著者
湯浅 俊彦
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.119, pp.2129, 2021-11-30 (Released:2021-12-09)

大学図書館における電子資料の契約と提供は,業務処理のテクニックの問題ではなく,現在の大学図書館の喫緊の課題である大学DX(デジタルトランスフォーメーション)と関連づけて考える必要がある。本稿では,日本語タイトルの電子学術書を授業で活用するための歴史的経緯を振り返り,学生が1人1台のデバイスをもつことなどの情報環境整備,電子図書館サービスなどの図書館情報資源整備の必要性を検討する。また,学生の授業成果物などを電子書籍化し,電子図書館に登録・公開する「知の循環構造」の構築を実践的に行う,図書館のプロデュース機能から見た電子資料の契約と提供について考察する。
著者
小島 浩之
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.64, pp.1-9, 2002-03-31 (Released:2017-12-19)

中国では80年代後半から図書や出版の標準化が進められた。これに伴い標題紙,版権頁といった情報源もISOに準拠して標準化され,同時に出版者はCIPデータの提出と表示を義務づけられた。こういった情報源の標準化は1990年からほぼ10年間で成し遂げられた。したがって90年代以降に出版された中国書は,書誌構造を捉え易くなっている。これに対し80年代以前の図書は原則論が必ずしも通用するとは限らず,書誌構造を把握しにくい場合も多い。
著者
富田 さわ子 武部 真子 田波 真弓 柴田 育子 堀越 香織 芳鐘 文子
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.117, 2021

一橋大学附属図書館では,令和元(2019)年10月12日(土),東日本を中心に甚大な被害をもたらした台風19号の影響により,書庫内に大規模な浸水被害が発生した。施設や書架,蔵書等に受けた被害,復旧作業の経過及び今後に向けた取り組みについて,約1年が経過した時点での状況を報告する。
著者
石山 夕記
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.106, pp.63-70, 2017-05-31 (Released:2017-09-22)

2015年11月,ドイツの学術図書館を訪問し,学習空間についてのインタビュー調査及び訪問調査を行った。調査の結果,学習空間に関するいくつかの特徴と,利用者の利用行動から学習空間を作り出していく図書館側の姿勢を見て取ることができた。このような姿勢は,今後日本の大学図書館において、利用者が求める学習空間を実現していく上でも,大いに参考になるであろう。
著者
三角 太郎
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.112, pp.2044, 2019-08-31 (Released:2019-09-12)

類縁機関とされる博物館(Museum)・図書館(Library)・文書館(Archives)の間の連携については,文化情報資源の共有化という点からも期待が大きい。一方で大学内の大学博物館,大学図書館,大学文書館の連携についての報告事例は少ない。しかし,デジタルアーカイブや企画展示などにおいては,今後連携の効果が期待できると考えており,本稿では,まずそれぞれの組織の性質,共通点と相違点を分析する。その上でデジタルアーカイブと企画展示について,東北大学の取組みを事例として紹介する。
著者
市村 櫻子
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.99, pp.24-32, 2013

<p>東京大学柏図書館は,開館当初からの一般市民への大学図書館開放に加えて,平成20年10月に「東京大学柏図書館友の会」を発足させた。以来,図書の貸出だけでなく,大学の教員・学生・図書館職員が協力して,ブックトーク,上映会,音楽会等,幅広い事業を展開している。また,柏市立図書館や柏市内の大学図書館と連携し,同一テーマによる資料の企画展示,ビブリオバトル柏市決勝大会,市民の図書館見学ツアー等,大学図書館の特色を活かした事業を連携して展開している。</p>
著者
堀部 文子
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.101, pp.75-82, 2014-12-26 (Released:2017-10-31)

文部科学省の審議会等の答申等により,大学における高等教育の質的転換が求められる中,大学図書館にも教育への人的支援が期待されている。現状で人的支援の一例として挙がるのは図書館講習会である。そこで,より最適な図書館講習会実施のため,インストラクショナルデザインを導入したデータベース講習会の設計と実施を行った。その事例を報告する。
著者
生貝 直人
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.104, pp.11-18, 2016-11-28 (Released:2017-09-15)

