- 著者
-
尾島 光栄
SHIMIZU Kenji Kenneth
- 出版者
- 日本歯科医史学会
- 雑誌
- 日本歯科医史学会会誌 (ISSN:02872919)
- 巻号頁・発行日
- vol.21, no.4, pp.212-220, 1997-03-25
- 被引用文献数
-
4
1〜7報に引き続いて1905〜1909年間に活躍した歯科及び歯科教育に貢献した諸人物像を紹介し,この時代の日本の歯学・社会・文化史を参考に掲載する.この5年間にはCanadian Dental Association (CDA)を中心とした歯科医師の身分保証のための登録制の法制化が各地域毎に確立された.一方,西海岸地域の開発と開港は人口の移動と他国からの移民が益々盛んになり,歯科行政,診療体制,歯科教育機関の拡充と充実が叫ばれた.歯科材料,歯科器械,歯科薬品特に麻酔薬の開発と発見,応用は歯科医師の診療に大きな影響を与え,歯科診療時の患者の無痛診療の恩恵に結びついた.歯科医師の商業的行動が過剰な宣伝と行動を思考させると共に,歯科材料の供給と販売の新しい分野が職業的に誕生し,長年の反対を押し切って歯科技工所の出現に至った.口腔疾患と全身疾患の関連性が漸く認識され始め口腔敗血症として,歯科領域の重要な疾患になり,これに対応するべく歯科医師の再教育と新体制の教育が叫ばれた.カナダの歯科の歴史上で初めての歯科教育の宣教師が中国に派遣され,中国歯科教育の基礎作りに貢献した.口腔保健と予防衛生の重要性が民衆に困難な理解を打破させて,歯科衛生士教育の機運が芽生え始めた.歯科人名録が出版され,氏名,資格,学位,出身学校等が明確化され,登録制が強化され,職業意識の向上と資質が問われた.