著者
杉山 昂平 森 玲奈 山内 祐平
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.41087, (Released:2018-03-08)
参考文献数
28
被引用文献数
2

成人による趣味の追求をインフォーマルな学習環境はいかに支えるのだろうか.趣味における興味に着目してきた先行研究に対し,本研究の目的は「興味の深まり」という新たな概念を提案し,「成人の趣味活動において学習環境との関わりによっていかにして興味が深まるのか」を明らかにすることである.趣味活動の事例としてアマチュア・オーケストラを対象とし,オーケストラ団員15名に対して回顧的インタビュー調査を行った.分析の結果,興味の深まりには(1)音楽的な無自覚からの脱出,(2)上達・達成へのとらわれからアンサンブルへ,(3)参加すること自体の価値を見いだす,という3類型が存在し,それぞれの興味の深まりは(a)活動形態の異なる共同体への移動,(b)活動理念の異なる共同体への移動,(c)目標を焦点化する役割付与,という学習環境との関係性において生起することが明らかになった.
著者
杉山 昂平 森 玲奈 山内 祐平
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.43058, (Released:2019-12-16)
参考文献数
31

人々が興味を深めるとき,ゆるやかな社会関係はいかに関与するのだろうか.本研究の目的は,興味追求としての趣味に着目し,強固な実践共同体に対比されるゆるやかな実践ネットワークが,趣味人の興味の深まりにいかに関与するのかを明らかにすることである.事例としてデジタル時代のアマチュア写真を取り上げ,アマチュア写真家14名に対してインタビュー調査を行った.その結果,興味の深まりに関与する実践ネットワークとして「刺激的な隣人」と「不特定の観衆」の存在が明らかになった.「刺激的な隣人」は自立的に興味を追求する多様な趣味人の姿を可視化し,「不特定の観衆」は作品に対してフィードバックを与え,それ自体が深い興味の対象になったり,興味を深めるさらなる行動を促したりする.こうした実践ネットワークはSNSによって形成されることもある一方,展覧会や撮り歩き会のような,趣味の世界における対面的な活動によっても形成されていた.
著者
安斎 勇樹 森 玲奈 山内 祐平
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.135-145, 2011
参考文献数
23
被引用文献数
1

本研究の目的は,協同制作を課題とした大学生向けのワークショップにおいて,創発的コラボレーションを促すためのプログラムデザインの指針を示すことである.本研究では,創発の源泉としての「矛盾」の効果に着目し,「作品の制作課題に,相反するイメージを持ちながら多様な解釈の可能性を持った2つの条件を設定する」というデザイン原則を仮説として設定した.デザイン原則に基づく実践を4回(全15グループ),比較対象としてデザイン原則に基づかない実践を4回(全11グループ)行い,各グループの制作プロセスを質的に分析した.その結果,デザイン原則に基づく実践においては,制作中に提案されたアイデアや制作物に対する視点に揺さぶりがかかり,創発的コラボレーションが促されることがわかった.ただし,参加者が設定した2条件を「相反するもの」として解釈しなかった場合は,視点の揺さぶりがかからないために創発的コラボレーションは起こりにくいことがわかった.その点に留意すれば,本研究で提案したデザイン原則は有効であることが示された.
著者
森 玲奈
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.445-455, 2008
参考文献数
47
被引用文献数
2

研究の目的は,ワークショップのデザイン過程におけるベテラン実践家の特徴的思考を明らかにすることである.本研究では,ベテラン実践家とその集団に属する初心者2組を選定し,発話思考法を用いた実験を行った.分析は,まずベテラン-初心者間における発話の流れを比較し,その上で2人のベテランに共通する特徴を検討した.その結果,ベテランにおけるデザイン時の発話には,依頼内容の確認・解釈の後,コンセプトの立案を行うという共通の流れがあることが明らかになった.また,ベテランの特徴として,(1)依頼内容に対する幅広い確認を行うこと,(2)デザインの仮枠となるデザインモデルを使用すること,(3)保留や選択の余地を残した「やわらかな決定」を行うこと,(4)スタッフの育成に対する意識とデザイン力を持つこと,(5)過去の実践体験の想起や経験から構築された慣習を用いてデザインを行うこと,が明らかになった.さらに,ベテランには経験に裏づけられた「個人レベルの実践論」があることが示唆された.
著者
杉山 昂平 森 玲奈 山内 祐平
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.31-41, 2018-07-10 (Released:2018-07-10)
参考文献数
28