本稿では、デジタルアーカイブに関わる近年の法政策動向と、それが図書館をはじめとする文化施設の活動に与える影響を理解することを目的として、まず国内外におけるデジタルアーカイブの法政策の状況、特に統合ポータルの構築に向けた各国の施策を紹介し、次に2015年度に文化庁で行われたデジタルアーカイブ促進のための著作権制度の見直し(図書館複製、孤児作品問題対策、紹介・解説のための利用等)を検討し、最後に今後の課題としての書籍等資料の全文検索サービスのあり方について論じる。
著者
佐藤 亜紀
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.114, pp.2057, 2020-03-31 (Released:2020-03-04)

本稿は,2019年9 月に訪問したシドニー大学図書館(University of Sydney Library),ニューサウスウェールズ大学図書館(University of New South Wales Library), メルボルン大学図書館(University of Melbourne Library),モナシュ大学図書館(Monash University Library),でのインタビュー調査に基づきオーストラリアの大学図書館における研究データ管理支援サービスについて報告する。調査から,大学によって使用しているツールや重点を置いているサービスは違うが,研究データのライフサイクルに即したサービスを展開していることがわかった。
著者
松原 悠 斎藤 未夏 石津 朋之 大山 貴稔 佐藤 まみ子 新村 麻実 野村 港二
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.107, pp.1703, 2017-12-29 (Released:2017-12-29)

筑波大学中央図書館のラーニング・コモンズ「ラーニング・スクエア」では,2015年10~12月,オープンなスペースである「グループ学習スペース」において,大学院生対象の授業科目「ザ・プレゼンテーション」を10回にわたり実施した。講師と受講者を対象に調査したところ,ラーニング・スクエアは,開放的で立ち寄りやすいという点が評価されている一方で,周囲の目や音が気になるため授業への集中が妨げられるという側面もあり,活発な議論や発表の場として活用するには課題が存在することが明らかとなった。
著者
深貝 保則
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.107, 2017

情報ネットワーク化の急速な進展のもとで,図書館の役割も学術研究の流儀も,相応に変化しつつある。図書館のスタッフたちは機関リポジトリの活用と並んで,電子的コンテンツのデータ登録について周到な工夫を施しつつある。だが,学術情報の共有について進展を図るという昨今の課題の遂行とともに,むしろそれ以上に,同時的双方向的に討論することが可能となったことの積極的な意味を捉えておくことが重要である。2回連載のこの論説の前半では,17世紀ヨーロッパを舞台とする科学革命以来の「知」の交換と公刊の様式の変遷に注目して,学術コミュニケーションの多層的な進展の可能性を考える。
著者
田中 麻巳
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.101, pp.83-92, 2014-12-26 (Released:2017-10-31)

大学図書館において,展示への注目の高まりの兆しが見られるにもかかわらず,実際どれほどの図書館が展示を実施しているのか,展示をどのようにとらえているのかは明らかにされていない。いくつかの調査例が存在するものの,さらに広範囲な実態調査が必要である。そこで本研究では,全国の大学図書館1,391館に調査票を送付し,展示の網羅的な実態調査を試みた。
著者
前田 朗 加藤 寛士 高橋 菜奈子 山地 一禎
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.103, pp.9-15, 2016

<p>国立情報学研究所が提供する「共用リポジトリサービス」JAIRO Cloudは,いまやJAIRO Cloudを抜きに日本の機関リポジトリを語れないところまで普及している。本稿では,このJAIRO Cloudについて,主にそのシステム基盤の意義について論ずる。JAIRO Cloudのシステム基盤の特徴は維持継続が容易で発展性が高いことにある。JAIRO Cloudの特色を地域共同リポジトリなど類似のサービスの比較により明らかにした上で,現在の取り組みを紹介していく。</p>
著者
矢野 麻子 松澤 玲子
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.108, pp.1715, 2018-03-31 (Released:2018-04-26)

