- 著者
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友寄 元樹
Motoki Tomoyose
- 出版者
- 同志社大学人文科学研究所
- 雑誌
- 社会科学 = The Social Science(The Social Sciences) (ISSN:04196759)
- 巻号頁・発行日
- vol.52, no.4, pp.151-176, 2023-02-28
本稿の目的は,ニューカレドニアの日本人移民史を再考することである。とりわけ,19世紀フランスの流刑と日本人移民を連続した歴史的出来事として捉え,近代世界システムの形成に伴う余剰労働力の「放逐」のプロセスとして描写する。本稿では,19 世紀フランスにおける都市問題を取り上げ,流刑へと発展する過程を見ていく。同時に,フランスが太平洋に帝国領土を拡張する流れを辿り,ニューカレドニア流刑地が誕生するプロセスを明らかにする。この時,フランスの都市問題と帝国拡大の思惑が重なるのである。そして,ニューカレドニア流刑の理想と現実を確認し,日本人移民到着に至る歴史を示す。第一回移民の募集は,明治政府の後ろ盾のもと,九州の男性を対象に約一ヶ月という短期間で行われた。本研究はこれまで個別に扱われてきたニューカレドニア流刑と日本人移民の歴史を接合させ,一国史的に認識されてきたニューカレドニア史を描き直す試みである。