著者
竹内 外史
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, 1996-03-05
著者
Koikegami Shigeru Fujimoto Satoshi Yamada Kosaku
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
Journal of the Physical Society of Japan (ISSN:00319015)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.1438-1444, 1997-05-15
被引用文献数
14 56

The dressed d-electron Green's function of the d-p model is computed self-consistently based onthe fluctuation-exchange approximation. Using this Green's function and assuming the d.c .2synametry for the rnotnentum dependence of the gap ftrnction, we obtain the reasonable super-conducting transition temperature T. in the several cases where the d-(p-)hole number is close tothe experimental value of La).75Srg.z,jCuO,j based on NMR/NQR analyses. Using this Green'sfunction, we calctrlate the d-electron spin strsceptibility, which has very sharp incounrnensuratepeaks near T. for the low frequency as observed in neutron scattering data on L2lL1.86SI0.14CVlO4.The qtuasi-particle excitation spectrum in the normal state near T. is also obtained frorn thisGreen's function. The energy dispersion of quasi-particles near the Fermi level is alrnost flataround the (m/a,O) point. This electronic structure is due to many-body effects, rather thanbeing induced by band effects.
著者
宮原 ひろ子
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.340-346, 2015-05-05

2008年12月,太陽活動が約200年ぶりとも言われた太陽活動の低下を見せた.通常11年の周期で増減する太陽活動のリズムが乱れ,太陽表面での磁場活動や太陽総放射量が観測史上最低のレベルに達した.2009年1月に開始した第24太陽活動周期は2013年に極大を迎えたが,太陽表面の磁場活動の指標となる太陽黒点の数は,2001年の極大期の半分程度に低下した.太陽活動は今後どうなるのだろうか.17世紀の半ばから70年間にわたって発生した太陽活動の異常低下(マウンダー極小期)は再来するのだろうか.人工衛星による太陽観測と,樹木や氷床コアなどを使った長期的な太陽活動変動の復元の両面から研究が進められている.また,もしマウンダー極小期が再来するとすれば地球環境にどのような影響が出るのかも,社会にとって重要な問題である.こちらについては,気象観測と古気候学的な手法による研究から検証が進められている.太陽活動が地球に影響する経路はいくつか考えられる.日射量変動の影響,太陽紫外線の成層圏への影響,太陽宇宙線の中間圏への影響,そして銀河宇宙線の影響である.銀河宇宙線が気候に影響するプロセスは未解明な点が多いが,大気成分のイオン化を通じて雲活動に作用していると考えられている.1997年に銀河宇宙線と低層雲の被覆率に相関が見られるという驚くべき発表がなされて以来,その相関の検証や,チャンバー実験による物理プロセスの研究が進められている.地球に飛来する銀河宇宙線のフラックスは,宇宙線をシールドする太陽圏磁場や地磁気の強度などによって決まる.太陽圏とは,太陽表面から吹き出すプラズマと磁場の風(太陽風)が到達する領域のことである.太陽風は,太陽から約80天文単位(AU)のところで星間物質との相互作用により亜音速に減速し,最終的には太陽から120AUあたりにまで達していると考えられている.また,太陽圏の周辺の宇宙環境が変わっても,地球に飛来する宇宙線量は変化する.銀河宇宙線量の変動は本当に気候変動に影響するのだろうか.それについて1つの手がかりを与えているのは上述のマウンダー極小期である.太陽黒点が70年間にわたって消失している間,太陽圏環境が変化し,宇宙線フラックスが特異なパターンで変動していたことが明らかになったのである.その頃,地球は小氷期と呼ばれる寒冷化を経験しているが,実はその間,地球の気候は特徴的なパターンで変動を続けた.最近の研究で,その変動パターンが宇宙線の変動によって説明可能であることが示された.太陽圏を満たす磁場の大規模構造の変動によって宇宙線の変動パターンが決まり,そしてそれが気候変動を駆動する一要因になっている可能性が高いことが示されたのである.そのほか,地球史上のイベントと宇宙環境の変動に,強い相関関係があることも明らかになりつつある.地磁気強度と気候にも相関関係が見つかっている.宇宙線が雲活動に影響するプロセスは研究途上であるが,宇宙線は地球の変動に重大な役割を果たしている可能性が高い.地球は,大気,海洋,生物圏などのサブシステムから成る多圏複合システムで,それ自身複雑な内部振動を持つが,その気候システムを,太陽圏システムというさらに大きなくくりでとらえ直す必要性があることを示唆している.さらに言えば,太陽圏周辺の磁場環境あるいは放射線環境を含めた銀河系システムというさらに大きな視点での議論が必要であることも意味している.地球,太陽,太陽圏,宇宙線の物理を有機的に結び付け,地球史上の様々な未解明の変動を宇宙という視点でとらえ直すことで,その原因を究明することを目指しているのが「宇宙気候学」である.
著者
酒井 英行 齋藤 孝明
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.33-37, 2009-01-05

量子論の際立った特徴の一つに量子相関(もつれ合い,絡み合い)がある.アインシュタイン・ポドルスキー・ローゼン(EPR)は,古典的描像に基づく局所実在論の観点からこの量子相関に基づいた量子論の不完全性を議論した.この古典描像と量子描像の対立は,いわゆるEPRパラドックスとして知られるものであるが,当初実験的な検証は不可能だと考えられていた.しかし約30年後にベルは,局所実在論による相関に関して不等式が成立することを発見し,このパラドックスが実験的に検証できることを指摘した.我々は,強い相互作用をするフェルミ粒子系である陽子対についてスピン偏極相関の高精度測定に初めて成功し,量子論に特有な非局所性を確認した.本稿ではその内容について述べるとともに,1980年代に行われたアスペらによる光子対による実験との違いについても簡単に紹介する.
著者
中務 孝 江幡 修一郎
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.243-247, 2012-04-05

金属を極低温まで冷やすと電気抵抗が無くなる超伝導現象は,電子対が凝縮することで引き起こされる量子現象として有名である.重い原子核中の陽子・中性子も,対凝縮によって超流動性を示すことが知られている.超流動核に光子を吸収させたり他の原子核を衝突させると,原子核の形状や対ギャップに様々な変化が誘起されると考えられるが,このような核反応を核子自由度から記述する数値計算は,計算量が膨大で実用性に乏しいと考えられていた.最近開発された「正準基底時間依存平均場理論」は,この計算量を大幅に削減することに成功し,重い原子核の複雑な反応メカニズムの解明に向けた重要な一歩になると期待される.
著者
香取 秀俊
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.57, no.10, pp.754-758, 2002-10-05

現在の時間標準であるマイクロ波を基準とした光周波数の直接計測技術が確立した.この結果,クロック周波数が5桁高くより高い安定度が期待できる光領域の時間標準の実現や,それらの原子時計の時間揺らぎの評価が現実的な意義をもつようになった.本稿では,従来の単一イオントラップ光周波数標準と中性原子光周波数標準の特長を同時に実現可能な「光格子時計」のアイディアを,1次元光格子中のストロンチウム原子の分光実験を交えて紹介する.