著者
熊谷 吉治
出版者
愛知県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

談話における新情報の導入様態や、文の構造と発音の構造の関係に着目し、同一タスクによって収集された音声言語資料の分析を通して、日本語と英語の類似点や相違点を明らかにした。新情報の担う文法関係は日英語とも類似した傾向が見られたが、新情報を伴う名詞句の構造や導入のされ方は、日英語で違いが見られることがわかった。文法構造と音調構造の関係は、両言語の語順の違いに着目しながら分析と調査を展開・継続している。
著者
鵜殿 悦子
出版者
愛知県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

トニ・モリスンの文学テクストにはおとぎ話・民話・歴史等の物語の枠組みが見られる。しかし、表面的な枠組みはやがて換骨奪胎され、まったく異なる物語の枠組み、すなわち物語の深層構造が現れてくる。このような物語構造の特徴は、物語内容と深い関係をもっている。つまりそれは人と人との関係性の暗喩なのである。モリスンの小説において、血縁、人種、性、階級等に拠る通常の関係が無効にされ、まったく新しい関係が取り結ばれてゆくさまを検証した。
著者
長沼 圭一
出版者
愛知県立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

2009年度は、フランス語において通常は冠詞付きで現れると考えられる形容詞を伴う名詞句が属詞位置に無冠詞で現れる例について考察を行い、拙論(2010):「フランス語における属詞位置に現れる形容詞付きの無冠詞名詞について」としてまとめた。2010年度は、フランス語において通常はDEという形が現れる否定文の直接目的補語の位置に現れる不定冠詞UNを研究対象とし、拙論(2011):「フランス語における否定文の直接目的補語として現れる不定名詞句UN Nについて」としてまとめた。
著者
杉山 三郎 佐藤 悦夫 植田 信太郎 谷口 智子 渡部 森哉 伊藤 信幸 嘉幡 茂
出版者
愛知県立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

本研究は新大陸の古代都市の成立とその変容・盛衰の諸問題を、斬新な技術や方法論を用いながら学際的視点から考察することを目的とする3年計画のプロジェクトである。最初の2年間は古代モニュメントと表象に関する資料を収集し、考古学、歴史学、民族史学、宗教学、人類学また生物化学的視点を織り交ぜ、コンピューター解析、空間分析、統計処理を行った。特にメキシコ政府研究所とテオティワカン「太陽のピラミッド」の発掘調査を行い、貴重な都市形成期の資料を得た。
著者
大塚 英二
出版者
愛知県立大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1999

豪農の家政改革は、一個人の経営立て直しにとどまらず、地域的な信用構造の面からして、村共同体と地域社会に大きな影響を及ぼさざるをえない。その社会的・政治的意識や行動は常に衆人環視の対象であった。その家政改革や行動について論究する場合には、やはり彼らの日常的な業務内容と地域社会状況について検討を加える必要がある。以上のような観点から、山田家文書に残された書状類及び触・御用留の類の分析を通じて、山田家が家政改革を行う時期の東部遠州地域における政治的・社会的な状況と、その中での同家の役割について検討を加えた。山田家の経済的蓄積期にあたる18世紀後半には、山田家は庄屋として領主蔵米を扱い、当該地域の積み出し港である川崎湊の廻船問屋八郎左衛門と日常的なつながりを持って、八郎左衛門所有の湊の蔵(領主蔵米の一時保管庫)の実質的管理にも関わった。山田家の炭山経営にも八郎左衛門は関わっていたと推定され、こうした廻船問屋商人とのつながりが同家の豪農としての成長に直接関わっていたと考えられる。しかし、その後、山田家の経営は順調には進展せず、米穀類の価格低下や地域的金融の混乱の中で家政改革を余儀なくされる。最初に家政改革が行われた文政期は、まさにそうした不況下で幕府が大々的な倹約触(文政2)を出した時期であった。この時、山田家は郡中惣代として倹約と諸物価引き下げに関わる郡中議定を策定するのに奔走していたが、これは同家の経営上の問題と全く二重写しとなっている。豪農の社会的・政治的活動をその家政改革は相即的なものであると見てよいだろう。なお、当該議定に関わる郡中惣代間の書状のやりとりでは、隣接する他郡の議定内容なども意識されており、こうした有力百姓層においては社会意識の面でかなりの共通性があったことが理解できる。今後更に書状類からそうした意識を探っていく必要があろう。
著者
東 弘子
出版者
愛知県立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本年度は,言語をあるがままに分析しようとする言語学の視点と,一つのスタンダードを指向する大衆的視点またはそれを操作しようとする権力との関係について考察するという方向性で,研究発表,学会参加,論文発表をした。口頭発表としては「マスメディアにおける社会的上位者への敬語の使用状況と受容者への心的効果」(加藤淳,宮地朝子と共同)を第6回「社会言語学」刊行会研究報告会(2006/4,於:ウィルあいち)にておこない,そこでの議論をふまえ,社会学的な視点,批判的言説分析の手法を敬語研究に導入し,研究論文「批判的言説分析としての敬語分析-マスメディアにおける敬語・敬称の使用/非使用から-」『社会言語学』VI, pp.61-75(2006/9)を執筆した。また,言語政策,言語権,多言語化,規範意識等,社会における言語の価値付けのシステムと言語学のリンケージの方法論をさぐるべく,日本方言研究会,日本言語学会,JP/KRA Linguistics Conf.,多言語社会研究会,社会言語科学会等に参加し情報収集をした。前年度より継続している,TVニュース,ワードショー等におけるキャスターの発言のデータベース化も継続しておこなった。人間関係の距離とその表示となる言語形式についての整理にむけて,表の作成を継続中である。
著者
稲村 哲也 山本 紀夫 川本 芳 大山 修一 苅谷 愛彦 杉山 三郎 鵜澤 和宏
出版者
愛知県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

