著者
川西 隆仁
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.189-193, 2019-05-01 (Released:2019-05-01)

音響指紋技術とは,音響信号に対して,それが既知の音響信号の一部と同一かどうか,を判定する技術である。音響指紋は音響信号固有の特徴であり,音響指紋データベースと照合することによってどの音響信号のどの部分かを特定することができる。音響指紋による照合は,周辺雑音やマイク・スピーカー特性の変化等に頑健であることが要求され,また大量の楽曲データベースからもリアルタイムに検索できる高速性が必要である。本記事では,音楽の権利処理や違法投稿動画の検知などのデジタルメディアコンテンツ管理での音響指紋技術の適用事例を幅広く紹介し,音響指紋技術の1つであるロバストメディア探索技術を解説する。
著者
寺島 久美子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.181, 2019-05-01 (Released:2019-05-01)

2019年5月号の特集は「進化する検索技術」です。検索技術の進化に伴い,検索の対象は文字列だけでなく音声,画像,位置情報など多様化しています。多様な情報を横断的に検索できる技術の登場によって,これまで人手で行うしかなかった作業の大幅な効率化や,新たなサービスが可能となりつつあります。検索技術に注目が集まる一方で,検索の裏側でどんな仕組みが働いているのかについては,あまり知られていない部分もあります。進化する検索技術を理解し活用することは,情報に携わるインフォプロにとって欠かせないといえます。このような問題意識のもと,今回の特集では多様な検索技術を取り上げ,その仕組みや活用方法を解説するとともに,検索技術が私たちの生活や実務にどのような影響をもたらすか展望することを試みています。高久雅生氏(筑波大学図書館情報メディア系)には,総論として情報検索モデルの変容や検索技術の発展,近年注目されているトピックや今後の課題について解説していただきました。川西隆仁氏(NTTコミュニケーション科学基礎研究所)には,音で音を探す音響指紋技術の一つであるロバストメディア探索技術について,メディアコンテンツ流通への適用事例を交えてご紹介いただきました。北本朝展氏(国立情報学研究所)には,台風に関するビッグデータプロジェクト「デジタル台風」を取り上げ,画像や経路データの統合的な検索を通じて,防災における意思決定を支援する試みを解説いただきました。宗裕一郎氏(独立行政法人工業所有権情報・研修館)には,画像意匠公報検索支援ツールGraphic Image Parkにおいて,類似する意匠を効率的に検索する仕組みをご紹介いただきました。船戸奈美子氏(一般社団法人化学情報協会)には,科学技術分野の検索サービスSTNにおいて,化学構造図の特性を踏まえた検索の仕組みを解説いただきました。褚冲氏と大谷美智子氏(クラリベイト・アナリティクス・ジャパン株式会社)には,グローバル特許データベースDerwent World Patents Indexにおける自然言語処理技術を取り上げ,大量のデータを効率的に検索し実務に活用する方法をご紹介いただきました。いずれもユニークな検索技術を具体的に解説いただきました。本特集が,進化する検索技術を理解し活用しようとするインフォプロの皆様の一助となれば幸いです。(会誌編集担当委員:寺島久美子(主査),今満亨崇,長野裕恵,古橋英枝,松本侑子, 南山泰之)
著者
冨澤 かな 木村 拓 成田 健太郎 永井 正勝 中村 覚 福島 幸宏
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.129-134, 2018

<p>東京大学附属図書館U-PARL(アジア研究図書館上廣倫理財団寄付研究部門)は,本学所蔵資料から選定した漢籍・碑帖拓本の資料画像をFlickr上で公開している。資料のデジタル化とアーカイブ構築のあり方を模索した結果,限られたリソースでも実現と持続が可能な,小さい構成でありながら,広域的な学術基盤整備と断絶せず,高度な研究利用にも展開しうる,デジタルアーカイブの「裾野のモデル」を実現しうる方策として選択したものである。その経緯と現状及び今後の展望について,特に漢籍・碑帖拓本資料の統合メタデータ策定,CCライセンス表示,OmekaとIIIFを利用した研究環境構築の試みに焦点をあてて論ずる。</p>
著者
田中 博之
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.8, pp.390-394, 2018

<p>PISA型読解力は,社会の多様な資料やデータを比較して既有知識を活用しながら深く読み取り,読み取った結果を自分なりに解釈・評価してわかりやすく表現するという総合的な学力を意味している。21世紀社会に求められる新しいリテラシーとしてのPISA型読解力は,すべての国の子どもたちの基礎学力になることが求められるとともに,これからますますその育成方法や評価方法の研究を推進することが,OECD的な意味で国の経済発展の根幹になるものと考えられる。</p>
著者
服部 誠 高岸 亘
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.160-165, 2019-04-01 (Released:2019-04-01)

