- 著者
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深尾 篤嗣
高松 順太
花房 俊昭
- 出版者
- 一般社団法人 日本心身医学会
- 雑誌
- 心身医学 (ISSN:03850307)
- 巻号頁・発行日
- vol.55, no.11, pp.1197-1207, 2015-11-01 (Released:2017-08-01)
背景:内分泌疾患における症状精神病の病態は,従来ホルモンの過不足を主因とするbiomedical modelの立場から考えられてきた.本稿では,甲状腺疾患,クッシング症候群を例にして,biopsychosocial medical modelからみたその実際について述べる.結果:近年の研究によって,バセドウ病,橋本病ともに合併する精神障害で多いのは抑うつ状態や不安障害であり,治療で甲状腺機能が正常化した後も残る例が多いことがわかってきた.また,筆者らはバセドウ病患者において,甲状腺機能正常化後に残る精神障害は心理的ストレスとの関連が強く,難治化要因になることを見い出した.一方,クッシング症候群ではうつ病との鑑別が問題となる.さらにSoninoらは,クッシング病の発症には心理的ストレスが関連していること,大うつ病像が術後再発の危険因子となることを報告している,本稿では筆者らが経験したうつ病との鑑別に苦慮したクッシング病の一例を提示する.結論:内分泌疾患における症状精神病はbiopsychosocial medical modelでとらえ直す必要がある.