著者
鴈野 重之 富田 晃彦
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.49-57, 2023-09

査読付き論文は研究コミュニティ内で成果を共有する最も重要な手段である.一方で論文が十分に相互参照されないと,似たような研究に気づかずに研究を進めてしまう危険が生じるなど,その分野の発展の遅滞を招くこととなる.本研究では,天文教育普及分野における査読付き学術論文の引用-被引用関係を調べることで相互参照性を評価する指標づくりを提案するとともに,各々の学術雑誌が分野に対して及ぼすインパクトを調べた.結果として,天文教育普及分野では同じ雑誌内だけの引用が多く,他の雑誌からの引用が少ない傾向が見られた.とくにインパクトの高い雑誌の論文も隣接する分野の雑誌では参照されていなかったり,重要と考えられる論文も他の雑誌からの引用がなかったりという例も見られた.論文の相互参照性を高めるためには,分野に特化した論文データベースや検索エンジン対策などを,そのコミュニティとして考える必要があるだろう.
著者
湯沢 友之 佐倉 統 湯沢 友之 佐倉 統 湯沢 友之 佐倉 統
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.1-17, 2022-09

科学コミュニケーターとしての訓練を受けてない研究者が科学コミュニケーションを行なう場合,しばしば困難に直面するが,それは聴衆の背景知識への配慮が足りないからであると考えられる.本論文ではこの点について,大学院での教育内容だけでは不十分であり,博物館などで実施されている科学コミュニケーター養成プログラムがそこを補っているという仮説を設定し,養成プログラム修了生を対象として非専門家にどのような配慮をするように認識が変化したのか,半構造化インタビューによって検証した.その結果,修了生は,非専門家への配慮が重要であるという意識を明確化しており,エンターテインメント的な要素を付加するなどの意識変容が生じていたことがわかった.さらに大学院での自然科学系の専門教育では,非専門家を聴衆とするコミュニケーション・スキルは重視されておらず,これが非専門家を対象とする科学コミュニケーションに負の影響を与えている可能性が示唆された.この点について補足的な追加調査を行った結果,研究重視型大学院における研究者養成教育が非専門家を対象としたコミュニケーションに抑制的に働いている可能性が示唆された.しかしこの点については,さらに調査が必要である.
著者
森 沙耶 奥本 素子
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.71-85, 2020-08

幅広い年代が利用する科学館では,小さな子供のいる家族での来館者は科学館のメインの来館者層の一つである.札幌市青少年科学館では展示内容をより身近に科学を感じてもらうため展示物のほとんどがハンズ・オン展示である.しかし,その操作が複雑であったり,身体的動作と科学的情報が連続的につながっていない場合,来館者は十分にハンズ・オン展示を活用できない.親子でハンズ・オン展示を体験する際は,子にとって親によるサポートは必要不可欠である.本研究ではハンズ・オン展示における親子が展示物を体験する様子を⚒回検証し,会話を質的に分析した.一回目の検証では家族のハンズ・オン展示におけるつまずきについて調査した.そのつまずきを解消すべく開発した支援ツールを用いて二回目の検証を行った.その結果,親がハンズ・オン展示の仕組みを理解することによって子が主体的に展示物体験に関わり,親子の発話が増加し家族での学習が発展することが明らかになった.
著者
棚橋 沙由理 山本 桃子
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.17-30, 2022-01

社会の持続可能な発展をにらみ,博物館における学際的な教育研究が社会の持続可能性へどのように寄与し得るのかについて,議論が活発化している.ことに理工系大学・学部では科学技術の社会実装に際し,科学技術コミュニケーションの重要性が増しているため,大学博物館も科学技術コミュニケーションへの貢献が期待されている.そのような現状において,海外の大学博物館ではオブジェクト介在型学習(Object-based learning)による分野横断型学習の可能性に注目が高まっている.欧米を中心に博物館教育の文脈で育まれてきたオブジェクト介在型学習であるが,わが国では学術的枠組みにもとづく実践例が乏しい.本稿ではオブジェクト介在型学習の再考にあたり,大学博物館のコレクションを用いた分野横断型学習としての有効性を検証し,科学技術コミュニケーション活動の一手法としてどのように一般化できるのかを明らかにすることを目的として,理工系大学の大学博物館における養蚕・製糸風景の描かれた錦絵のキュラトリアルワークショップを実施した.その結果,オブジェクト介在型学習は学生の知識習得および共同作業について有用であることが明らかにされた.本研究により今後,オブジェクト介在型学習の多種多様な事例研究が展開されることにより大学博物館の教育研究に資するとともに,科学技術コミュニケーション活動を通じた学術・文化コモンズとしての大学博物館の機能が一層高まるであろうことが示唆された.
著者
水町 衣里 工藤 充 八木 絵香
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.5-18, 2021-08

