著者
納富 雅也
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 = The journal of the Institute of Electronics, Information and Communication Engineers (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.91, no.11, pp.971-978, 2008-11-01
参考文献数
21
被引用文献数
12

フォトニック結晶を用いて超小形(〜波長と同程度)でかつQ値が非常に高い共振器が実現されつつある.本稿ではこの超小形高Q共振器を用いた光制御研究として,光伝搬速度制御によるスローライト応用と,光非線形効果の増強を利用した光スイッチ,光メモリによるオンチップ型の全光情報処理への展開という二つの例を紹介した後,長い光子寿命を持つ小形共振器で可能となる断熱チューニングという新しい光制御法について概説し,波長変換や光マイクロマシンへの応用の可能性を議論する.
著者
細野 秀雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 = The journal of the Institute of Electronics, Information and Communication Engineers (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.97, no.3, pp.178-186, 2014-03

酸化物半導体は典型的な半導体とはかなり違った性質を有する.本稿では本小特集の序論としてその特徴を概説する.まず,バンドラインナップを基にキャリヤドーピングの成否とp/n指向性を総括的に解説する.次いで四つの具体例を取り上げ,典型的半導体と比較しながら,酸化物半導体の特徴を記述する.例としては,両極性酸化物半導体,超ワイドギャップ酸化物12CaO・7Al_2O_3への電子ドーピング,混合アニオン系酸化物半導体と透明アモルファス酸化物半導体を取り上げ,その特性を電子構造から解説する.そして最後に今後を展望する.
著者
岡本 晃一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 = The journal of the Institute of Electronics, Information and Communication Engineers (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.91, no.11, pp.979-986, 2008-11-01
参考文献数
31
被引用文献数
2

金属と誘電体の界面に生じる表面プラズモンは,電磁波と相互作用することによって,従来にないユニークな光物性・光機能性を作り出す.これを制御・利用する技術がプラズモニクスであり,近年特にナノテクノロジーの急速な発展に伴って様々な光学素子への応用が期待され,注目を集めている.ここでは,プラズモニクスの新たな可能性の一つとして,発光材料の高効率化への応用について紹介する.プラズモニクスに基づく高輝度発光素子によって,従来の蛍光灯をすべて固体発光素子に置き換える「照明革命」の早期実現が期待される.
著者
奥乃 博 中臺 一博 水本 武志
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 = The journal of the Institute of Electronics, Information and Communication Engineers (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.95, no.5, pp.401-404, 2012-05-01
参考文献数
7
被引用文献数
4

私たちが日常耳にする音は複数の音や背景雑音が混じった混合音である.実世界で音情報を活用するためには「聞き分ける」機能が不可欠である.聞き分けるセンサ技術は,インストルメンテーション(装置化)という観点から音を収録するデバイス(センサ)と収録音に対する処理ソフトウェアから構成される.本稿では,混合音のセンサ技術の動向を,ロボット聴覚とカエルの合唱の観測について解説を行う.混合音を聞き分けるという立場から,音源定位,音源分離,分離音認識に取り組むべきであると考え,音環境理解という研究を過去15年進めてきた.離れて聞くという技術は,ロボットでは不可欠の技術であり,ロボット聴覚に不可欠な機能を統合的に提供するソフトウェアHARKを開発し,公開している.HARKの設計思想から具体的な実装まで概観し,その応用として,音環境可視化技術と人ロボット共生学への応用について報告する.また,カエルの合唱機構を音を聞き分けて解析する応用では,フィールドで聞こえる様々な音のために,音響処理だけでは難しいので,近傍の音を拾ってLEDを光らせる「カエルホタル」を開発した.カエルホタルを多数並べて実際の田んぼで観測し,カエルの鳴き方の観測実験についても合わせて報告する.以上の報告を通して,混合音を聞き分ける技術が,今後重要な技術になることを提案する.
著者
長谷川 良平
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 = The journal of the Institute of Electronics, Information and Communication Engineers (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.91, no.12, pp.1066-1075, 2008-12-01
参考文献数
11
被引用文献数
10

近年の医工学技術の進歩は,これまで治療が困難と思われてきた手足の運動や言語機能に重篤な脳障害を持つ患者が,他者と円滑に意思疎通を行ったり,電動義手を自在に制御したりできるような道を開きつつある.その代表的な手段として最近,社会の注目を集めているのが,ブレイン-マシン インタフェース(BMI:Brain-Machine Interface)という脳と外部機器を直結する技術である.つい最近までSF映画の中だけの話かと思われていたこの技術は,今や少予高齢化の進む現代社会の様々な問題を解決するイノベーション技術として期待されている.本稿では,BMIのコア技術である高次脳機能解明に向けた実験・解析手法を現場の研究者の立場で紹介するとともに,世界で進行中のBMI研究の現状や,筆者の目指す新しいタイプの認知・情動型BMIの開発に向けた取組みを紹介する.その上で,将来の展望や課題に対しても考察を加える.
著者
篠原 真毅
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 = The journal of the Institute of Electronics, Information and Communication Engineers (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.92, no.8, pp.695-699, 2009-08-01
参考文献数
19
被引用文献数
3

私たちの周辺に微弱に分散して存在する様々なエネルギーをあたかも果実を収穫するがごとく利用しようというのがエネルギーハーベスティング(Energy Harvesting)もしくはEnergy Scavenging技術である.私たちの周辺には光・熱・振動・電磁波等,様々なエネルギーが存在する.21世紀に入り,ディジタルデバイスの急速な発展によりmW・μWでも利用できる社会となり,エネルギーハーベスティング技術が注目されるようになってきた.本稿ではマイクロ波を用いた無線電力伝送技術を中心にエネルギーハーベスティング技術の現状を報告する.
著者
鈴木 陽一 西村 竜一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 = The journal of the Institute of Electronics, Information and Communication Engineers (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.93, no.5, pp.392-396, 2010-05-01
参考文献数
13
被引用文献数
2

立体映像や高精細映像などの技術が実用的な段階へと進むに伴い,空間的な情報を正しく再現できる音響技術の必要性も高まっている.頭の中に音の広がりを感じるのではなく,実空間中の確かな位置や方向に音源を知覚させる技術,すなわち高精度聴覚ディスプレイは,立体音響や空間音響などと呼ばれ,古くから研究が行われてきた.そこで,人がどのようにして,左右たった二つの耳で受信した2チャネルの一次元信号から空間を知覚しているのかを解説するとともに,立体音響から始まるこれまでの臨場感音響研究のアプローチと,それに基づく聴覚ディスプレイ技術の発展について概観し,将来の動向を展望する.
著者
奥田 正浩
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 = The journal of the Institute of Electronics, Information and Communication Engineers (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.93, no.2, pp.139-144, 2010-02-01
参考文献数
5
被引用文献数
8

暗所視から明所視までの輝度順応を考慮した場合,人間の視覚特性のダイナミックレンジは200dBを大きく超え,単一のシーンでも暗所と明所の比が100dBから120dBになり得る.これに対して一般に市販されているカメラのダイナミックレンジは高性能なものであっても80dB程度であり,シーンすべての輝度情報を記録することはできない.高ダイナミックレンジ画像(High Dynamic Range画像,HDR画像)はシーンの可視範囲の輝度すべてを記録するために開発され,人間の視覚特性と同等のダイナミックレンジと色域をサポートする画像である.ここではHDR画像処理における重要なテーマである,取得法,符号化,トーンマッピングについて解説する.