著者
小柳 公代 武田 裕紀 内田 正夫 永瀬 春男 野呂 康 デコット ドミニック ジュスラン オリヴィエ
出版者
愛知県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

パスカルの自然学を、我々がこれまでの研究によって位置づけた科学史的な評価に加えて、彼が探求成果を論文としてまとめるさいに投入したさまざまな技巧という観点から検討し、実験の実行者というよりも、レトリックを駆使する論証の天才としてのパスカル像を提示することに成功した。またこの過程で、パスカル研究の完璧な底本として流通しているメナール版のテクスト・見解にもいくつかの変更を迫ることができた。
著者
岡田 由香 大林 陽子 緒方 京 神谷 摂子 志村 千鶴子 高橋 弘子
出版者
愛知県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

看護系大学を拠点に地域と連携し、未就園児とその養護者を対象とした子育て支援事業を通して、子育て支援ネットワークを確立し、継続的な子育て支援活動を定着させるシステムの構築に取り組んだ。結果、大学-行政-地域という子育て支援ネットワークによる子育て家族への支援、学生への生きた教育現場の提供について成果を確認することができ、看護系大学の特色を活かした子育て支援活動のシステムを機能させる事業へと継続された。
著者
藤田 博仁 橋本 明 加美 嘉史 山田 壮史郎
出版者
愛知県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究はホームレスの自立支援を目的とする、ホームレス自立支援センターの業務統計を定量分析し、自立の効果測定と就労自立の実態を明らかにすることを試みた。ホームレス自立支援事業は、2000年以降国がホームレスの自立についての支援モデルを提示し、自立支援センターを拠点に実施している。調査研究の対象となった名古屋市は事業開始後3年が経過しており、就労による退所者は221人であったが、そのうち171人を分析の対象とした。その結果、以下のことが明らかになった。(1)3年間に国が効果的と主張する就労による自立は、自立支援センター退所者全体の34%に過ぎなかった(この割合は東京・大阪でもほぼ同様であった)。(2)退所後の追跡調査では時間の経過と伴に自立生活継続者の割合が低下し、「失踪」者の割合が増加し、経済的自立が「就労」から「生活保護」に移行する割合も増加していることが明らかになった。(3)ホームレスの自立を就労に求め、就労先を雇用市場に求めるだけでは、経済的自立に結びつかないことが明らかになり、自立支援モデルの再考が必要になった。(4)就労、住宅確保による自立支援センター退所は、自立のきっかけを掴んだに過ぎず、真の自立支援は退所後の地域生活を持続可能な状態にすることである。生活保護制度下では自立助長に関するケースワークは法外の事実行為とされ、生活保護による効果より最低生活の保障により重点が置かれていた。しかし、自立支援事業は自立支援を目的にしているため、効果はデーターで明確に示されるようになった。このことによって、事業効果の低さに関心が向くことは当然であるが、併せて自立の理念や内容について問われることになる。本研究によってもたらされた成果の範囲は事業効果の測定までで、持続可能な地域生活のあり方についての実証的研究にまでは至らなかった。この点については次回の機会に委ねたい。
著者
加藤 洋介
出版者
愛知県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究には大きく二つの目的があった。一つには、これまでに受けた科学研究費補助金によって、源氏物語全巻について『源氏物語大成 校異篇』(以下『大成』と略称)の河内本校異の補訂作業を行なってきたところであり、その成果として『源氏物語大成 校異篇 河内本校異補遺 稿(一)〜(五)』をまとめてきた。しかしながらこれは「補遺」であり、常に『大成』と見合わせる必要があった。また『大成』刊行後に紹介された伝本の校異をどうするかという問題も残っていた。そこで『大成』に未採用の諸本の校異を加えた上で、河内本の校異を一覧できる一書としてまとめることを企画した。これについては、本研究期間中に『河内本源氏物語校異集成』として刊行したところである。もう一つの目的は、別本についても『大成』の校異を補訂することであった。河内本源氏物語の成立を考えるためには、ぜひとも『大成』の青表紙本校異や『河内本源氏物語校異集成』と同基準での校異データが必要である。また自分自身の目で別本の本文に触れて、その感触を確かめてみたいという興味もあった。そうしたことから、河内本について行なった作業と同様のことを、別本についても試みたのであるが、その成果が研究成果報告書であり、「付 源氏物語大成 校異篇 別本校異補遺稿(上)(桐壺〜幻)」とした所以である。本研究は当初平成15年度までの4年間の研究期間を予定していたが、幸いにも科学研究費補助金の前年度申請が採択され、同じ研究課題名で平成15〜18年度までの継続研究が認められた。現在までに源氏物語全体の約2/3の調査を終えており、この研究期間内に源氏物語全巻の調査を終え、今回と同様の研究報告書を作成する予定である。
著者
加藤 洋介
出版者
愛知県立大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1998

本研究の目的は、河内本源氏物語に関する全校異の集成と、それによって河内本源氏物語の成立過程解明の目途を探ることにある。これまで平成4年度科研費 奨励研究(A)「河内本源氏物語の校合と校異語彙索引の作成」、および平成6〜8年度科研費 一般研究(C)「河内本源氏物語の諸本調査と校異作成およびそのデータベース化についての研究」において、『源氏物語大成』に採用された伝本の再調査を行なってきた。本研究ではこの成果に加え、『源氏物語大成』に未収録の岩国吉川家本・書陵部本・吉田本などの校異を加え、また調査に時間がかかるため先回は見送らざるをえなかった鳳来寺本(東海大学蔵現写本による)の調査を計画し、この2年間の研究期間においてこれらの伝本についてはすべて調査を終了した。その成果は『河内本源氏物語校異集成』(風間書房、来年度刊行予定)として一書にまとめ、研究者に広く公開できるよう準備を進めている。その調査の過程で、岩国吉川家本についての従来の見解を改めるべき必要が認められたため、その旨を論文化し、合わせて河内本源氏物語の成立に関わる問題の所在についても言及した。また河内本源氏物語の本文が別本に近いことは、以前より指摘されていたが、それがいかなる成立事情によるものかについて明らかにされていなかった。本研究においては、蜻蛉・手習という二巻についてだけであるが、河内本源氏物語は青表紙本を底本とし、それを若干の別本によって校訂することで出来上がった本文であることが明らかになり、その旨を論文化した。