著者
坂東 隆宏 福原 舞 小菅 晃太郎 鈴木 昴太 笠 嗣瑠 奥本 素子
出版者
北海道大学高等教育推進機構 高等教育研究部 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.17-30, 2015-12

近年,科学コミュニケーションの必要性が認識され,2013年の科学コミュニケーションセンターによる調査では回答者である研究者の過半数以上が研究者以外の人々を対象とした科学コミュニケーション活動を体験している.一方で,そのような機会に参加する人々は科学への関心が元々高い層であり,科学への関心の低い層の取り込みには課題があるといわれている.今後は,普段科学コミュニケーション活動に参加しない「科学への関心の低い層」への情報発信が必要だと考えられる.本報告では,科学への関心が低い層に向け科学者情報の発信を試み,動的に研究者を紹介するWebサイト「研究者時計」を作成し,結果を分析した.本Webサイトでは,閲覧者に研究内容だけ ではなく研究者個人の多様性を見せ,研究活動へ興味を持ってもらうことを狙った.そのために,研究者を時刻ごとにランダムに表示するなど,楽しさ・やわらかさ・親しみやすさを重視したインタフェースを本Webサイトに用いた.本実践を分析するにあたり,Google Analyticsを用いた閲覧者分析,Webアンケート等を行った.本論では本実践の過程,結果,そして課題について述べる.
著者
室井 宏仁 奥本 素子
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.1-10, 2020-08-20

新型コロナウイルス感染症の蔓延は,博物館・美術館をはじめとする国内の文化施設の運営にも甚大な影響を及ぼし続けている.感染拡大防止措置としての臨時休館が長期化する中で,オンラインメディアを活用して展示や教育普及に取り組む博物館施設が多く見られるようになった.本研究では,新型コロナウイルス感染症により大幅に活動が制約される中での我が国における博物館施設の対応と,具体的な取り組みの内容について,各施設の公式ホームページやSNS の閲覧を通じて整理・分析した. その結果,政府の特定警戒都道府県に指定された地域では,それ以外の地域に比べて博物館施設によるオンラインでの情報発信がより積極的に実施されたことが分かった.またオンライン上で発信を行なった施設の多くが,SNS や動画投稿サイトなどの外部サービスを活用しながら情報を発信していたことも判明した.また全国規模での施設間連携,家庭用ゲームソフトを介したコンテンツ公開など,これまでに例のない情報発信の取り組みも確認できた.
著者
奥本 素子 橋谷田 俊 高橋 明大 阿部 乳坊
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
科学教育研究 (ISSN:03864553)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.131-139, 2018 (Released:2018-07-12)
参考文献数
13
被引用文献数
2

In recent years, the practice of science communication has disseminated scientific knowledge and fostered citizens’ trust and interest in science through dialogue on science-related emotions and values. In this study, we initiated science communication during a Japanese tea ceremony in a traditional café space, throughout which we engaged in dialogue with citizens who did not expect to experience science communication at the event. We analysed the dialogues of eight groups. There was some tendency for both citizens and scientists to initiate conversations in the café space, and this bilateral dialogue was promoted by the understanding of the characteristic of this science café. These results indicate that the design of spaces and the explanation about communication may effectively stimulate dialogue with citizens.
著者
奥本 素子
出版者
美術科教育学会
雑誌
美術教育学:美術科教育学会誌 (ISSN:0917771X)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.93-105, 2006-03-31 (Released:2017-06-12)

従来,感性的側面ばかり強調されていた美術鑑賞教育を教育科学的に分析し,協調的対話式鑑賞法の可能性を探る。対話式美術鑑賞法はアメリカの認知心理学者であり,美学者でもあるアビゲイル・ハウゼンが教育科学的に開発したプログラムが元になっている。ハウゼンの開発したプログラムを分析していくと,そこには対話式という学習法に必要不可欠な,協調と概念変化という視点が乏しい。対話式学習,そして鑑賞学習において協調と概念変化と言う学習視点の重要性を指摘し,その二点を組み込んだ新たな協調的対話式鑑賞法という仮説を提示する。
著者
奥本 素子 岩瀬 峰代
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.205-215, 2012
被引用文献数
2

