1 0 0 0 OA 地域連携

著者
四宮 敏章 田原 一樹 中村 由美 金井 恵美 松村 勝代 松澤 未由紀 小林 絢 谷川 恵子
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.422-429, 2017 (Released:2017-05-01)
参考文献数
3
被引用文献数
2

心療内科医が中心となったがん診療・緩和ケアにおける地域連携の1例を示す. OPTIM-studyが示した 「顔の見える関係」 づくりを重点に置いたかかわりが重要である. 奈良県においては, 病院関係者, 地域医療を担う医療者, 患者団体, 県の担当者が対等の立場で話し合うことのできるさまざまな機会を作っている. また, 緩和ケアの質の向上を図るためには, PDCAなどを用いたアウトカムの評価も行う必要があり, その取り組みについても進めている.
著者
桑野 由紀
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.328-332, 2016 (Released:2016-04-01)
参考文献数
14

ストレス関連疾患の発症や病態には環境要因と遺伝子が相互に関与し, ストレス時に生じる遺伝子発現調節の破綻もその一因となる. マイクロRNA (miRNA) は, 遺伝子発現の転写後調節を担う20~25塩基ほどの小さな非コードRNA分子であり, 生体が外部環境から受けるストレス刺激に応答し, 恒常性の維持に関与することが報告されている. マイクロRNAはさまざまな組織に特異的に発現し, 唾液や血液などの体液中に安定して存在することから, がんや組織障害などの新たな疾患バイオマーカーとして注目されている. 中枢神経系においても, 神経新生やシナプス可塑性に必要な遺伝子の発現調節機構にかかわっていることが報告されている. したがって, ストレス反応やうつ病・統合失調症などの精神疾患の病態にも関与することが十分に考えられる. 本稿では, 近年明らかになってきた, マイクロRNAの作用機序と臨床医学への応用について解説する.
著者
野崎 剛弘 小牧 元 須藤 信行
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.134-141, 2016 (Released:2016-02-29)
参考文献数
6

日本糖尿病学会は, エビデンスに基づく糖尿病診療の推進を目的に, 『科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン』を発行している (初版は2004年, 最新版は2013年版). また, 同学会は上記ガイドラインをベースに, 最新の知見を糖尿病現場に幅広く普及させることを目的に, 『糖尿病治療ガイド』も発行している. 一方, 日本糖尿病療養指導士機構から『糖尿病療養指導ガイドブック』が発行されているが, これは糖尿病患者の心理・行動に関する記述に大きくページを割いている. 本稿では, これら糖尿病の診療ガイドラインの最新の内容を紹介するとともに, 糖尿病の心身医学的側面がガイドラインにおいてどのように位置づけをされているかを概説する.
著者
水野 資子
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.45, no.7, pp.503, 2005-07-01 (Released:2017-08-01)

