著者
山崎 大輔 鱸 俊朗 山本 哲章
出版者
中部日本整形外科災害外科学会
雑誌
中部日本整形外科災害外科学会学術集会 抄録集
巻号頁・発行日
vol.105, pp.171, 2005

【目的】滑膜性軟骨腫症は主に関節内に多発性に遊離体を生じる疾患であるが、骨化病変がないため単純X線所見に乏しく、診断に難渋することも稀ではない。今回我々は膝関節における滑膜性軟骨腫症を経験したので報告する。【症例】31歳男性。半年前より右膝関節痛が出現していた。平成17年1月に卓球の試合をした後より疼痛が増強し、近医を受診し、数回の関節穿刺を受けたが、関節水腫と疼痛が継続するために精査目的に平成17年2月23日に当院紹介となった。初診時に関節可動制限があり、関節穿刺にて約60ccの黄色透明の関節水腫を認めた。単純X線像では異常所見は無く、MRIにて関節内に複数の遊離体像を認めていた。3月11日に関節鏡を施行した。関節内ではびまん性に滑膜の増殖があり、その表層と関節内に1_から_3mm前後の小遊離体を数十個程度認めていた。これらを切除、摘出し洗い流した。病理所見では分葉状、結節状の軟骨組織が多数認められていた。術後より関節水腫は消失し、疼痛も軽減し経過良好である。【考察】滑膜性軟骨腫の成因は感染説、外傷説、腫瘍説などが主張されてきたが、現在は滑膜の軟骨化生によるものとする説が有力である。本例では滑膜での軟骨化成像は得られておらず、採取された遊離体内に骨成分も無かった。治療は一般的に鏡視下での遊離体摘出と、明らかな滑膜病巣の切除が行われている。本例でも同様の処置を行ったが、追跡期間が短いため、再発に関して今後も経過観察を要すると考える。
著者
守屋 円 児島 新 飯田 寛和
出版者
中部日本整形外科災害外科学会
雑誌
中部日本整形外科災害外科学会雑誌 (ISSN:00089443)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.1071-1074, 2009-09-01
参考文献数
9

寛解傾向があり圧痕浮腫を伴う血清反応陰性対称性滑膜炎症候群Remitting seronegative symmetrical synovitis with pitting edema(RS3PE)は, 1)きわめて突然の発症, 2)両側性対称性の滑膜炎であり, 著明な圧痕浮腫を伴う手首, 手根骨, 屈筋腱鞘に好発する対称性の滑膜炎(グローブ様の手), 3)男性で60歳以上に優位に発症, 4)リウマチ因子が一貫して陰性, の特徴を有する. 今回私たちは上記のRS3PEの診断基準をほぼ満たす症例に遭遇した. 本症例は高度の屈筋滑膜腱鞘炎のためソーセージ様外観の指を呈した. 外科的治療法として腱鞘滑膜切除術, 腱剥離術を施行した. 腱鞘滑膜炎についての肉眼的, 所見は特徴があった. 腱鞘周囲の軟部組織の浮腫が高度であることなど典型的リウマチの所見とは明らかに異なっていた. 術後, 屈筋腱鞘へのステロイド注入と作業療法との併用により徐々に可動限が改善され患者の満足できる結果が得られた. <br>
著者
廣藤 真司 岡本 雅雄 瀧川 直秀 川島 啓誠 金 明博
出版者
中部日本整形外科災害外科学会
雑誌
中部日本整形外科災害外科学会学術集会 抄録集
巻号頁・発行日
vol.105, pp.385, 2005

【目的】頭頚移行部での外傷は致死的となるものが多く、生存例であっても重症頭部外傷の合併により見過されやすい.今回、生存し得た後頭環椎関節と環軸関節の亜脱臼を呈する外傷性頭頚移行部不安定症の1例を経験したので報告する.【症例】64歳、男性.自転車走行中、オートバイと衝突し3m下に転落し受傷した.搬送時、意識レベルはJCS10、vital signは安定していたが、呼吸はいびき様であった.四肢麻痺は認めなかった.合併損傷としてびまん性軸索損傷、両側多発性肋骨々折ならびに両側血胸を認めた.単純X線では、環椎軸椎間は後弓間距離が開大しADIのV-gapを呈していたが水平・垂直脱臼は認めなかった.CTでは後頭環椎関節前方亜脱臼と環軸関節亜脱臼、後咽頭腔と後方軟部組織の腫脹を認めた.MRIでは後咽頭腔と後方軟部組織に広範なT1低、T2高の輝度変化を認めたが、脊髄・脳幹部には明らかな輝度変化はなかった.受傷後2日目にハローベスト装着、21日目に後頭骨軸椎間固定術を施行.術後4カ月の現在、廃用性筋力低下に対し歩行訓練中である.【考察】本症例は搬送直後に頭頸部のCT撮影により早期診断が行え、適切な処置が可能であった.全経過を通して麻痺症状の発現を認めなかった.後頭環椎関節と環軸関節の亜脱臼の合併例は報告がなく、極めて稀な外傷と考えられる.本症例の受傷機転は、後頭環椎関節の前方亜脱臼と後方が開大する環軸関節亜脱臼の形態からは屈曲伸展損傷と推察された.
著者
市川 徳和 板寺 英一 山川 晴吾 橋詰 博行 井上 一
出版者
中部日本整形外科災害外科学会
雑誌
中部日本整形外科災害外科学会雑誌 (ISSN:00089443)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.1-6, 1999

