著者
向後 恵里子
出版者
明星大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、日本の近代を中心に、美術作品および複製メディアといった視覚文化における〈黒人〉の人種表象を実証的に調査・考察するものである。日本の〈黒人〉表象においては、現実の接触の少なさから、「膚の色」という視覚的な情報による身体の差異化が重視される。それはおうおうにして、誇張やステレオタイプと結びつく、虚構にしか存在しない〈黒人〉像を作る。各時期における〈黒人〉表象の様相は、日本近代において人々が肌の色の違いにこめた人種観・文明観・世界観の変容をものがたり、共有された他者へのまなざしを示す。
著者
村山 光子
出版者
明星大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2015

【研究目的】平成28年4月「障害を理由とする差別の解消促進に関する法律」が施行され、高等教育機関においても障害を有する学生に対して「合理的配慮の提供」が求められている。しかし、現状は発達障害という特性から、その障害があることに気づかれず放置される学生たちも多く、不適応を起こしている。こうした学生へ合理的配慮に基づいて「何を」「どこまで」行うか検討し、支援体制を整備してくことは喫緊の課題であり、本研究では、これら学生へ早期にアプローチするためのアセスメントを開発し、学生支援体制構築に寄与することを目的としている。【研究方法】①アセスメント開発にあたって、国内を中心とした先行研究を行い、質問紙作成の素地となる項目の整理を行い、予備調査を行った。②全国の国私立大学生876名を分析対象とし、(男性526名、女性340名、不明10名、平均年齢19.3歳(SD=1.5)であった。)質問紙による調査を行った。本研究では、発達障害の特性から生じる大学生活上予見しうる困難に着目し、高橋(2012)の「統合版困り感尺度」を参考にし、さらに発達障害学生支援に携わる臨床心理士10名の臨床経験から大学生活においてつまずきを生じやすい領域として「時間管理」「体調管理」「ストレスコントロール」「学内マナー」「学内ルール」という5領域、計96項目設定した。【研究結果】因子分析の結果因子分析の結果、13因子構造が明らかになり、さらに2次因子のモデルの再検討を行ったところ「時間管理」「健康管理」「社会的枠組」という3因子を確認することができた。これらをもとに各因子の下位尺度得点を平均10、標準偏差3の標準得点に変換し、各領域の評価点としたレーダーチャートに落とし込み、可視化することができた。これにより、学生個人の不適応状態としての各領域の強み・弱みが一目で把握することが可能となり、学生固有の状態に基づいて必要な支援のあり方を示すひとつの指標とすることが可能となった。
著者
笠原 順路
出版者
明星大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本年度は、自然神学詩や18世紀の詩およびロマン主義詩全般によく見られる「呼びかけ」(Vocative)について研究をした。詩においては通例、呼びかけの語(Vocative)は、呼びかける対象物を出現せしめる。ところが、ロマン派の詩においては、かならずしも対象物を出現せしめるだけではない。ロマン派を代表する(1)Wordsworth,"There was a Boy"、(2)Shelley,"Ode to the West Wind"、(3)Keats,"Ode on a Grecian Urn"、(4)Lord Byron,"The Colosseum episode" from the Canto IV of Childe Harold's Pilgrimageのなかに現れる(広義の)詩人の自画像と解される詩行を見ると、それらがそれぞれの詩人独自の詩論の特徴を反映しながらも、全体として、共通するロマン主義的特質を表していることがわかる。その特徴とは、呼びかけの語によって対象物が顕れると同時に、そこに呼びかける主体または詩人が理想とする自画像もまた顕れてくるということである。これは、18世紀詩からロマン主義の詩へ変化してゆく際の非常に重量な特徴である。ロマン派における自我意識の拡大を如実に反映しているからである。これが、4年間におよぶ自然神学詩をはじめとした18世紀詩からロマン主義の詩へ移行する家庭をたどった本研究の結論である。
著者
赤間 美文 菅野 等
出版者
明星大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1994