成人による趣味の追求をインフォーマルな学習環境はいかに支えるのだろうか.趣味における興味に着目してきた先行研究に対し,本研究の目的は「興味の深まり」という新たな概念を提案し,「成人の趣味活動において学習環境との関わりによっていかにして興味が深まるのか」を明らかにすることである.趣味活動の事例としてアマチュア・オーケストラを対象とし,オーケストラ団員15名に対して回顧的インタビュー調査を行った.分析の結果,興味の深まりには(1)音楽的な無自覚からの脱出,(2)上達・達成へのとらわれからアンサンブルへ,(3)参加すること自体の価値を見いだす,という3類型が存在し,それぞれの興味の深まりは(a)活動形態の異なる共同体への移動,(b)活動理念の異なる共同体への移動,(c)目標を焦点化する役割付与,という学習環境との関係性において生起することが明らかになった.
著者
森 玲奈
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.51-62, 2009
被引用文献数
2

本研究の目的は,ワークショップ実践家のデザインの方法が変容した契機に着眼し,実践家がデザインにおいて熟達する過程を明らかにすることである.本研究では,経験年数5年以上のワークショップ実践家19名に対し,半構造化インタビューを行った.分析の結果,実践家におけるデザインの方法の変容の契機は,(1)対象者の違いに応じたデザインの必要への気づき,(2)自己の立場の変化に応じたデザインの必要への気づき,(3)他者との協働デザインの中での気づき,(4)継続の必要性,(5)実践の内省による気づき,の5つに類型化することができた.さらに,ワークショップ実践家がデザインにおいて熟達化する過程では,(1)実践家としての原点,(2)葛藤状況とブレイクスルー,(3)他者との関係構築への積極性,(4)個人レベルの実践論の構築,という4つの要素が関わり合っていることがわかった.
著者
安斎 勇樹 森 玲奈 山内 祐平
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.135-145, 2011-11-01 (Released:2016-08-08)
参考文献数
23

本研究の目的は,協同制作を課題とした大学生向けのワークショップにおいて,創発的コラボレーションを促すためのプログラムデザインの指針を示すことである.本研究では,創発の源泉としての「矛盾」の効果に着目し,「作品の制作課題に,相反するイメージを持ちながら多様な解釈の可能性を持った2つの条件を設定する」というデザイン原則を仮説として設定した.デザイン原則に基づく実践を4回(全15グループ),比較対象としてデザイン原則に基づかない実践を4回(全11グループ)行い,各グループの制作プロセスを質的に分析した.その結果,デザイン原則に基づく実践においては,制作中に提案されたアイデアや制作物に対する視点に揺さぶりがかかり,創発的コラボレーションが促されることがわかった.ただし,参加者が設定した2条件を「相反するもの」として解釈しなかった場合は,視点の揺さぶりがかからないために創発的コラボレーションは起こりにくいことがわかった.その点に留意すれば,本研究で提案したデザイン原則は有効であることが示された.
著者
杉山 昂平 森 玲奈 山内 祐平
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
2018