筆者らは,これまでに対面形式で実施してきた市民参加型ワークショップの実践経験をもとに,2020年度に3回(8月に1回,2月に2回)の市民参加型ワークショップをオンライン形式で開催した.本稿では,これらワークショップの設計プロセスや具体的な運営方法について報告する.基本的にはオンライン形式にあっても,対面形式で実施してきたワークショップと同様に,グループ対話の時間と会場全体での論点共有の時間を組み合わせるという構成を活かしつつ,グループファシリテータの役割や情報提供資料「対話ツール」の形式について,オンライン形式に適したものとなるように検討を重ねた.オンライン形式で対話型の催しを実施する際,参加者同士のやりとりをどのように促すことが可能か,アナログ的な要素をどこまで盛り込むべきかなど,既存の対面形式での経験を直接応用することが困難な事項も少なくない.今後,多様なワークショップの実践例が記述され,それが集積することで,科学技術をテーマとした対話型の催しをオンライン形式で実践する際の課題や重要な点についての議論が深まることが期待される.
著者
岸田 直樹
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.107-125, 2021-08

筆者は総合診療医・感染症医として診療の現場に立つだけではなく,一般社団法人Sapporo Medical Academyを立ち上げ,医療コンサルタントの仕事も行なってきた.2020 年以降は,札幌市の危機管理対策の新型コロナウイルス担当参与を務め,行政とともに対策にあたるとともに,個人として新型コロナウイルス感染症の情報をTwitter やマスメディアで積極的に発信してきた.本講演では,まず札幌市の新型コロナウイルス対策を振り返る.次に,新型コロナウイルスの問題は10年前からあった医療における様々な社会課題が顕在化したものであり,薬剤耐性菌の問題や2025 年問題など,より広い視野で医療の問題に取り組むことが次の10 年に向けて重要であることを述べる.また,これらの問題や筆者の経験をふまえ,論理だけではない,信頼や共感といった感情的要素をも重視した発信の重要性を紹介する.
著者
愉 彦樺 小松 雄士 文野 優華 堤 拓朗 小川 雄大
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.17-28, 2020-03

研究者が社会に対して,自らの研究内容や科学について説明する機会が増えており,科学技術コミュニケーションの重要性が指摘されている.自らが大学で行っている研究内容を分かりやすく社会へ伝える方法を身につけると同時に,アウトリーチ活動の経験を積むことを目的として,北海道大学Ambitious リーダー育成プログラム所属の博士後期課程学生⚕名による実験教室を企画実施したので,これを報告する.沖縄科学技術大学院大学(OIST)にて開催された2018 年度サイエンスフェスタに出展し,実際に大学で研究している紙デバイスを応用したpH 測定実験を行った.本報告を通して,大学で研究している内容や科学をわかりやすく伝える技術や安全性を考慮した実験設計の重要性を学び,また参加した125 名の小中学生を対象にアンケートを実施することで,普段科学技術コミュニケーションに親しみの無い大学院生が専門を活かしどの程度小中学生に科学に対する興味・関心をもってもらうことができるのかを示した.これらの結果および考察は,大学の学生や若手研究者がアウトリーチ活動をする際の一助となることが期待される.
著者
吉村 正志 諏訪部 真友子 池田 貴子 小笠原 昌子 ECONOMO Evan
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.39-56, 2020-03

