著者
森川 徹夫
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
熱硬化性樹脂 (ISSN:03884384)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.161-166, 1993-09-10 (Released:2012-08-20)

大量生産・大量消費・大量廃棄によって有限な資源の枯渇化を招くと共に, 地球の環境容量を超えた高度の産業活動が地球規模での環境問題を引き起こしている。地球との共生を果たしながら産業活動の「持続的発展」を可能ならしめるためには, 地球規模での物質循環についての新しいシステム, 即ち「資源循環型社会」の構築が不可欠である。樹脂業界においてもプラスチック材料の評価項目に「環境適合性」が加わり, とくに「リサイクノレ性」が重視されるようになり, プラスチックリサイクルが強い社会ニーズとなってきた。そこで, 当社における「環境適合性」に対する考え方, 熱硬化性樹脂のリサイクルの方法についての考え方の一部を紹介する。
著者
大野 大典
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.277-284, 2017-11-20 (Released:2017-12-27)
参考文献数
24
被引用文献数
1

近年,電子機器の高性能化にともない,用いられる部品・部材に対しても従来よりも高い性能が求められている。電子部品に用いられる樹脂に対しては,鉛リフロー半田に対応できる高耐熱性,高速情報通信における低損失のための低誘電特性,環境問題への対応からノンハロゲンでの難燃性,実装時の信頼性向上のための低熱膨張性,環境からの吸湿による不具合や特性変化を小さくするための低吸水性,といった種々の特性を向上させることが求められており,これらの要求に対応するために各種機能性熱硬化性樹脂の開発が進められている。本稿では,高耐熱性と低誘電特性を併せ持つ樹脂の開発動向,高耐熱性と難燃性を併せ持つ樹脂の開発動向について紹介する。
著者
平田 靖
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.242-249, 2012-09-10 (Released:2014-04-23)
参考文献数
15
被引用文献数
1

低燃費タイヤは,汎用タイヤ対比一本当たり約57kg のCO2 削減が可能となる。CO2 削減に有効な低燃費タイヤの進歩を支える代表的な技術としてシリカ配合がある。シリカ配合の特長は,背反性能である「転がり抵抗」と「ウェットスキッド抵抗」の両方を改良できることである。その特長を発揮するためには,シリカを充分に分散させる必要があり,さまざまな方法が開発されてきた。一般的に使用されるシランカップリング剤に加えて,更なる分散や補強の改良を目指した分散改良剤やシリカ用ポリマーの分子設計が行われ,大幅な改良効果が達成されている。一方,近年発達著しい分析技術と計算科学の導入によるナノスケールでの構造解析や物性予測技術も進んでおり,ナノスケールでの階層構造の定量化やエネルギーロスの発生機構が解明されつつある。このようなシリカ配合用原材料の分子設計とナノ解析技術を活用して,「転がり抵抗」と「ウェットグリップ性能」を最高レベルで両立化させたタイヤが開発され,すでに市販されている。
著者
松井 醇一
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
熱硬化性樹脂 (ISSN:03884384)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.145-152, 1990-09-10 (Released:2012-08-20)
参考文献数
8

繊維強化熱硬化性樹脂複合材料は, 工業用材料として重要な地位を占めている。複合材料の性質は, 素材, 積層設計及び成形加工によって決まるが, 本稿では素材, なかでも強化繊維の寄与について述べた。炭素繊維強化複合材料の場合, 繊維の高弾性率・高強度を反映して, 繊維配列方向の引張性質は抜群に優れているが, 直角方向, 層間及び圧縮性質は樹脂と界面に依存するため, 必ずしも優れているとは言えない。また, 航空機材料としてのCFRPに対する要求のひとつに, 耐衝撃性の改善があり, 熱硬化性樹脂の靭性改良の研究が進んでいる。コストについては, 複合材料の成形加工性の良否が重要であり, 使い易い樹脂及び製品の品質バラツキの生じにくい樹脂の開発に対する期待が大きい。
著者
船引 恭平 中村 昌之 釣谷 雅明
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
熱硬化性樹脂 (ISSN:03884384)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, pp.220-235, 1981-12-10 (Released:2012-08-20)
参考文献数
24
被引用文献数
5

