著者
山崎 理恵 森 有希
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.10, pp.465-470, 2019-10-01 (Released:2019-10-01)

世界的にデザインへの注目が高まる中,2015年以降,米国や日本,ロシアが次々に意匠の国際登録出願制度(ハーグ協定のジュネーブ改正協定)に加盟し,また我が国では,100年に一度といわれる意匠法の大改正が行われ(2020年施行予定),意匠制度の活用方法を見直す好機を迎えている。本稿では,日本を中心に,中国,欧州共同体(EU),米国の意匠制度について紹介するとともに,画像,空間,部品の分野別の登録例を紹介する。また,日本の意匠法改正のポイントについても言及する。
著者
野仲 松男
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.10, pp.459-464, 2019-10-01 (Released:2019-10-01)

本稿では,世界の特許制度の動きについて概観したのち,主要特許庁の出願動向や国際協力について解説し,実用新案制度についても簡単に触れる。各国・各地域の特許制度は独立であるが,制度調和の取組が続けられており,特許制度の基本的枠組みは共通化されている。特許協力条約(PCT: Patent Cooperation Treaty)に基づく国際出願の利用は年々伸びており,欧州では,Brexitによる先行きの不透明さはあるものの,統一特許制度の実現が目前に迫っている。特許出願動向では中国の台頭が著しく,国際協力の中心は日米欧の三極特許庁から日米欧中韓の五大特許庁に移り,様々な協力プロジェクトが積極的に推進されている。
著者
山口 和弘
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.10, pp.453-458, 2019-10-01 (Released:2019-10-01)

国際的なビジネスの展開には,日本だけでなく外国においても特許権,実用新案権,意匠権及び商標権からなる産業財産権を取得することが重要となる。しかしながら,産業財産権の分野において「国際特許」や「世界特許」と呼べる形で国際的に単一の権利が付与されて活用できる制度は存在せず,日本で出願し取得した権利は日本でのみ効力を有するものとなっている。そのため,産業財産権が必要な国々で別々に出願することで権利を取得し,活用することが原則となっているが,その過程で生じる負担や諸問題を緩和するために様々な国際条約が締結されている。そこで,本稿では,初学者が知っておきたい条約を中心に概要を紹介する。
著者
青山 高美
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.10, pp.446-452, 2019-10-01 (Released:2019-10-01)

今では居ながらにして世界中の人と動画を見ながら話ができる。この豊かな生活を可能にしたのは,他ならぬ人の知恵や工夫など人の知的創作物のお蔭である。こうした人の知的創作物を総称して知的財産と呼ぶ。企業はその存続とさらなる発展のためにより優れた商品・サービスの開発にしのぎを削っており,その源泉である知的財産は企業の重要な財産であると同時に,知的財産権は競争の武器でもある。従って,画期的な知的財産の創出と有効な保護,効果的活用は企業の重要な戦略でもある。企業の盛衰は,国家の経済にとっても重要な要素であるので,近年,知的財産が国家戦略としても話題になることが多い。
著者
炭山 宜也
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.10, pp.445, 2019-10-01 (Released:2019-10-01)

