著者
中嶌 剛
出版者
千葉経済大学
雑誌
千葉経済論叢 (ISSN:21876320)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.23-39, 2013-07-25

本研究は、近い将来、就職活動を控える学生の心理状態に注目し、キャリア教育(キャリア形成支援)を通じて顕在化する潜在意識が、彼らのキャリア形成にとってどのような役割を果たし得るのかを、複数大学(4年制大学、女子大学)の学生の自由記述回答データを用いたテキストマイニング手法により探ったものである。厳しい新卒採用状況下、先行き不透明かつ不安感に満ちた学生心理に立脚した計量テキスト分析により、教育現場おいて、いかなる潜在意識への働きかけが学生の主体的行動にとって重要となるかを明らかにした。こうした結果は、「行動してからようやく物事を理解する」という体験学習が人生を切り拓くヒントになり得ると同時に、潜在意識の有効活用が自己のキャリア形成に寄与することを論じたものである。
著者
青木 慎
出版者
千葉経済大学
雑誌
千葉経済論叢 = CHIBA KEIZAI RONSO (ISSN:21876320)
巻号頁・発行日
no.65, pp.77-93, 2021-12-01

現代貨幣理論(Modern Money Theory;MMT)の理論家は、主流派マクロ・モデルであるIS - LMモデルに否定的な立場を取っている。それにもかかわらず、MMTにはそのモデルに代わるモデルがなく、政策の手順とその効果だけで、その間の過程を欠如した理論になっています。本論は、MMTのこの問題点について着目し、MMTを主流派モデルに当てはめると、MMTの理論家にとって、どのような不都合が生じるのかについて明らかにすることを目的とします。また、補足として、MMTが提唱する「最後の雇い手」(ELR)についても、経済の安定化として十分に機能するのかを検討します。
著者
菅根 幸裕
出版者
千葉経済大学
雑誌
千葉経済論叢 = CHIBA KEIZAI RONSO (ISSN:21876320)
巻号頁・発行日
no.64, pp.一-四七, 2021-06-01

筆者は近世における俗聖、特に空也聖の実態について、京都市空也堂の史料を中心に分析してきた。そうした中、なぜ俗聖が空也堂と本末を結んだのかがポイントとしてきた。本論は、六歳念仏講と末流(茶筅・鉢屋)を中心に、空也聖の近世から近代への変容を考えてみたい。 特に空也堂配下が一堂に会した歴代天皇の焼香式については、その記録を詳細に分析したいと考えている。そのうえで空也堂と六斎念仏講及び末流が本末を結ぶことのメリットは何であったのかを考察するものである。言い換えれば、空也堂はなぜ歴代天皇の焼香式を行ったのか、六斎念仏講や末流がこれに供奉することでどのような特典があったのかを分析してみたい。
著者
絹川 文仁
出版者
千葉経済大学
雑誌
千葉経済大学短期大学部研究紀要 (ISSN:13498312)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.65-78, 2011-03-31

Sometimes it is often said `How we can play one music with much expression and musically?' among music teachers of elementary school. In this paper it is suggested that the musical teaching materials of elementary school should be played with much expression and musically in detail in view of analyzation of Italian opera. Maybe it is also regarded that the work is liability for the music stuff of teachers college. In this paper,especially, it is pointed out that how fine notes and after beat should be played. And that work breeds much flowing and expression, lively to mosts of musical teaching materils of elementary school.
著者
黒川 太 河原 礼修
出版者
千葉経済大学
雑誌
千葉経済論叢 = CHIBA KEIZAI RONSO (ISSN:21876320)
巻号頁・発行日
no.63, pp.101-117, 2020-12-01

学習成果における学生のエンゲージメントが果たす役割は非常に重要であるとの見解は共通認識となっている.日本においても学生のエンゲージメントをあらわす指標として,自主的な学習時間の確保が不可欠であるとの認識が広まっている. ただし,日本における大学生を対象とした学生のエンゲージメントに関する研究においては,データ制約などの事情もあり学習成果として客観的指標を用いた分析は少ない.よって本稿では客観的学習成果指標を用いることを前提に,本学の学生データとアンケートデータを用いて成績素点と自主学習時間をはじめとする学生のエンゲージメント要因,学生個人の属性要因,教育環境要因との関係を分析した. 分析の結果,学生のエンゲージメントの1要素である自主学習時間は学習成果に対する影響は認められるが,その効果は比較的小さいものであった.一方,学生のエンゲージメントの他の要因である授業出席回数や授業に関する興味関心については,自主学習時間よりも学習成果に大きな影響を与えていることが確認された.
著者
間瀬 久美子
出版者
千葉経済大学
雑誌
千葉経済論叢 = CHIBA KEIZAI RONSO (ISSN:21876320)
巻号頁・発行日
no.61, pp.一-三一, 2019-12-31

