著者
渡辺 元太郎 園田 英貴
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.350-355, 2007-05-05

超新星や中性子星といった高密度天体の内部には,棒状や板状に伸びた原子核-原子核パスタ-がどうやら存在しているようだ.最近我々が行った,量子分子動力学法によるシミュレーションは,重力崩壊による物質の圧縮や,中性子星の冷却の過程でパスタ相が実際に形成されることを予言している.本稿では,宇宙物理学的な背景を踏まえつつ,パスタ相研究の最近の進展として,我々の研究を紹介する.
著者
大平 徹 佐藤 讓
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.360-363, 2000-05-05
参考文献数
21

「ノイズ」と通信や相互作用の「遅れ」は多くのシステムに存在し,複雑な挙動を引き起こす.ここではそのような複雑な挙動の理解への一つの方向として,ノイズと遅れを用いた共鳴現象を示す単純なモデルを紹介する.その性質を調べることにより,情報処理系において通常障害と考えられている「ノイズ」と「遅れ」を活用する方向を模索する.
著者
岡本 拓司
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.55, no.7, pp.525-530, 2000-07-05
被引用文献数
1

1949年の湯川秀樹のノーベル物理学賞受賞は,敗戦後で占領下にあった日本に大きな希望をもたらした.これは日本人として初めての受賞であったが,実は1949年以前にも,被推薦者・推薦者などとして,何人かの日本人がノーベル物理学賞とかかわりをもっている.50年を経て,今年はじめには1949年のノーベル賞の選考資料が公開されたが,それ以前の年の選考資料と併せてこれを分析することにより,日本の物理学が国際的評価の対象となるまでの過程の一断面を描くことが可能になる.
著者
清野 健 勝山 智男
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.247-256, 2000-04-05
参考文献数
34
被引用文献数
1

蛇口からポタポタと落下する水滴.時計仕掛けと感じられる水滴落下のリズムにも,実際には多様なゆらぎが含まれ,そこには低次元カオスが確かに存在する.これまでに実験によってカオス力学系としての多くの興味深い現象が確認されてきたが,それを生み出す水滴形成の物理とのつながりには多くの謎が残されていた.だが,最近行われた実験と流体力学的数値シミュレーションによって,系の力学的構造がしだいに明らかになってきた.さらに,これらの知見に基づいたバネのモデルは,系の多様な振舞に一次元離散力学系としての統一した説明を与えることを可能にした.最近の研究に基づき,水滴落下系の長時間挙動とその力学的構造について概説する.
著者
吉田 滋
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.358-361, 2004-06-05
被引用文献数
1

高エネルギー宇宙を探査する新たな窓としてニュートリノ放射を検出するアイデアが現実味を帯びてきた.頻度が極めて低いと予想される高エネルギーニュートリノを莫大な宇宙線雑音の中から拾い出す安価な大容量衝突標的として,南極大陸の氷河が適していることが分かってきたからである.検出に必要な1km^3 の標的容量を持つIceCube実験が日米欧の国際共同実験として本年度から建設が始まる.本稿では高エネルギーニュートリノ検出の意義とIceCube実験の概観を南極現地の経験も踏まえて報告する.
著者
高橋 秀俊 小林 謙二
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.179-194, 1985-03-05

「人間にとってふさわしい研究は人間である」 (The proper study of mankind is man) と英国の詩人アレキサンダー・ポープは言っているが, 科学の窮極の目的の一つは矢張り, 思惟する能力をもつ「人間」というものを理解することであると言えるのかも知れない. 科学も所詮は「人間」が作り上げた文化の一形態であり, 「人間」なしには科学も存在し得なかったのである. その意味で, 教科書の中の科学だけではなく, 実際に研究に従事した科学者の語るなまの「人間の言葉」も聞いてみる価値が大いにあろうかと思われる. 1977年が日本物理学会創立100年にあたることを記念して, 『日本の物理学史』(上)-歴史・回想編-; (下)-資料編-が日本物理学会編集により1978年に東海大学出版会から発行され, 日本の物理学界の指導的立場にあり, すぐれた業績をあげられた先生方の回想録が収められている. 物性理論に関連したものとしては, 久保亮五先生の「日本における統計力学の成立」, 永宮健夫先生の「物性論の発展のなかで」, 伏見康治先生の「日本における物理学の成立」という大変興味深い回想録があり, 我が国における物性理論の発展の様子を可成りの所まで窺い知ることができるが, 十分とは言えないように思われる. そこで, 上記の回想録を補足するという意図も含めて会誌の編集委員の末席につらなる小林謙二が幾人かの物理学者にインタビーーし, 「我が国における物性論の草創時代」というテーマで, 御自身の研究の動機や当時の物理学者群像などを回想して頂き, ここにまとめた次第である. 1回目として, 我が国における物性論の草創時代 (1940年代) に活躍された東京大学名誉教授で慶応大学客員教授でもある高橋秀俊先生 (1962年度と1967年度の日本物理学会会長で, 1980年度の文化功労者にも選ばれている) の回想談をしるすことにしよう. 何分にもインタビュアーの非才のために質問の拙なさから重複するところがあったり, 余り意を尽していないような所もあるかとも思われるが, その段は読者諸賢の御海容をたまわりたい.
著者
黒岩 大助
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.31, no.10, pp.756-764, 1976-10-05

日本における雪氷研究の先駆者であった故中谷宇吉郎の仕事が, この国の雪氷学の発展にどのような影響をあたえてきたかについて解説した. 中谷宇吉郎は外国の著名な学者の研究をいち速く日本でまねることによって安心する学者ではなく, また, 物理学の主流から外れているようでも常に独創的な分野を開拓した学者である. 来日する外国の雪氷学者はこの国の雪氷研究者の数の多いのに一様に驚く. そして日本の雷氷学はもう中谷の名前を知らない若い世代によってすすめられようとしている. この一文は物理学を志す若い人々に雪氷の研究はもはや "探検" というロマンの時代は終り, 近代物理学の研究対象としても十分面白いものであることを理解していただけることを期待して書いた.
著者
古澤 明
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.60, no.12, pp.957-959, 2005-12-05
参考文献数
7
被引用文献数
1

近年, 「量子テレポーテーション」という言葉を聞いたことがある人は多いと思う.ただ, 「テレポーテーション」という言葉のSF的な響きが影響して, あまり物理の話とは思っていなかった人が多いと思う.本稿では, できるだけ多くの人に, 量子テレポーテーションがどのようなものであるか認識してもらうことを目指している.特に量子テレポーテーションの検証である量子エンタングルメントのテレポーテーションについて詳しく述べる.