研究代表者らはこれまで中央アンデス、ネパール・ヒマラヤ山岳地域などで共同研究を重ね、高地環境における牧畜文化の研究を蓄積してきた。アンデス高地の研究から、リャマ・アルパカ牧畜の特徴として、(1)定住的であること、(2)乳を利用しないこと、(3)農耕との結びつきが強いこと、などを明らかになった。これらの特徴は相互に関係し、低緯度の高地に位置する中央アンデスの自然環境、生態学的条件と関係している。そして、アンデスには2種類のラクダ科野生動物ビクーニャとグアナコも生息している。アンデスの家畜種アルパカと野生種ビクーニャの遺伝的近縁性が解明されたことから、その両種の生態を把握することの学術的意義が明確になり、他の地域では困難な「家畜と近縁野生種の同一地域における共時的・通時的研究」がアンデスでは可能となった。そこで、本研究では、ラクダ科動物の家畜種と野生種に関する遺伝学的な分析をさらに精緻化すると共に、それらの生態、牧畜システムの実態をさらに検証し、また、より精度の高い自然環境に関するデータを踏まえて、野生種と家畜種、狩猟と牧畜、動物と農耕などの相互関係、ドメスティケーション等に関わる研究を推進し、新たな知見を得た。また、今後のドメスティケーション、牧畜成立過程、古代文明形成プロセスなどに関する新たな研究への基礎を構築することができた。
著者
杉山 三郎 佐藤 悦夫 植田 信太郎 奥田 隆史
出版者
愛知県立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