市民のヒアリ監視活動への参画,および外来種リテラシーの向上を目指した体験型ワークショップ(以下,WS)を開発した.ヒアリの日本国土への定着を阻止するためには,専門家だけでなく市民ひとりひとりがヒアリ監視のスキルと意識を持つことが,きわめて有効なリスク対策となる.本WS は,外来種問題という社会が抱える喫緊課題に対する問題解決の手段としての側面と,市民が身近な自然の生物多様性を学ぶ環境学習の側面を併せ持つ.そのため,ヒアリや外来種に対する危機意識の醸成だけではなく,生き物への純粋な興味や知識欲をくすぐるエンターテイメント性を意識してプログラムをデザインした.加えて,生物を扱うWS で最も講師のスキルと経験が求められるパートである野外観察・採集と顕微鏡観察を省略するために,アリ類の精密拡大模型を作成した.これにより,専門性を担保しつつも,専門家でなくとも実施可能な比較的手軽で汎用性の高いWSとなった.WS のコンパクト化を実現したことで,危機管理WS の命題である実施範囲の拡大へとつながった.ヒアリ対策のニーズの高い沖縄県において継続的にWS を実践し,改良を重ねて本WS が完成した.WS の前後でとった参加者へのアンケート調査結果から,本WS の最適な実施対象は小学校中学年であること,参加者の「ヒアリ」のキーワード認識率はWS 前から高い水準にあること,そしてWS 参加によって「ヒアリ」および「外来種」のキーワード認識率が上昇することが明らかになった.
著者
田中 佐代子 小林 麻己人 三輪 佳宏
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション = Japanese journal of science communication (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
no.21, pp.41-57, 2017-06

研究成果の理解を助けるビジュアルデザインは,研究者にとり重要な位置を占めるようになった.しかし研究者自身によるビジュアルデザインは,煩雑でわかりにくく,審美性の低い場合が多い.そこで私たちは,研究者のために有用なビジュアルデザインのルールについて考察した.まず,研究者に即したビジュアルデザインのルール案を考案し,それを掲載したハンドブックを作成した.次に,これを研究者に配付し,彼らに対するアンケート調査を介して,提案ルール案の研究者にとっての有用性と問題点を検証した.その結果,有用と判明したのは,第1に「画面の構成方法」に関するルール,特に「視線の流れを意識する」,第2に「効果的な配色方法」に関するルール,特に「3色(メインカラー,アクセントカラー,無彩色)でキメる!」,第3に「PowerPointによる描画」に関するルール,特に『頂点の編集』をマスターする」であった.一方,有用性が低いとされたのは「グラフ・表・フローチャート」に関するルールで,改善の余地があるとわかった.配布ハンドブックは概ね評判が良く,国内の理系研究者に有用とわかった.学ぶ機会が少ないデザインの基本ルールと技術を学習できたため,「役立つ」実感を与えたと推察する.Visual designs aiding the understanding of research results are becoming important for researchers. However, many researchers use incomprehensible and unattractive visual designs, which is why we attempted to formulate effective visual design rules for researchers. First, we published handbooks that presented plans of these visual design rules. We distributed them to researchers in Japan and conducted surveys using questionnaires. We then inspected the effects and problems of these plans. Consequently, the most effective rules were about the "Layout," particularly the rule" Being Conscious of the Flow of the Eyes." The second most effective rules were about "Color Methods," particularly the rule "Deciding Three Colors (Main Color, Accent Color, and Neutral Color)." The rules about "Drawing using PowerPoint" were also effective, particularly the rule" Mastering Edit Points."
著者
伊藤 裕子
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.3-15, 2018-12

東日本大震災を契機として,我が国の科学技術コミュニケーションは,専門家と非専門家との双方向のコミュニケーションの推進に対しても効果的であることが期待されるようになった.しかし,専門家と非専門家との間には,知識量のみならず認知や行動においても非対称性があり,この非対称性がコミュニケーションの不具合を引き起こしている可能性がある.本研究は,医薬品情報を対象とし,双方向のコミュニケーションに影響を与える非対称性の特徴及び状況や背景を明らかにすることを目的として,専門家及び非専門家の両方にアンケート調査を実施し,非対称性を分析した.その結果,医薬品情報のコミュニケーションには,コミュニケーションの不具合の認知や解釈において非対称性が生じていることがわかった.さらに,非対称性を生じ易い背景として,非専門家では情報収集をしないこと及び専門家とのコミュニケーションを諦めていること,専門家では尋ねられた情報が知らない情報であることを非専門家に伝えないことが示された.したがって,医薬品情報における双方向のコミュニケーションを成功させるためには,専門家と非専門家のそれぞれに対する情報教育,質の高い情報のオープン化,非専門家が利用し易いコミュニケーションツールの開発が必要と考えられる.
著者
奥本 素子
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.17-30, 2018-12

