著者
南山 泰之
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.1, 2020-01-01 (Released:2020-01-01)

2020年初の特集は「東京オリンピック1964-2020」です。今年は東京オリンピック・パラリンピックが大きな社会的テーマの一つとなることに疑いはなさそうです。ウェブ記事や新聞に留まらず,学術雑誌でも特集テーマが組まれるほど幅広い影響があり,弊誌でも本テーマを取り上げることになりました。本特集では進化する情報技術や標準化技術を用いた取り組みを中心に紹介しつつ,1964年東京オリンピックとの比較も随所に交えながら,多様な角度からオリンピック・パラリンピックに関わる情報へ光を当てていくことを企図しています。このような企画趣旨のもと,今回は5名の方々にご執筆をお願いしました。黒田優香氏(一般財団法人日本規格協会)からは,オリンピック・パラリンピックにおける案内用図記号の活用につきご紹介いただきました。松本祐一氏(東京都オリンピック・パラリンピック準備局)からは,オリンピック・パラリンピック期間における交通網のマネジメントに関する取り組みをご紹介いただきました。渡邉英徳氏(東京大学大学院情報学環)からは,デジタルアース・コンテンツ「東京五輪アーカイブ1964-2020」の制作と活用事例をご紹介いただきました。福嶋聖淳氏(国立国会図書館関西館)からは,国立国会図書館インターネット資料収集保存事業(WARP)によるオリンピック・パラリンピック関連サイト保存の取り組みを中心にご紹介いただきました。本橋充成氏(総務省情報通信政策課)からは,オリンピック・パラリンピックを背景に総務省が推進するICT化アクションプランにつきご紹介いただきました。オリンピック・パラリンピックを支える社会的/文化的なインフラに目を向けると,そこには本特集でご紹介するような思いがけない技術の粋が込められています。本特集が読者の皆様に新たな視点を提供し,東京オリンピック・パラリンピックをより楽しむための一助となることを期待します。(会誌編集担当委員:南山泰之(主査),今満亨崇,渋谷亮介,當舎夕希子)
著者
武田 英明
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.11, pp.441-446, 2011-11-01 (Released:2017-04-20)
参考文献数
7

インターネット時代において情報の同定のために識別子や典拠といったメタデータが重要になっている。本稿ではWebにおける情報の識別,構造化という問題を概観する。まず情報の識別にはWebで利用できる識別子が必要である。Webでの識別子はURIを持ち,関連情報を提供する仕組みが必要である。既存の識別子ではISBNはWeb上の識別子にならないが,DOIは該当する。情報の構造化には,キーワード・用語,統制語彙・典拠,タキソノミー,シソーラス,オントロジーと構造化の程度の違う仕組み(概念のシステム)が現在用いられている。統制語彙・典拠のレベルでは図書館からの件名標目や典拠の公開が盛んになっている。タキソノミーの例としては生物分類を挙げ,Webに適応する部分としない部分があることを指摘した。オントロジーとしては汎用な上位オントロジーや分子生物学で用いられるGene Ontologyなどを挙げた。全体的にはより構造化を強める方法へ進んでいる。今後は,識別子も概念のシステムもよりいっそう進み,競争が激しくなるであろう。
著者
山崎 久道 高橋 正美 原田 智子 藤田 節子 横山 亮一 吉野 敬子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.43, no.9, pp.824-842, 1993-09-01 (Released:2017-05-30)

シソーラスの評価をおもに,利用者の観点から行うための評価基準を開発した。これまでの,評価の試みや作成のガイドラインが,語の取扱いや表示に重点をおいているのに対して,情報源(おもにデータベース)と利用者との結節点としてシソーラスが機能しているかどうかの評価項目に重点をおいた。評価基準は,52項目からなり,1.シソーラスの作成方針と作成方法,2.シソーラスの仕様,3.語および語間の関係,4.シソーラスの表示,の4部分に大別される。評価基準を用いた評価の試行も行った。
著者
細野 公男
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.46, no.11, pp.606-612, 1996-11-01 (Released:2017-05-25)
参考文献数
5

文献電子化への流れ, テキスト処理技術の進歩, 情報提供における利用者志向は, 従来の索引作業の役割やあり方に大きな影響を及ぼしている。本論文ではこのような背景を踏まえて, まず付与索引・抽出索引, 主題検索の特徴を述べると共に, 各種のアバウトネスの概念および索引作業との関連を紹介した。続いて, 付与索引・抽出索引および主題検索が現在抱えている問題点を明らかにした。前者では主題概念の表現力の不備と利用者アバウトネスの欠落が, 後者では主題概念の表現力の不備が大きな問題である。さらに, 索引作業が効果的に機能するために今後考慮すべき要件として, 利用者アバウトネスの取り込みと自動索引手法の高度化の必要性を示した。
著者
渡邊 隆弘
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.11, pp.434-440, 2011-11-01 (Released:2017-04-20)
参考文献数
35
被引用文献数
1

