著者
斎藤 豊
出版者
公益社団法人 日本地すべり学会
雑誌
地すべり (ISSN:02852926)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.1-5, 1982
被引用文献数
1

The Obasute debris flow deposits, distributed in the Obasute area of Koshoku City, are produced by mass movements from older debris deposits. The older debris deposits form the depositional plane which ranges in altitude from 750 to 850 meters above sea level. Based on the stratigraphical relationship with the Omachi tephras distributed in this area, it is evidented that the age of older debris deposits is estimated as about 100, 000 years before present. The ages of the Obasute debris flow deposits were determined as 13, 500±460 yr. B.P. and 3, 250±260 yr. B.P. by radiocarbon dating. The fact indicates that the intermittent occurrences of twice mass movements are distinguished among the Obasute debris flow deposits.
著者
伊藤 孝 村尾 英彦 酒井 英男
出版者
公益社団法人 日本地すべり学会
雑誌
日本地すべり学会誌 (ISSN:13483986)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.264-272, 2019 (Released:2019-10-09)
参考文献数
7

すべり方向は大規模な地すべりの移動方向を解釈するための鍵である。一般的には, すべり方向はすべり面の条線, あるいは粒子配列から測定されてきた。しかし, 地すべりからすべり方向を解読することは依然として容易ではない。本研究では, リングせん断試験の試料を用いた岩石磁気測定からすべり方向を測定するための迅速な方法を示す。 せん断試験を行った供試体から採取した試料では, 帯磁率異方性の最大軸はせん断方向である円型供試体の接線方向を向き, せん断試験を行っていない供試体試料の最大軸が一定方向にそろっているのとは明らかに違っていた。残留磁化の方向も, せん断試験を行った多くの試料では, せん断方向である円型供試体の接線に近い方向を向き, 帯磁率異方性の測定結果と同様な結果が得られた。これらの結果は, リングせん断試験により供試体の磁性粒子が円周方向に配列したことを示している。本研究は, 磁気特性からすべり運動の方向を再現できる可能性があることを示している。
著者
小野 尚哉 江藤 史哉 島田 徹 笹原 克夫 桜井 亘 鷲尾 洋一
出版者
公益社団法人 日本地すべり学会
雑誌
日本地すべり学会誌 (ISSN:13483986)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.179-186, 2014 (Released:2014-11-05)
参考文献数
17
被引用文献数
1 1

平成23年台風第6号に伴う豪雨によって発生した深層崩壊について,その発生場の地形・地質的特徴を整理し考察を行った。まず深層崩壊発生箇所とその周辺の微地形について,航空レーザ測量データを基に地形判読を行い抽出した。この地形判読を行った範囲に対して地表踏査を実施し,地形・地質と変状を記載した。その結果,小島地区の深層崩壊は,山頂緩斜面下方の岩盤クリープ地形が分布し侵食前線が位置するエリアで生じており,付近には褶曲や断層などの劣化帯が分布していることが判った。また,付加帯である四万十南帯の砂岩泥岩互層が分布する小島地区とその周辺においては,深層崩壊跡地などの大規模斜面変動地形が広く,かつ数多く確認され,層理面構造が流れ盤となっていないものの,節理等の亀裂系の発達等により岩盤の緩みが進行した範囲で生じていることが判った。
著者
八木 浩司 丸井 英明 Allahbuksh Kausar Shablis Sherwali
出版者
公益社団法人 日本地すべり学会
雑誌
日本地すべり学会誌 (ISSN:13483986)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.335-340, 2010-11-25 (Released:2011-09-22)
参考文献数
9
被引用文献数
1

パキスタン北部を流れるフンザ川右岸のアッタバードにおいて2010年1月初旬に幅1000m, 比高1000m, 斜面長1500mの規模で地すべりが発生し, 約4000万立方mの移動土塊がフンザ川河谷をせき止めた。移動体は, 青灰色細粒物質をマトリックスとした長軸方向で3-4mから10mに及ぶような岩屑層からなり, この移動体からさらに絞り出された細粒物質が地すべりマウンド上を泥流となって下流側や上流側に流れ下った。本地すべりによる犠牲者は死者19人で, そのすべてはこの泥流に巻き込まれたことによるものである。この地すべりダムは大きな岩屑層からなるため突然決壊の危険性は低いと考えられた。災害4ヶ月前に撮影されたALOS/PRISM画像の実体判読の結果, 谷壁斜面には前兆現象的な変位が認められた。このためヒマラヤなどの高起伏地域での河道閉塞を引き起こす大規模地すべりの事前把握のための衛星画像利用の可能性が示唆された。
著者
海野 寿康 中里 裕臣 井上 敬資 高木 圭介
出版者
公益社団法人 日本地すべり学会
雑誌
日本地すべり学会誌 (ISSN:13483986)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.219-226, 2008-09-25 (Released:2009-04-01)
参考文献数
18
被引用文献数
2