近世後期光格天皇を挟む前後の時代の朝廷・幕府の災害祈禱を考察することが課題である。天明飢饉以降、大政委任論や国内外の危機的状況の深化に伴い、幕府も災害祈禱に直接関与するようになった。開港後の朝廷祈禱の中心は攘夷へと移っていくが、幕府の衰退と反比例して朝廷の国家祭祀権が単純に強くなったとのみいえない面もあり、多面的な考察が必要であることを提起したい。
著者
粟沢 尚志 Takashi Awasawa 千葉経済大学 CHIBA KEIZAI UNIVERSITY
出版者
千葉経済大学
雑誌
千葉経済論叢 = The Chiba-Keizai ronso (ISSN:0915972X)
巻号頁・発行日
no.43, pp.41-56,

本稿は、マイケル・ポーターの展開したポジショニング理論を福祉国家に応用し、福祉国家を取り巻く外部からの脅威と政府の能力を相互比較した上で、福祉国家がとるべくポジションの選択(つまり戦略)を考察している。通常、政府は外的脅威に立ち向かうべきと考えられている。しかし政府は決して万能ではないから、脅威を最も受けないポジションを選ぶことも戦略となる。そして、戦略を策定する源となるのが福祉国家のどの部門を重視するかいう選択と地域主権の確立である。ただし、知の集積や共有化が進む中期的ポジショニングを考えると、政府がその優位性を継続させるのは容易ではない。
著者
三浦 洋子
出版者
千葉経済大学
雑誌
千葉経済論叢 (ISSN:0915972X)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.51-69, 2012-07-24

北朝鮮は1993年`国連人口基金 (UNFPA)'の援助で最初に人口総調査を実施して以来、15年ぶりに「2008年北朝鮮人口センサス」を発表した。当センサスによって、北朝鮮の食糧難が人口構成に大きく影響していることや、いわゆる「少子高齢化」に接近していることがわかった。また、住環境、トイレや暖房方式、燃料や水道設備、また家事と呼ばれる内容までもが、北朝鮮側から提示されたことは、大変に興味深い。「ベールに包まれた国」と言われてきた国で、脱北者の証言でしか知らなかった一般庶民の暮らしぶりが、この統計から具体的にわかってきたことは非常に意義深い。
著者
平井 岳哉
出版者
千葉経済大学
雑誌
千葉経済論叢 (ISSN:0915972X)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.17-43, 2003-07-15

戦後,三井,三菱,住友の3財閥ではGHQによる一連の財閥解体政策で,財閥の機構そのものが根底から否定された。こうした中,旧財閥系の傘下企業群は,さらに新たな課題に直面した。それは財閥の商号商標の使用禁止令である。3つの旧財閥系企業はともに協力して,GHQや日本政府首脳へ陳情を行い,使用禁止令の施行取り止めに成功した。使用禁止令を撤回させて,難題は解決したかのように見えたが,旧三菱系企業群にとって商号商標問題は,依然として複数の障害を抱えて重要な経営課題となっていた。戦前の財閥本社における商標登録の遅れとそれに伴う第3者による登録,本社に代わって商標管理を担った三菱商事の解散による商標保全のトラブル,三菱重工業の分割など企業分割によって生じた同一業種における複数企業による商標の使用,財閥家族との商号商標に関する保有権の明確化,などである。旧三菱系企業群はこれを機に,1950年代から60年代初頭にかけて,グループ内での商号商標の管理について,管理組織の設置,使用基準マニュアルの作成などを骨子とした基本的な対策を講じた。商号商標のもつ信用性の維持保全のため,外部の第3者による不正使用を防止する一方で,内部のメンバー企業に対しても厳格な使用規定を設けるものであり,このルールは今日の三菱グループにおいても継承されることになった。
著者
岡室 美恵子
出版者
千葉経済大学
雑誌
千葉経済論叢 (ISSN:21876320)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.35-52, 2016-07-21

