著者
樋口 大夢
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.90, no.2, pp.262-272, 2023 (Released:2023-09-02)
参考文献数
27

本稿では、「人間は生まれてこないほうが良い」と主張する反出生主義に関するいくつかの議論の観点から教育(学)について検討を行った。反出生主義を前提とするとき、新たに生まれてくる存在に対する教育(学)からの応答は極めて重要となる。反出生主義に応答する教育(学)は、教育(学)のすべてが肯定あるいは否定される訳ではないということに自覚的でありつつ、思考することが求められるのである。こうした教育(学)の一端は、ハンナ・アレントの論じる「準備」としての教育にみることができるかもしれない。
著者
箕浦 康子
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.213-221, 1994-09-30 (Released:2009-01-13)
参考文献数
12
被引用文献数
1
著者
杉村 美紀
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.86, no.4, pp.524-536, 2019 (Released:2020-06-12)
被引用文献数
1

日本型教育の海外展開推進事業(EDU-Portニッポン)では、日本型教育モデルの輸出だけではなく、日本の教育経験の伝播と共有、そして協働というプロセスが重要である。そこでは、相手側のもつ社会的文脈やニーズ、文化の違いを、何をどう比較するか、何のために比較するかという比較教育研究の視点を持ちながら把握し、日本型教育モデルを柔軟に再構築することで、国際公益を生む国際公共財のモデルとすることが期待される。
著者
木村 優
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.76, no.1, pp.33-43, 2009-03-31 (Released:2017-11-28)

本研究の目的は、日常の授業で教師が行う自己開示について検討することであった。そこで中学校教師2名を対象に授業観察と面接調査を実施し、彼らが授業中に行う発話の内容分析を行った。その結果、(1)教師の自己開示には、情報、思考、経験、願望、に渡る内容の広がりがあり、特に生徒の成長に対する願望の開示を中心に他の開示内容が連続する様式的特徴が見出された。また、経験の開示に相当する発話内容が生徒と同年代時の体験で、そこには生徒に共感を示す機能が内在していた。(2)教師が自己開示を行う場面は道徳、学活の時間が主で、さらに、教師は生徒との関係形成初期に頻繁に自己開示を行っていた。これらの現象は、授業の目的の達成と、生徒が自己を率直に表現可能な開かれた関係を教室に構築することを目指す教師の目的、専門性に起因していた。以上より、教師は自己開示を授業方略の一つとして用いていたことが明らかとなった。
著者
杉下 奈美
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.554-566, 2007-12-28 (Released:2018-12-26)

コミュニカティブ・アプローチは1970年代以降、外国語教育における主流の教授法となっている。しかし近年、コミュニケーション能力を過度に重視する姿勢への懸念も高まっており、言語能力の捉え方についての再考が求められる。本稿では、このアプローチの理論的基盤となったデル・ハイムズによる「コミュニカティブ・コンピテンス」の概念を再検討し、外国語教育研究に包摂される思潮を考察した。その結果、従来の研究ではこの概念が学習者の能力としてではなく、学習の結果獲得すべき目標として捉えられてきたことが分かった。一方ハイムズにおいては、他者の発話を咀嚼しながら変容し続ける言語の能力に着目する概念であった。以上の考察を踏まえ外国語教育研究において、学習者がもつ能力に基づいて言語活動および文法教育の捉え方を再考すること、言語能力における文法的知識と社会的言語使用との関係を連続的に捉えることの必要性を提起した。
著者
広瀬 裕子
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.89, no.4, pp.526-538, 2022 (Released:2023-04-25)
参考文献数
36

少数派の親の意思をどのように位置づけるかという公私二元論問題抜きに性教育論争を理解することはできない。宗教が扱ってきた「性」、また近代社会が私的なことがらとした「性」を、公教育で積極的に扱うのが性教育だからだ。教育内容のみならず性教育の実施そのものに同意できない宗教関係者などからの批判が登場して性教育論争となる。本稿では、イギリス、アメリカおよび日本の性教育論争の特徴とこの論点への対処方法を整理した。
著者
相澤 真一 池田 大輝
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.89, no.4, pp.670-682, 2022 (Released:2023-04-25)
参考文献数
21

本稿では、PISA2018データを用いて、日本・韓国・イギリス・オーストラリアを比較しながら、各国の男女別学あるいは男女共学のなかでのいじめ反対意識の違いを分析した。分析の結果、男子の方がいじめ反対意識が低い傾向は4ヶ国で共通しており、日本の男子校男子・共学校男子はほかの3ヶ国と比較して有意にいじめ反対意識が低かった。交互作用項を用いた分析によって、日本の男子校男子では、社会経済的地位が高いほど、あるいは、数学的リテラシーが高いほど、いじめに反対しない傾向がみられることが示された。
著者
無藤 隆
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.393-400, 2003-09-30 (Released:2007-12-27)
参考文献数
13
被引用文献数
1

本論では,幼稚園・保育所(以下,「幼稚園」と総称する)における実践と,保育・幼児教育(以下,「保育」と総称する)の研究を巡って,その特質と現状を整理したい.ただし,第一に,日本の保育のあり方に即すること,第二に,その保育の実態と改善に資するということ,第三に,保育の研究の詳細ではなく,日本の保育を律しているであろう「原則」の抽出を目指すことを行いたい.
著者
中野 円佳
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.89, no.4, pp.716-728, 2022 (Released:2023-04-25)
参考文献数
31

本稿では、シンガポールにおける1990年代後半以降の学力競争緩和のための教育改革が、ミドルクラスの親子に新たなストレスをもたらしていることをインタビュー調査から明らかにした。親たちが他の親の動向を気にして塾に通わせ、将来の選抜や就労で有利になるとの解釈から習い事で実績作りを目指す背景には、より価値のある人的資本になるための教育投資を求める社会の在り方がある。
著者
今井 重孝
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.152-155, 1991-06-30 (Released:2009-01-13)
参考文献数
8
著者
猪股 大輝
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.90, no.2, pp.248-261, 2023 (Released:2023-09-02)

19世紀末から20世紀前半のアメリカにおいて、学校外の施設や街頭など様々な場所における遊びや仲間関係の中で普遍的に行われてきた生徒の自治活動を「学校内化」した課外活動が取り組まれるようになった。本稿は、この「学校内化」を実現したロジックを分析することで、課外活動成立過程を通貫する歴史的性格を考察し、これらの取り組みの影響下において今日も取り組まれる特別活動のあり方に対する示唆を提起した。
著者
梶川 萌
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.90, no.1, pp.1-12, 2023 (Released:2023-06-20)
参考文献数
21

本稿の目的は、測定の技術をめぐるジョン・デューイの洞察を手がかりに、そこで個性概念がどのようにとらえられているのかを明らかにすることである。デューイにおいて、個性と測定の技術とのかかわりは、知能テスト批判を契機として1920年代に問われ、産業化社会や物理学の発展等の社会状況を背景に1930年代を通じて考察が深められた。その際、個性概念の内実が多元性を有するものから予測されえなさの源へと変化したことが明らかとなった。