著者
福田 安志
出版者
日本貿易振興機構アジア経済研究所
雑誌
中東レビュー (ISSN:21884595)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.98-114, 2020

<p>From the beginning of the Trump administration, the U.S. military presence in Gulf Cooperation Council (GCC) countries has rapidly evolved. Specifically, the number of U.S. Air Force soldiers stationed in Qatar, United Arab Emirates, and Kuwait has been significantly reduced. This may be a result of President Trump's preference to minimize the level of U.S. troops deployed in the region. Conversely, the United States has maintained its naval presence in the gulf, including an aircraft carrier strike group and naval troops in Bahrain. In the same period, Iran has remarkably expanded its military capabilities after developing sophisticated new missile systems, drones, and submarines. Combined with recent hostile events in the gulf, this situation has heightened concerns about gulf security, in particular, to ensure the safe passage of crude oil destined for all parts of the world. Current tension may lead to an escalated presence of U.S. forces in the region. </p>
著者
宮地 隆廣
出版者
日本貿易振興機構アジア経済研究所
雑誌
ラテンアメリカ・レポート (ISSN:09103317)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.1-13, 2020

<p>ボリビアの2019年国政選挙は実施後に大規模な市民の抗議行動を引き起こし、当時の現職大統領であり同選挙で4選を果たしたモラレスの亡命を招いた。この事件に対しては、(1)モラレス側を強く批判する説明、(2)モラレス退陣を求める側を強く批判する説明、そして(3)ボリビアと同時期に大規模抗議運動が発生した国々との共通点を指摘する説明がある。本稿はそのいずれもが事態の説明としては過度に単純化されたものであることを指摘する。第一に、(1)と(2)は自らが擁護する側の暴力や不正の可能性に沈黙している。第二に、(1)が指摘する選挙における不正はいまだ実態不明であり、それを既成事実とした批判は成立しない。第三に、(2)は革新モラレスと保守的な抵抗勢力の対立として今回の紛争を捉えるが、革新勢力が反モラレス側にいることを無視している。第四に、(3)が重視する紛争の要因としての経済悪化やそれに伴う市民の不満の高まりについて、それを裏付けるデータは不十分なうえに、抗議行動が不透明な選挙過程を最も重視していた事実を看過している。</p>
著者
中原 篤史
出版者
日本貿易振興機構アジア経済研究所
雑誌
ラテンアメリカ・レポート (ISSN:09103317)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.17-34, 2018

<p>ホンジュラスの政権与党である国民党は、憲法で禁止されていた再選を最高裁に対する異議申し立てを通して可能にした。それにより第2期目のエルナンデス政権が誕生した。しかし、この再選は憲法違反とする市民の強い批判に加えて、大統領や政権幹部、国民党も絡んだ汚職問題や無処罰への批判により、市民による反汚職、反政権の抗議行動が発生し始めた。その特徴として、それまでは政治に対する関心が比較的薄く、従来はこうした抗議活動には参加しなかった一般市民が、SNSなどを通じてつながり、社会正義をかかげて参加しているという点が指摘できる。</p><p>本稿では第1期のエルナンデス政権のガバナンスを振り返ると共に、任期中に発覚した数々の汚職問題、軍・警察の腐敗問題と、市民から憲法違反と批判されながら国民党の強引な手法で実現した大統領の再選問題を取り上げる。そしてそれに対して社会正義を問い抗議活動を行うホンジュラス市民社会の活動を概観する。</p>