著者
松尾 泰
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.156-163, 2010-03-05

M理論とは,いくつかある超弦理論を統合し,最も単純で基本的な構造を持つと期待される理論である.最近M理論のブレーンが持つ内部対称性について大きな進展があり,これまで謎めいた力学系として知られていた南部括弧式との関連が明らかになってきた.重力との双対性の応用により低次元強結合系への応用も期待されている.
著者
土岐 博 佐藤 健次
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.11-18, 2013-01-05

現代ではほぼ全ての機器は電気を使っている.それらの電子機器は知らず知らずのうちに電磁ノイズを出しているし受けている.そのために我々の周りはノイズで満たされているし,自らで苦しめられてもいる.電磁気学が完成されて1世紀の年月が経っているにもかかわらず,電磁ノイズの取扱い法が確立していない所にその原因がある.加速器のノイズの削減に理論的に取り組んだことにより,新しい交流理論を得ることができた.電磁場の放出・吸収過程の理論(アンテナ理論)そのものは完成していたにもかかわらず,多導体伝送線路理論が不完全であったことで,交流理論に取り込むことができていなかった.このアンテナ過程を取り込んだ新しい交流回路理論にもとついて,3本線対称化回路の導入により電磁ノイズの影響を受けない電気回路の提唱を行う.
著者
黒田 和明
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.52, no.10, pp.752-758, 1997-10-05

万有引力定数は, 基礎物理定数の中で最も測定精度の低い定数である. その精度の改善は他の定数に比べるとひときわのんびりと進められてきたが, 3年前に三つの異なるグループから大きく食い違う結果が公表されて以来, 各地で測定への取り組みが活発化してきた. 現在の定数値に潜む誤差への著者の指摘も紹介しながら, この定数の素顔に迫る.
著者
川畑 有郷
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.256-263, 2000-04-05
被引用文献数
1

電気伝導は非平衡の現象の中では一番なじみのあるものであるが,それを扱う理論は完成されているとはいい難い.現在使われている電気伝導の基礎理論には,久保の理論とランダウアーの理論がある.これらの理論は,共に1957年に発表されながら,ランダウアーの理論がよく使われるようになったのはこの十数年のことで,いわゆるメゾスコピック系の研究が盛んになってからである.応用する対象に制限はあるが単純明快な公式を与えるランダウァーの理論を,複雑ではあるが汎用性のある久保の理論と比べながら解説し,今後どのような発展が必要であるかを考える.
著者
Rijken Thomas A. 山本 安夫
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.68, no.10, pp.662-669, 2013-10-05

ハイパー核物理(バリオン多体系)と核子-核子(NN)およびハイペロン(Y)-核子間相互作用(バリオン間相互作用)の研究の進展について,核物理,素粒子物理および天体物理にわたる展望のもとで述べられる.核力の一般化であるバリオン間相互作用の模型的研究は,1934年の湯川理論を起点とし,ハイパー核の実験的・理論的研究の成果を踏まえて進展した.NN, YN, YY相互作用と原子核・ハイパー核の研究が相互に関連しあうことによって発展してきたことが述べられる.
著者
十倉 好紀
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.49, no.8, pp.621-627, 1994-08-05

遷移金属酸化物が物性科学的に興味深い対象であることは,古くから認識されてはいたが,理論的な取扱が困難な強い電子間相互作用-電子相関効果-をあらわに考慮しなければならないこともあって,その電子物性の研究は半ば冬眠状態にあった.しかし,銅酸化物系高温超伝導の熱病を契機として,強相関電子系の物理の理解が進みはじめ,いまや「強相関電子」は物質科学のみならず,次々世代電子材料の可能性を語るうえでの,不可欠なキーワードとなりつつある.そのプロトタイプとしての3d遷移金属酸化物を例にとり,価数(電子数)制御によって出現するモット転移近傍の異常金属相の物性とその材料物理としての展開の可能性を探りたい.