本研究では,PBLにおける社会的手抜きの有無,社会的手抜きと対立する状態の有無,それぞれの促進要素,阻害要素,各要素間の関連を質的手法によって調査していった.本研究の分析では,PBLにおいて社会的手抜きの発生の有無は個人よりもチームの活動に影響を受けていることが分かった.また単に社会的手抜きをしないだけでなく,学習者が自発的に行動するためには,チーム活動において意思決定に参与し,協力体制を構築した上で,責任を自覚し,具体的な問題発見を行うという過程を辿ることが明らかになった.よって,本研究では,PBLにおける自発的行動とは,チーム活動との相互作用の中で生まれると結論付け,自発的行動を促進するチームデザインを提案した.
著者
奥本 素子 岩瀬 峰代
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.205-215, 2012-12-20 (Released:2016-08-09)
参考文献数
14
被引用文献数
1

本研究では,PBLにおける社会的手抜きの有無,社会的手抜きと対立する状態の有無,それぞれの促進要素,阻害要素,各要素間の関連を質的手法によって調査していった.本研究の分析では,PBLにおいて社会的手抜きの発生の有無は個人よりもチームの活動に影響を受けていることが分かった.また単に社会的手抜きをしないだけでなく,学習者が自発的に行動するためには,チーム活動において意思決定に参与し,協力体制を構築した上で,責任を自覚し,具体的な問題発見を行うという過程を辿ることが明らかになった.よって,本研究では,PBLにおける自発的行動とは,チーム活動との相互作用の中で生まれると結論付け,自発的行動を促進するチームデザインを提案した.
著者
岩瀬 峰代 奥本 素子
出版者
島根大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

近年、アートを用いた科学コミュニケーションはこれまで科学に興味がなかった潜在的関心層への伝達ツールとして注目を集めている。しかし、その効果やツールとしてのアートの特性を分析が十分になされていない。本研究では科学者とアーティストが協働して作成した2作品を用いてアートの印象効果と伝達効果を分析した。その結果、アート作品が人々に目新しさを認識させる傾向があること、アートによる大胆な翻訳表現であっても、市民に理解しやすい表現であれば伝達効果が期待できることが明らかになった。アートは高度な概念の表現だとされているが、本事例によって科学的概念の表現にも適している可能性が示された。
著者
星野 太 奥本 素子
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.71-83, 2017-12

近年,日本においてはアートが地域と協力関係を結び,プロジェクトを実施するという動きが加速している.アートはなぜ社会や地域に接近し,どのように地域との連携を深めているのだろうか.金沢美術工芸大学で美学/表象文化論を研究する星野太氏は,社会問題と向き合うアートやアートと観客の関係の論評でも著名な美学者である.今回は,星野氏を訪ね,アートと社会,特に地域との関係を解説してもらい,その中でアートはどのような課題を抱え,今後どのように解決していこうと考えているのかという展望を語ってもらった.本インタビューで,地域振興のためにアートが活用される際に生じる,公共性という概念をどのように社会と共有していくか,という,科学技術コミュニケーションにも通じる課題が明らかになった.
著者
奥本 素子 加藤 浩
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.11-21, 2009
被引用文献数
4

美術館初心者が美術館での学習につまずく原因の一つに,美術館展示から意味を構築する能力である博物館リテラシーが不足していることがあげられる.そこで,本研究では初心者の博物館リテラシーの不足を補うため,演繹的に作品を解釈できるように作品理解の観点を教授する博物館認知オリエンテーション(Cognitive Orientation of Museum:COM)という博物館学習支援モデルを提案する.本研究では,そのCOMの博物館学習における有効性を明らかにするために,COMに沿った学習教材を開発し,一般的な解説教材と比較し,その効果を検証した.
著者
森 沙耶 奥本 素子
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.71-85, 2020-08

幅広い年代が利用する科学館では,小さな子供のいる家族での来館者は科学館のメインの来館者層の一つである.札幌市青少年科学館では展示内容をより身近に科学を感じてもらうため展示物のほとんどがハンズ・オン展示である.しかし,その操作が複雑であったり,身体的動作と科学的情報が連続的につながっていない場合,来館者は十分にハンズ・オン展示を活用できない.親子でハンズ・オン展示を体験する際は,子にとって親によるサポートは必要不可欠である.本研究ではハンズ・オン展示における親子が展示物を体験する様子を⚒回検証し,会話を質的に分析した.一回目の検証では家族のハンズ・オン展示におけるつまずきについて調査した.そのつまずきを解消すべく開発した支援ツールを用いて二回目の検証を行った.その結果,親がハンズ・オン展示の仕組みを理解することによって子が主体的に展示物体験に関わり,親子の発話が増加し家族での学習が発展することが明らかになった.
著者
奥本 素子
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.395-405, 2011-03-30 (Released:2016-08-07)
参考文献数
12
被引用文献数
2

