著者
堀 渡
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.65, no.9, pp.397-403, 2015-09-01 (Released:2017-04-13)

公共図書館で資料請求に応える予約サービスは,各館の蔵書蓄積と円滑な図書館間相互貸借がそれを支えている。現在,全国の県立図書館には県内蔵書を一括検索できる横断検索サイトが整備され,他館の所蔵調査が容易になっている。書庫の有限性からどの館でも除籍を日常化していかざるを得ない。除籍か保存かの判断に,他館蔵書を調べ,地域内の希少資料は互いに残し,提供のためタイトル維持を図る考えがある。県内の希少タイトルを集約し残そうとする幾つかの県立図書館の実践に注目したい。東京都多摩地域には市町村立図書館の中にそれをすすめる提案があり,支援するNPO法人の活動がある。NPO法人が研究してきた共同保存図書館の意義と可能性について。
著者
吉本 龍司
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.66, no.9, pp.452-456, 2016

<p>筆者が参加する「ディープライブラリー・プロジェクト」は,専門図書館の横断検索サービス実現に向けて活動してきた。このプロジェクトのコンセプトについて,主に技術的な視点からまとめるとともに,今後の可能性についても提案する。また,近年,専門図書館のアウトリーチの必要性が高まっているが,ウェブサービスを活用したアウトリーチの手法についても,図書館蔵書検索サイト「カーリル」を運営する立場から考察する。</p>
著者
佐藤 翔
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.115-121, 2016

近代の学術コミュニケーションを最も特徴づけているのは査読制度の存在である。しかし増大し続ける研究者数とその生産論文数に,査読制度は対応できておらず,限界を迎えつつある。その結果,従来から存在した,査読者による不正や査読者のバイアス等の問題に加え,近年では査読者の不足,詐称査読,投稿者による不正等の新たな問題が起きている。これらの問題に対応するため,Publons やポータブル査読,オープン査読,査読の質保障等の新たな取り組みが現れている。しかしこれらの延命措置によって査読制度を維持し続けることができるのか否かは現状,未知数である。
著者
青野 正太 余野 桃子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.12, pp.495-500, 2011-12-01 (Released:2017-04-20)
参考文献数
16

都立中央図書館で行っている,オンラインデータベースやインターネットを活用した利用者へのサポート事業として,1)オンラインデータベースの提供と検索講習会による利用者サービス,2)Eメールを活用したレファレンス事例,3)都・区市町村立図書館間協力レファレンス担当者会およびその担当者会でのアンケート集計結果である「都内公立図書館インターネット等サービス状況」を紹介する。さらに,「都内公立図書館インターネット等サービス状況」については,各自治体の導入するオンラインデータベースを中心に現状分析を行う。
著者
藤本 貴之
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.65, no.11, pp.450-456, 2015-11-01 (Released:2017-04-13)

情報をわかりやすく編集し,わかりやすく伝達する技術が注目を集めている。情報肥大化社会となっている今日においては,多くの情報がユーザに届くことなく埋没してしまう。そのため,情報それ自身よりも,「わかりやすさ」や「伝わりやすさ」ということが,その価値と有用性を決定する大きな要素になっている。つまり「情報の量」や「情報の質」よりも,むしろ「情報との関係」が大きな価値を生むようになっているのだ。どんな情報も,それがユーザに理解されず,届かなければ意味がないからだ。「情報との関係」に基づき,情報を分かりやすくするデザインである専門領域「情報デザイン」。本稿では「わかりやすさのデザイン」とも言われる情報デザインについて基本的な部分から解説する。
著者
三原 茂 高場 麻理
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.59, no.9, pp.431-437, 2009
参考文献数
3

読み書き同様,いまや一般的な行動様式の地位を獲得しつつある検索。その用途はインターネットサーチからEコマース,企業内検索まで多岐に亘り,求められる要件も本来様々である。一方,キーワードに依存した結果一覧を検索とするステレオタイプ視されている現実もある。エンタープライズサーチをインフォメーション・アクセスと位置付けるFASTは,従来のステレオタイプ検索から解放されることで,検索が本来の機能を発揮し,「人・物・情報」間をつなぐ基盤として幅広く応用されている多様な実例を紹介する。同時に,エンタープライズサーチが収益向上,業務効率の改善に貢献するためのポイントを解説する。
著者
寺本 大修 スガオ タカヒコ
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.12, pp.596-599, 2018-12-01 (Released:2018-12-01)

文理融合による実学教育のための拠点として開設されたアカデミックシアターには近大独自の図書分類「近大INDEX」を採用した「BIBLIOTHEATER(ビブリオシアター)」という図書空間がある。ここでは学生が図書と触れるきっかけを作る工夫としてAIを活用した書籍とのマッチングサービスを提供している。本サービスは利用者のSNS投稿分析と,書籍のタイトルや説明文の分析によって導き出されたスコアをもとに,関心度の高いと思われる書籍をおすすめするものである。利用者にとって意外性の高い書籍であるケースも多く,普段なら手に取らない「偶発的」な書籍との出会いを生み出すきっかけとなっている。
著者
相澤 彰子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.12, pp.574-579, 2018-12-01 (Released:2018-12-01)

学術論文の数が加速度的に増加する中で,研究活動に必要な最新の情報を逐一入手することは,もはや研究者の手に負えなくなってきている。人工知能は,このような問題への解決の糸口を与えるものと期待される。そこで本稿では,人工知能による学術情報の検索・理解支援に焦点をあてて,(1)大量の論文の中から関連論文を容易に見つけるための検索・推薦技術,(2)論文の内容を素早く的確に把握するためのキーワード抽出・自動要約技術,(3)論文に書かれた知識を抽出して活用するための言語解析・知識獲得技術などについて,現状と課題を概観する。
著者
渡辺 真希子 松村 有子 登坂 善四郎
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.196-199, 2018

<p>近年,医学学術雑誌や各種診療情報のデジタル化が進み,その利用環境は大きく変化している。本稿では,2013年から直近までの神奈川県立病院機構における医療情報の整備状況を報告し,病院における医学情報整備の課題を検討する。段階的にオンラインジャーナル等の契約改善に取り組んだ結果,オンラインジャーナルの契約誌数が約3倍に増加した。しかしながら,医師らへのアンケートでは,その満足度は十分とはいえない。その理由として一部を除いて,医学情報を管理する図書室は体系的に整備されていない。今後も価格高騰,病院向けの医学・学術情報の維持・管理,及びコンソーシアムを含めた包括的な議論が必要である。</p>
著者
杉浦 徳利
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.11, pp.559-565, 2018-11-01 (Released:2018-11-01)

インターネット書店の隆盛で,従来型の書店は淘汰の波にさらされている。一方で実空間の店舗ならではの“ぶらぶら歩き”による「思いがけない図書との出合い」を期待する声も根強い。図書との思わぬ出合いを促すような書店の設計を目標に据えつつ,書架のブラウジング実験を行った。見る,触れる,手に取る,読むのような図書への関与の行動の発生頻度と書架配置および図書の配架方法との関係について論じる。さらに機械学習の枠組みの一つである帰納論理プログラミングを用いて,特定の書架配置と配架方法に固有な,被験者の潜在的行動パターンを発見する試みについて紹介する。