有機化合物を熱処理することにより生成する炭素化物の構造は, 主としてX線回折の手法によりいろいろと研究されて来た。また, 電子顕微鏡技術の発展により, これら炭素化物の微細構造を直接かつ正確に観察することができるようになって炭素化の研究に大いに役立っている。最近フェノール樹脂が炭素化材料として種々の用途で用いられるようになってきたため, 炭素化挙動についての関心が高まりつつある。そこで, こゝではまず有機化合物の炭素化・黒鉛化について総括的に触れた後, ついでフェノール樹脂の熱処理に伴って観察される炭素化・黒鉛化の挙動についてまとめてみた。また, 炭素化物の収縮率や強度などの物理特性や, フェノール樹脂の平均分子量やヘキサミン量などが残炭率に及ぼす影響についても論じてみた。さらには, いろいろの測定条件下での発生するガスの種類や量などにも触れ, それぞれについて実験結果や文献を紹介して説明する。
著者
藤田 健弘 山子 茂
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.4-13, 2017-01-10 (Released:2017-06-14)
参考文献数
81

リビングラジカル重合(LRP)はラジカル重合において分子量と分子量分布,およびブロック共重合体を通じてモノマー配列を制御する合成法である。1993 年のGeroges らの報告以来,新しい方法の開発と高分子材料への応用が広がってきている。本稿では,LRP の鍵である休止種の活性化に焦点を絞り,最近の二つの進歩について紹介する。一つは,光を用いる休止種の活性化である。これにより,生成ポリマーの構造の制御の向上や,触媒の低減化などが可能になってきている。もう一つは非共役モノマーのLRP である。非共役モノマーの成長末端ラジカルは共役モノマーの末端に比べて不安定であり,休止種の活性化が難しいため,その進展は限られていた。しかし,重合系をうまく選択することで,さまざまな非共役モノマーがLRP に利用できるようになってきている。これらの進展により,LRP の可能性がさらに広がってきている。
著者
Yoshiki CHUJO Kazuo TANAKA
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.233-244, 2011-09-10 (Released:2014-04-22)
参考文献数
19

かご型シルセスキオキサン(POSS)は一辺が0.3 ナノメートル(nm)のシリカの立方体構造を中心に,各頂点に有機官能基を持つ物質の総称である。剛直な立方体核から放射線状に側鎖が配置されており,ネットワークポリマーやデンドリマーなど,多分岐型高分子材料構築のビルディングブロックとして有用である。また,官能基導入により修飾を加えることで多種多様な機能の付与が可能である。以上の特性から,POSS はさまざまな機能性材料構築に応用が図られている。本稿ではまず,POSS によるプラスチックの熱的・機械的特性の向上のための添加剤としての応用について述べる。次に,POSS を用いた低屈折率化の機構について詳述する。また,最近著者らが見出したPOSS イオン液体の特異な熱力学について説明する。最後に,POSS を基盤とした水溶性のデンドリマーとネットワークポリマーについて述べる。特に近年注目を集めている生体材料への応用展開をふまえ,POSS 含有水溶性高分子の興味深い性質について説明する。
著者
大塚 恵子 木村 肇 松本 明博
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.24-30, 2014-01-10 (Released:2014-04-23)
参考文献数
19
被引用文献数
3

ジアリルフタレート樹脂の接着性と靭性向上を目的として,ポリエチレングリコールユニットの異なるアクリル酸エステルをジアリルフタレート樹脂に配合し,ラジカル重合で同時に反応させることで相互侵入高分子網目構造(IPN)を形成させた。破壊靭性値,およびはく離接着強度とせん断接着強度は,アクリル酸エステルのポリエチレングリコールユニットの分子量や配合割合が大きくなるに従って大きく向上した。特にポリエチレングリコールユニットの分子量が大きい場合に,破壊靭性値と接着強度はジアリルフタレート樹脂と比較して2 倍以上の値を示した。これは,ポリエチレングリコールユニットの導入による柔軟性付与,および柔軟性付与により硬化過程で生じる接着剤層の内部応力が緩和されるためであると考えられ,動的粘弾性挙動と一致した。また,ポリエチレングリコールユニットの分子量の小さいアクリル酸エステルを配合した場合やポリエチレングリコールユニットの分子量の大きいアクリル酸エステルの配合割合が小さい場合には,ジアリルフタレート樹脂にアクリル酸エステルが相溶したIPN を形成した。一方,ポリエチレングリコールユニットの分子量の大きいアクリル酸エステルを20 wt% 以上配合した場合には,ジアリルフタレート樹脂架橋構造中にアクリル酸エステルが分子レベルで微分散した相分離型IPN を形成した。
著者
谷口 竜王
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.197-204, 2011-07-10 (Released:2014-04-22)
参考文献数
73