目的:セロトニントランスポーター(5-HTT)の蛋白発現量と機能は5-HTT遺伝子の転写調節領域(SLC6A4)の遺伝多型によって調節される. 扁桃体を介した恐怖条件づけや日常生活におけるストレスに対する感受性に, この遺伝子多型が関与するという報告がある. 脳機能イメージングを用いた恐怖および怒りの表情認知課題において, 右扁桃体の賦活がSLC6A4遺伝子の"l/l"型に比し"s"アリルをもつ個体において強いことが報告された. 扁桃体と腹内側前頭前野(vmPFC)との間に存在する豊富な神経投射は情動の表出に関連するとされ, 大うつ病患者ではこの回路の過活動が報告されている. また, 前頭前野から扁桃体への伝達にセロトニン神経系が関与することが知られている. よって, セロトニン神経の伝達を調節するとされるトランスポーターの遺伝子多型が扁桃体-vmPFCの情報伝達を調節すると考えられる. 著者らは, トランスポーターの機能が低く, 気分障害や自殺企図との関連が報告される"s"アリル保持者で扁桃体とvmPFC間に強い連絡があると仮説づけ, これを検証した. 方法:対象は29名の健常男性である. 全員に5-HTT遺伝子の多型分析を行った. 課題には情動刺激として快, 不快の情動を想起させる写真を用いた, また, コントロールとしてneutralな写真を用いた. 課題遂行中の脳血流変化(BOLD)をfunctional MRIを用いて測定し, 遺伝子多型との関連性を検討した. 脳画像解析にはSPMを用いた. 結果:遺伝子解析の結果, s/s型9例, s/l型11例, l/l型9例であった. Friskらの報告と同様に, 不快または快刺激の提示時に扁桃体の活動がみられた. また, 不快刺激提示時にのみ右扁桃体と"s"アリルの相関がみられた. 一方, 快刺激提示時の扁桃体の賦活と遺伝子多型の相関はみられなかった. また, 扁桃体とvmPFCの局所血流量上昇の共変性が観測された. この共変性と遺伝子多型に相互作用がみられ, 左扁桃体と左vmPFCの共変性が"l/l"型の個体に比し"s"アリル保持者において強いことが明らかとなった. 考察:本研究は扁桃体-vmPFCの連合強度の5-HTT遺伝多型による差を証明した最初の報告である. 今回の結果は5-HTTの機能が負の感情形成に関与するという先行研究を支持した. また, "s"アリル保持者における不快刺激に対する高い過敏性を示唆した.
著者
檜垣 祐子
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.57, no.12, pp.1215-1220, 2017 (Released:2017-12-01)
参考文献数
23

皮膚疾患は社会生活のさまざまな場面に影響し, 患者のQOLを低下させる. 種々の皮膚疾患特異的QOL評価尺度を用いて, 成人患者のみならず, 小児患者のQOLや患者家族のQOLについても調査できるようになった. 皮膚疾患患者のQOLを考える場合, 皮膚特有のかゆみや, 否定的なボディイメージをもたらす外見の問題は必須の要素となる. 皮膚疾患が及ぼすQOLへの影響に関する研究はもとより, 治療のアウトカムの指標としてもQOLが重視されているが, いずれも臨床的に意味のあるQOLの変動であるかを考慮する必要がある. 近年では治療の費用対効果の指標にQALYが用いられている. 診療の現場では個々の患者のQOLを把握し, 治療に生かす視点が大切である.
著者
相良 洋子
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.49, no.11, pp.1163-1170, 2009-11-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
13
被引用文献数
1

月経随伴症状の代表的なものとして月経困難症と月経前症候群を取り上げ,一般的事項と心身医学的対応について概説した.月経困難症では,一般的な対処方法についての正しい情報を提供し,同時に月経を主体的にとらえる姿勢を養うことが重要である.器質的疾患がある場合には,それが患者のライフサイクルに与える影響をも視野に入れて対応する.また性的外傷体験をもっているような場合には,特に受容的態度が必要である.月経前症候群では,まず前向的な症状調査で正しく診断することが重要である.そのうえで,この症候群がbiopsychosocialなものであることを認識し,薬物療法と同時に患者の思考や行動パターンにもアプローチしていく.
著者
折津 政江 横山 英世 野崎 貞彦 村上 正人 桂 戴作
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.39, no.8, pp.595-602, 1999-12-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
14

心療内科受診者を対象に, ストレス耐性度チェックリスト(STCL)を施行した.信頼性分析のほか, 因子分析で得られた結果を第1報で報告した健常群で得られた結果と比較検討し, さらに判別分析を行った.平均得点は健常群より有意に低く, 判別分析では, 判別率77.8%で異なる群として有意に分けられた.因子分析では, 「明朗・積極性」「対人寛容性」「自己不確実性」「自己本位」「過緊張」の5因子が抽出された.ストレス耐性をストレッサーに対し, 調和的かつ適正に認知・評価し対処する機能と考えると, STCLはストレス耐性度をある程度推測することができるものと思われたが, より正確に測定するために, 追加すべき要因のほか, 対象の見直しやストレッサーやストレス反応との関連などの検討を重ねることが必要であろうと考えられた.
著者
鈴木 健二 武田 綾
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.53, no.7, pp.660-669, 2013
参考文献数
20