2019年10月号の特集は「世界の産業財産権のいま」です。産業財産権には特許権,実用新案権,意匠権及び商標権があります。以前は「工業所有権」とも呼ばれていましたが,2002年に策定された知的財産戦略大綱にて「産業財産権」に用語が統一されました。似たような言葉で「知的財産権」というものがありますが,産業財産権に馴染みのない方にとって,これらの言葉の関係は結構あいまいなものではないでしょうか。またサーチャーにとっては,調査対象として馴染みはあるものの,その歴史や制度に関してはそれほど詳しくないという方もいるのではないでしょうか。本特集では産業財産権の概要を理解する入門編的位置づけとして,その歴史や制度,最近のトピックスについて5人の方々から解説をいただきました。総論では株式会社ワイゼルの青山高美氏に特許の事例や知的財産権と産業財産権の関係を含め,広く知的財産制度について概説していただきました。山口和弘氏には,産業財産権と関わりの深い国際条約について,知的財産に関する条約の多くを管理する世界知的所有権機関(WIPO)を中心に解説をいただきました。特許庁の野仲松男氏には,世界の特許制度の動き,主要特許庁や国際出願による出願動向を中心に解説をいただきました。オンダ国際特許事務所の山崎理恵氏,森有希氏には,日中欧米の意匠制度の比較を中心に,日本の意匠法改正のポイントも含めて解説をいただきました。ユアサハラ法律特許事務所の青木博通氏には,世界の商標制度の基本構造や欧中米の比較,国際登録制度,及び各国の制度の特異性について解説をいただきました。いずれの方々からも分かりやすく解説をいただき,本特集記事を通読することで,産業財産権制度に馴染みのない方々にとって,広く知識を得ることができるものと考えています。また本特集が,産業財産権制度により深く興味を持つためのきっかけとなれば幸いです。(会誌編集担当委員:炭山宜也(主査),渋谷亮介,寺島久美子,南山泰之,野村紀匡)
著者
竹内 孔一
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.9, pp.421-426, 2019-09-01 (Released:2019-09-01)

近年,認知言語学を基に構築されている概念体系を利用した用語整理手法が提案されており,概念体系の構築と利用について期待が高まりつつあると考えられる。著者は複合名詞内の係り関係を分析した語彙概念構造を発展させて,意味役割と述語の概念をシソーラス状に体系化した述語項構造シソーラスを構築して公開している。そこで,本稿では,構築している述語項構造シソーラスの基本的な設計方針と,データ構造の説明,および最近の発展について説明する。さらに,概念体系データが専門用語の整理や自然言語処理で使われた例について説明し,概念体系データの今後の展望について述べる。
著者
山本 ゆうじ
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.9, pp.415-420, 2019-09-01 (Released:2019-09-01)

体系的翻訳,特に用語管理の側面は,用語が企業・組織の翻訳資産として重要であるにもかかわらず軽視されていることも多い。用語管理は,ニューラル機械翻訳の時代で意義を失ったかのように考えられることもあるが,これは誤解であり,むしろさらに重要性を増している。本稿では,組織での体系的翻訳における用語管理の概要を述べる。体系的翻訳での現状の課題を分析し,翻訳品質と,用語管理の専門性について説明する。その後,アジア太平洋機械翻訳協会(AAMT)により策定されたシンプルな用語集形式UTXによる用語管理の概要と活用例を紹介する。
著者
山本 昭
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.9, pp.409-414, 2019-09-01 (Released:2019-09-01)

標準化活動において重要となる用語の定義について概説した。ISO 704「専門用語-原則と方法」を基に,定義文の書き方の基本を述べた。内包的定義はもっとも推奨される定義であり,外延的定義は限られた場合に有効である。不十分な定義や循環的定義など,望ましくない定義と,それを避ける方法も示した。定義文とともに提供される,注記等の項目も概説した。
著者
石崎 俊
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.9, pp.404-408, 2019-09-01 (Released:2019-09-01)

専門分野の用語(ターミノロジー)は多分野との情報流通のために必要であり,今後ますます重要になるので,国内外での情報流通のための専門用語の管理や概念体系の作成などの活動の概要を説明する。情報流通の重要な手段としては,国内外における用語の標準化活動があるので,過去の経緯や現在の課題,今後の可能性などについて概要をまとめる。まず情報技術の標準化を担当するISO/IEC/JTC 1における用語の標準化について概要を説明し,次いで,言語と用語の標準化を担当するISO/TC 37における翻訳・通訳も含めた用語の標準化の概要を説明する。JIS法が産業標準化法に改正されることに伴って,翻訳サービスなどに用いる用語のJIS化の動きについても概要も説明する。
著者
稲垣 理美
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.9, pp.403, 2019-09-01 (Released:2019-09-01)