図書館目録の集中機能を保障する典拠コントロールは,書誌コントロールの枠組みの見直しをはかる近年の議論の中でも,今後維持・強化していくべき機能としてとらえられている。また,次世代のウェブとして研究開発が続く「セマンティックウェブ」において,意味情報の共有を実現する「オントロジー」が重要な要素技術となっており,これには目録における典拠コントロールと相通じるところがある。本稿では,典拠コントロールの今日的位置づけ,名称典拠,主題典拠(および統制語彙)それぞれの最近の動向について整理するとともに,オントロジーについて典拠コントロールとの関わりも含めて述べる。
著者
岡田 英孝
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.12, pp.615-618, 2019-12-01 (Released:2019-12-01)

主要なテーマに対しシソーラス用語が付与されないケースがあるのか,クリニカルパス(以下パス)を事例として「日本クリニカルパス学会学術集会」の抄録を元に調査を行った。2001年から2017年に収載された抄録数7,720件中,シソーラス用語「クリティカルパス」が付与されない抄録は566件あり,その中で明らかにパスに関連しない抄録は265件だった。これら265件とパスに関連すると考えられる抄録に付与されたシソーラス用語を確認したが,両者で共通するシソーラス用語も多く両者を区別する明確な理由は見つけられなかった。パスに関連すると考えられる文献を漏れなく検索できるようにする明快な方法はないため,現状では検索手法の工夫で対応が求められる。
著者
桑原 明日香 山原 恵子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.12, pp.604-609, 2019-12-01 (Released:2019-12-01)

ライフサイエンス・臨床医学分野は,健康・医療をはじめ,食料,環境など広範な社会基盤の形成に寄与する分野である。これを支える科学技術について,1年間の俯瞰調査を実施し,2019年3月に報告書を発行した。調査によれば,最先端の機器による計測・分析で得られた大量の生命情報を定量化し活用する「データ駆動型」の研究が現在の潮流であり,今後もデータの取扱いがさらに大量化,複雑化すると考えられる。これに対応するには,高額な機器を共有しながら,数理・情報の研究者を巻き込み,各研究者からのデータ・情報を集約・統合するプラットフォームを作り,モデルベース解析を推進する体制を構築していくことが必要となる。
著者
宮下 哲 馬場 寿夫
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.12, pp.598-603, 2019-12-01 (Released:2019-12-01)

ナノテクノロジー・材料技術とは,現在のIoT/AI時代やビッグデータ時代の中で,高感度で信頼性の高いセンシング技術や高度な情報処理技術を支え,新たな技術や産業を牽引するデバイスや材料を実現する技術領域であると同時に,持続可能な開発目標(SDGs)を達成するために技術ベースで支えるものである。本稿では,ナノテクノロジー・材料分野の俯瞰として,主要国におけるナノテクノロジー・材料科学技術政策・国家戦略,社会・産業の変遷とナノテクノロジーの進化,研究開発のトレンド・潮流,俯瞰図,ナノテクノロジー・材料技術に対する6つのニーズと10のグランドチャレンジについて説明する。
著者
青木 孝
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.12, pp.593-597, 2019-12-01 (Released:2019-12-01)

システム・情報科学技術ユニットは,科学技術振興機構研究開発戦略センターで,情報処理関連技術(IT)全般を広く見ているユニットである。本稿では,2019年3月に発行した俯瞰報告書の作成プロセスについて述べる。社会の要請やビジョンと,技術のトレンドを元にITの研究開発領域を分類し,人工知能・ビッグデータ,ロボティクス,社会システム科学,コンピューティングアーキテクチャの4つの区分を俯瞰し,20の推進すべき重点テーマを抽出した。俯瞰報告書の執筆はシステム・情報科学技術ユニットのメンバーが行うが,外部有識者にインプットを依頼し,議論を繰り返すなどして,納得性の高いものを目指している。
著者
中村 亮二
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.12, pp.587-592, 2019-12-01 (Released:2019-12-01)