近年,高分子微粒子は,塗料,接着剤,熱可塑性プラスチック,繊維,製紙,電子素子,そして体外診断薬などの応用分野で注目されている。不均一相ラジカル重合の発展とともに,様々な表面機能化粒子が精力的に調製されている。これらの重合方法のなかでも,技術的(容易な操作方法,高いモノマー転化率,そして様々な製品への応用性)および経済的(良好な生産性,低コストな試薬,そして安価な投資金)観点から,サブミクロンサイズのラテックス粒子調製法として,乳化重合,ソープフリー乳化重合,ミニエマルション重合などの乳化重合をベースとする手法が最もよく用いられている。制御された構造と表面官能基を有する機能性高分子微粒子の調製方法に関する数多くの論文が報告されている。本総説では,機能性モノマーとの乳化重合による表面機能性ラテックス粒子合成の最近の進展について紹介する。また,粒子表面からのグラフト重合に制御/リビングラジカル重合(原子移動ラジカル重合,可逆的付加開裂連鎖移動重合,ニトロキシド媒介重合など)を適用した手法についても述べる。
著者
仙北谷 英貴 山本 秀朗 党 偉栄 久保内 昌敏 津田 健
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.178-187, 2002 (Released:2012-08-20)
参考文献数
11
被引用文献数
1

ケミカルリサイクルを行う目的で3種類のエポキシ樹脂を80℃の4mol/1およひ6mol/1の硝酸水溶液により分解した.DDM (diaminodiphenylmethane) 硬化ビスフェノールF型エポキシ樹脂では, 樹脂は4molAで約400時間, 6mol/1で80時間の分解時間を要した.DDS (diaminodiphenylsulfone) 硬化TGDDM (tetraglycidyldiaminodiphenylmethane) 型エポキシ樹脂は, 4mol/1では約50時間, 6mol/1では約15時間で分解した.硝酸水溶液から酢酸エチルによって抽出された化合物の分析の結果, C-N結合の開裂とニトロ化が起こっていることが明らかになった.また, 一般的に耐酸性の高い酸無水物硬化エポキシ樹脂について, 樹脂主剤の化学構造の中にC-N結合をもつ無水メチルハイミック酸硬化TGDDM型エポキシ樹脂を硝酸水溶液で分解させた.4molA硝酸水溶液では約80時間, 6mol/1では約250時間で分解し, 本手法が酸無水物硬化エポキシ樹脂にも応用可能であることが明らかになった.分解生成物の分析結果から, 回収された分解生成物を再重合する目的であればビスフェノールF型エポキシ樹脂の4mol/1硝酸水溶液による分解が優れ, 単純に廃棄物処理するだけであればDDS硬化TGDDM型エポキシ樹脂を6mol/1硝酸水溶液で分解させる方法が最も適していることが明らかになった.
著者
平野 啓之
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.38-46, 2015-01-20 (Released:2015-03-17)
参考文献数
29

エポキシ樹脂は優れた機械特性,耐熱性および炭素繊維との接着性から,CFRP のマトリックス樹脂として幅広く用いられている。CFRP の成形法の進歩は,エポキシ樹脂に成形法に応じた多様な特性を要求するに至っている。本項では,CFRP に汎用される成形法を紹介し,それぞれの手法における樹脂設計の留意点を,最近の技術動向を含めながら説明する。
著者
古川 睦久
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー論文集 (ISSN:24333786)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.3-9, 2018-01-10 (Released:2019-07-17)
参考文献数
26