2019年9月号の特集は「用語管理と標準化」です。専門的な分野の概念をあらわす用語の取扱いには高い精度が求められ,「ターミノロジー学」として研究も行われてきました。特に用語管理や標準化については,知識の伝達,交換といった人間の行動を助けたり解明したりする上で大きな役割があると考えられます。また情報のハンドリングを目的に,異なる分野との意味のマッピングなども試みられています。さらに,情報通信技術の高度化や人工知能の研究・実用が進んだ現在において,用語活用の可能性が高まっています。そこで今回の特集では,用語の取扱いやその標準化の変遷と現在の取組みについて実例に基づき紹介することに焦点を当てました。はじめに石崎俊氏に専門用語管理や概念体系の作成といった活動が情報流通において果たす役割とその重要性,ISOにおけるターミノロジー活動について概説していただきました。続いて,山本明氏に用語定義をいかに曖昧なく記述するかという点から,用語の定義についてご執筆いただきました。具体的な活用事例として,山本ゆうじ氏に翻訳における用語の標準化活動について,アジア太平洋機械翻訳協会(AAMT)により策定された用語集形式UTXを取り上げてご執筆いただきました。また竹内孔一氏に認知言語学を基に構築された概念体系について,専門用語の整理や自然言語処理への活用例も含めてご執筆いただきました。最後に,様々なデータ連携を目指した横断的なデータ活用基盤として整備されている情報共有基盤(IMI)について,その取組みと「法人インフォ」における活用事例を情報処理推進機構の斉藤浩氏,清水響子氏にご執筆いただきました。今後,用語管理や標準化をどのように活用していくことができるか,知識の伝達を行う多くの皆様のご参考になれば幸いです。(会誌編集担当委員:稲垣理美(主査),野村紀匡,光森奈美子,南山泰之)
著者
山本 和雄
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.51, no.11, pp.556-564, 2001
参考文献数
5

公務は法令を遵守して執り行われねばならない。図書館についても例外ではなく, 公的機関の図書館活動もまた合法に行われる必要がある。一方, 法は過去の蓄積に他ならないため, 電子ジャーナルのような新たな事象については必然的に法令適用の妥当性が問われることになる。本稿では, 電子出版物, 特に電子ジャーナルを公的機関に導入する際に関連する法規や解釈の近況について概括する。
著者
國谷 実
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.8, pp.376-381, 2019-08-01 (Released:2019-08-01)

日本の近代博物館の歴史,特に戦前の歴史をたどり,①殖産博物館,②集古博物館,③教育博物館,④通俗教育館(社会と科学の博物館),⑤科学博物館に分類する。これに対し,戦後の博物館は,社会教育法に基づく社会教育のための博物館に位置付けられており,特に②と⑤に特化している。しかし,戦後の博物館,――特にそのうちの科学博物館(科学館)は400~500館あると言われているが,近年,資金不足と老朽化や陳腐化によりその多くが転機に立たされている。今後,戦前の博物館の多様性を取り戻すことが重要であり,特に新しいイノベーションに貢献する科学館への方策を提言する。
著者
周 少丹
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.8, pp.371-375, 2019-08-01 (Released:2019-08-01)

本稿は,中国政府の科学技術政策の流れを追いかけ,「新しい研究開発システムの構築」「自立的発展方針の確立からナショナル・イノベーション・システムの構築へ」「全面的イノベーション駆動発展戦略の実施」を三つの段階に分けて概観したものである。わずか数十年で米国と肩を並べる科学技術大国にまでに発展してきた中国の科学技術をどのように把握すればよいのかが大きな課題である。中国の科学技術はボリュームが大きく,欧米との間の人員流動も激しく,中国の指導部ですら把握していない部分もある。そのため,本稿にて提示した中国の科学技術政策のターニングポイントをよく知ることは,中国を理解する重要なツールとなると考えている。
著者
遠藤 悟
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.8, pp.364-370, 2019-08-01 (Released:2019-08-01)