子どもをもつ摂食障害の女性患者が増加して,臨床でどう評価すべきかの課題が出ている.そこで摂食障害の患者の結婚,妊娠,出産,育児について,コントロールの女性と,面接調査による比較研究を行った.対象群は,筆者らが治療を行った子どもをもつ20名の摂食障害患者の女性で,コントロール群は子どもをもつ20名のボランティア女性であった.摂食障害の女性はコントロール群の女性と比較して,妊娠中も過食や嘔吐などの食行動異常は続くことが多く,妊娠で精神状態も悪化し,飲酒や喫煙が多かった.出産時異常に差はなかったが,産後うつ病が多く,育児期の精神状態も悪く,出産後に過食や嘔吐は増加し,子育て不安も強く,子どもへの虐待経験も多かった.また,結婚から出産後までの間に摂食障害が再発した者は30%存在した.結論として,摂食障害の患者は,食行動異常が回復しても,子どもの育児期間を含めての長期間のサポートの必要性があると考えられる.
著者
鈴木 健二 武田 綾
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.354-363, 2014

この研究は,先に発表した「摂食障害をもつ女性の結婚,妊娠,出産,育児についてコントロール群との比較研究」と同時に行った子どもの身体的,心理的,行動的障害についての研究報告であり,摂食障害の母親から生まれた子どもの日本で初めての本格的研究である.摂食障害の母親をもつ子ども30人と,コントロール群の子ども36人と発達上の問題を比較した.摂食障害の母親をもつ子どもは乳児期での発達の遅れが多く,3歳以降の排泄の問題をもち,被虐待経験も多くもっていた.摂食障害の母親のリスク因子との相関の分析では,妊娠中に喫煙した母親から生まれた子どもは生下時体重が低く,被虐待経験は,産後うつ病をもつ母親からが多かった.また妊娠中に激しい食行動異常をもっていた母親から生まれた子どもは脳に障害をもっていた.摂食障害が回復していない母親から生まれた子どもはハイリスクの状態にあると考えられるので,さまざまな専門家が協力して長期的なサポートを行う必要がある.
著者
大島 京子 末松 弘行 堀江 はるみ 吉内 一浩 志村 翠 野村 忍 和田 迪子 俵 里英子 中尾 睦宏 久保木 富房
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.315-324, 1996
参考文献数
16
被引用文献数
4

TEG第2版の臨床的応用の第一歩として, TEG第2版を用いて健常者群と患者群とを比較検討した。一定の判定基準からTEGプロフィールのパターンを判定し, それぞれの群のパターンの出現率をX2検定を用いて比較した。また, 2群のプロフィールの相違を数量的に把握するために, 多変量解析(変数選択法・正準判別分析)を行った。その結果, TEGパターンの出現率に差があり, 患者群に不適応的なパターンが多いこと, さらに5尺度のうちFCが最も2群の判別への関わりが大きいことなど, 2群の違いが有意に示された。以上により, TEG第2版が臨床上十分有用であることが確認された。
著者
菊池 良和
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.55, no.10, pp.1104-1110, 2015-10-01 (Released:2017-08-01)
被引用文献数
2

吃音症は古くから知られている疾患だが,周囲の大人や子どもから誤解されやすいだけではなく,専門家も考え方が180度方向転換している疾患である.過去の環境が原因という考え方は,近年の吃音の脳研究・遺伝子研究から否定され,本人の遺伝子・体質が原因だということがわかってきた.また,吃音があると,社交不安障害を発症するリスクが4倍も上昇することがわかっており,言語障害としての側面だけではなく,社交不安障害のアプローチが必要になってくる.そして,本人の努力不足からどもるのではなく,周囲の人に理解してもらえるように医師としての診断書を出して,吃音の啓発を行っていく必要がある.
著者
中井 吉英
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.301-307, 1999
参考文献数
7
被引用文献数
1