアルゴリズムと比べて、分岐命令実行の際の選択的な命令無効化、複数のデータ依存関係の検出・表現、分岐命令を跨いだアウト・オブ・オーダー実行および先行実行などが特徴的である。3.超長形式機械命令型計算機用の最適化コンパイラの開発:SIMP方式のための最適化コンパイラに採用する静的コード・スケジューリング・アルゴリズムとして、トレース・スケジューリング法、ソフトウェア・パイプライニング法,ポリサイクリック・スケジューリング法などの試作機への適用を検討した。
著者
高折 修二 赤池 昭紀 笹 征史
出版者
京都大学
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1986

A/Dコンバーターを装備したミニ・コンピュータを用い中枢神経系における電気生理学的研究によってえられたデータを自動解析するためのソフトウェアを開発した. プログラムはUNI×オペレーティング・システムの下でC言語により記述したので, 実験の目的に応じてソフトウェアを容易に変えることができた. 三次元表示による監視システム, ならびに活動電位, 細胞内記録時の興奮性シナプス後電位(EPSP)およびパッチクランプ記録時の単一チャンネル電流のためのプログラムを作製し, データの迅速かつ正確な解析を行った. 局所刺激によってえられたEPSPはコンピューターに接続したA/Dコンバータを用いてデジタル化した. デジタル化したデータをグラフィック・ターミナル上に表示し, EPSP上昇相および下降相の各点の対数を時間軸に対しプロットした. データ解析用のこのコンピューター・システムを用いて, 次の実験を行った. 第1にラットの尾状核ニューロンに対するドーパミンの効果を, スライス標本において細胞内記録法を用いて検討した. 低濃度(1μM)のドーパミンによる水槽の灌流は脱分極をおこし, 自発性発火の増加と, 細胞内に与えた脱分極パルスにより誘発される活動電位数の増加を伴った. これに対し, 高濃度(100μM)のドーパミンは静止電位に明らかな効果をもたらすことなしに, 自発性および電流誘発による発火を抑制した. 次いで, 尾状核におけるコリン作動系の主要な役割を解明するために, コリン作動薬および拮抗薬の効果をラット尾状核のスライス標本を用いて研究した. その結果, 尾状核ニューロンのシナプス前およびシナプス後部に局在するムスカリン性受容体は, それぞれコリン作動性の抑制および興奮に関連していること, およびこのシナプス前抑制か興奮よりも優位であることを明らかにした.
著者
古山 富士弥
出版者
名古屋市立大学
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1986

本研究は三つの部分から成っている。(1)高環境温度耐性ラットの系統開発すでにある程度まで育成していた高環境温度耐性ラットを、この三年間でさらに選抜と交配をくりかえして純化し、二十数世代をかぞえる近交系として確立した。この系統は、1982年および1988年に発表した約20系統のラットよりも、高温耐性であった。遺伝分析のために、既存の系統のうち最も高温非耐性であったACIラットとの間に、F1、F2、BCを産ませて、高温耐性を測定した。その結果、高温耐性はポリジーニックに決定されていることと、主要な数個の遺伝子が特につよく関与していることがわかった。(2)ハイブリッドの作出このF2をもとに数系統のリコンビナント・インブレッズを作出したが、途中で研究室の研究条件が一過性に悪化したときに、一系統を残してすべて殺した。その後、高環境温度耐性ラットと祖先を同じくする対照系が絶滅したために、残ったリコンビナント・インブレッズを高環境温度耐性ラットにBCして、対照系として育成しつつある。現在、研究条能が少し好転してきたので、再びリコンビナント・インブレッズを育成する準備をしている。(3)生理的機能の研究既存の系統では、高温耐性であるほど、唾液分泌が活発で、唾液分泌が長く持続し、体水分利用公立が高かった。高環境温度耐性ラットでは、唾液分泌はさらに活発で、さらに長時間持続したが、体水分利用効率は既存の系統のうち最高のものと同値であるにすぎなかった。高環境温度耐性ラットは、室温25℃での体温が約1℃ひくく、高環境温度へ暴露されると体温を40℃付近に設定した。
著者
吉田 正夫
出版者
岡山大学
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1983

1.8種類のウニ(タワシウニ、コシダカウニ、エゾバフンウニ、タコノマクラ、アカウニ、バフンウニ、ムラサキウニ、サンショウウニ)の幼生および稚ウニの飼育を試み、理学部付属臨海実験所レベルの小規模施設における稚ウニ生産技術の確立をめざした。2.タコノマクラを除き、大規模な飼育設備を持たない施設においても、数千個の稚ウニを生産できることが判明し、実験の性質を限れば、研究者にある程度安定的にウニを供給できる目途がついた。3.海水の汚染状況は各地で異なるため一概には言えないが、適当な濾過装置を用いれば幼生飼育可能な海水を得ることができる。4.幼生飼育の餌としては、珪藻Chaetoceros gracilisが最適である。5.変態前の幼生は、30リットルパンライト容器中で、1mlあたり6個体の密度で飼育した。飼育液中に繊毛虫が発生してきたら換水した。6.幼生が8腕期に達し、ウニ原基が十分に発達したら変態誘導をおこなった。予め器壁に付着珪藻を付けておいた500リットルパンライト容器中に、プラスチックの波板を組合わせて作ったコレクターを設置し、変態直前の幼生を入れると直ちに変態を開始した。7.20°Cで飼育して、変態誘導までに要した時間は、アカウニ、21日、バフンウニ、18日、ムラサキウニ、12日、サンショウウニ、9日であった。8.変態後の稚ウニは、アナアオサやモクを餌として与えて飼育し、殻径が5mm〜1cmに達したら海へ放流した。9.500lパンライト容器で生産可能な稚ウニの数は、最大1万であろう。
著者
川上 洵 南寿 礼次郎 大森 淑孝 杉本 博之 加賀谷 誠 徳田 弘
出版者
秋田大学
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1988

