著者
矢野 環 岩坪 健 福田 智子 ヤノ タマキ イワツボ タケシ フクダ トモコ Yano Tamaki Iwatsubo Takeshi Fukuda Tomoko
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The social sciences (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.27-51, 2013-11

資料(Material)竹幽文庫蔵『源氏千種香』は、『源氏物語』五十四帖にちなんだ五十四種類の組香の作法を記した伝書である。安永二年(一七七三)の自叙をもつ。菊岡沾涼著『香道蘭之園』所収本は、元文二年(一七三七)頃の成立だが、桐壺香・夢浮橋香がない。そこで、箒木香・梅枝香・玉鬘香・若菜下香について、さらに両者を比較したところ、組香の方法は、蘭之園本に比べ、竹幽本の方が総じて複雑になっていることがわかった。また、物語の内容と合わない箇所が少なくない蘭之園本に対し、竹幽本は、物語に合わせて手直ししていることが認められる。すなわち、蘭之園本は、『源氏小鏡』(第一系統)を参照して作成されているようであるが、竹幽本は、『源氏小鏡』(第二系統)、あるいは『源氏物語』そのものに拠っていると考えられるのである。
著者
小林 丈広
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
no.79, pp.1-15, 2007

論説近代の地域住民組織のあり方を考えるために、祇園祭に山鉾を出す天神山町に残る町式目を検討した。前半では、その前提として、町共有文書のあり方やその調査の歩みについて概観した。町共有文書の調査や保存は、町運営や町づくりなどと同様に公共的性格を持つが、その実態は一部の人にしか知られていない。そこで、その紹介も兼ねて、調査の経過も記述した。後半では、天神山町に残るいくつかの町式目の変遷をたどった。とくに、一九〇二年の「借家人町則」に着目し、それが隣接する山伏山町の「借宅者町則」をモデルにしたものであることを明らかにした。近代京都の町運営の転換点については、これまで公同組合の設置を重視する見方が根強くあったが、少なくとも山鉾町では、山鉾の維持問題がその契機となった。町組織のような地域住民組織の歴史的研究はまだ始まったばかりであり、こうした具体例を通じて、個別事例を積み重ねていくことが重要であろう。
著者
鍛冶 博之
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
no.83, pp.99-125, 2009

論文(Article)本稿の目的は、第1に、小売・流通業界の大手企業であった株式会社ダイエーがパチンコホール事業を展開するようになった歴史的経緯を解明すること、第2に、1980年代後半からパチンコ業界の健全化の一環として展開される、ホール業界での「経営改革」にもたらした影響を考察すること、以上二点である。なお本稿では、ダイエーが日本ドリーム観光への経営支援と買収を行った時期(1980年代)と、株式会社パンドラを子会社化し、ホール業界への本格的参入を果たした時期(1990年代前・中期)に着目する。The purpose of this paper is to clarify why Daiei developed the pachinko parlor business in 1980s-1990s, and what influence a management policy of Daiei had to the management reform in the pachinko parlor industry. This paper covers from 1980s (a period when Daiei supported the business of Nihon-Dream-Kanko Ltd.) to 1990s(a period when Daiei controlled Pandora Ltd. as a subsidiary company and started to manage some of pachinko parlors which Pandora had owned).