著者
尾崎(井内) 智子 オザキ(イウチ) トモコ Ozaki(Iuchi) Tomoko
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The social sciences (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.105-131, 2015-11

論説(Article)本研究は、日本婦人団体連盟が行った「白米食廃止」運動をとりあげ、国民精神総動員運動にどのような影響を与えたのかを明らかにした。日本婦人団体連盟は、婦選獲得同盟が中心になってつくった組織で、1920年代に行われた女性参政権運動の流れをくんでいる。同連盟は1937年につくられると、最初に脚気予防の観点から白米食廃止が重要と考え、国・東京府・東京市のそれぞれの総動員運動でとりあげられるように働きかけた。日本婦人団体連盟の活動の結果、「白米食廃止」は東京府の政策にはとりいれられなかったが、政府と東京市内の総動員運動にとりいれられた。This study focuses on the movement to "Abolish the White Rice Diet" promoted by the Federation of Japanese Women's Organizations and discusses the impact of this campaign on the National Total Spiritual Mobilization Movement. The Federation of Japanese Women's Organizations was formed under the leadership of the Women's Suffrage League of Japan, which had been a prominent voice in the Women's Suffrage Movement during the 1920s. When the Federation was established in 1937, its leaders quickly realized the importance of eating germ rice to prevent beriberi and started lobbying activities not only on the national level but also on the prefectural and municipal levels. In the end, although many of the Federation's efforts were unsuccessful, the National Spiritual Mobilization Movement Central League and the Tokyo Municipal Government decided to adopt the recommendation to promote the consumption of substitute foods.
著者
戸邉 秀明 トベ ヒデアキ Tobe Hideaki
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The social sciences (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.27-47, 2013-02

論説(Article)本稿は,20世紀後半の日本における代表的な朝鮮近代史家であり,「内在的発展論」の主導者と目された梶村秀樹(1935~89年)の研究課題や方法の変遷について,同時代の日本歴史学の動向全体のなかに位置づけ,梶村の歴史研究の史学史的位置づけを検証する試みである。特に,梶村が晩年まで方法的革新を図り,国家と民衆の2つに焦点を結ぶ朝鮮近代史の全体像を追究した軌跡を,「戦後歴史学」とよばれる思想潮流との関係で位置づけている。It is required to understand the Japanese social sciences in the late 20th century, especially the academic movements that called "post-war historiography", to capture the development of the research agenda and methodical viewpoint by Kajimura Hideki(1935-89). This article aims to explore the Kajimura' s historiography on the modern Korean history in the trend of historiography in post-war Japan. Kajimura tried to innovate his own methodical viewpoint until shortly before his death, and pursued the overall picture of the modern history of Korea which links the two focuses of "state" and "people". This article traces the development of his viewpoint of "development".
著者
森 涼子 モリ リョウコ Mori Ryoko
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.57-66, 2014-05-30

書評(Book Review)2012年出版の邦訳書『自然と権力』の書評である。内容紹介にとどまらず、本書の議論が、現在ドイツにおける自然・環境保護の歴史学研究においてどのような意味をもつのかを考察している。とくにラトゥカウの「現代環境意識」論に焦点をあて、この意識の特性、その新しさと限界とに検討を加えている。さらに2000年初版後に修正・加筆された部分が邦訳されていることの意義を高く評価している。Diese Rezension geht nach einer kurzen Zusammenfassung des Buches der Frage nach, welche Bedeutung Radkaus historische Sichtweise auf die natürlichen Ressourcen und die von ihr herausgezogenen Argumente für die Historiographie über Natur- und Umweltschutz in Deutschland haben. Die Rezensentin konzentriert sich auf die Darstellungen der Gegenwart und erörtert, wie das von Radkau vorgestellte „moderne Umweltbewusstsein" zu charakterisieren ist und inwieweit diese Gesinnung für „global" bzw. für „deutsch" gehalten werden kann.
著者
山田 智輝 Tomoki Yamada
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The Social Science(The Social Sciences) (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.117-149, 2023-02-28

本稿は、独領東アフリカをインドの植民地にすべきとの構想をめぐる議論と、同地がイギリス委任統治領タンガニーカとなったことにともなう、インド人からの委任統治当局および国際連盟への請願を検討する。それにより、第一次世界大戦期から1920年代後半までの、インド人とタンガニーカの関係と、国際連盟および委任統治制度をめぐる彼らの認識やかかわりを明らかにする。
著者
森 あかね Akane Mori
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The Social Science(The Social Sciences) (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.1-17, 2021-02-28

律令や孝子説話等の例において、継母と継子の恋愛関係は「不孝」と結びつけられる。光源氏の「孝」を称賛する場面が繰り返されるものの、光源氏と継母的立場である藤壺の関係に対しても「不孝」への連想が働いていたと想定され、「薄雲」の天変に繋がっている。光源氏とともに語られる「孝」は不孝を照射し矛盾を示す皮肉的なものとして機能しており、それは本来的な「孝」思想から離れた物語の「孝」と位置付けられる。論説(Article)
著者
板垣 竜太 戸邉 秀明 水谷 智 Ryuta Itagaki Hideaki Tobe Satoshi Mizutani
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The Social Science(The Social Sciences) (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.27-59, 2010-08-10