本研究は科学技術コミュニケーター養成教育がもたらす教育効果,特に対話・参加型コミュニケーションに対する意識がどのように変化したのかを評価するために,科学技術コミュニケーション活動への意識を調査する質問紙を開発し,本質問紙を用いて北海道大学にある科学技術コミュニケーション教育研究部門(通称CoSTEP)の受講生の受講初期・後の意識を調査した.その結果,受講後に受講生は全体的に参加型の科学技術コミュニケーション活動への意識が高まったことが分かった.さらに調査していくと,受講生の受講後の意識は3つの型があることがわかり,最も多かったのは科学技術コミュニケーション活動全般への意識が高い型であった.このことから,CoSTEP における科学技術コミュニケーション養成教育は,対話・参加型に限らず,全体的な意識を高めることが示唆された.
著者
森 玲奈 池尻 良平 濱口 麻莉 北村 智
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション = Japanese journal of science communication (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
no.19, pp.3-15, 2016-06

防災教育において、知識の提供のみで十分と言えないことは周知の事実である。例えば、気象庁では警報を始めとする「防災気象情報」により重大な災害への警戒を呼びかけてきたが、住民や地方自治体が災害発生の危険性を十分に理解することに繋げられない事例、十分な避難行動に結びつかない事例もあった。基本的な情報がどこでどのように入るか、それがどのような情報であるのか、知識として人々が持っていなければ、有事、各々の状況に合わせた判断や行動につなげることも難しいと考えられる。そこで、人々の防災情報の知識を高め、その知識を行動に結びつけるために、災害についての考え方の変容を促進する教育プログラムが必要である。本研究では、大雨に対する防災情報の知識や意識の向上を目的としたワークショップを設計し、その実践の結果からワークショップの学習効果の分析を行った。It is a well-known fact that the provision of disaster prevention knowledge is not enough to disaster prevention education to the public. For example, the Japan Meteorological Agency issued 'weather information for disaster prevention', including warnings, to inform people that a serious disaster was about to occur. But, residents and local municipalities were not adequately aware about the risk of disaster, warnings failed to result in adequate evacuation procedures, in some cases. If people do not acquire knowledge about where and how to receive basic information, and what kind of information is available, it is difficult to make judgments and act according to individual situations in emergencies. To strengthen people's knowledge of information for disaster prevention and connect thisknowledge to action, there is a need for educational programs that encourage people to change the way they think about disasters. Therefore, in this study, we designed workshops with the aim of improving knowledge and awareness of weather information for disaster prevention in response to heavy rain and analyzed the learning effects of these workshops.
著者
森 玲奈 池尻 良平 濱口 麻莉 北村 智
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.3-15, 2016-07

防災教育において、知識の提供のみで十分と言えないことは周知の事実である。例えば、気象庁では警報を始めとする「防災気象情報」により重大な災害への警戒を呼びかけてきたが、住民や地方自治体が災害発生の危険性を十分に理解することに繋げられない事例、十分な避難行動に結びつかない事例もあった。基本的な情報がどこでどのように入るか、それがどのような情報であるのか、知識として人々が持っていなければ、有事、各々の状況に合わせた判断や行動につなげることも難しいと考えられる。そこで、人々の防災情報の知識を高め、その知識を行動に結びつけるために、災害についての考え方の変容を促進する教育プログラムが必要である。本研究では、大雨に対する防災情報の知識や意識の向上を目的としたワークショップを設計し、その実践の結果からワークショップの学習効果の分析を行った。
著者
吉武 裕美子 勝身 俊之 南口 誠 西川 雅美 宮 正光 近藤 みずき 白仁田 沙代子 田辺 里枝 山本 麻希
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.31-42, 2016-07

科学技術へ関心の低い女性に科学技術を伝えるツールとして、かわいいと感じる要素を取り入れた科学実験・工作を考案し、その効果を調べた。女性が男性よりもより強く感じる感情である「かわいい」は、対象と関わりたい、仲良くなりたいという共感性や、社会的交流を求める感情に関連している。実験・工作を体験した中学生に対し「実験を体験していない人にも話したいか」というアンケート調査を行ったところ、普段の理科の授業や実験はあまり人に話さないのに対し、かわいいと感じる要素を取り入れた実験は特に女性にとって誰かに話したくなる実験であることがわかった。「かわいい」と科学の組み合わせは、実験実施者から体験者だけでなく実験体験者からその知人へと波及していく効果があり、より多くの人へ体験を伝えるという意味で、特に若い年代の女性にとって科学技術コミュニケーションの強力なツールになると思われる。