本研究は,人文系研究科に属する博士課程の大学院生を対象に,分野を越境した研究の学びについて調査したものである.本研究の目的は,研究者を目指す大学院生がどのようなきっかけで学際的研究交流体験に参加し,どのような経験を経て分野を越境した学びに到達しているのか,について示唆を得ることである.本研究ではインタビュー調査による定性的データを元に学際的研究交流体験を仮説モデル化し,そのモデルの妥当性を質問紙調査による定量的データを元に検証した.その結果,他分野の学生との人的ネットワークが学際的研究交流の動機付けになっていることが明らかになった.さらに学際的研究交流の体験において学生は,失敗を経て,改善点や工夫を行い,体験の成功にいたっていることが分かった.そのため,学際的研究交流は単発的体験よりも,継続的体験から効果が得られるものだということが分かった.
著者
奥本 素子
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.17-30, 2018-12

本研究は科学技術コミュニケーター養成教育がもたらす教育効果,特に対話・参加型コミュニケーションに対する意識がどのように変化したのかを評価するために,科学技術コミュニケーション活動への意識を調査する質問紙を開発し,本質問紙を用いて北海道大学にある科学技術コミュニケーション教育研究部門(通称CoSTEP)の受講生の受講初期・後の意識を調査した.その結果,受講後に受講生は全体的に参加型の科学技術コミュニケーション活動への意識が高まったことが分かった.さらに調査していくと,受講生の受講後の意識は3つの型があることがわかり,最も多かったのは科学技術コミュニケーション活動全般への意識が高い型であった.このことから,CoSTEP における科学技術コミュニケーション養成教育は,対話・参加型に限らず,全体的な意識を高めることが示唆された.
著者
奥本 素子
出版者
美術科教育学会
雑誌
美術教育学:美術科教育学会誌 (ISSN:0917771X)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.93-105, 2006
被引用文献数
3

従来,感性的側面ばかり強調されていた美術鑑賞教育を教育科学的に分析し,協調的対話式鑑賞法の可能性を探る。対話式美術鑑賞法はアメリカの認知心理学者であり,美学者でもあるアビゲイル・ハウゼンが教育科学的に開発したプログラムが元になっている。ハウゼンの開発したプログラムを分析していくと,そこには対話式という学習法に必要不可欠な,協調と概念変化という視点が乏しい。対話式学習,そして鑑賞学習において協調と概念変化と言う学習視点の重要性を指摘し,その二点を組み込んだ新たな協調的対話式鑑賞法という仮説を提示する。
著者
奥本 素子 岩瀬 峰代
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
科学教育研究 (ISSN:03864553)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.359-366, 2015 (Released:2016-02-24)
参考文献数
20

Recently, art has received a lot of attention in science communication as a tool for engaging a potential audience. However, there are few studies that have analyzed the effects and characteristics of art in science communication. Therefore, the present research is an attempt to examine the emotional and transmission effects of art in the context of science communication. We used two works of art created through collaboration between scientists and artists. These works were then compared with other images of science communication and were analyzed for their communicative effects. Through an experiment that gauged the emotional effect of art, we found that people tend to be impressed by the novelty of a work of art. Through another experiment that probed the transmission effect of art, we also found that a work that used analogy could transmit a complex science concept better than a typical science illustration.
著者
奥本 素子
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、東日本大震災の被災資料を展示し、その展示物に対する来館者の語りを収集したデータをテキストマイニングで分析し、資料に対する来館者の集りの傾向を明らかにした。その結果、被災資料に対して来館者は単に道具名や形式的な知識を語ることはなく、主語を伴った具体的な経験を語ることが多かった。展示物の解釈は一人称的語りによって展開されることが明らかになったという結果より、今後の鑑賞支援の在り方として知識の提供だけでなく体験に繋がる文脈の提供の重要性が示された。