研究実績の概要は下に示した3つの内容に分けられる。1)希土類元素を含む硝酸塩、リン酸塩ガラスを調製し熱分析し系列内での変化を調べたところ硝酸塩ガラスの場合、結晶化温度と液化温度の間には興味ある関係が存在することが明らかとなった。また、リン酸塩ガラスの場合には、ガラス転移温度(Tg)の値はLaからLuにかけて次第に高くなり水溶液系ガラスで見られるような変化が認められ、水溶液系と同様に系列内で配位数の変化が起こることが明らかになった。2)EuCl_3とGdCl_3の水溶液(R=25)にHCl,LiClおよびCsClを別々に加えた溶液のラマンスペクトルを測定し、内部水和数の変化の異常濃度依存性について検討した。その結果、溶液中の水の量が少なくなるにつれて水和希土イオンの内、8配位より9配位の方が数が多くなるという一見異常な現象が認められた。これは、外圏錯体の生成によって異常濃度依存性が生じるという考え方で説明できるものと思われる。3)Lu-PMBP錯体を合成しIRスオエクトルを測定した。120-630cm^<-1>の領域では、配位子と金属の結合によるピークが410および340cm^<-1>付近に認められた。そこでピーク位置の系列内での変化についてプロットしたところLaからLuにかけて次第に高波数側にシフトしているが、Tbのところで大きく変化することが分かった。この変化は、希土類元素のf軌道の電子配置に対応しているように思えるがこれに関しては検討中である。なお、テトラド効果などといわれている不規則な変化は認められなかった。今後は、希土類元素を含むゲルマニウム酸塩ガラスの系列内でのTg変化をみる。更に、異常濃度依存性が非水溶媒系においても観測されるかどうかについて検討する。
著者
奥村 賢
出版者
明星大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本プロジェクトは、「日本映像カルチャーセンター」(1972年設立)所蔵の作品コレクションに再び光をあて、貴重な映像遺産の意義をあきらかにしようとするもので、具体的作業としては映像作品の目録化(カタロギング)の完成に力を集中した。この作業では、既存の 所蔵情報の誤りを正しながら、将来の映画利用の基盤となるより正確かつ有効な作品目録を実現させた。また、重要度の高いいくつかの作品について音声や字幕の日本語化作業も同時並行で実施し、映画上映のさいに活用できる日本語資料も作成した。
著者
阪井 恵 酒井 美恵子 布施 光代
出版者
明星大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

五線譜の判読が、障害により不可能な場合があることは十分に知られていない。本研究では、取材に基づきその実態を明らかにする。また当事者たちが音楽科授業への導入を望む「フィギャーノート(FN)」の有効性を探り、教科書に準拠した具体的な活用法の提案を行う。障害の実態調査に基づくビデオ作成、ビデオ視聴とFNの体験を含む実験的授業の実施、受講した児童生徒及び学生の、FN活用に関する意見調査と分析、学会における意見交換、などを通して「選択肢としてのFN」導入実現を目指すものである。
著者
年縄 巧 浜岡 秀勝
出版者
明星大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

交通量や走行速度,車種を簡便に測定するために,高感度の地震計を利用した計測システムの開発を試みた.道路脇2ヶ所に地震計を設置し,車両が通過する際に生じる地盤振動を計測した.また,ビデオ撮影によって車両の通過の有無や車種を記録した.いくつかの予備調査の結果,車両が時速20km程度以上で通過する場合には,地盤の上下動の応答変位波形に特徴的な波形が生じることがわかり,これにより車両が検知できること,またこの波を5〜15m程度離した2点において計測することにより車両の通行速度を計測することが可能であることがわかった.また,速度が増加するにつれ応答波形のパルス幅が短くなり,両者の値には高い相関があることから,一点で得られた尾応答波形のみからでも,走行速度が推定できることがわかった.車両が時速10km程度以下の低速の場合には,地盤の応答変位波形に特徴的な波形は見られないが,車線に高さ1cm程度のゴム製の段差を設置し,応答速度を計測した場合,車両が段差上を通過する際に顕著な速度応答が生じることがわかり,これによって車両の通過が検知できることがわかった.また,片側1車線の一般道路において,モデル道路と同様の計測を行い,車種の違いによる地盤振動の変化を検討した.小型車量通過による地盤振動と異なり,大型車両通過による地盤振動は複数のパルスから構成されており,地盤振動の形状の違いによって車種の判別が可能であることがわかった.この手法は,片側2車線道路の計測には不向きであることなどの欠点は残すものの,測定機器の運搬・設置が容易であるため,十分実用的な手法であることがわかった.