著者
平松 隆円
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.113-120, 2020

<p>本研究は,化粧行動を規定する化粧基準が,自意識や他者意識によってどのように規定されるかについて,日本人とタイ人で比較検討をおこなうことが目的である.タイ人男子61 名,タイ人女子239 名,日本人男子89 名,日本人女子112 名を対象に質問紙調査をおこなったところ,タイ人男子の化粧基準は公的自意識が規定要因となる可能性があることがわかった.また,タイ人女子の化粧基準は公的自意識,私的自意識,外的他者意識,内的他者意識,空想的他者意識が規定要因となる可能性があることがわかった.日本人男子の化粧基準は外的他者意識が規定要因となる可能性があることがわかった.また,日本人女子の化粧基準は私的自意識,外的他者意識,内的他者意識,空想的他者意識が規定要因となる可能性があることがわかった.</p>
著者
岡林 誠士 工藤 雅人 熊谷 伸子
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.59, no.7, pp.542-550, 2018-07-25 (Released:2018-07-25)
参考文献数
20

本論文では,身体装飾としてのタトゥーとピアスに着目し,2 つの目的を設定した.1 つ目は,若年層におけるタトゥーとピアスによる身体装飾のイメージを明らかにすることである.2 つ目は,これらを用いた他者の身体装飾への抵抗感を公共空間という視点から明らかにすることである.都内の大学生482 名に質問紙調査を実施した結果,以下の点が示唆された.タトゥーが持つ両価的なイメージのうち,ネガティブなものは確固としてあること.そして,それは公的自意識と関連する可能性がある.また,公共空間での他者のタトゥー・ピアスへの抵抗感は,肌の露出が一つの要因として挙げられること.但し,他者が外国人である場合,その捉え方は異なる可能性がある.以上を踏まえ,今後さらに継続的な議論を進めたい.
著者
平松 隆円 牛田 聡子
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.45, no.11, pp.847-854, 2004

大学生の化粧意識を規定する個人差要因を解明するため, 大学生378名を対象に質問紙調査を行った.その結果, 男性では, 外的他者意識が『魅力向上・気分高揚』を規定し, 女性では, 公的自意識が『魅力向上・気分高揚』を規定し, 外的他者意識が『魅力向上・気分高揚』『必需品・身だしなみ』を規定することが判明した.
著者
岡田 宣子
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.138-145, 1995-01-25 (Released:2010-09-30)
参考文献数
19
被引用文献数
2

表面電極を頭皮上のCZとC4'に置き, 体性感覚誘発電位の中・長潜時成分に着目して, 衣服圧の生体に及ぼす影響を検討した.被験者は成人女子4名で繰り返し実験を9回行った.鼻に装着したサーミスターから呼吸曲線をモニターし, 吸息相及び呼息相の終わりに近い時点でトリガーをかけ, 上肢正中神経を刺激した.なおウエスト位置に装着したカブの加圧量は, 官能検査の際被験者がきついと回答した約30mmHg程度である.刺激により生じた体性感覚誘発電位を128回平均加算して得られた波形から, 頂点潜時と頂点間振幅を求め, それらの平均値で検討した.1) 頂点潜時は体性感覚野により近いC4'がCZよりやや短い.2) 衣服圧の影響はC4'より上位にあるCZに, より強く生じていた.3) CZの頂点間振幅P2-N3は, 深吸圧>呼圧>吸圧の順であった.衣服圧と圧迫感覚値の検討結果では, 吸息相の方が加圧影響が強いが, 脳の活動レベルから考えると, 呼息相により強く加圧の影響が生じていた.
著者
川上 梅
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.298-308, 2016-04-25 (Released:2016-04-25)
参考文献数
19

男女高校生を対象として自己意識,化粧意識,化粧行動に関するアンケート調査を行い,自己意識と共に化粧行動が内面化して化粧意識に影響を及ぼすとの仮説を立て,因子分析及び重回帰分析により検討した結果,男女共に自己受容が高くなる程,「変容」「印象操作」などの高揚感を期待する化粧意識が強くなるという結果が得られた.また,男子では低充実感,女子では非自己実現的態度や否定的家族感情などの否定的評価が高くなる程,「必需品」としての化粧意識が強くなった.男子では,上記の両者が同一因子「変容・必需品」として抽出されたが,女子では「印象操作」と「必需品」は別の因子として抽出された.そして,化粧意識には,男子では化粧行動よりも自己意識のほうが,女子では自己意識よりも化粧行動のほうが大きく影響するという結果が得られた.
著者
神山 進
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.49, no.11, pp.777-792, 2008-11-25 (Released:2010-09-30)
参考文献数
8

人は絶えず自分に足りない部分を補おうとして, あるいは自分をいっそうランクアップさせようとして, つまり自分をさまざまに変身させるために, 多様な「物」や「こと」にお金を使って生活をしている.このような「変身行動と消費」の実態を, 自己受容の観点から大学生のような若者に関して明らかにすることが, 本調査の問題であった.主要な調査仮説は, 次の3つであった. (1) 自己受容と消費行動には一定の関係が存在するであろう. (2) 自己受容度が高いことによって促される消費行動の側面があるであろう. (3) 逆に, 自己受容度が低いことによって促される消費行動の側面もあるであろう.これらの仮説を検証するために, 質問紙調査を実施した.本調査を通して, 大学生のような若者に関して, 自己のさまざまな受容の水準や程度が日常の消費行動に影響している実態が明らかになった.また調査データの解析より, 3つの調査仮説のいずれもがおおむね支持された.さらに, 変身消費行動と現実自己, 理想自己の間にも明確な関連性が見出され, 特にさまざまな消費財が現実自己を理想自己に近づけるために用いられている実態が明示された.
著者
書上 誠之助 川端 春江 田口 米子
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.25, no.6, pp.301-307, 1984-06-25 (Released:2010-09-30)
参考文献数
3

