著者
福田 智子 フクダ トモコ Fukuda Tomoko
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.35-56, 2015-02-18

研究ノート(Note)『古今和歌六帖』は、約四千五百首の歌を、二十五項目、五百十七題に分類した類題和歌集である。収載歌には、『万葉集』『古今集』『後撰集』など、出典の明らかな歌もある一方、現在では出典未詳と言わざるを得ない歌もある。本稿では、「朝顔」から「葵」までの題に配されている出典未詳歌、九首について注釈を施す。
著者
矢野 環 岩坪 健 福田 智子 ヤノ タマキ イワツボ タケシ フクダ トモコ Yano Tamaki Iwatsubo Takeshi Fukuda Tomoko
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.57-85, 2015-02-18

資料(Material)竹幽文庫蔵『源氏千種香』は、『源氏物語』五十四帖にちなんだ五十四種類の組香の作法を記した、安永二年(一七七三)の自叙をもつ伝書である。本稿では、まず、蛍香から藤袴香を翻刻し、次に、これらの巻の内容について、先行する菊岡沾涼著『香道蘭之園』所収本(元文二年〈一七三七〉頃成立)と比較し、『源氏物語』およびその梗概書や注釈書との関わりを考察する。巻末には、当該箇所の影印を付す。
著者
鍛冶 博之 カジ ヒロユキ Kaji Hiroyuki
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.75-104, 2014-08-29

論説(Article)本稿の目的は、レジャーの商品史的考察のひとつとして日本における代表的なレジャーであるパチンコを取り上げ、パチンコの出現と普及の経緯、日本社会で普及した背景(海外で普及していない背景)、日本社会にもたらした影響を考察し、ランドマーク商品としての可能性を模索することである。第1章では、戦前期に注目し遊技機の起源とパチンコが日本社会で誰によって、いつ頃、どこで登場したのかを考察する。第2章では、戦後期に注目しパチンコ産業史の動向を主要な出来事に注目して概観する。第3章では、なぜパチンコが日本社会で普及したのか(逆になぜ海外では普及していないのか)について考察する。第4章では、パチンコが日本社会に及ぼした影響を考察する。そして最後に、パチンコがランドマーク商品とみなせるのか否かについて検討する。Pachinko is one of Japanese leisure activities and is regarded as the typical Japanese culture. The market scale of Pachinko industry in Japan amounts to about twenty trillion yen. It occupies about thirty percent in Japanese leisure industry. The purpose of this paper is to clarfy the detail of Pachinko's appearance, the reason why Pachinko can spread in Japan (in other words ; the reason why it can't spread in foreign countries), and the influence which it has on Japanese society, and to study whether Pachinko can be regarded as the Landmark Commodity or not.
著者
夫 鍾閔 Jongmin Boo
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The Social Science(The Social Sciences) (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.57-84, 2021-11-30

本論文は,丸山眞男の思想をめぐる言説を取り上げて,そこにおいてどのような観点から,何が問題とされてきたかを検討するものである。まず,国民国家の問題点に積極的に取り組んで丸山を批判する議論を検討し,そこで丸山が国民国家論の思想家の代表として標的にされた理由を考察した。その後,国民国家批判の潮流と距離を置きながら丸山思想の意義を見出す諸解釈を検討したが,こうした議論が〈国民国家批判としての丸山批判〉から丸山をどのように救い出しているのかを確認した。これらの解釈は国民国家の問題性を認識しながらも,丸山と国民国家を分離させようとするが,そこには,自由主義と民主主義の対立という契機が働いている。しかし,それらの主張を丸山のテキストに即して検証したところ,その解釈には論理的な難点がある。その点,丸山のテキストの読解としては,丸山の国民国家論を一貫したものとして捉えたということで,国民国家批判論者たちによる丸山論のほうがより適切だったと結論付けると同時に,丸山の国民国家論に再解釈の余地があることも明らかにした。
著者
鍛冶 博之 Hiroyuki Kaji
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The Social Science(The Social Sciences) (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.49-76, 2013-05-31

パチンコホール経営では、遊技球一球あたり4円で貸し出す「4円パチンコ」が主流であったが、2000年代半ば以降、遊技球を一球当たり4円未満で貸し出す営業形態として「低貸玉営業」が登場し、特に遊技球一球あたり1円で貸し出す「1円パチンコ」が注目を集めるようになった。今や低貸玉営業はホールの経営戦略にとって不可欠な要素であり、4円パチンコに続く強力な市場を形成しつつある。本稿では、パチンコホール企業が2006年頃より展開するようになり今日のホール企業経営の主要戦略のひとつと位置付けられる低貸玉営業に注目し、低貸玉営業が登場して全国に普及した経緯とその背景を明らかにすることを目的とする。第1章では史的経緯、第2章では普及背景について考察する。
著者
鍛冶 博之 Hiroyuki Kaji
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The Social Science(The Social Sciences) (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
no.83, pp.99-125, 2009-02-28