<p>成人による趣味の追求をインフォーマルな学習環境はいかに支えるのだろうか.趣味における興味に着目してきた先行研究に対し,本研究の目的は「興味の深まり」という新たな概念を提案し,「成人の趣味活動において学習環境との関わりによっていかにして興味が深まるのか」を明らかにすることである.趣味活動の事例としてアマチュア・オーケストラを対象とし,オーケストラ団員15名に対して回顧的インタビュー調査を行った.分析の結果,興味の深まりには(1)音楽的な無自覚からの脱出,(2)上達・達成へのとらわれからアンサンブルへ,(3)参加すること自体の価値を見いだす,という3類型が存在し,それぞれの興味の深まりは(a)活動形態の異なる共同体への移動,(b)活動理念の異なる共同体への移動,(c)目標を焦点化する役割付与,という学習環境との関係性において生起することが明らかになった.</p><p></p>
著者
森 玲奈
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.445-455, 2008-03-10 (Released:2016-08-04)
参考文献数
47
被引用文献数
3

研究の目的は,ワークショップのデザイン過程におけるベテラン実践家の特徴的思考を明らかにすることである.本研究では,ベテラン実践家とその集団に属する初心者2組を選定し,発話思考法を用いた実験を行った.分析は,まずベテラン-初心者間における発話の流れを比較し,その上で2人のベテランに共通する特徴を検討した.その結果,ベテランにおけるデザイン時の発話には,依頼内容の確認・解釈の後,コンセプトの立案を行うという共通の流れがあることが明らかになった.また,ベテランの特徴として,(1)依頼内容に対する幅広い確認を行うこと,(2)デザインの仮枠となるデザインモデルを使用すること,(3)保留や選択の余地を残した「やわらかな決定」を行うこと,(4)スタッフの育成に対する意識とデザイン力を持つこと,(5)過去の実践体験の想起や経験から構築された慣習を用いてデザインを行うこと,が明らかになった.さらに,ベテランには経験に裏づけられた「個人レベルの実践論」があることが示唆された.
著者
森 玲奈 孫 大輔 渡辺 雄貴 北村 智 堀 里子
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S44038, (Released:2020-11-09)
参考文献数
11

本研究では高齢者の学習課題の中で健康に関する学習に焦点を当て,自己調整学習理論を参照し,主体的に健康について学ぶことができるワークショップを設計・実践・評価することを目的とする.ワークショップ「すまけん」は,参加者に健康情報の取得へのネットの活用可能性の理解と利用の自己効力感の向上を促すものである.その結果,事前に比べて事後のヘルスリテラシーの自己効力感並びにスマートフォン活用の自己効力感が高まっていた.またワークシートの記述内容の分析から,すまけんワークショップ内では,殆どの参加者が健康情報の探索を学んだことが示された.
著者
森 玲奈
出版者
日本教育方法学会
雑誌
教育方法学研究 (ISSN:03859746)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.49-58, 2014-03-31 (Released:2017-07-19)
参考文献数
28

本稿では,日本におけるワークショップの展開とその特質に関し,ワークショップ実践史を整理する。その上で,これまでワークショップ実践史の源流にあるとされてきたデューイの教育思想を手がかりとし,実践者育成のための方法を検討することを目的とする。本研究では,以下の作業を通じ,日本のワークショップの系譜とその背景にある思想を明らかにする。第一に,アメリカを中心とした海外のワークショップ実践の背景を整理し,その背景にあった社会状況を明らかにする。第二に,日本におけるワークショップ実践史を,海外から方法の移入した状況や契機,実践者同士の交流と相互作用に着眼し記述,整理する。第三に,海外におけるワークショップの系譜と,日本におけるワークショップの系譜との差異について確認し,日本におけるワークショップの系譜が独自の展開を遂げてきたことを示す。これらを通じ,(1)海外では各領域における問題解決のための「新しい方法」としてワークショップが生み出されており,その時期は領域によって差があること,(2)日本では,1970~80年代にその契機があり,個々の領域において領域に特化された手法として別個に導入されたため,実践者育成が領域の中の細分化された集団で行われることが多かったこと,(3)ワークショップをプラグマティズムという思想潮流の中で捉えることにより実践者の育成に貢献できること,を論じる。
著者
森 玲奈 池尻 良平 濱口 麻莉 北村 智
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション = Japanese journal of science communication (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
no.19, pp.3-15, 2016-06