現在まで五十肩(凍結肩)における病理学的報告は少ない。今回五十肩の病態を明らかにするために,関節鏡を使用して関節内の変化を検索し生検により滑膜の病理所見を検討した。対象は14例15肩で,年齢は平均56歳であった。罹病期間は平均5.6カ月,日整会肩関節疾患治療成績判定基準(以下JOA score)は平均51点であった。関節鏡視所見として五十肩では前方関節唇は軽度の摩耗までで関節構成体の変化は少なかった。滑膜は発赤し易出血性であり,上関節腔や肩甲下筋腱嚢付近で増殖していた。五十肩ではほとんどの症例で関節腔が狭く鏡視が困難であった。関節内滑膜の病理所見として血管増生は強く炎症細胞浸潤は軽度であった。また血管の拡張を伴いその中に血液のうっ滞が認められた。以上より五十肩は関節腔の狭小を伴い,関節腔内ではうっ血を特徴とする循環不全の存否が確認できた。
著者
庭田 満之
出版者
中部日本整形外科災害外科学会
雑誌
中部日本整形外科災害外科学会学術集会 抄録集 第105回中部日本整形外科災害外科学会
巻号頁・発行日
pp.383, 2005 (Released:2007-07-10)

(目的)肋骨骨折の胸部合併症として通常は胸部単純Xp像で気胸の確認だけとなるが、単純Xp像ではわかりにくいものも多いため、今回その頻度や傾向について検討した.(対象と方法)平成17年1月から5月までに、肋骨骨折と診断された51例(男性27例、女性24例)を対象とした.全例にCT検査を施行し、胸部合併症について検討した.(結果)受傷機転は交通事故6例、高所からの転落7例、転倒31例、他7例であった.全症例中で合併症を有する症例は16例(31%)であった.血胸・気胸を12例に認め、5例に胸腔ドレーンを留置した.肋骨以外の骨折を9例、皮下気腫を1例に認めた.交通事故や高所からの転落で受傷した13例中10例(77%)に合併症を認め、7例では血胸や気胸を、8例で肋骨以外の骨折を合併していた.軽微な外傷で受傷した38例中、合併症を有していた症例は6例(16%)であった.5例で血・気胸を認め、1例で肩甲骨骨折を認めた.血胸気胸の12例において、単純Xpで異常所見を認めたものは7例のみで、3例はCT検査で肺挫傷や血胸が判明した.また2例ではCTでも異常所見がなく、経過中に血胸が出現した.肋骨骨折では単純Xpのみでは異常がわからないことも多く、特に、交通事故などでは必ず施行する必要があると考えられた.(まとめ)肋骨骨折の症例では受傷時のCT検査が必須で、血胸などは経過とともに出現することがあり、注意深い経過観察が必要である.
著者
辻 秀一郎 濱田 一壽 山中 芳
出版者
中部日本整形外科災害外科学会
雑誌
中部日本整形外科災害外科学会雑誌 (ISSN:00089443)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.597-599, 2008

当院にて, 2001年6月~2005年7月に加療し6ヵ月以上経過追跡可能であった鎖骨遠位端骨折のうち, 手術を施行したCraig分類typeⅡa, Ⅱb計25例の成績を検討した. 内固定の内訳は肩鎖関節プレート15例, スコーピオンプレート10例である. 調査項目はX線評価, 臨床評価(JOA score)を用いた. 全例で骨癒合が得られ, 臨床成績はJOA score 65点満点中平均60.9点と良好であった. 最終診察時X線像で肩鎖関節亜脱臼を4例に認め, そのうち3例に肩鎖関節部に運動時痛を認めた. これらの障害はスコーピオンプレート使用例に多く発生していた. <br>
著者
橋本 亮治 高見 勝次 田中 博之 松村 昭 野口 和子
出版者
中部日本整形外科災害外科学会
雑誌
中部日本整形外科災害外科学会学術集会 抄録集
巻号頁・発行日
vol.105, pp.262, 2005

長管骨転移性骨腫瘍の治療で整形外科医が実際に携わるのは、病的骨折を起こしてからが多い。骨折により、疼痛、上下肢の著しい機能障害などを引き起こすが、一般骨折と異なり予後や原発腫瘍の病態などにより積極的治療を躊躇することがしばしば起こる。治療の方法として手術は医療側にとってもリスクは大きいが、早期に強固な固定により疼痛の緩和を図り、QOLの改善とADLの維持を求めることは、患者側での治療の満足度を決して低くするものではないと考える。今回1998年から2005年に当科で手術を行った四肢長管骨転移性骨腫瘍について、原発巣、転移部位、病的骨折の有無、インフォームドコンセント、手術方法、疼痛緩和、予後などを中心に検討をおこなった。症例は12名(男7名、女5名)で年齢は39歳から86歳までであった。原発巣(重複癌を含む)は、肺癌5名、肝細胞癌2名、乳癌2名、腎癌1名、前立腺癌1名、中咽頭癌1名、胆嚢癌1名で、病的骨折は10名に認めた。手術は本人の最終決断によることが多く、手術方法としては、1例(人工骨頭使用)を除く11例に髄内釘による固定を実施した。髄内釘は侵襲が少なく固定力が強固なため、上肢では早期からの症状緩和が図られ、下肢では早期の動作訓練が可能であった。以上の結果も踏まえ当科での四肢長管骨転移性骨腫瘍の治療方針についても考察する。