著者
小島 浩之
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.110, pp.2024, 2018-11-30 (Released:2018-12-27)

本稿は大学図書館が教員と連携して,外部研究費をコンテンツ公開のために活用できる方策を考えるものである。これは直接的な資金獲得の方策ではないが,大学図書館のコンテンツを研究者に利用させることで公開・利用のための利便性を向上できるという意味において,直接の資金獲得を前提としたコンテンツ整備と同等以上の効果を上げ得る。本稿では,様々な助成金制度全体の概要の説明,大学図書館が直接獲得できる外部資金の種類とその限界,実例に即した教員と大学図書館の連携方法について順に論じる。
著者
SCHIMMER Ralf GESCHUHN Kai Karin VOGLER Andreas 田村 香代子
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.109, 2018

この白書では,現在の購読型科学雑誌の集合体をオープンアクセスのビジネスモデルへ大規模に転換することについて,事実に基づいて強力に論証する。現存する雑誌は十分にテストされた機能をもっているので,維持され,かつ21世紀の研究のための需要に応えなければならないが,同時にその裏にある支出の流れは大幅に再構築される。オープンアクセスへ向けたこの決定的な前進は,十分な勢いをもっている。今ある多様なイニシアティブは,この明確な目標にまとまってゆくために協調するものでなくてはならない。研究の国際的な性質は,世界の一流の研究機関のコンセンサスを通じたものでなくては,この転換が真に世界的な規模で達成されることはないだろうということを暗示している。全ての状況を勘案すれば,すでに学術出版システムに投下されている資金は,未来へ向けて持続可能な転換を可能とするために十分なものである。現在雑誌購読システムの中に封じ込められている資金は回収されオープンアクセス出版サービスに再投資されるべきであるという理解が共有されなければならない。現在の図書館資料購入予算は,財政面やそれ以外のリスク無しでの転換を可能とするための究極の宝物庫である。目標は,今もなお研究者から要求されている,出版社が提供する確立したサービス水準を維持する一方で,必要な支払の流れを再定義し再編成することである。根本的なビジネスモデルを破壊することによって,雑誌出版が生き延びていくための力は維持され,未来の学術界の発展へ確かな足跡を残すことができる。
著者
岡部 幸祐 高橋 菜奈子 山本 和雄
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.109, pp.2013, 2018-08-31 (Released:2018-09-08)

創設から2年を経過し,2017年度末には543機関が参加する機関リポジトリコミュニティとなったJPCOARの様々な活動から,オープンアクセスの先端的機能の開発を担うタスクフォースにおける活動と国際会議での発表等,国際的な連携の活動を中心に報告する。このことにより,学術コミュニケーションをめぐる国際的な研究環境の変化の中で,機関リポジトリを核として,大学図書館が果たすべき役割を考察する。
著者
高橋 隆一郎
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.116, pp.2095, 2020-11-30 (Released:2021-01-13)

2020年4月にCOVID-19感染拡大に伴う緊急事態宣言が発表され,多くの図書館が臨時休館した。本稿では,COVID-19感染第一波に直面したレファレンス担当者として見聞き・経験したCOVID-19関連資料の探索並びにオンラインレファレンスの経験の整理を通じて,図書館での資料・情報提供の意義を再確認する。さらにはこれからも私たちと感染症との闘いが続いていくことを踏まえ,今回の経験から今後に生かしていくべきことを考察する。
著者
小野 亘
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.122, pp.2127, 2022-11-30 (Released:2022-12-08)

深川恒喜と『大学図書館研究』創刊までの関わりについて,国立大学図書館協議会資料などをもとに紹介する。
著者
中山 貴弘
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.114, pp.2054, 2020-03-31 (Released:2020-03-04)

米国において近年,大学で使用される教科書の価格が高騰しており,学位取得における経済的障壁として問題視されている。本稿では,その対応のためカリフォルニア州の立法化のもとカリフォルニア州立大学システムにおいて展開され,大学図書館が関与している,アフォーダブルな教科書・教材の入手支援制度について概観を行う。その上で,日本の大学図書館における修学支援への関与可能性について考察を加える。
著者
宮地 佐保 寺嶋 梓
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.119, pp.2124, 2021-11-30 (Released:2021-11-27)

大阪大学では,2019年12月にケンブリッジ大学出版と「Read & Publish モデル」の契約を締結した。これは2019年に大学図書館コンソーシアム連合とケンブリッジ大学出版との間で合意された提案に基づく契約であり,既存の購読モデルにOA 出版の内容を加えた新しいタイプの契約モデルである。本稿では,Read & Publish モデルが提案された背景を踏まえつつ,契約に至るまでに契約担当者が行った検討内容,契約後に行っている実務,今後検討すべき課題について報告する。
著者
荻 礼子
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.118, pp.2120, 2021-08-31 (Released:2021-08-19)