我々は平成16年度まで「月のピラミッド」を集中発掘し、内部に7時期のピラミッド基壇と5基の埋葬墓を発見した。ピラミッドの隣接区域からは住居址、黒曜石工房跡、5時期の中規模モニュメント遺構を確認した。本研究では、7年間のフィールドワークにより得られた膨大な発掘資料の整理と報告書の作成、また出土した遺物の分析・解釈・出版準備、そして副葬品の完形遺物のデーターバンクの作成を行なった。現在成果の出版準備中である。英語版はニューメキシコ大学出版社から、またスペイン語による詳細な発掘報告書はメキシコ政府の国立人類学歴史学研究所から出版する同意を得ている。さらに地上測量を基にしたテオティワカン中心部の三次元復元図作成のため、長期の現地作業を行なった。すでに「月の広場」から「城壁」まで「死者の大通り」に沿った建築群を2.5Kmにわたり、一部の住居群を除き、測量済みである。これにより、都市計画全体の空間配置も正確に把握可能となり、建築データはすでに様々な研究に使われ成果が出始めている。巨大化したモニュメントの資料は、国家形成と政治体制に関する直接的資料であり、政権の拡張と宗教的イデオロギーを反映する。また生贄体や戦士の副葬品、戦士の象徴であるジャガー、ピューマ、狼、鷲等の生贄動物体は、従来考えられていた平和的な神聖国家像と異なり、軍事的な覇権国家であったと示す。他に黒曜石製品、遠隔地からの貝製品、ガテマラのヒスイ製品などはテオティワカン国家の交易・政治的介入を暗示し、マヤ王朝と直接の関係を示す資料も出土した。一方でモニュメント周辺の諸活動に関する資料も得て、現テオティワカン国家像を大きく変える物的資料獲得と理論形成に貢献したと考える。
著者
竹越 孝 遠藤 雅裕 藤田 益子 遠藤 雅裕 竹越 孝
出版者
愛知県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究の目的は、近世中国語の信頼できるコーパスを構築し、それを存分に活用した研究を行うことにあった。我々がその対象として選んだのは、李氏朝鮮時代における中国語会話教科書『老乞大』の代表的版本と、清代後期を代表する白話小説『兒女英雄傳』である。これらを組み合わせることによって、元代から清代末期に至る北京語の通時的変化が一望できると考えたためである。スタート時にはプレーンテキストの入力はもとより、品詞情報・構文情報など種々の文法タグを付し、語彙表を作成するところまでを射程に入れていたが、実際に取りかかってみると、各版本を吟味し信頼に足る底本を選定するまでの段階で多くの時間が費やされることとなった。こうした文献学的研究によって我々の視野は格段に広がったものの、本格的な計量言語学的研究の領域にまで踏み込む余裕がなかったことは残念である。今後の課題としたい。研究成果報告書は資料編と論考編からなる。資料編には今回の研究資源の一つである竹越孝編「老乞大四種対照テキスト」を収めた。論考編には我々がコーパスの作成過程でなした文献学的研究と、コーパスを活用して行った語彙・語法研究を収めた。具体的には、遠藤雅裕「『老乞大』各版本中所見的「將」「把」「拿」-并論元明清的處置句-」、遠藤雅裕「《老乞大》四種版本裡所見的人稱代詞系統以及複數詞尾」、竹越孝「今本系《老乞大》四本的異同點」、竹越孝「論介詞"着"的功能縮小-以《老乞大》、《朴通事》的修訂為例」、藤田益子「関於『児女英雄傳』的鈔本-従詞彙方面的考察-」、藤田益子「関於在《児女英雄伝》中出現的"把"字句-"把"的賓語帯量詞"箇"」の6篇である。
著者
大野 出
出版者
愛知県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

平成12年度〜平成15年度における研究課題「日本近世における老荘思想の解釈に関する研究」の一つの到達点として、平成15年度、東方学会・国際東方学者会議のシンポジウム「林希逸『三子〓斎口義』と東アジア三国の近世文化」(代表・池田知久)の企画にChairpersonとして参画し、池田知久、小島毅、中野三敏、山城喜憲、周啓成、王廸、崔在穆、宮崎修多(以上敬称略.なお、周啓成氏については、中国におけるSARSの流行とこれによる出国手続の複雑化、長期化にともない来日できず、同氏の研究発表については代読がなされた)らとシンポジウムにおいて議論を行なったが、このシンポジウムにおける研究発表内容については、『国際東方学者会議・シンポジウムIII資料集』としてまとめられ、会議当日、会場(日本教育会館)において配布された。なお、同シンポジウムにおいて研究代表者(大野出)は午前の部(第I部)の司会を担当し、午後の部では「実学としての『老子〓斎口義』」と題する研究発表を行ない、午前の部に引き続き討論に参加した。この研究発表については、その要旨を中国語訳(王廸訳)とともに報告書に掲載した(英文による要約も加えた)。また、平成13年度以降にあっては、日本近世における老荘思想の受容という問題から、老荘思想および道教の受容へと視野を広げた研究に取り組んできた。その過程において、日本における霊籤の受容という問題の重要性を発見するに至った。このことが平成15年度までの当該研究から平成16年度の基盤研究(C)(2)「日本における霊籤の受容と展開に関する思想的研究」への発想が生まれる契機となった。
著者
近藤 健一郎
出版者
愛知県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

