著者
徐 静波
出版者
京都大学大学院教育学研究科生涯教育学講座
雑誌
京都大学生涯教育学・図書館情報学研究 (ISSN:13471562)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.153-163, 2011-03

秦の時代までは、茶というものはすでに中国の南西地方で食され、また飲用されていた。漢 の時代以後は次第に四川あたりから長江の中流や下流流域に広がり、薬用価値のある食べもの あるいは飲みものとみなされ、惰や唐の時代(約紀元6世紀前後)から、お茶を飲む文化が次 第に全国に広がり、お茶は最も重要な非アルコール飲料としての地位が中国で正式に確立した。 中国から日本に伝来した初期のお茶文化は、凡そ平安時代前期(9世紀前後)の頃に、半世紀 にわたって滅んでしまい、一般社会に定着できなかった。その理由としては、遣唐使廃止によっ て中国大陸とのつながりが薄くなったこと、初期に伝来したお茶の文化の広がる範囲が極めて 狭かったこと、日本人がそれを能動的、創造的に改造する努力が十分でなかったこと、唐代の 餅茶の製茶工程の繁雑さなどが挙げられる。
著者
山口 源治郎
出版者
京都大学大学院教育学研究科生涯教育学講座
雑誌
京都大学生涯教育学・図書館情報学研究 (ISSN:13471562)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.73-80, 2007-03-31

日本の公立図書館は、1990年代以降、激しい変化と矛盾の中にある。図書館サービスのアウトソーシング、職員の非正規化など新自由主義的改革手法の図書館経営への導入が推進されており、公立図書館の公共性と専門性の劣化が急速に進行している。他方、人々の図書館への要求は質と量の両面において高まっており、新自由主義的改革との矛盾を激化させている。本論文はこうした日本の公共図書館の現況と課題を明らかにする。
著者
赤上 裕幸
出版者
京都大学大学院教育学研究科生涯教育学講座
雑誌
京都大学生涯教育学・図書館情報学研究 (ISSN:13471562)
巻号頁・発行日
no.6, pp.43-52, 2007-03

GHQ(General Headquarters、連合国総司令部)による占領期から特にその終結期にかけて「戦後反戦映画」が多数作られ、興行的にも大きな成功を収めている。1950年の『また逢う目まで』、『暁の脱走』、『きけわだつみの声』、1953年の『ひめゆりの塔』、『君の名は(第1・2部)』、1954年の『二十四の瞳』、『君の名は(第3部)』などがそれにあたる。 これらの反戦映画が、戦時中の映画体制との関わりの中で語られることはほとんどない。しかし、戦意高揚映画が多数作られ戦争に邁進していった戦中と、反戦映画が多数作られ平和国家建設に邁進していった戦後と、一体どれほどの違いがあるというのだろうか。近年のメディア史研究においては、戦前戦後の間に「断絶」ではなく「連続性」が存在すること、すなわち戦後のマス・コミュニケーション学のパラダイムが、戦中の総力戦体制に由来するということが指摘されている。 本論文では、この「総力戦の継続」という視点に着目し、占領期を中心とした時期(1945年~54年)を「戦後総力戦体制」と定義し、戦中も含めたメディア史の流れの中で、いかに「戦後反戦映画」を位置付けることができるかに重点をおいて分析していく。