著者
寒川 登
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.330-333, 2000-01-01

今日の学術情報流通体制は,なくてはならぬ巨大データべースを生み出した。この仕組みでは核ができあがると雪だるま式に膨れ上がっていく構造になっている。この構造は便利でしかも有益ではあるが一面で技術を廃れさせる役割ももってしまう。このことに追い打ちをかけて行政コストの縮減要求がある。この影響を図書館でも人員構成や業務処理の方法をめぐって強く受けることになる。こうした今日の状況下でできることを考える。
著者
呑海 沙織 溝上 智恵子
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.2-15, 2011-05-01

大学図書館における学習支援空間に着目し,主として北米で発展した学習図書館からインフォメーション・コモンズ,ラーニング・コモンズまでの学習支援空間の変遷について考察を行った。学習図書館は,学部学生数の急速な増加等を背景に,1950年代より北米で発達した学部学生用図書館であるが財政難を理由に,1970年代半ばをピークに衰退していった。インフォメーション・コモンズは,情報通信技術の急速な発達を背景として1990年代以降普及し,その後,学習支援サービスをワンストップで提供するラーニング・コモンズへと変容しつつある。
著者
後藤 敏行
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.256-267, 2012-11-01 (Released:2017-05-24)
被引用文献数
1

本稿は,長尾真・前国立国会図書館長の「長尾構想」を検討する。長尾構想を推進する際,予算の制約上,できる範囲で資料の一部を対象にしていくやり方と,民間企業と連携してより多くの資料を対象にするやり方の2つがあると予測する。また,パブリックドメインと推定される資料,非市販または権利者不明と判断される資料を電子化して図書館内での閲覧,利用者への有償貸出に供する場合はオプトアウトを,市販中の資料を国立国会図書館のデータベースから出版社が販売するという仕組みについてはオプトインの規定を設けるべきと提言する。
著者
安里 のり子
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.184-199, 2013-09-01 (Released:2017-05-24)

本稿は,反ユダヤ主義に基づいた「ホロコースト否定文献」の図書館での扱いについて考察する。まずカリフォルニア州図書館協会が1983年に経験した事件で,ホロコースト否定論者デイヴィッド・マッカルデンの表現の自由を認め,年次大会に参加を認めたことから,図書館の「ホロコースト否定論」の対応が論争となった事件を考察する。ここでは協会の内部対応に焦点をあて,聞き取り調査と第1次資料によって検証した。さらにアメリカ図書館協会の人種偏見・人種差別の方針の変遷を分析した上で,この事件が図書館の対応や方針策定に示唆するものを考察する。
著者
久野 和子
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.296-313, 2011-11-01 (Released:2017-05-24)
被引用文献数
1

本稿は,日本の学校図書館について,アメリカで注目されている「場としての図書館」研究を導入し,実証的な検討を行った初めての試みである。学校図書館という場を包括的,多元的に考察することによって,子どもたちの学びや学校生活の中で果たすべき場としての学校図書館の役割と機能の一端を示すことを目的とする。先行研究として塩見の「ひろば」論などをふまえた上で,オールデンバーグの「第三の場」を主要な概念的枠組みとして採用し,検討する。そして,学校図書館が「第三の場」の空間を包摂しうることを実証的に明らかにした上で,その教育的意義を,ボルノウの教育論,パットナムの社会関係資本論,生涯学習論に基づいて提示する。
著者
吉田 右子 川崎 良孝
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.328-340, 2013-01-01 (Released:2017-05-24)

本研究ではオレゴン州スプリングフィールド市憲章,コロラド州憲法第2修正およびシンシナティ市条例という3つの同性愛差別法へのアメリカ図書館協会の反対運動に焦点を当て,図書館専門職団体としての協会の社会的責任をめぐる議論を検討した。差別法に対する協会の姿勢は明確であり,一貫して同性愛差別法への対抗的活動を行った。また同性愛差別を図書館専門職の問題として認識し,反差別に取り組むことが協会内で了解されていた。考察の結果,専門職団体としての協会は同性愛者保護を専門職の価値観に内包していたことが明らかになった。
著者
川瀬 綾子 西尾 純子 村上 泰子 北 克一 「マルチメディアと図書館」研究グループ
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.140-150, 2017-07-01 (Released:2017-09-20)

2020年度以降に予定されている新学習指導要領の導入を軸として,初等中等教育をめぐる状況は「主体的・対話的で深い学び(いわゆるアクティブ・ラーニング)」,「カリキュラム・マネジメント」の提唱を中心としながら大きく変化しようとしている。また,授業内等でのデジタル教科書の活用の検討もされている。こうした中で,教育の情報化時代の「チームとしての学校」と学校図書館の役割,機能を改めて考察する。
著者
川崎 良孝
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.194-206, 2003-11-01

1977年にマサチューセッツ州ボストン市の近郊の町チェルシーで,教育委員会が学校図書館蔵書を除去した。それにたいして生徒,教師,図書館員,市民グループが,生徒や教員の修正第1条の権利を侵害していると提訴し,当該図書を図書館に戻すように訴えた。このチェルシー事件は1978年に判決が下され,原告勝訴となった。本稿はこの事件の経過,判決を紹介するとともに,判決の意義を考察する。そして学校図書館蔵書をめぐる諸判決なかで,生徒の知る権利を正面から認めた最も積極的な判決と位置づける。
著者
松岡 要
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.234-241, 2003-01-01

子どもに読書をすすめるための法律および政府計画が示されたが,その成立過程を整理するとともに,子どもたちの読書環境の現状をデータにより明らかにした。OECD調査を加えてみたとき,日本の子どもたちの読書環境には多くの問題点が指摘できる。それらをふまえて法と計画についての特徴と問題点を述べ,自治体が立案する計画には,子どもたちが自発的に読書を行うことのできる環境整備を図るものとして立案するよう,法と政府計画を生かすような工夫を求めたいと考えた。