防災教育において、知識の提供のみで十分と言えないことは周知の事実である。例えば、気象庁では警報を始めとする「防災気象情報」により重大な災害への警戒を呼びかけてきたが、住民や地方自治体が災害発生の危険性を十分に理解することに繋げられない事例、十分な避難行動に結びつかない事例もあった。基本的な情報がどこでどのように入るか、それがどのような情報であるのか、知識として人々が持っていなければ、有事、各々の状況に合わせた判断や行動につなげることも難しいと考えられる。そこで、人々の防災情報の知識を高め、その知識を行動に結びつけるために、災害についての考え方の変容を促進する教育プログラムが必要である。本研究では、大雨に対する防災情報の知識や意識の向上を目的としたワークショップを設計し、その実践の結果からワークショップの学習効果の分析を行った。It is a well-known fact that the provision of disaster prevention knowledge is not enough to disaster prevention education to the public. For example, the Japan Meteorological Agency issued 'weather information for disaster prevention', including warnings, to inform people that a serious disaster was about to occur. But, residents and local municipalities were not adequately aware about the risk of disaster, warnings failed to result in adequate evacuation procedures, in some cases. If people do not acquire knowledge about where and how to receive basic information, and what kind of information is available, it is difficult to make judgments and act according to individual situations in emergencies. To strengthen people's knowledge of information for disaster prevention and connect thisknowledge to action, there is a need for educational programs that encourage people to change the way they think about disasters. Therefore, in this study, we designed workshops with the aim of improving knowledge and awareness of weather information for disaster prevention in response to heavy rain and analyzed the learning effects of these workshops.
著者
森 玲奈 池尻 良平 濱口 麻莉 北村 智
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.3-15, 2016-07

防災教育において、知識の提供のみで十分と言えないことは周知の事実である。例えば、気象庁では警報を始めとする「防災気象情報」により重大な災害への警戒を呼びかけてきたが、住民や地方自治体が災害発生の危険性を十分に理解することに繋げられない事例、十分な避難行動に結びつかない事例もあった。基本的な情報がどこでどのように入るか、それがどのような情報であるのか、知識として人々が持っていなければ、有事、各々の状況に合わせた判断や行動につなげることも難しいと考えられる。そこで、人々の防災情報の知識を高め、その知識を行動に結びつけるために、災害についての考え方の変容を促進する教育プログラムが必要である。本研究では、大雨に対する防災情報の知識や意識の向上を目的としたワークショップを設計し、その実践の結果からワークショップの学習効果の分析を行った。
著者
森 玲奈
出版者
東京大学
巻号頁・発行日
2013

学位の種別: 課程博士
著者
森 玲奈 北村 智
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.309-318, 2013

ワークショップは教育工学の研究対象として認識されてきた.しかしながら,教育工学研究としてのワークショップの評価について,十分な議論が行われていない.そこで本稿では,第一に,ワークショップの教育評価について,ワークショップと学習目標との関係に着眼し,検討を行なった.第二に,教育工学研究としてワークショップを評価する方法について,都市計画研究における方法と認知科学研究における方法を参照し,検討を行なった.検討の結果,第一に,ワークショップの教育評価では,我々は明示された学習目標と明示されていない学習目標を分ける考えを示した.加えて,「予期されなかった学習」の重要性を指摘した.第二に,都市計画研究における評価方法を検討した結果,研究の妥当性・有用性を考える上で,実践の置かれた文脈と同様に,実践に対する研究者の立場を詳述することが重要であることと,参加者・研究者のみならず,企画者・運営者を含めた多様な関わりを踏まえた多面的な分析に,有用な知見を見いだせる可能性があることを示した.第三に,認知科学研究における相互作用分析の研究を踏まえると,言語行動のみならず,非言語行動を含めたマルチモーダルな分析を行うことが有効ではないかと提案した.