著者
森下 暢也 新井 亮 笹川 知里 岡本 直樹 池田 順一 Lim Pang Boey 井上 光輝
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.179-187, 2011

DVD と同じサイズのディスクに10TB を超えるような大容量次世代ホログラムの開発記録システム開発としてフェーズロックコリニアホログラムメモリシステム(MEXT キーテクノロジー事業)の開発を進め,最終的には20TB の可能性を示唆することが出来た。本報では,1)脂環式エポキシとポリエーテルからなるネットワークポリマーマトリックス中で,2)ナノレベルの相分離を利用してドットライク精密なホログラム記録のできるナノゲルフォトポリマー(NGPP)を開発したので報告する。
著者
及川 尚夫 吉田 一浩 依田 昌子 山廣 幹夫 宮下 徳治
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.289-298, 2010

透明性,耐熱性の高いダブルデッカー型シルセスキオキサンをベースポリマーとして,表面改質効果を有するパーフルオロアルキル基含有シルセスキオキサンを複合化することにより,耐熱・光学コーティング膜を作製した。得られたコーティング膜は,接触角測定による表面特性,分光透過率測定による光学特性,熱重量分析による熱物性評価を行い,表面特性制御効果,及びバルク特性への影響を評価した。その結果,わずかなパーフルオロアルキル基含有シルセスキオキサンの添加により,膜の表面特性をコントロールできることが確認された。また,得られたコーティング膜の透明性,耐熱性は,パーフルオロアルキル基含有シルセスキオキサンの添加による低下は見られず,バルク特性にはほとんど影響しないことが分かった。更に,得られたコーティング膜は近紫外線領域の透明性が高く,近紫外線の吸収の少ないことによる耐光性に優れた膜であることが示めされた。また,得られたコーティング膜の樹脂成分は300℃以上の耐熱性を有しており,優れた耐熱性,透明性を保持しつつ,かつ表面特性のみをコントロールすることができることが確認された。
著者
吉田 一浩 橋本 和美 越智 光一
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.317-324, 2009

分子構造が異なるフェニルシルセスキオキサン(ダブルデッカー型,かご型,ラダーライク型)をベースとするエポキシ樹脂をそれぞれ調製し,テトラエチレンペンタミンを硬化剤に用いて硬化物を作成した。得られた硬化物は熱重量分析と動的粘弾性で熱物性を評価し,引張り試験で機械特性を測定してエポキシ樹脂の構造と物性の相関を検討した。その結果,熱重量分析からは熱分解温度や分解挙動はエポキシ樹脂の構造に依存しないことが分かった。動的粘弾性の測定結果からは,各エポキシ樹脂のガラス転移温度は,ダブルデッカー型,かご型,ラダーライク型それぞれ87℃,80℃,67℃に確認した。貯蔵弾性率はガラス転移温度の前後で変化が小さく,広い温度範囲でゴム状平坦域を有することがわかった。引張り試験で得られる応力-歪み曲線から破壊エネルギーを求めたところ,最小はラダーライク型の1.3kJ/cm<sup>3</sup>,最大はダブルデッカー型の23.6kJ/cm<sup>3 </sup>であり,ダブルデッカー型はラダーライク型に対して約18倍大きい値を示し,ラダーライク型の弱点である脆さを改善できる可能性が得られた。以上の結果から,シルセスキオキサンを骨格とするエポキシ樹脂の構造と物性の間には,熱的性質はほとんど相関が見られなかったが,ガラス転移温度,機械特性はシルセスキオキサンの分子構造に依存することが判明した。
著者
山田 正栄
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
熱硬化性樹脂 (ISSN:03884384)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.178-192, 1992-09-10 (Released:2012-08-20)
参考文献数
19
被引用文献数
1

自動車部品分野における軽量化, コストダウンを目的とした金属部品の樹脂化が進展する中で, この分野におけるガラス繊維強化フェノール樹脂成形材料の需要は目ざましい伸びを示している。過酷な条件下で長期の信頼性が要求される自動車部品に多く使用されているのは, ガラス繊維強化フェノール樹脂成形材料が持つ優れた耐熱性, 機械強度, 寸法安定性, 耐薬品性等が認められたことに他ならない。一方では熱硬化性樹脂に共通の「脆さ」, 金属と比較した場合の「摩耗」など改良すべき余地も残っており, 諸物性の向上, 新機能の付加などにより今後も用途拡大が図られよう。本稿では, 金属材料及び熱可塑性エンジニアリングプラスチックスと比較しながら, ガラス繊維強化フェノール樹脂成形材料の特長を主に概説する。
著者
榊原 純哉
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
熱硬化性樹脂 (ISSN:03884384)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.208-220, 1986-12-10 (Released:2012-08-20)
参考文献数
28
被引用文献数
1

プラスチックは第2次世界大戦後飛躍的に伸び, 世界の経済成長の一翼を担ってきた。そのなかで, 熱硬化性樹脂はプラスチック全生産量の約20%を占め, その優れた耐熱性, 電気絶縁性, 加工の容易さ等の特徴が活用され, 多様な製品形態で日本の産業発展に大きく寄与してきた。特に熱硬化性樹脂は, 日本経済をリードするエレクトロニクス産業を中心とする先端技術分野において重要な役割を演じてきている。熱硬化性樹脂の用途及びプリント配線基板, 半導体封止材料を主体としたエレクトロニクス産業における熱硬化性樹脂の応用と技術動向について概説した。さらに, 最近の新しい樹脂及び応用について述べ, 熱硬化性樹脂の今後の展開方向について言及した。
著者
白井 博史 松田 孝昭
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.250-258, 2012-09-10 (Released:2014-04-23)
参考文献数
20

