著者
木内 公一郎
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.216-234, 2017-11-01 (Released:2017-12-22)

本研究の目的は,横浜市学校司書配置政策の形成過程とその構造を明らかにすることである。研究の枠組みとして政策形成過程研究および「政策ネットワーク」という概念モデルを用いた。分析の結果,市長,市教委,指導主事,市会議員,市民団体が政策ネットワークを形成していたことが明らかになった。政策課題の認識には学校司書配置を要求する市民団体と市会議員の影響力が大きく,政策の決定段階では市長の意向が強く影響した。1 校1名の専任配置は実現したが,採用形態は非常勤特別職であり,司書資格は採用条件に入らなかった。
著者
田井 郁久雄
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.260-271, 2003-03-01 (Released:2017-05-24)

公立図書館がべストセラーの複本を大量に購入して貸し出すことは,作家や出版社の利益の損失につながるという主張がなされている。図書館の発展と作家や出版社の利益は相反しない。図書館がべストセラーへの要求に応えることは,すべての資料への要求に答えることの一部分であり,「貸出」によって幅広い分野の資料の利用が活発化し,そのことが図書館の発展とともに,出版文化の安定と発展の基盤をつくる。本稿では図書館への誤解と憶測の内容を検証し,貸出による図書館の発展は出版界にとっても利益になることを,図書館現場の実情や統計数値の分析をもとに考察する。
著者
長坂 和茂
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.304-316, 2017-01

日本図書館協会の総裁徳川頼倫は,1923年から特別預金5万円の利子として年3000円を協会に対して支払い,財政的に支援している。その利子を当時の協会財政と照らし合わせ,利子の影響力の大きさと,使途について調査した。年3000円とは当時の日本図書館協会の会費収入に匹敵する重要な収入源であり,図書館雑誌の月刊化や図書館週間の宣伝などに使われていることが判明した。特別預金利子が大正期の日本図書館協会の財政にとって,大きな役割を果たしていることが明らかとなり,華族による社会貢献の一端を見ることができる。
著者
吉田 右子 川崎 良孝
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.328-340, 2013-01

本研究ではオレゴン州スプリングフィールド市憲章,コロラド州憲法第2修正およびシンシナティ市条例という3つの同性愛差別法へのアメリカ図書館協会の反対運動に焦点を当て,図書館専門職団体としての協会の社会的責任をめぐる議論を検討した。差別法に対する協会の姿勢は明確であり,一貫して同性愛差別法への対抗的活動を行った。また同性愛差別を図書館専門職の問題として認識し,反差別に取り組むことが協会内で了解されていた。考察の結果,専門職団体としての協会は同性愛者保護を専門職の価値観に内包していたことが明らかになった。
著者
石塚 栄二
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.464-465, 2012-03-01