著者
野田 惠子
出版者
お茶の水女子大学日本言語文化学研究会
雑誌
言語文化と日本語教育 (ISSN:09174206)
巻号頁・発行日
no.6, pp.10-21, 1993-12-04

従来、終助詞「ね」と「よ」それぞれの機能については研究が進められてきたが、「よね」と重なる場合についてはあまり取り上げられてこなかった。そこで、現代の話し言葉における「ね」と「よ」の機能を確認しながら、「よね」を考察した。その結果、話し手の知識や意向が聞き手のそれと一致するか対立するかという話し手の想定において、「よね」は一致の想定を表す場合にだけ用いられること、この時「よね」の「よ」は、話し手にも当該の知識や意向が確かにあることを示す標識となることが認められた。
著者
文 吉英
出版者
お茶の水女子大学日本言語文化学研究会
雑誌
言語文化と日本語教育 (ISSN:09174206)
巻号頁・発行日
no.50, pp.81-90, 2015-12

本研究は、日本における母親の持つ教育価値観(理想的教師観、理想的学生観、理想的教育観)、子どもへの期待と養育態\度との関連を検討したものである。首都圏に居住する母親96 名を対象に質問紙調査を実施し、統計的分析を行った。その\結果、母親の子どもへの期待として『グローバル志向』『流暢な英語能力』『優秀な成績』『礼儀正しさ』『異文化との交流』\『豊富な遊び経験』の6 因子が、養育態度として『一貫性のないしつけ』『受容』『統制』『自由への容認』『同調』の5 因\子が抽出された。教育価値観と子どもへの期待と養育態度との関連を検討するために重回帰分析を行った結果、『一貫性の\ないしつけ』には理想的教師観の『学生尊重(負)』が、『受容』には理想的学生観の『従順』と理想的教育観の『創造性』\『人材教育(負)』および子どもへの『豊富な遊び経験』の期待が影響していた。『統制』には理想的教師観の『専門性』が、\『自由への容認』には理想的教育観の『創造性』が影響していた。『同調』には子どもへの『流暢な英語能力』『優秀な成\績』『グローバル志向(負)』の期待と理想的教師観の『学生尊重』『専門性(負)』が影響を与えていることが示された。
著者
岩田 夏穂
出版者
お茶の水女子大学日本言語文化学研究会
雑誌
言語文化と日本語教育 (ISSN:09174206)
巻号頁・発行日
no.33, pp.1-10, 2007-06

日本語を第一言語とする母語話者(NS)と第二言語とする非母語話者(NNS)の会話では、言語能力において強い立場にあるNSが会話のイニシアチブを取ると考えられてきたが、実際に教育現場でのやり取りを見ると、多様な参加の様相が見られる。本稿では、発話の連鎖の仕方から会話参加の様相を明らかにするイニシアチブ-レスポンス分析を用いて、留学生と日本人学生のペア5組の自由会話に見られる参加のパターンを探り、さらにミクロレベルの質的分析を通してそのパターンの背後にある特徴を調べた。その結果、2組のペアでパターンの一致(対称的参加)、3組にパターンの不一致(非対称的参加)が見られたことから、言語能力が参加の様相を決定するのではないこと、参加の対称性を左右するのは、談話推進のリソースとなる情報が両参加者から提供されるかどうかが重要であることがわかった。この結果から、自由会話という活動とNSとNNSの会話への参加の仕方に見られる特徴との関連を考察した。
著者
友岡 純子
出版者
お茶の水女子大学日本言語文化学研究会
雑誌
言語文化と日本語教育 (ISSN:09174206)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.37-47, 1994-06-04

日本語に限らず一つの言葉は表面的な語義の背後に内包的意味を持っているが、第二言語習得においてはどのように扱うべきなのであろうか。表面的な語義の理解だけでは本当の意味で言語を習得したことにはならない。言葉の背後に広がるイメージの理解を通して異文化を理解することを目的に、俳句を教材にした日本事情の授業を試みた。本稿は、俳句の季語が持つ季節感のアンケート調査の結果から、日本人と外国人のイメージのずれを明らかにし、そのずれを埋めるべく試みた授業の実践報告である。
著者
黄 明淑
出版者
お茶の水女子大学日本言語文化学研究会
雑誌
言語文化と日本語教育 (ISSN:09174206)
巻号頁・発行日
no.48, pp.22-31, 2015-06

The aim of this article is to shed light on the linguistic behavior of Chinese Native Speakers (CNS) and Japanese\Native Speakers (JNS) with a focus on the closing section in the agreement situation of "Invitation" discourse. Two role\play situations with a different degree of burden were used in this research. Situation is inviting friends for lunch at a\school cafeteria (low burden), and Situation is inviting friends who are busy with a part-time job to go cherry picking\(high burden). The results of the semantic formula analysis show that, the frequency of the two semantic formulas in\Situation , "reference of a compensation" and "emphasis of friendship", was significantly higher in CNS. However,\the semantic formulas "favorable response" and "gratitude", were only marginally higher in JNS. As for Situation , the\frequency of "emphasis of friendship" was significantly higher in CNS, while JNS have a significantly higher frequency\of "gratitude" and "maintaining relationship".本稿では、ロールプレイによる「誘い」談話の「承諾」場面の終結部に焦点を当て、中国語母語話者(以下CNS)と日\本語母語話者(以下JNS)の言語行動の特徴を明らかにすることを目的とする。ロールプレイは「食堂へ食事に誘う」(以\下場面 )と「家庭教師で忙しい友達をさくらんぼ狩りに誘う」(以下場面 )といった「誘い」の内容の負担度が低い場\面と負担度が高い場面の 場面を取り上げた。意味公式による「誘い」のストラテジーの分析の結果、場面 では「見返\りの言及」「友情の強調」において、CNSの方がJNSより使用頻度が有意に高く、「好意的反応」「感謝」において、JNSの\方がCNSより有意に高い傾向が見られた。また、場面 では、「友情の強調」においてCNSの方がJNSより有意に高く、「感\謝」「関係作り・儀礼表現」においてJNSがCNSより有意に高いことが明らかになった。
著者
林 美善
出版者
お茶の水女子大学日本言語文化学研究会
雑誌
言語文化と日本語教育 (ISSN:09174206)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.78-91, 2001-12-08