環境・エネルギー分野は人間社会の基盤として社会の発展を支えている分野である。気候変動をはじめとする様々な地球規模課題が深刻さを増す一方,持続可能な開発目標(SDGs)のような国際社会における取組みが本格化している。また各国・地域ごとのエネルギー安全保障や循環型経済の実現に向けた取組みも様々に見られる。本稿では,こうした社会経済情勢の中での同分野の研究開発動向の俯瞰について紹介する。具体的には俯瞰報告書の作成プロセスを紹介するとともに,26の研究開発領域の動向の概観や国内状況,また今後の展望・方向性としての「ZACSS(ザックス)」について紹介する。
著者
冨田 英美 原田 裕明
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.12, pp.581-586, 2019-12-01 (Released:2019-12-01)

JST研究開発戦略センター(CRDS)は,主要各国(日,米,英,独,仏,中,韓)およびEUの研究開発の動向を「研究開発の俯瞰報告書 主要国の研究開発戦略」としてまとめている。日本の研究開発にかかわる政策は,科学技術基本法のもと,科学技術基本計画,統合イノベーション戦略に沿って推進されている。公的な競争的研究資金の大型化,産学官連携や地域振興と連携した人材育成等が最近の特徴である。また,海外では卓越した科学技術を生み出し,いち早くイノベーションにつなげることを目標に,各国それぞれの戦略で重要技術分野(人工知能,量子科学)の研究開発を推進している。本稿では,日本,米国,EU,中国の動向を紹介する。
著者
根上 純子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.12, pp.576-580, 2019-12-01 (Released:2019-12-01)

JST研究開発戦略センター(CRDS)は,国の科学技術イノベーション政策に関する調査,分析,提案を中立的な立場に立って行う組織として,科学技術振興とイノベーション創出の先導役となるシンクタンクを目指し,国内外の社会や科学技術イノベーション,および関連政策の動向を俯瞰・分析し,それに基づいて政策や研究開発戦略の提言を行い,その実現に向けて取り組んでいる。「研究開発の俯瞰報告書」は,科学技術イノベーションや関連政策の動向を俯瞰・分析した結果を,CRDS独自の視点でまとめたものである。
著者
小野寺 夏生
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.12, pp.575, 2019-12-01 (Released:2019-12-01)

国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の研究開発戦略センター(CRDS)は,国の科学技術イノベーション政策に関する調査,分析,提案を中立的な立場に立って行う組織です。その中核的業務は,国内外の科学技術動向,その社会の動きとの関係,それらに関する政策の動向などを調査・分析し,その結果を報告書や提言の形に取りまとめて,行政,産業,研究等の世界での活用の推進を図ることです。その基盤となる国内外動向の調査・分析において,CRDSでは,調査対象の科学技術分野における研究開発の動きだけでなく,それを取り巻く環境や背景,社会の動向などを含めた広い視野で,すなわち「俯瞰的に」捉えることを重視しておられます。調査・分析結果をまとめた報告書の名も「研究開発の俯瞰報告書」となっています。CRDSは,国の科学技術振興とイノベーション創出を先導するシンクタンクを目指しておられるので,その調査結果の活用先として第一に念頭にあるのは,科学技術イノベーション政策の立案・実施に関わる府省や政府関連機関ですが,上に述べたとおり,産業界や研究界での活用推進にも努めておられます。当然,それらの世界で情報活動の推進に携わっておられるインフォプロの皆様にも関係のあることですので,第16回情報プロフェッショナルシンポジウム(INFPRO2019)の実行委員会は特別企画「科学技術イノベーションの潮流~研究開発の俯瞰から見えるもの~」を設け,「研究開発の俯瞰報告書(2019年)」についてCRDSの6名の方にご発表いただきました。そのときの参加者の関心が高く質疑も活溌でしたので,より多くの会員の皆様に読んでいただきたいと考え,CRDSの発表者に執筆をお願いしてこの小特集を組むことができました。この小特集は,全体説明(根上純子氏),主要国の研究開発戦略(冨田英美氏,原田裕明氏),環境・エネルギー分野の俯瞰(中村亮二氏),システム・情報科学技術分野の俯瞰(青木孝氏),ナノテクノロジー・材料分野の俯瞰(宮下哲氏,馬場寿夫氏),ライフサイエンス・臨床医学分野の俯瞰(桑原明日香氏,山原恵子氏)の6編からなります。これはINFOPRO2019での特別企画の構成と同様で,そのときの発表内容に基づいていますが,そこで十分説明されなかったことも含まれています。この小特集を読まれることにより,日本や世界における研究開発の大きな動向を掴むことができるだけでなく,情報の調査・分析・取りまとめ・報知の方法を考える上でも参考になると思います。(INFOSTA会誌経営委員会委員長 小野寺夏生)