近年急速展開を遂げる第4次産業革命の動きの中でIoT,ビッグデータ,人工知能(AI)等のイノベーションを活用したサービスが登場した。その中で生じる新たな多種多様の著作物等の知的財産を適法かつ柔軟に利用するための法的インフラ整備の要請の高まりを受け,平成30年5月18日に著作権法が改正され,柔軟な権利制限規定等が整備された。また,第4次産業革命においては,ビッグデータ等の情報(データ)の利活用の促進が重要であるところ,不正競争防止法が改正(平成30年5月30日公布)された。本稿は,データを扱ううえで特に重要となる上記著作権法と不競法の改正を中心に説明し,昨今の知的財産法の動向の理解を深めることを目的とする。
著者
青柳 英治
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.144-149, 2019-04-01 (Released:2019-04-01)

本稿の目的は,中堅のインフォプロが資料情報を提供・管理するために必要となる知識・技術を確認することである。まず,INFOSTAの「検索技術者検定」とJPCOARの教材「研究データ管理トレーニングツール」を検討し,求められる知識・技術を確認した。次に,関係団体の提示したインフォプロに必要とされる知識・技術を整理し,前段で確認できた知識・技術がどのように位置づけられるのかを検討した。その結果,今回,検討した検定試験の問題と教材は,インフォプロに求められる知識・技術に即したものであり,資料情報の提供・管理に求められる知識・技術であると見なし得ることがわかった。
著者
林 隆之
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.158-163, 2017

<p>研究評価は,過去には研究者個人の研究業績や研究プロジェクトをピア(同分野の専門家)が科学的知識の妥当性から評価することが中心であった。しかし,研究活動自体が多様化するとともに,機関や組織による研究マネジメントの重要性が増し,研究成果による社会・経済的効果も期待されるようになる中で,研究評価の対象は拡大し,評価指標は多様化している。本稿では,研究評価の現状を概観することを目的に,研究評価の種類,大学等の機関の研究評価が導入された政策的背景,研究評価の方法の考え方,指標の多様性の必要性,インパクト評価の導入と課題,研究マネジメントへの活用について説明する。</p>
著者
佐藤 正惠
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報プロフェッショナルシンポジウム予稿集 第12回情報プロフェッショナルシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.35-39, 2015 (Released:2015-12-04)
参考文献数
12

日本は世界に類を見ない高齢化社会を迎えようとしており、厚生労働省は日本の医療機関に対し、ベビーブーマー世代が後期高齢者を迎える「2025年問題」に向けたロードマップで、各機関の役割明確化と在宅医療を推進している。 病院内の図書室は、医療法第22条により地域医療支援病院に設置が定められた共同利用施設であり、院内および地域の医療従事者に学術支援を行う役割がある。 また病院内に患者のための図書室(以下、患者図書室)を設置する動きが増加しているが、これは「がん対策基本法」により、がん診療連携拠点病院や自治体には患者への医療情報提供が義務付けられたことや、「健康増進法」制定、患者サービスの一環等の理由による。 病院図書室には、医療における1990年代からの根拠に基づく医療(EBM:Evidence based Medicine)推進の流れを受け、医療従事者や患者への科学的根拠のある情報提供が求められてきたが、一般市民にとっても、健康情報リテラシーの向上は喫緊の課題である。 図書館員の役割として、利用者に積極的に溶け込んで情報サービスを行う「エンベディッド・ライブラリアン」が注目されている。 本稿では、患者図書室の状況や役割を概観し、さらに自治体や公共図書館との連携・患者会や地域などへエンベディッドして活動する図書館員の役割と課題を考察する。
著者
調 麻佐志
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.317-323, 2004-06-01 (Released:2017-05-25)
参考文献数
18

近年. bibliometrics指標を用いた研究評価に関心が集まっている。しかし,専門家の間ではbibliometrics指標を安易に利用した研究評価,特に個人の研究業績評価が問題視されている。本稿は,引用データの活用を中心にこれを論じるものの,論文数を利用しても同様の問題は生じる。とはいえ,手法の限界を踏まえた上でbibliornetrics指標を利用するのであれば,それは研究評価に様々なメリットをもたらすことが期待できる。重要なのは,指標を使う際にデータの性質や手法の意味を理解して,適切な文脈で結果を解釈することである。
著者
菊池 隆
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.169-171, 2018

<p>鎌倉市図書館ツイッターでは,図書館の行事ばかりでなく,近隣の情報などもツイートするなどの工夫をしている。そのような中,平成27年8月,メッセージ性の高いツイートで全国的に認識されるようになった。それ自体は喜ばしいことではあるが,公的機関における情報発信には多方面への配慮が必要で,認知度の高いメッセージ性がある内容を発信することには限界がある。また,利用者の属性によってはSNS以外での情報発信が効果のある場合もある。制約のある中,いかに多くの市民,利用者に情報を見てもらうかが重要である。</p>