ポリウレタンは狭義にはウレタン基を含有するポリマーの総称であり,広義にはイソシネートから生成される官能基を含むポリマーのことである。今日では,工業材料,医用材料,農業・水産業材料から家庭生活材料までポリウレタンが使用されないところはなく,我々の生活に不可欠な材料となっている。このポリウレタンが I.G.Farben(後のBayer 社)のOtto Bayer らのグループにより発明されて80 年を迎え,日本にポリエステル系フォームの製造技術が導入されて市場に出されて還暦を過ぎた。本稿ではポリウレタン開発と日本へ導入の歴史をながめるとともに,1970 年からの日本でのポリウレタンの発展の流れを概観する。
著者
加門 隆
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
熱硬化性樹脂 (ISSN:03884384)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.94-111, 1985-06-10 (Released:2012-08-20)
参考文献数
61
被引用文献数
1

熱分析にはいろいろな方法があり, 原理, 操作が簡単ではあるが, ガラス転移温度, 融点, 熱膨脹, 反応, 熱分解など多くの情報が得られるので, 高分子材料の分野でも広く用いられているが, 本稿ではこれらのうち示差熱分析 (DTA), 示差走査熱量分析 (DSC) などの熱測定の熱硬化性樹脂の硬化反応への応用についてのみ述べたものである。これらの方法により, 広い温度範囲にわたり, 容易に, 迅速に複雑な熱硬化性樹脂の硬化の過程が得られるだけでなく, 硬化反応の速度論的解析もできることを示した。このことから, これらの方法は熱硬化性樹脂の化学的研究のみでなく, 成形材料, 接着剤, 塗料などの工業材料の品質管理にも用いることができる。
著者
鶴田 四郎
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
熱硬化性樹脂 (ISSN:03884384)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.28-39, 1988-03-10 (Released:2012-08-20)
参考文献数
17

尿素樹脂の化学として, まずScheibler, Trostler, Scholz (1928), Bois de Chesne (1932), 次でFahrenhorst (1955) らの論文を紹介し, 尿素とホルムアルデヒドの反応が酢酸, 水, ブタノールと著者ごとに異なる溶剤中で行われている特異点を指摘した。Fahrenhorstがジメチロール尿素のアルカリ水溶液中における特殊な安定性につき報告しているのに端を発し, Martin (1952) の論文を分析すると共にジメチロール尿素とフェノール類の反応をDiesbach (1931), Euler (1941), Zigeuner (1955) らの論文について検討した。最後にこれらとアンモニア・レゾール生成反応に於ける庄野 (1929), 井本 (英) (1949) らの業績との類似性を指摘する。
著者
佐藤 次郎
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
熱硬化性樹脂 (ISSN:03884384)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.92-103, 1993-06-10 (Released:2012-08-20)
参考文献数
12

ドライフィルムフォトレジスト (DFRと略す) はプリント配線板 (Printed Wiring Board. PWBと略す) の配線パターン形成用レジストとして広く用いられている。最近, PWBの高密度化 (ファインライン化, スルーホールの小径化, 多層化など) が急速に進んでおり, PWBメーカーの多様な要求に対応するために, 高密度PWBの製造に適したDFRの開発がレジストメーカーにより積極的に進められている。
著者
笹川 勝好
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
熱硬化性樹脂 (ISSN:03884384)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.185-194, 1994-12-10 (Released:2012-08-20)
参考文献数
40
被引用文献数
1

1972年に米国で「眼鏡レンズの耐衝撃性に関するFDA規格」が制定されて以来, 眼鏡レンズのプラスチック化が世界的に急速に進んでいる。現在でのプラススチック化率は米国で80%以上, 日本でも70%を越えた。また, 世界のレンズ用モノマーの生産量も年間1万数千トンに達し, プラスチックレンズの生産量も年間3億枚に届こうとしている。その理由は, 軽量性, 耐衝撃性及び染色性において無機のクラウンガラスを凌賀しているからである。最近ではプラスチックレンズの薄型化や低収差に向かって改良が進んでいる。本稿ではプラスチックレンズの研究の始まりから現在までの素材面での進歩について概説する。