著者
井上 順孝
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.85, no.2, pp.347-373, 2011-09-30

一九九〇年代に急速に進行したグローバル化・情報化と呼ばれる社会変化は、宗教教育に関する従来の議論に介在していると考えられる認知フレームに加え、新しい認知フレームを導入することを要請している。日本における宗教教育についての戦後の議論は、宗教知識教育、宗教情操教育、宗派教育という三区分を前提とするものが多い。このうち宗教情操教育が公立学校において可能かどうかをめぐる議論が大きな対立点となってきた。その理由には、近代日本の宗教史の独自の展開が関わっている。しかし、近年は国際理解教育の一環としての宗教に関する教育、多元的価値観の共存を前提とした宗教教育、そして宗教文化教育などと、新しい認知フレームに基づくとみなせる研究が増えてきている。これは、宗教教育に関する規範的視点とは別に、全体社会の変化に対応して形成されたものであり、従来の多くの議論とは異なる新しいフレームが加わった結果であると考える。
著者
弓山 達也
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.84, no.2, pp.553-577, 2010-09-30

本稿では、一九九〇年代後半から文部行政によって喧伝された「目に見えないものを大事にする」教育を官製スピリチュアル教育と措定し、それと取り組む教育現場の代表的な議論・実践を紹介しつつ、官製スピリチュアル教育の限界を明らかにする。教育現場では、官製スピリチュアリティの見えづらさをどう可視化するかが課題となるが、これを「こころの教育」「いのちの教育」のモデル校である京都府下の公立小中学校の試みから探り、これを官製スピリチュアル教育に対置する地域に根ざしたスピリチュアル教育と呼ぶ。しかし地域に根ざしたスピリチュアル教育にも限界があり、これを地域コミュニティ、宗教的資源、学校教育、スピリチュアル研究との関わりと結びつけ、その可能性を整理していく。
著者
弓山 達也
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.141-162,vii, 1996