本研究では、日本語と韓国語における電話会話の終結部がどのような過程を経て終了されるかを調べるために、日韓の20代の友達同士の電話会話40件を分析し、そこに現れた日韓の相違を考察した。その結果、以下のようなことが明らかになった。1)「pre-closing」:日韓それぞれに特徴的なものとして「総括の表現」(日)、「お互いの幸せや健康を祈る/明示的な終結宣言」(韓)が見られた。2)「closing」:<人間関係の再確認>において、「お詫びの表明」(日)、「再接触の要求」(韓)がそれぞれ特徴的なものとして観察された。<最終発話交換>において、韓国語の「어-[o:]」、「응-[u:ng]」が終結部を終了させる機能があること、「어-[o:]」は必ず「응-[u:ng]」の先に立つことが分かった。また、日韓の女性話者の終結部は日韓の男性話者の終結部より長くなる傾向が見られた。The purpose of this study is to find out in what process Korean and Japanese conversation end up telephone calls. Forty phone calls had made between friends among twenty Japanese and Koreans were used as data in this study. As a result, the following points were found. 1) 「pre-closing」: The distinctive differences were [summarization of the calls] (Japan), [bless each other's happiness and health/ the declaration (expression) of ending dialogues] (Korea). 2) 「closing」: As closing composing elements in the <reaffirmation of acquaintance>, [expression of the apologies] (Japan), [the request of recontact] (Korea) were collected. As closing composing elements in <terminal exchange>, the Korean expressions for "Good-bye" [o:], [u:ng] seemed to be used quite open in every case and they functioned as closing conversations in the phone calls. Meanwhile, compared with the length of closing conversations, the gender differences tend to be much considerable in both Korean and Japanese languages.
著者
吉田 好美 よしだ よしみ
出版者
お茶の水女子大学日本言語文化学研究会
雑誌
言語文化と日本語教育 (ISSN:09174206)
巻号頁・発行日
no.40, pp.11-20, 2010-12

断りを伝達する際には言い訳を用いることが多いが、その言い訳が断り発話においてどの程度の重みを持つのか、また言い訳使用の断りを聞いた勧誘者が、どのような言語行動を取るのかは、文化によって違いがあると思われる。そこで本研究では、勧誘場面での日本人女子学生(JNS)とインドネシア人女子学生(INS)の断りの談話において、断り発話に見られる言い訳及び不可表現の使用頻度の違い、言い訳と不可表現それぞれを使用した断り発話に対する勧誘者の言語行動の違いについて分析した。その結果、断り発話については、JNSは言い訳のみを使用して断りの意志を伝達する傾向があり、INSは不可表現を使用して断る傾向が見られた。また断り発話に対する勧誘者の言語行動については、言い訳のみを使用した断り発話に対して、JNSの勧誘者はそのままその断りを受諾するが、INSは再勧誘をする傾向が示された。 \\r\\\In the event that people respond to the invitation from another person with the message of refusal, most of the times they make "excuses", however, the degree of impact that such excuses could convey to the counterparts regarding the sense of refusal, or the verbal responses from the counterparts as a result of listening such excuses will be different according to the cultures. \\r\\\This research analyzed the differences in expressions of refusals between Japanese female students (JNS) and Indonesian female students (INS). Firstly, I analyzed the difference between excuses and direct refusals among their expressions of refusals. Secondly, I analyzed the differences of the responses of the counterparts in their language use under each\of the messages of excuse and direct refusal. \\r\\\The results of this research have shown that JNS prefers to use "excuses" to refuse invitation. In contrast, direct refusals are more preferred by INS. Also, the research has shown the result that in the event that JNS receives "excuses" for the invitation, they will accept such refusal, however, INS will invite again if they receives only excuses.
著者
本林 響子
出版者
お茶の水女子大学日本言語文化学研究会
雑誌
言語文化と日本語教育 (ISSN:09174206)
巻号頁・発行日
no.31, pp.23-29, 2006-06

本稿は、カミンズの著書"Language, Power and Pedagogy"(2000)に沿って、その一連の理論を紹介することを目的とする。本稿ではまず、バイリンガル教育に関する心理言語学的な理論である「BICS/CALP」の概念、「相互依存仮説」、「敷居仮説」の3つについて、基本的な概念を整理するとともに、これらの理論の発表後に起こった議論、反論、誤解に対するカミンズ自身の見解を紹介する。次に、社会における力関係とマイノリティの生徒の学習とを関連付けた「協動的エンパワメント」理論について述べる。そして最後に、カミンズが本書の中で論じている、多文化教育における「トランスフォーマティブ教育」の可能性に言及して論を終える。