著者
小沢 顕 鈴木 健 谷畑 勇夫
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.90-100, 2002-02-05
被引用文献数
1

相互作用断面積は,原子核の陽子数あるいは中性子数が反応で変化する過程に対する断面積であり,原子核の大きさに敏感な量である.相互作用断面積の測定は,不安定核ビーム(RIビーム)を用いた最初の実験として1980年代に行われ,以来,系統的な測定が行われている.相互作用断面積は比較的弱いビームでも測定が可能であり,近年のRIビーム生成分離技術の発展に伴い,酸素までの軽い原子核では,その測定は原子核の存在限界であるドリップ線に到達した.グラウバー模型により,相互作用断面積から平均自乗根核半径,核子密度分布が導出でき,さらには,最近の模型の発展により不安定核の殻構造に関する情報すら得られるようになった.ここでは,最近の相互作用断面積の測定の発展を振り返るとともに,測定結果が明らかにした不安定核の核構造について解説する.
著者
井田 大輔
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.238-244, 2007-04-05
被引用文献数
1

膜宇宙と呼ばれる時空モデルの出現とともに,プランクスケールよりずっと大きな余剰次元の存在可能性が指摘された.そのような巨視的な余剰次元をもつ時空においては,古典論的な高次元ブラックホールが登場人物として現れる.ブラックホールを通して,高次元の時空の理論のさまざまな側面が見えてくるであろう.しかし一方では,ブラックホールは時空の次元によってずいぶん性質が異なることがしだいに認識されるようになつた.このような高次元時空のブラックホールに関する最近の研究とその周辺の話題を紹介する.
著者
上野 健爾 稲見 武夫
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.43, no.10, pp.785-794, 1988-10-05
著者
九後 汰一郎
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.44, no.8, pp.593-599, 1989-08-05
著者
和田 純夫
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.393-400, 1989-06-05

水素原子を波動関数で表すということと同じレベルで, 時空やその中のすべての物質を含む宇宙全体を波動関数で表そうとするのが, 量子宇宙論である. 古典的な宇宙論では, 宇宙は big bang から始まった事になっているが, ほんとうに始まりを議論しようとすれば, どうしても量子論が必要になる. ここ数年, インフレーション宇宙というものの後に big bang が生じたという模型が議論されてきたが, これを量子論で考えようとしたのが, 最近の量子宇宙論の研究の直接の動機である. ここでは宇宙論的側面と, 付随して問題になる量子力学そのものの解釈論など原理的側面を含めて, 最近の発展を解説する.
著者
樋渡 保秋
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.62, no.10, pp.738-743, 2007-10-05

分子シミュレーションが最初に行われたのは今から50年前,アルダー(B. J. Alder)とウェインライト(T. E. Wain-wright)による剛体球系モデルの分子動力学シミュレーションである.ほぼ同時期にウッド(W. W. Wood)とヤコブソン(J. D. Jacobson)によって同じモデルのモンテカルロ・シミュレーションも行われた.これらのコンピュータ・シミュレーションがその後の分子シミュレーション研究を開花したことの意義は重要である.今日分子レベルのコンピュータシミュレーションの広がりは物理分野のみならず,化学は当然ながら,生物学,地球科学,工学,農学等々とその限界を知らない勢いである.分子シミュレーションのこの勢いは今後も続くのであろうか?