省資源・省エネルギーの見地から,自動車タイヤに要求される重要な性能として省燃費性が大きくクローズアップされている。自動車の走行抵抗に大きく寄与するのはタイヤの転がり抵抗であり,この転がり抵抗を低減する技術開発が活発に行われており,多くの新しい素材が提案されている。シリカ配合タイヤは,省燃費性とウェットグリップのバランスを飛躍的に向上できることから,近年,タイヤトレッドにシリカを配合したエコタイヤの普及が目覚ましい。しかしながら,シリカは表面シラノール基の水素結合による凝集でカーボンブラックと比較して分散しにくいという問題がある。アニオン重合を利用した溶液重合スチレン・ブタジエン共重合体(S-SBR)は,タイヤの転がり抵抗を低減できる材料としてシリカタイヤトレッドに多用されており,更に官能基を導入した変性SBR を用いることで,シリカの分散性を改良しシリカタイヤの性能を向上させることが可能となった。 本報では,アニオン重合技術を活用した末端変性SBR,両末端変性SBR,マルチファンクショナルSBR の最近の変性技術について述べた。
著者
金 演鎬 中野 義夫
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.115-121, 2009 (Released:2013-03-29)
参考文献数
16

ポリフェニル基を有するタンニンゲルは金属イオンに対して親和性が高いことから,二次資源(廃電子部品等)から貴金属の再資源化を図るゲル/液抽出への応用が期待される。タンニンゲルの貴金属吸着機構は酸化還元反応であり,貴金属イオンの酸化還元電位差を利用し,Au(Ⅲ) を含むPd(Ⅱ),Pt(Ⅳ) 共存系からAu(Ⅲ) のみを選択的に分離回収することができる。さらに貴金属イオンとの親和性を高めるために,SCN-イオンをゲル内に導入した SCN-内包型タンニンゲルは Pd(Ⅱ),Pt(Ⅳ) 吸着能の向上やPd(Ⅱ)に対して高い選択性を示した。タンニンゲル,SCN-内包型タンニンゲルを組み合わせた貴金属回収システムは Ag(Ⅰ),Au(Ⅲ),Pd(II),Pt(Ⅳ)の連続的および選択的分離回収が可能であり,吸着,分離,濃縮,還元といった一連の単位操作をゲルネットワーク上で行うことができるため,還元剤,凝集剤等の添加剤が不要,かつ,シンプルなゲル/液抽出プロセスの技術開発につながる。
著者
吉川 俊夫 山田 英介 中原 崇文
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.128-133, 2002

エポキシ/研磨粉系の導電性硬化物について, 150℃での加熱サイクルテストを行い, 抵抗の熱安定性を測定した。その結果, 高いプレキュア温度を用いて硬化させた試料ほど熱安定性が高いことがわかった。一方, 抵抗値と温度の関係を測定したところ, 極小値を持つU字型曲線を示すことがわかった。更に, 高いプレキュア温度で硬化させた試料ほど曲線が高温側にシフトし, 抵抗値の温度変化が少ないことがわかった。

1 0 0 0 OA 重縮合

著者
東原 知哉 上田 充
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.261-272, 2009 (Released:2013-03-29)
参考文献数
28

重縮合は高分子生成反応の中で重要な反応のひとつである。ここでは重縮合の基礎を簡単に述べた後に,最近のこの分野の進展,すなわち,精密重縮合に関するi)分子量および分子量分布の精密制御 ii)ハイパーブランチポリマーの分岐度の制御 iii)位置選択的カップリング重縮合,更にはこれまでの理論と異なる iv)非等モルのモノマーからの高分子量ポリマーの合成について紹介する。
著者
大久保 明浩 斎藤 裕昭 斎藤 正幸 渡邊 英樹 山崎 倫康 八木 優紀
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.97-100, 2011-03-10 (Released:2014-03-31)
参考文献数
6

環境に配慮した高耐久・高耐熱バイオマス樹脂の開発を主眼とし,澱粉を出発原料としたフェノール樹脂を合成した。このフェノール樹脂のエポキシ硬化物は従来のフェノールノボラックのエポキシ硬化物に匹敵する耐熱性及び機械特性を発現し,優れた耐水性を有することを確認した。さらに本樹脂をエポキシ化したバイオマス樹脂を合成した。得られたバイオマス樹脂同士の硬化物を作製し物性を確認したところ,優れた機械特性が得られた。
著者
吉川 俊夫 岩田 博之 中原 崇文
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.92-100, 2002

研磨粉とエポキシプレポリマーの混合物の注型成形によって導電性硬化物を得た。導電性は研磨粉量の約1.5乗に比例した。硬化前に磁場を印加して研磨粉を磁化することにより, 硬化物の導電性を増加させることができた。この系の導電性は系の硬化収縮と連動して発生していることがわかった。硬化反応でのプレキュア温度が高いほど導電性の高い硬化物を得た。研磨粉量が80phr以下では樹脂層と研磨粉層に分離するが, 80phr以上では均一な組成の硬化物を得た。