米国,ドイツ,英国の科学技術政策は,それぞれの国の政治システムの相違に加え,各国の研究活動の様態やアカデミックコミュニティーが果たす役割等により異なる特徴が見られる。本稿においては,各国の最近の科学技術政策の動向を具体的な事例とともに紹介する。米国についてはトランプ政権の科学技術政策についてその歴史的背景とともに概観する。ドイツについては連邦政府と州との関係を通した研究活動高度化の取り組みについて整理する。英国については高等教育・研究法の成立に至る政策決定へのアカデミックコミュニティーの関与について報告する。そしてこれらの事例から,日本の科学技術政策への示唆について考える。
著者
渋谷 亮介
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.8, pp.357, 2019-08-01 (Released:2019-08-01)

2019年8月号の特集は「世界の科学技術政策の動向」です。従来,伝統的な学問分野の体系に即して研究が多く行われてきましたが,科学技術の発展や災害対応の要請もあり,学際分野研究と呼ばれるような異分野に跨がる新たな学問分野の研究が盛んになっています。また情報技術の発展に伴ってオープンサイエンスが進化し,異業種・異分野の専門家が協業した研究も珍しいことではなくなりました。これらの変化を踏まえますと,インフォプロは担当分野の情報だけではなく,近接分野の動向も把握する必要が出てきており,今後の科学技術の方向性を知ることは重要です。そこで今回の特集では,国内外の科学技術政策の動向と,それに基づいて科学館・博物館に求められる役割に焦点を当てました。はじめに文部科学省科学技術・学術政策研究所の赤池伸一氏には,日本の科学技術政策の基本ともいえる科学技術基本計画の歴史,現在の科学技術政策の概要と今後の課題について解説していただきました。次に,米国の科学政策の動向をレポートするウェブサイト「米国の科学技術」を運営されている遠藤悟氏には,米国,英国,ドイツの科学技術政策の動向と,各国におけるアカデミックコミュニティーによる政策への関与度の違いについて,事例を挙げてご執筆いただきました。続いて,昨今,科学技術の発展が目覚ましい中国について,国立研究開発法人科学技術振興機構の周少丹氏には,中国の科学技術政策の特徴と,科学技術の発展の礎となったターニングポイントについてご執筆いただきました。また日本では,イノベーション人材の育成の場として科学館・博物館が注目されています。そこで,一般財団法人日本宇宙フォーラムの國谷実氏には,科学館・博物館の設立の歴史と,役目の変化,イノベーション型博物館としての今後の役割についてご執筆いただきました。日本を含め各国の科学技術政策は,科学技術の進展や時流に応じて変わっていきます。そこで,国立国会図書館の榎孝浩氏には,日本,米国,欧州,中国の科学技術政策を調べる上で便利な資料をご紹介いただきました。1つの国の科学技術政策を採り上げるだけでも大きなボリュームがありますが,重要なポイントに絞って分かりやすくご執筆いただきました。本特集が,皆様の日々の活動において一助となることを願っています。(会誌編集担当委員:渋谷亮介(主査),大橋拓真,當舎夕希子,野村紀匡)
著者
バゼル山本 登紀子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.47, no.12, pp.658-663, 1997
参考文献数
14

20年の歳月を経て, 日本にもようやく 「情報公開法」が制定されようとしている。米国で情報自由法が制定されたのは, 今から30年前である。しかし, 市民の知る権利を守る精神と法律は, 公開法成立を見る100年以上も前から始まり, 現在までたゆまぬ努力がなされている。市民の知る権利を確実なものにするために生み出された寄託図書館制度は, その長い伝統を保ちながらも, 今, 21世紀の新情報時代に向けて, 新たな変化を遂げつつある。