高知大学学術情報基盤図書館では,平成24(2012)年以降,「除籍図書等リユースセール」を実施している。除籍資料の有効活用と図書館資金の自己調達を目的としたこの取り組みは,現在では,図書館の恒例イベントとして学内外での認知度も上がり,一定の成果を挙げている。反面,新たな課題が顕在化してきた。本稿では,中央館の事例を中心に,「除籍図書等リユースセール」実施の経緯と現在までの過程,反響をまとめ,これらを通して得られた知見に言及するとともに今後の課題について考察する。
著者
瀨川 結美
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.114, pp.2059, 2020-03-31 (Released:2020-04-07)

日本のデジタルアーカイブは,発見性の向上やシステムのユーザビリティ改善が長年の課題である。特に研究資料の不足により,近年海外における日本研究が退潮傾向にある中,海外ユーザーを視野に入れた対応を進め,これを食い止める必要がある。一方,近年のIIIFの登場や,Adobe社によるFlash player開発の終了告知は,多くの図書館にシステム再構築の必要性を認識させ,先述の課題解決を図る好機と捉えることができる。具体的な対応策を認識するため,筆者は日本への関心が高いポーランドのクラクフに赴き,日本研究に関する学会への参加,関連機関の訪問調査を行った。その結果,日本のデジタルアーカイブは多様な観点から有効な資料と成り得る一方で,ユーザーからはポータルの整備や英語対応が求められていることがわかった。これらに対応しながら,日本のデジタルアーカイブを国際的な交流や研究協力の橋渡しとなる存在に育てていければと考える。
著者
石川 一樹
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.67, pp.96-103, 2003-03-31 (Released:2017-12-12)

東京大学大学院総合文化研究科・教養学部では平成14年,駒場地区駒場Iキャンパスに新図書館の建設を実現した。新図書館をめぐる環境,建設から開館に至るまでの経緯,施設の概要などの点から東京大学駒場図書館を紹介する。
著者
大田原 章雄 西山 朋代
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.110, pp.2018, 2018-11-30 (Released:2018-12-07)

東京藝術大学附属図書館では,2016年12月から2017年2月にかけて,クラウドファンディングプロジェクト「巨匠の響きよ永遠に! 藝大に遺されたレコード2万枚の危機を救う」を実施した。本プロジェクトは「クリストファ・N・野澤SPレコードコレクション」の保存を目的とするもので,最終日までに719万円の支援を集めて終了した。本稿では,プロジェクト立ち上げの経緯から実施の方法,支援者への特典,終了後の評価や今後の課題等について報告する。
著者
栗山 正光
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.105, pp.9-19, 2017-03-15 (Released:2017-09-22)

日本の大学生の情報行動をめぐる状況について論じた。公表されている調査結果に基づき,学習時 間,読書,新聞の閲読,情報機器の利用といった面から実態をまとめ,新聞離れが鮮明であること,パソコンや携帯電話などの情報機器は大多数の学生が使用していることなどの傾向を指摘した。また問題解決のための情報探索行動に関して,首都大学東京の学習相談の事例を紹介し,インターネット上の質問応答サイトと比較しながら,問題点を考察した。さらに,情報の利活用の道具として基本的なソフトウェアやSNS が学生に浸透している状況にも触れた。
著者
小陳 左和子
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.117, 2021

東北大学附属図書館における2011年の東日本大震災,2019年の令和元年台風第19号,2020年の新型コロナウイルス感染症といった,性質の異なる災害への対応についてそれぞれ報告するとともに,その経験から得られた知見や課題について言及する。
著者
中沢 孝之
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.81, pp.19-25, 2007-12-31 (Released:2017-11-09)

各地の図書館(高校図書館・大学図書館・専門図書館含む)から筆者が収集した「図書館の危機事例」および「危機管理マニュアル作成状況」をもとに,館内外で発生するトラブルの種類やその割合,発生傾向等を整理し,現在の図書館がどのような危機に直面し苦慮しているかを報告する。トラブルに対する具体的な対応は各館まちまちだが,発生するものには共通点が多く,事例と対処法を共有し検証していくことが大切となる。
著者
藤本 優子
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.119, pp.2125, 2021-11-30 (Released:2021-11-27)

慶應義塾大学メディアセンターにおける和書の電子書籍の購入,管理,提供について,Maruzen eBook Libraryを例に報告する。本学では,Almaを使用して,購入済みタイトル,契約,発注・支払情報を一元管理している。メタデータはAlmaのCentral KnowledgeBaseを使用しているが, 様々な問題を抱えている。検索システムKOSMOSに試読可能タイトルも含めて搭載し,利用者に提供しており,リクエスト機能と管理者画面の購入機能も活用している。また,コロナ禍での業務や利用状況を振り返り,和書の電子書籍が直面している電子化の遅れや利用条件等の改善の必要性についても述べる。