原油価格の下落、サウジアラビアとイランの国交断交など中東情勢の緊迫化・混迷化により中東経済の減速が懸念されている。主要産油国ではエネルギー補助金の削減や付加価値税の導入などによる財政改善や構造改革に着手し始めている。そのなかで、ヨルダン・ハシェミット王国(ヨルダン)は、石油や天然ガスなどのエネルギー資源に恵まれず、しかし、産油国経済と密接に関係しつつその経済を発展させてきた。その一方で、地勢的、外交的な重要性を増している。非産油国であるが、中東情勢において重要性を増すヨルダン経済の現状を概観し、今後、その課題と可能性の詳細分析に必要な初期的な分析を行う。
著者
川名 登 Noboru Kawana 千葉経済大学 CHIBA KEIZAI UNIVERSITY
出版者
千葉経済大学
雑誌
千葉経済論叢 = The Chiba-Keizai ronso (ISSN:0915972X)
巻号頁・発行日
no.36, pp.三十一-五十四,

近世において、日本の二大海運の一つであった西廻り海運の捷路として、円山川と市川を利用して日本海と瀬戸内海を結ぶ舟運輸送路を造成しようという計画は、近世中期の享保期以来しばしば考えられ、実行もされてきた。しかるに両川の上流を結ぶ陸送は、わずかの距離ながらも大きなネックとなり、大量輸送を実現できずに終った。しかし、西廻り海運の捷路としての目的は達成できなかったが、両川沿岸の地域の諸産物の商品化を促進し、両川舟運の発展を刺激した。本稿ではこの幾度かくり返された計画を検討し、その問題点と意義を明らかにした。
著者
岡室 美恵子
出版者
千葉経済大学
雑誌
千葉経済論叢 (ISSN:21876320)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.39-53, 2015-12-17

2012年、中国山東省青島市で日本の介護保険に類似する「長期医療護理保険」の試験的導入が開始された。中国は、2035年に2人の労働者が1人の高齢者を支える「超高齢社会」を迎えると推測されており、「一人っ子政策」の完全撤廃が決定された一方、高齢化に対応する社会保障・福祉制度の整備が急務となっている。本稿は、中国における高齢化対応政策の変遷と介護保険制度の試験導入の過程を概観し、今後、超高齢社会への対応を迫られる中国の社会保障制度の運営と持続可能性、財政的課題、国際比較などの多様な視角から分析を行うための初期的な考察を行うものである。
著者
江藤 肇
出版者
千葉経済大学
雑誌
千葉経済論叢 (ISSN:0915972X)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.1-52, 2006-07-15

科学技術者の倫理という問題の他、計算機情報学の発展は、科学技術と人文学の交流を必要としており、2005年にはロボット研究における人文科学との交流を呼びかける会が文部科学省科学技術政策研究所の主催で開かれている。しかし科学技術者や行政官は、医学と並んで最も古い伝統を持つ人文学の本質について考察することなく、便利屋として人文学の細切れ知識の動員を企図している嫌いがある。人文学は古いが故に非科学技術的と無視される反面、同じ理由で魅力を感じ、少数とはいえ人文学の研究に励んだ科学技術者や行政官もいる。「昭和の鴎外」と呼ばれた皮膚科学者太田正雄東大教授(詩人木下杢太郎)における医学研究、宗教史、美術史研究に共通する方法論や価値観を事例として、人文学と科学技術(彼の場合は医学)との方法論的関連について考察する。
著者
池田 宏樹
出版者
千葉経済大学
雑誌
千葉経済大学短期大学部研究紀要 (ISSN:13498312)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.一-一六, 2013-03-31

The Great Kanto Earthquake caused big damage in Chiba Prefecture. The research of The Great Kanto Earthquake is many even in Chiba Prefecture. However, there is little research with regard to the makeshift measure immediately after the Great Kanto Earthquake. People who suffered damage with the earthquake disaster there are not a house and food is poor and camped for 10 days. 95% of people of Awa-gun Houjoucho lost the house. Houever, there is not research that announnced their life. As for this calamity the rumour exerted a big influence. And the Korean slaughter event occurred. Japanese is misitaken by Korean in the Great Kanto Earthquake and killed. Youths took an active part with the volantary service in the Great Kanto Earthquake. I want to announce there problems with this paper.
著者
菅根 幸裕
出版者
千葉経済大学
雑誌
千葉経済論叢 (ISSN:21876320)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.七五-一一四, 2013-07-25