本稿の目的は、第1に、小売・流通業界の大手企業であった株式会社ダイエーがパチンコホール事業を展開するようになった歴史的経緯を解明すること、第2に、1980年代後半からパチンコ業界の健全化の一環として展開される、ホール業界での「経営改革」にもたらした影響を考察すること、以上二点である。なお本稿では、ダイエーが日本ドリーム観光への経営支援と買収を行った時期(1980年代)と、株式会社パンドラを子会社化し、ホール業界への本格的参入を果たした時期(1990年代前・中期)に着目する。
著者
本岡 拓哉 Takuya Motooka
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
人文研ブックレット = Jimbunken Booklet
巻号頁・発行日
no.70, pp.27-48, 2021-03-31

会期・会場: 2020年12月11日:同志社大学今出川キャンパス良心館304番教室
著者
瀬岡 和子 Kazuko Seoka
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The Social Science(The Social Sciences) (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.1-34, 2014-05-30

戦後日本の小売業態革新に貢献したひとりとして、昭和30年代における吉田日出男の意識と行動に焦点を当てて、彼が日本初のスーパーマーケット「丸和フードセンター」を誕生させていく経緯と,その後、スーパーマーケットのボランタリーチェーン活動=「主婦の店」運動を展開していく過程を、長戸毅(日本NCR)や喜多村実(公開経営指導協会)との関係に注目しながら,ミクロの視点から明らかにした。また、ダイエー創業当時の中内功と吉田との交流関係や、中内が吉田の主婦の店運動をどのように見ていたのかについて考察した。
著者
板垣 竜太 Ryuta Itagaki
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The Social Science(The Social Sciences) (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.37-68, 2023-02-28

本論文は,黄海道平山郡の刑事訴訟記録(1946~47年の94件)の分析を通じて,日本の植民地支配から解放されて間もない時期の北朝鮮社会における社会規範の急速な変化の様態を明らかにすることを目的としている。この時期、裁かれる側だけでなく,罪を認め,裁き,罰を与える側も,その根拠となる法令も,ともに流動的な状況にあった。新たな予審制度の導入や、公判への参審員の参加、公判の即日宣告制など、裁く方式にも大きな変化が見られた。民衆の新たな政治的要求にある程度応じながら,「人民」の名においておこなわれていった刑事司法では,ときに厳しい,ときに寛大な判断がくだされた。これは<罰>が与えられるべき<罰>だ,これは<罰>が与えられるべきものではない,という判断が繰り返されるなかで,社会の「ノーマル」(標準,正常)が徐々に形成されていった。
著者
谷川 竜一 Ryuichi Tanigawa
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The Social Science(The Social Sciences) (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.3-35, 2023-02-28

本稿では、1946年5月21日から55日間にわたって、金日成らの指導の下、平壌で行われた普通江改修工事を扱う。それを通じて工事計画の推移や実施の背景、実際の建設場所や動員計画、そして労働現場の実相を解明する。議論の前半では植民地期に遡って工事の経過を確認するとともに、後半では新資料を用いて動員方法や「突撃隊」の意義などを検討する。最終的には植民地期の建設工事が、解放後に脱植民地化されていくプロセスに迫る。
著者
川満 直樹 Naoki Kawamitsu
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The Social Science(The Social Sciences) (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.337-355, 2023-02-28

1947年に、パキスタンは英領インドより分離独立し誕生した。パキスタンの経済は、分離独立当初より、いくつかの財閥にけん引され現在に至っている。それらの財閥傘下企業は、現在でも特定の一族により支配されている。本論では、アトラス財閥、ビボージー財閥、ダーウード財閥とラークサン財閥の4つの財閥を取り上げ、それぞれの財閥傘下企業と一族の関係を検討する。具体的には、2000年代から2020年までの期間を対象に、財閥傘下企業が毎年発行しているAnnual Reportを分析の手掛かりとして、一族の中で誰がもっとも財閥傘下企業に対して影響力があるのかを検討した。
著者
林 葉子 Yoko Hayashi
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The Social Science(The Social Sciences) (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.31-55, 2021-11-30

本稿は,1900年以降に全国的に大流行したストライキ節(東雲節)に関する史料の検証を通じて,娼妓や芸妓にとっての自由廃業運動の意義について考察するものである。本稿では,ストライキ節の発祥地が東京であったことや,演歌師ではなく娼妓や芸妓らがストライキ節の流行の主要な担い手であったことを明らかにし,流行唄に表現された遊廓内の女性たちの性の自由を求める思いが,自由廃業運動を根底で支えた原動力だったと論じた。
著者
秋林 こずえ Kozue Akibayashi
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
人文研ブックレット = Jimbunken Booklet
巻号頁・発行日
no.72, pp.146-163, 2021-11-22

人文科学研究所連続講座2021第3回
著者
田中 和男 Kazuo Tanaka
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The Social Science(The Social Sciences) (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.1-29, 2011-08-26

高田保馬は青年期から貧困などの社会問題に関心を持っていた。20世紀初頭に学んだ五高時代には校友会雑誌に社会主義を紹介する論文を書き、トルストイの非戦論を紹介していた。同級生の一高転校問題を発端とする栗野事件に対しても、特権者を優遇する学校当局の姿勢を批判した。社会運動のための理論構築のために入学した京都帝国大学では、社会学の指導教授米田庄太郎により運動論的な視座が打ち砕かれ、地道な理論的探求の道を選んでいくことになった。