近年, 豪雨による斜面災害が多発するようになっている。本研究では, 降雨から地すべり安全率を予測する手法の基礎として, 破砕帯地すべり地における豪雨と地下水位の相関関係の把握を目的に, 農地地すべり地区に設置されている複数のボーリング孔の孔内水位と地区降雨量の観測や地下水位の降雨応答解析を行った。その結果, 地下水位の降雨による変動に基づき実効雨量の半減期を決定することで, 該当地区におけるおおよその降雨~地下水位関係を得ることが可能となった。得られた知見から地下水位の変動挙動のタイプ分けを行うことができ, それらは降雨形態の違いにより生ずると考えられる。
著者
宇次原 雅之 関 晴夫 若井 明彦 畠中 優 江口 喜彦 中野 亮
出版者
公益社団法人 日本地すべり学会
雑誌
日本地すべり学会誌 (ISSN:13483986)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.221-232, 2014 (Released:2015-07-30)
参考文献数
17

コンクリート・モルタル吹付工(以下,吹付工)は,のり面保護工として古くより多用されており,現在その老朽化が問題となっている。効率よく維持管理を行うためには,吹付工が適用されたのり面の劣化機構を明らかにし,精度のよい健全度評価や劣化予測を行うことが重要となる。本研究は,これまでに蓄積されてきた維持修繕に関する記録をもとに,吹付のり面の劣化機構を明らかにして,今後,維持管理を行っていく上で有用となる基礎資料を得ることを目的として実施した。吹付のり面の劣化機構は地質や気候条件などにより異なるため,本研究では,群馬県内の中古生層分布地域における道路吹付のり面に研究対象を絞った。その結果をもとに,対象地域の吹付のり面の劣化機構を模式的に示し,劣化予測を含む効率的な維持管理への応用方法について検討を行った。
著者
佐藤 浩 宇根 寛 飛田 幹男
出版者
公益社団法人 日本地すべり学会
雑誌
日本地すべり学会誌 (ISSN:13483986)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.132-136, 2008-07-25 (Released:2009-01-30)
参考文献数
20
被引用文献数
1 2

2005年10月8日, パキスタン北部地震 (マグニチュード7. 6) が発生し, 2, 000ヶ所以上の斜面崩壊が引き起こされた。筆者らは既に, 90m解像度数値地形モデル (DEM) を使って, 斜面崩壊の大部分が逆断層の上盤側で, その断層の近くで発生したこと, 多くの規模の大きな斜面崩壊が南及び南西向き斜面で生じたことを報告した。本稿では, 250m2 (約15m× 15m) より広くて, 断層から4kmの範囲にある上盤側の977の斜面崩壊を選んだ。そして, TERRA/Advanced Spaceborne Thermal Emission and Reflection Radiometer (ASTER) データから得られた細かい15m解像度のDEMを用い, その斜面崩壊の方位を計算した。その結果, それぞれ30%以上の斜面崩壊が南と南西に生じていたことを確認した。さらに, その方位がEnvironmental Satellite (ENVISAT) /Synthetic Aperture Radar (SAR) で検出された上盤の地表変位 (地震断層運動による永久的な変位) の卓越方位と一致することを確認した。他の研究者によって記録された住民の証言によると, 変位の大部分は地震発生直後に一気に形成されたという。このことは, 地表変位の異方性が, 斜面崩壊の異方性の主要な要素であることを示唆している。
著者
中山 康
出版者
公益社団法人 日本地すべり学会
雑誌
地すべり (ISSN:02852926)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.33-35, 1988-03-20 (Released:2011-07-04)
参考文献数
3
被引用文献数
1

単純な比較は困難であるが, 粘性土の地すべり地帯は地震災害が少なく, 粒径のそろった砂質土の急崖は危険性が高い。また, 樹高の大きい植生は地盤破壊を促進する。