服飾界において主要な地位を占めるようになったジーンズは, 素材生地としても興味ある要素を含んでいる.この中で綾線と撚線の関係について研究した.この結果, 原糸の撚とそのトルクが, 織物組織構成上主要な因子となることがわかった.なお組織の投影図がこの問題解明に役立った.
著者
松原 詩緒 須田 理恵
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.447-454, 2015-05-20 (Released:2017-11-28)
参考文献数
14

本研究は社会的規範と集団規範のずれにより起こる規範逸脱に対する,自己評価や感情について検討することを目的とした.大学生を対象に就職活動の面接を想像させ調査を行った.調査協力者は設定場面においてフォーマルなスーツとカジュアルなジーンズのいずれかを着用しており,周囲はそれとは逆の衣服を着用しているとした.想像後の不安や自己肯定感を測定したところ,面接時にスーツを着るという社会的規範を持つ者は,自身がカジュアルウェアであるときに自己評価の低下がみられた.一方,同様に規範意識を持つ者でも同調欲求や過剰適応傾向の高い場合は規範に対する正しさではなく,周囲からの逸脱により否定的感情や自己評価の低下がみられた.ここから,社会的規範に則していたとしても周囲から逸脱することで否定的変化がみられることが考えられた.
著者
山本 昭子
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.31, no.12, pp.579-584, 1990-12-25 (Released:2010-09-30)
参考文献数
7

女子学生 (18~23歳) 204名と, 女子高年層 (60~90歳) 218名について, 足部計測と併せて, 履物の着用実態と足の障害に関する調査を行なったが, 次の様な結果を得た.1) 日常最も着用頻度の高い履物は, 若年層では, 低ヒール革靴が68.1%, 中ヒール革靴が20.1%で両者で90%近くを占めるが, 高年層では, 低ヒール革靴が36.2%, 突掛け24.8%, 草履・下駄17.4%, 中ヒール革靴11.5%とバラエティーに富んでいる.2) 自称靴サイズと実測足長との差を実測足長あるいは実測足囲毎に分析すると, それらの差は, 足長の小さい者ほど大きく, また, 足長235mm以下では, 足囲の大きい者ほど大きい傾向がみられる.以上の傾向は若年層, 高年層共にみられるが, 全体に高年層の方がその差が大きい.それらのことから, (1) 足長が小さいか, あるいは大きい者は, それらのサイズが充分でないため, 実寸法より大きいかあるいは小さいサイズの靴を選択している. (2) 足長サイズ235mm迄のものは, 足長に合った靴を選ぶと, 靴の足囲サイズが小さすぎるため, 足長よりむしろ足囲サイズに適合する大きめの靴を選ぶ.しかし, 足長の大きいものは, 足囲の大小にかかわらずサイズが不足しているたあ, やむをえず小さめの靴を選択している. (3) 高年層は若年層に比べ足長が小さく幅広の足型傾向にあるため, 足長サイズは比較的充たされているが, 足囲サイズが不足しているため, 足囲に合わせて一層大きあのサイズを選んでいる.等のことが類推される.3) 靴に対して不満の有る者は, 若年層が86.3%, 高年層が64.2%であり, 不満の内容は, 靴幅および爪先が狭すぎる, が若年層, 高年層共に最も多く, 両者を平均すると83.5%になる.4) 靴着用による足傷のある者は若年層が75%, 高年層が47.2%であり, 足傷の最も出来やすい部位は, 中足骨頭部外側, 足裏趾付根部付近, 踵部, 趾表面, 趾裏面等である.5) 母趾角 (第1趾側角度) による趾の変形の度合は, 総合的には高年層より若年層の方が進んでいるが, 高年層の方は個人差が大きく, 変形が低度の者が多い反面, 外反母趾等高度の変形足も一部みうけられる.最後に, 今回の調査にご協力頂いた福岡市老人福祉センター東香園・長生園・舞鶴園の職員及び関係者各位に厚く御礼申し上げます.なお, この資料は, 本学被服構成学研究室の桜木真理, 東嶋朋美, 下川真由美, 金丸彰代諸嬢の卒業研究の一部を補足し, まとあたものである.
著者
小島 裕也 大矢 勝
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, pp.838-845, 2013-09-20 (Released:2017-09-14)
参考文献数
11

中国における消費者情報の動向を探るため,中国の美容・化粧品関連書籍の有害性記述表現について分析した.書籍中の有害性に関する記述表現を抽出し,有害性得点を指標として,書籍中の有害性表現を評価した.その際に得点の個人差を抑えるために「基準スケール」の作成を試み,これをもとに書籍の評価を行った.今回,5段階の整数で得点化する場合(整数評価)と小数点第一位まで得点化する場合(小数点評価),の2種の方法で評価を行った.調査の結果,整数評価と小数点評価では,同様の得点傾向を示したが,小数点評価のほうが正確な値が得られた.よって,小数点評価を書籍の有害性得点の結果として用いることにした.また抽出した全文章のうち8割以上の記述が有害性を強調する表現であった.界面活性剤について,書籍中では「皮膚の内部に浸透し,人体に危害を加える」といった表現や「ガンを引き起こす可能性がある」といった表現など,科学的な根拠の薄い情報によって有害性が強調されているものが見られた.以上から,中国における美容・化粧品関連書籍中の記述には科学的な根拠なく有害性を強調する表現が多く含まれていることが明らかとなった.