1、沖縄県内の小学校が刊行した学校記念誌に掲載された回想記録や座談会記録を資料として、近代沖縄における方言札の実態について調査研究を行った。明らかにできた点は以下の通り(報告書第2章)。(1)沖縄全体としてみれば、1900年代前半以降のあらゆる時期に方言札が存在していたことが確かめられた。この事実はこれまでの研究に対して次のような修正を迫るものである。第一に方言札の登場がこれまで考えられていた1900年代後半よりも若干古く1900年代前半であること。第二に方言札が「下火」になってきたと考えられていた1920〜30年代にかけても、多くの小学校に方言札が存在していたこと。(2)方言札は、児童の相互監視と罰を基本的な特徴としつつも、学校ごとに適用範囲や導入方法などに違いが存在した。そして児童は方言札を免れようと、また渡されないようにと、弱い児童にむりやり沖縄言葉を話させるなどの対応をしていた。2、小学校における国語科設置など日清戦争後の「国語」確立に向けた政策を展開するなかで、文部省が沖縄県用に編纂した『沖縄県用尋常小学読本』(1897〜1904年度使用)を用いた教育実践とその論理について考察した。その際、沖縄県私立教育会機関誌『琉球教育』に掲載された教育実践記録や教育論、言語論を主要な史料として用いた。分析の結果、1900年頃を境として、標準語教育の方法は、沖縄言葉を媒介としたものから沖縄言葉を最小限にとどめ主として標準語に依ったものへと移行しようとしており、標準語教育は沖縄言葉の排除を伴っていたことを明らかにした(報告書第1章)。
著者
代田 健二
出版者
愛知県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,弾性波動場における係数同定逆問題の実用問題例である周波数データを用いた鉄とコンクリートによる合成梁の欠陥同定問題に対して,反復型数値解法を開発した.変分法的定式化によりチコノフ型正則化項を持つ汎関数による制約条件付き最小化問題を導出し,その問題へ射影勾配法を基礎とした反復アルゴリズムを適用した.数値シミュレーションによる周波数データおよび実測データを用いた数値実験を実施し,一定精度で同定できることを明らかにした.
著者
小柳 公代 本多 秀太郎 武田 裕紀
出版者
愛知県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

我々は、科学思想上でのデカルト、パスカルのこれまでの位置づけに疑問を提出し、通説成立のゆえんを当時の時代状況の中へ置きなおして検討し、それを広く内外の研究者に発信することを目的として2年間の研究活動をおこなった。具体的には次の7項目:(1)実験や科学史での専門的知識をもつ研究協力者をまじえた研究会、(2)海外協力研究者を招聘してのワークショップ、(3)海外調査研究、(4)公開実験会、(5)デカルト、パスカル科学、思想関係書誌作成、(6)科学史学会年会での報告、(7)成果報告集(欧文)の刊行、を挙げた。このうち(2)が海外研究分担者の来日とりやめによって実現できなかったほかは、すべて実行し、多くの稔りをえた。研究会での討議から、デカルトでは17世紀のネーデルランド、イギリスをも含む生理学の発展に注目すべきことを発信し、パスカルについては、計算機の考察から単位数の研究を深め、『パンセ』のパスカルとの有機的関係なども議論できた。とりわけ、数種の真空中の真空実験の復原公開実験と科学映画のプロ撮影者による図解つき記録映画DVD作成は、予期した以上の反響をよび、大きな成果をあげた。ブレーズ・パスカル国際センター主催のDVD上映会では、我々の研究報告に対して、フランス・イタリアの研究者たちから多くの意見が寄せられた。我々もまた20年前に詮議した「実行可能性」「思考実験」の問題から、空気の弾性についてのパスカル、ロベルヴァルの認識の違いを討議するところへと進んた。また、装置のガラス管端をふさぐ「膀胱膜」の正体を追求し、パスカルの風船の実験との関連などで研究を進捗させた。実際に膀胱膜、膀胱風船を作って実験することが今後の課題である。収集したデカルト・パスカル書誌は、近々にWEB搭載して、内外の研究者の供覧に付する。
著者
中村 不二夫
出版者
愛知県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

英語史研究は長い歴史を有するが、21世紀初頭にあっても、これまで語法分析されていない私的な日記・書簡資料を丹念に調査すると、従来考えられていたよりも早い言語変化の最前線を示す用例や、これまで未発見ないしは稀有な語法を発掘するなど、英語史実の訂正につながる用例に多々出くわす。この点を、8編の論考と2つの国際会議口頭発表、1つの海外におけるゲストレクチャー、1つの国内学会シンポジウムの司会と講師の仕事を通して実証した。