ルーテル学院大学図書館では,2011年度に「図書館資料テキストデータ貸出」を開始し,2017年度で7年目となった。その間,様々な利用学生とコミュニケーションを図り,学内の教職員と連携しながらサービスを展開してきた。現在はPDF化や対面朗読,点字図書の借受,テキストデータ作成ワークショップも行っている。今回初めて利用学生に調査を行ったところ,学内と学外サービスを上手く組み合わせて活用していること等が分かり,今後持続的にサービスを行っていくための示唆を得ることができた。
著者
竹谷 喜美江
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.110, pp.2020, 2018-11-30 (Released:2018-12-07)

名古屋大学附属図書館では,平成29 年度に特定基金「附属図書館支援事業」(名古屋大学基金)を立ち上げ,基金獲得の仕組みや広報手段を検討し,デジタルサイネージや古本募金,クラウドファンディング,寄附特典である「蔵書票」の公募など,自主財源を多角的に受容できる様々な取組を実施してきた。ここでは,それらの取組ひとつひとつについて紹介する。なかでも,企業広告を掲載したデジタルサイネージの設置は,国立大学附属図書館では初の試みであるため,他の取組より詳細に紹介する。
著者
飯塚 潤一 福井 恵
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.108, 2018

障害者差別解消法が2016年4月に施行され,同法律の条文の一部『過重な負担』『合理的配慮』が大きく取り上げられ,責任と不安が交錯する中,大学附属図書館もその対応が順守義務として求められている。本稿では,まず同法律の概要を紹介する。続いて,図書館利用において,障害学生・教職員が感じる障壁を解消するには,どのように考え,具体的にどう対応すればよいのかを考えてみたい。特に情報の入手が困難な視覚障害者を中心に,支援機器の活用,司書の方による支援など,できるところからその方策を提案する。
著者
大田 海
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.109, pp.2008, 2018-08-31 (Released:2018-09-14)

急速に留学生交流が促進されているアジア地域において,大学図書館における国際化に即した情報リテラシー教育の先進的な事例から新たな知見を得るため,台湾の大学図書館への訪問調査を実施した。本稿では,留学生を対象とする英語による図書館サービスの利用支援,学習・研究支援に焦点を当てて,各大学の具体的な取組を紹介したのち,ウェブを活用した情報リテラシー教育,ステークホルダーとの連携および留学生支援の組織体制,の3つのポイントに沿って参考となる事例をまとめ,考察を述べた。
著者
小村 愛美 金田 佳子
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.109, pp.2005, 2018-08-31 (Released:2018-09-22)

本稿では2017 年11 月にコーネル大学(Cornell University)とミシガン大学(University of Michigan)で実施したインタビュー調査に基づき,北米の大学図書館事業における他組織との連携協力について,学習支援と研究支援の観点から報告する。調査から,この2つの大学では,教員と協働し情報リテラシーを向上させる授業を行っていることや,多数の機関と協同で学術情報のアーカイブを運営していることなどがわかった。調査先の図書館職員は専門性を発揮し大学内での位置づけを確固たるものにしようとしており,事業の持続性を確保し,学術と社会に対して貢献するという目的に力を注いでいた。
著者
原 修
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.108, pp.1713, 2018-03-31 (Released:2018-03-28)

立教大学は古くからしょうがい学生支援の取り組み事例を有し,現在も「しょうがいしゃ(学生・教職員)ネットワーク」と支援部局「しょうがい学生支援室」を中心に,各学部や部局がそれぞれの立場で連携し支援に取り組んでいる。図書館は,身体しょうがい学生支援に加え,2016年度より図書館が提供する学修支援のピアサポートである「ラーニングアドバイザー」により,発達しょうがい学生の学修支援を行っている。本稿では,1年半を振り返り,当該業務の実施状況や工夫,問題等を述べ,大学図書館における発達しょうがい学生支援の理想の仕組みについて言及する。