本稿は国際的な視野から日本植民地研究を再考した。その際、「比較帝国研究」の枠組とは一線を画すことに留意し、日本帝国を他の植民地帝国と比較するというよりは、日本植民地研究の史学史と現況に焦点を合わせた。すなわち、マルクス主義、近代化論、ポストコロニアル論などの欧米の学界に由来する歴史研究の枠組が、日本植民地研究にどう受容され、対話がおこなわれ、批判され、鍛えられてきたかに注目し、議論を展開した。
著者
本岡 拓哉 Takuya Motooka
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The Social Science(The Social Sciences) (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.25-53, 2015-11-26

戦後日本の都市の河川敷には居住地が存在していた。しかし,戦後復興や都市化が進展する中で,いつしかこうした地区は消滅していくことになった。本稿は,こうした河川敷居住地のうち、行政からの土地の払い下げという形で集団移転を成し遂げた,広島市を流れる太田川放水路沿いに存在した旭橋下流地区を取り上げ,集団移転を可能とさせた居住者の連帯の状況やその背景についてアプローチするものである。
著者
友寄 元樹 Motoki Tomoyose
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The Social Science(The Social Sciences) (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.151-176, 2023-02-28

本稿の目的は,ニューカレドニアの日本人移民史を再考することである。とりわけ,19世紀フランスの流刑と日本人移民を連続した歴史的出来事として捉え,近代世界システムの形成に伴う余剰労働力の「放逐」のプロセスとして描写する。本稿では,19 世紀フランスにおける都市問題を取り上げ,流刑へと発展する過程を見ていく。同時に,フランスが太平洋に帝国領土を拡張する流れを辿り,ニューカレドニア流刑地が誕生するプロセスを明らかにする。この時,フランスの都市問題と帝国拡大の思惑が重なるのである。そして,ニューカレドニア流刑の理想と現実を確認し,日本人移民到着に至る歴史を示す。第一回移民の募集は,明治政府の後ろ盾のもと,九州の男性を対象に約一ヶ月という短期間で行われた。本研究はこれまで個別に扱われてきたニューカレドニア流刑と日本人移民の歴史を接合させ,一国史的に認識されてきたニューカレドニア史を描き直す試みである。
著者
岩坪 健 Takeshi Iwatsubo
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The Social Science(The Social Sciences) (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.1-17, 2014-02-28

楽器の中には、男性向け(または女性向け)の楽器がある。ジェンダーの考えによれば、男性性の楽器と女性性の楽器である。源氏物語には四種類の絃楽器が描かれている。それらを考察すると、男性性と女性性の楽器に分類できる。
著者
鍛冶 博之 Hiroyuki Kaji
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The Social Science(The Social Sciences) (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
no.78, pp.23-47, 2007-03-15

28兆円近くの市場規模を誇るパチンコ業界は、今や日本を代表する巨大産業のひとつである。しかしその成長・発展の産業史は、法的規制や偏見を含めた数々の課題を抱え込みながら、時にそれらを克服し、時に妥協点を見出しながら形成されてきた歴史でもある。そしてそれらの課題のなかには、今なお未解決のまま残されているものが少なくない。パチンコ業界全体が「業界の健全化」をいっそう推進し、業界改革を実現するためには、個別ホール企業による経営改革のほかに、業界全体が長年にわたって抱え続けてきた諸問題に真正面から取組んで解決して聞く積極的姿勢が必要とされるのである。筆者は、特に1980年代以降のパチンコホール業界における経営改革に関する研究を進めているが、本稿はこの研究を補足する役割をもつ。つまり、ホール業界が経営改革を実現させていくうえで解決すべき従来からの課題を取り上げてその問題点と対策法を、本号と次号の2回に分けて論じていきたいと考えている。ただし業界が抱える課題は多岐にわたるので、本稿では「経理の不透明性に関する課題」「換金システムに関する課題」「パチンコ依存症に関する課題」「ゴト師と不正機器に関する課題」「競合の激化に関する課題」「『パチンコ』という言葉自体に関する課題」の6点に絞って分析を進める。
著者
福田 智子 Tomoko Fukuda
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The Social Science(The Social Sciences) (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.1-21, 2021-11-30

『源氏物語色紙画帖』(請求記号:721.2/G9216、資料番号:166700140)の名称で、同志社大学文化情報学部に所蔵されている本書は、『源氏物語』の本文と画が、一帖につき一枚ずつで計十二帖分、二十四枚収められている。取り上げられている帖は、桐壺・若紫・紅葉賀・花宴・明石・蓬生・絵合・初音・若菜下・夕霧・橋姫・早蕨であり、『源氏物語』の帖の順序に沿っている。本稿は、これらの帖の本文と画について、他の『源氏物語』伝本および源氏絵と比較検討しながら、本書を紹介、考察するものである。資料(Material)近世から近代に至る日本伝統文化の分野横断的研究とデータサイエンス教材への活用
著者
秋林 こずえ Kozue Akibayashi
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
人文研ブックレット = Jimbunken Booklet
巻号頁・発行日
no.72, pp.146-163, 2021-11-22

人文科学研究所連続講座2021第3回会期・会場: 2021年7月2日:Zoomウェビナーによるオンライン開催