1.膨張コンクリ-トを鉄筋コンクリ-ト管に適用し、そのひびわれ強度の改善を計った。1)膨張コンクリ-トの材料特性を明らかにした。2)普通コンクリ-トと膨張コンクリ-トの複合化を行うことによりケミカルプレストレスを導入した。このとき、管を多層円柱とモデル化し応力解析を行いプレストレスの分布を示した。3)外圧試験により膨張コンクリ-ト使用(ケミカルプレストレス導入)によるひびわれ強度の上昇を定量的に示した。2.PC鋼材を用い、鉄筋コンクリ-ト管に機械的プレストレスを導入し、外圧強さの向上を計った。1)PC鋼を鉄筋コンクリ-ト管の外壁に巻き緊張・定着して機械的プレストレスを導入した。2)機械的プレストレスとひびわれ強度の関係を明らかにした。3.鉄筋コンクリ-ト管の内壁にライニングするポリマ-モルタルの材料特性を検討した。1)ケミカルアタックに対する抵抗性、2)遠心力ライニング時の親水性、3)鉄筋コンクリ-トとの付着特性、4)外圧試験におけるひびわれ強度が明らかにされた。4.高強度耐酸コンクリ-ト複合管の設計及び製作を行った。1)複合管を構成するポリマ-モルタル、膨張コンクリ-ト、普通コンクリ-トの打込み厚さ、鉄筋及びPC鋼の量及び配筋などに関し、その材料特性及び価格を考慮し、できるだけ大きな外圧強度が得られる最適設計を行った。2),1)の結果に基づき、実用管の試作を行い、その外圧試験を行った。
著者
桑原 正明 飯沼 一浩 大川 俊之 伊勢 秀雄 景山 鎮一 高山 和喜 OHKAWA Toshiyuki HOSOYA Fumio 細谷 文夫
出版者
東北大学
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1986

微小爆発を水中衝撃波のエネルギー源とした体外衝撃波結石破砕システム(mESWL)を開発し, 222名の上部尿路結石症患者(229治療症例)に試験治療を行い, 96%の症例に治療効果を認めた. 合併症としては発熱と結石排出に伴うせん痛が20%の内外の患者に見られた. この他には菌血症1例, 消化管出血1例, 腎被膜下血腫2例が見られた. 後者の4症例は, 1例の腎被膜下血腫の1例に経皮的なドレナージを施行した他は保存的に治療した. これらの合併症の発生頻度はこれまで実用化されている体外衝撃波結石破砕機におけるものとほぼ同様であった. 従って, mESWLはこれまでのESWL機と同様に臨床的な治療機として応用できることが示された.mESWLは現時点では一応, 完成されたシステムであると考えているが, 欠点がないわけではない. 例えば私たちはmESWLの治療方式として衝撃波のエネルギー効率を重視し, 患者を水槽内に入れて治療をおこなう方式(water-tub)を採用した. また, 私たちは爆薬の単純性とその強力さに注目して, 衝撃波発生のエネルギー源に専ら爆薬を用いてきた. しかし, 爆薬を使用する限り, 爆発に伴う騒音の発生や爆薬を取り扱うことの煩わしさが避けられない. 騒音についてはDornier機(HM-1)と同じレベルであることが確かめられ, この点についての問題は少ないが, 経済的な見地からみると爆薬そのもののコストも無視することはできない. こしたことから, 将来的にはtub-less方式の検討やピエゾ素子など他のエネルギーを用いることについても検討を進めたいと考えている.mESWLの総合評価は治療効果, 操作性, 経済性などを含めた他の体外衝撃波結石破砕機との比較を待たなければならないが, 国産の体外衝撃波結石破砕機を独自の方式で開発することができた意義は大きいとかんがえられる.
著者
浅野 俊夫
出版者
京都大学
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1984

1。本年度は、試験研究の最終年度に当たるので、59・60年度に開発した装置類をニホンザルの小集団のケージに据え付け、改良と調整を行った。2。まず、自動給餌装置の改良・調整を行った。給餌窓の大きさがおおき過ぎると一度に二つの固形飼料を取られてしまうことが分かったので、窓の大きさを調整した。また、固形飼料の自重のみに頼ると補給路がつまり、呈示窓に餌が落ちて行かないことが分かったので、偏心モーターによる振動を与える機構を付加し、落下を促すようにした。さらに、呈示窓部への手の出し入れは光ビームで検出し、一度手を放してもすぐに戻したときは、うまく餌が取れなかった時なので、手を離してから一定時間経過した時にのみ、呈示窓のシャッターが閉じるように改良した。3。自動個体識別装置は、センサー部には問題が無いが、サルにつける首輪の開発が難しく一応の試作には成功しているが、まだ完成に至らず、実際の実験に使いながら最終調整中である。首輪側には発信機を置かず、首輪に巻いたコイルの時定数を餌場に設定した磁場への影響で検出するという基本原理は期待どおりの成功を納めたが、コイルの巻いてある首輪をサルに脱着する機構が難しく、現試作品は一度着けたら外せない構造になっている。これでも十分に当初の目的には、かなっているが用途が限られるので改良が必要である。4。実験制御用に開発したMSXコンピュータ・システムは、すでに学内外で使用されており、インターフェース・ボードのプリント基板も数度の改訂を経て、完成品がいつでも入手出来る態勢が確立されている。ソフトウェアはBASIC言語を採用したので、誰でも容易に実験用プログラムを書くことが出来る。