著者
田山 淳
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.245-253, 2011
参考文献数
20
被引用文献数
2

本研究では若年者における携帯電話依存に着目し,心理的ストレス反応および登校行動との関連を検討することを目的とした.657名の高校生を対象に携帯電話依存とストレス反応についての質問紙調査を実施した.結果として,高校生の携帯電話依存は,ストレス反応を増悪させることが明らかになった.また,携帯電話依存によって増悪したストレス反応は,携帯電話依存を増強することも明らかになった.さらに,携帯電話依存度の高い高校生においては,登校行動不良が引き起こされることが示唆された.携帯電話は,若年者においても利用価値の高いツールの1つになっている.しかしながら,携帯電話依存は,さまざまな心理・行動レベルの異常を誘発する可能性がある.
著者
大田垣 洋子 米澤 治文 志和 資朗 斎藤 浩 中村 研
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.225-231, 2005
参考文献数
22
被引用文献数
1

摂食障害患者103例について自尊感情と摂食態度,感情状態,罹病期間,BMIとの関連をローゼンバーグの自尊感情尺度,EAT,BITE,POMSを用いて検討し,さらに病型間の自尊感情の比較を行った.摂食障害患者の自尊感情は,摂食態度や感情状態との関連を認めたが,罹病期間やBMIとの関連は認めなかった.また重回帰分析において,自尊感情と摂食態度との関連が確認された.病型間の比較では,ANではむちゃ食い/排出行動のある群,BNでは排出行動のない群で自尊感情が低かった.摂食障害の本質として自己同一性の確立を巡る葛藤があり,この葛藤をうまく解決できないため自立が困難となり自己評価が低下し,その無力感や絶望感を体重のコンロトールによって処理し達成感を得ようとしていることはよく知られている.自己評価の基準は一般的な社会の中でコンセンサスが得られている価値よりも,むしろ自分自身がもっている価値ないし理想とされる.
著者
柏木 哲夫
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.42, no.7, pp.441-447, 2002
参考文献数
11

ホスピス,ターミナルケア,緩和医療の3つは歴史的にも,その内容からしても多くの共通点を有している.近代的ホスピスは,一般病棟での「やり過ぎの医療」による苦痛に満ちた死への「アンチテーゼ」として登場したとみることもできる.ホスピスケアの内容が知られるようになるとともに,ターミナルケアのあり方が問われるようになってきた.一般病棟においても,苦痛の緩和を中心にしたhosoice mindedcareの重要性が認識されるようになってきた.さらに,末期癌のケアを中心に発達してきたホスピスでの経験を,癌のあらゆる段階へ,また,エイズ,心疾患,肝疾患,腎疾患,糖尿病,痴呆などへも広げ,苦痛の緩和を専門とする緩和医療という概念が注目されるようになってきた.
著者
芦原 睦 大平 泰子 佐田 彰見
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.111-118, 2005
参考文献数
9
被引用文献数
3

産業医からの紹介により当科を受診した症例および当科を受診した職場ストレス症例を対象として背景調査を行い, 心療内科の立場からみた職場ストレスについて検討した. 産業医からの紹介症例ではうつ病圏が最多であり, これらが職場において事例性が高いと推察された. またその研究より産業現場と臨床現場の役割分担が明確でなく, 連携が十分とはいいがたい状況が把握できた. 当科を受診した職場ストレス症例においても, うつ病圏が最も多くみられた. 発症要因となった職場のストレッサーで最も多かったのは"仕事の質"によるものであり, 職場ストレス症例のストレッサーは仕事の質によるものが多いことが把握しえた. 今後, 産業現場と臨床現場とが休職, 復職, 再発予防教育の点などで密接な連携を図り, 勤労者に対してストレス関連疾患の予防やメンタルヘルスに関する知識の普及啓発活動を推進していく必要性が考えられる.