近世における様々な俗聖のうち、鉢叩をとりあげ、常陸国新治郡宍倉村(茨城県かすみがうら市)の空也堂に伝わる史料から、その実態を分析する。空也堂の鉢叩は自らの祖を空也とし、空也を醍醐天皇第二皇子とする巻物を携え、ステータスアップを図ったものであると考える。近世、鉢叩・鉢屋・茶筅などの空也聖は西日本に顕在し、東日本ではこの宍倉空也堂の史料が唯一のものである。しかも空也堂には末流が存在し、鉢叩にいわゆる本末関係が結ばれていたことが明らかになった。
著者
粟沢 尚志
出版者
千葉経済大学
雑誌
千葉経済論叢 (ISSN:21876320)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.65-78, 2013-12-21

本稿は、商店街に関して筆者が展開した理論的考察を、久繁哲之介氏の著書『商店街再生の罠』で見出された観察や導かれた含意と対応させて、商店街の役割とは、私益よりも公益を重視するような人を中心とした組織的市場ととらえるべきであることを明らかにしている。第1節では、心理会計モデルを用いて、コミュニケーションが顧客の心理的価値を高めるために重要であることを明らかにしている。第2節では、地域コミュニティが持つ価値観が、えてして不統一になりがちな商店街各店へ一貫性をもたらすために重要であることを明らかにする。第3節では、商店街と市民とのゆるやかなつながりが生み出されると、それが買い物の安心感をもたらし、さらに店の経営努力によって商店街の競争優位が高まることを示す。
著者
佐藤 典子
出版者
千葉経済大学
雑誌
千葉経済論叢 (ISSN:0915972X)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.21-34, 2009-07-27

経済の不安定さ(precarite プレカリテ)は、すなわち、社会の不安定さとして、人々の生活基盤を脆弱にしてしまう。とりわけ、雇用の不安定さは、最も影響が大きいだろう。そこで、グローバリゼーションのなかで、ネオリベラルな路線に向かいつつある多くの国が、切り捨てられる運命にある不安定雇用の実態をどのようにとらえているのか、フランスのCPE反対運動の事例から見ていきたい。
著者
村山 拓
出版者
千葉経済大学
雑誌
千葉経済大学短期大学部研究紀要 (ISSN:13498312)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.55-68, 2007-03-31

This paper aims at the historical analysis on the situation of the education in Yaeyama area in Okinawa under the governance of the military administration by the United States. Especially, this research takes notice of the cultural campaign by the Yaeyama Education Society (Yaeyama-Kyoiku-Kai) and the inauguration of the first "Petalozzi Festival" by the teachers in this district. Pestalozzi Festival commemorate Johann Heinrich Pestalozzi(1746-1827), a Swiss educational theoretician and practitioner. He never came into Japan, and Okinawa, but many educators in Japan commemorate him and success his thought. In Yaeyama area this festival started in 1949, and it has been continuing for more than 50 years without the interruption. The case of this festival is never seen in another area in Japan. After the battle in Okinawa was finished in 1945, the military government started the adopted the policies in Okinawa in the different way of the one in mainland Japan. In Yaeyama, the original "Yaeyama Education Act" was in force, and the school organization was 8-4 system by 1949. Yaeyama Education Society established in 1948, and the first festival is in 1949. This research attempt to make the situation of the society and of the first festival be clear.
著者
串山 寿 三浦 洋子
出版者
千葉経済大学
雑誌
千葉経済論叢 = CHIBA KEIZAI RONSO (ISSN:21876320)
巻号頁・発行日
no.66, pp.147-161, 2022-06-30

オンデマンド授業は、教員は授業の資料をアップロードし、学生は受講したい時に好きな時間に受講ができるメリットがある一方、学生の自主性に任せることによる授業の理解度のバラツキが考えられる。新型コロナウイルス拡大の影響で、オンライン授業やオンデマンド授業は当たり前になってきている中、教員は試行錯誤しながら授業を運営している。その授業の中で、履修生と教員とのあいだで直接意志の疎通のツールとなるのはチャットであるが、そこで交わされる質疑応答では、質問の内容以前に、情報関連の用語等に関して、教員としては当然わかっているだろうと思われることを学生は知らず、双方のちぐはぐさが目立ち、往々にして一方通行にもなりうる事態が生じている。主な原因は履修生の情報関連の知識不足であり、教員側は授業の他にそれらの補充もしなければならない、ということになる。そこで本稿では、オンライン授業やオンデマンド授業のイントロダクションとして、情報関係の基礎知識を教えることを念頭に、教育内容を考えてみた。