著者
平子 達也
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.1-15, 2013-01-01 (Released:2017-07-28)

本稿は,観智院本『類聚名義抄』中にある平声軽点の粗雑な写しと見られるものを利用し,従来同じ下降調として再建されてきたものの中に現れ方の異なる二つのものがあったことを示すものである。まず,観智院本『類聚名義抄』の中で,従来下降調として再建されるものに差されている声点のうち平声点位置に見られるものを下降調を示す平声軽点の「粗雑な写し」であると認められることを示した。そして,下降調として再建される形容詞終止形接辞「シ」と二音節名詞5類の第二音節に差される声点の在り方が異なることを示し,同じ下降調でも現れ方の異なる二つのものがあることを明らかにした。最後に本稿での議論を踏まえ,従来から議論のある[HF]型の存否の問題について論じた。
著者
馬淵 和夫
出版者
日本語学会
雑誌
国語学 (ISSN:04913337)
巻号頁・発行日
no.31, pp.61-90, 1957-12
著者
田中 牧郎
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.68-85, 2015-04-01

明治・大正期には多くの漢語が基本語化するが、雑誌コーパスの頻度によってそれを明確にとらえることのできる「拡大」「援助」を取り上げて、基本語化の過程を記述し、既存の基本語との間にどのような関係を構築していくのかについて研究した。その結果、「拡大」においては、新たな語義を加えながら基本語化していくことと、既存語「広がる・広げる」が言文一致によって基本語化するのと連動し、この語と類似性を高め、意味的・文体的な関係を強めていくことが分かった。また、「援助」においては、対象や主体に取る語句の性質を変えながら基本語化していくことと、既存語「助ける」と類似性を高め、意味的・文体的な関係を強めていくことが分かった。
著者
野村 剛史
出版者
日本語学会
雑誌
国語学 (ISSN:04913337)
巻号頁・発行日
no.158, pp.p1-14, 1989-09
著者
奥村 和子
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.49-56, 2016-07-01 (Released:2017-03-03)
著者
服部 匡
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.13-16, 2016-07-01 (Released:2017-03-03)
著者
田中 宣廣
出版者
日本語学会
雑誌
國語學 (ISSN:04913337)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.44-59, 2003-10-01

岩手県宮古市方言のアクセントは,柴田1955で「のぼりアクセント核」体系とされて以来注目されてきたが,不明な点が多かった。この方言のアクセントの全体像を詳細な調査により明らかにした。音声レベルでは,(A)1基本アクセント節内でアクセント節例によっては2箇所が高まる重起伏調・(B)語によっては声の上昇位置が定まっている・(C )上昇した音節からは少しずつ下降する調子がある(後続語によっては下降しない)・(D)有声音無声化が音調に影響がある・(E)特殊音との関係で音調を担う単位は音節,の5特徴が認められた。音韻論的解釈の結果,アクセント体系は東京式アクセントの「さがりめ」体系とは異なる「のぼり核」体系であることが明確になった。また,同一語の単独1語文と付属語接続時の各実現音調で高い部分が異なる,以前"山が動く"と表現された現象や,基本アクセント節の音調が「起伏」でも「無核」であることなどに合理的説明が得られた。
著者
野林 正路
出版者
日本語学会
雑誌
國語學 (ISSN:04913337)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.13-29, 2002-01-01

隣接科学の一部に「単一の標準特性では対象を確定指定できない」とする見方がある。語は,その使用者たちが他の選択可能性を排して標準化した対象の特性(の束)を語義に引きつけている。したがって類語による対象指示は,「家族的類似性の網目」状の錯綜を示す。この錯綜が語彙論の未開,広くはコミュニケーションにおける共約可能性の壁になってきた。だがこの稿では,その錯綜が,実は,秩序であることを論証する。具体的には(まえかけ)類を例に,話者たちの語の指示用法を行列に描き,「網目」の秩序が類義の2語(視点)の交差・複合で編成された中間分節構造,「複用語彙」の反復でつくられている事実を明らかにする。この形式は基本的には,対象を4種の論理的に可能,必然の「意味の野」に確定指定する働きをもつ。本稿では,話者たちがこの形式を用いて伝達系・モノ離れの実用言語を,認識系・モノ絡み,世界像構成の連関言語に還元(逆も)し,開放している事実を考証した。
著者
高山 倫明
出版者
日本語学会
雑誌
國語學 (ISSN:04913337)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.16-29, 2003-07-01

母語の発音の省察,それも一般に書記に反映しないアクセントのようなものへの反省は,異言語との接触に始まるのがつねであろう。日本語のアクセントに対する自覚も,字音の声調との出会いを契機としているだろうし,またその声調も,仏典の転読等を通じ,梵語に照らして観察されたと言われている。以後,日本語のアクセントは専ら平・上・去声といった字音声調の枠組みで把握され記述されたが,その枠組みは遡れば漢訳仏典の梵語音訳で長短の標示に与るものでもあった。本稿では,漢訳仏典の強い影響下に成った日本書紀の歌謡・訓注の音仮名と,日本語のアクセントの関連を探り,一部の音仮名にアクセントの反映が考えられること,また朧気ながらも母音の長短を掬い取っている可能性のあることを指摘した。