著者
平体 由美
出版者
札幌学院大学
雑誌
札幌学院大学人文学会紀要 (ISSN:09163166)
巻号頁・発行日
vol.67, pp.1-21, 2000-03

第一次世界大戦時のアメリカにおける戦争広報は, 国民の自主協力に大きく負っていた。広報委員会は自主協力を, 国民の民主主義の実践, 政府機関の民主的運営の現れとして歓迎した。しかしその方法は, 民主的であろうとした広報委員会のコントロールを弱め, 移民の急増によって高まっていたアメリカ化への志向を統一強化することとなった。
著者
奥谷 浩一
出版者
札幌学院大学
雑誌
札幌学院大学人文学会紀要 (ISSN:09163166)
巻号頁・発行日
vol.83, pp.137-171, 2008-03

ハイデガーは,第二次世界大戦におけるナチス・ドイツの敗北の後に,政治的浄化委員会によって,フライブルク大学最初のナチ党員学長として活動したことの政治的責任を問われることになった。これが本論文で言う「ハイデガー裁判」である。フランス占領軍によって「典型的なナチ」と見なされたハイデガーは,フライブルク市内の自らの住居と蔵書の接収という危機的状況に直面して,この危機を回避するために「弁明」を開始し,「ハイデガー裁判」の過程のなかでこの「弁明」をさらに拡大・強化していった。この「弁明」は最終的には「1933/34年の学長職。事実と思想」という文書にまとめられて完成されることになる。ハイデガーの「弁明」は,自らとナチとの関係が最小限のものであったとする戦略で貫かれており,時には真実と虚偽を織り混ぜたりあるいは時には事実を隠蔽するというかたちでさまざまに展開されている。本論文では,この「ハイデガー裁判」の経緯と結末を追跡しながら,その過程のなかで展開されたハイデガーの「弁明」のはたしてどこまでが真実でどこまでが虚偽なのか,そして同僚たちの目に学長ハイデガーがどのように映っていたのかをやや詳しく検討することにしたい。この検討は,ハイデガーとナチズムとの真の関係を明らかにするとともに,ハイデガー思想の再評価という問題を提起する作業の一環にほかならない。
著者
坂元 昂
出版者
札幌学院大学
雑誌
社会情報 (ISSN:0917673X)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.101-109, 1993-02
被引用文献数
5

教授学習過程は,(1)教師から学生への情報伝達,(2)学生の行動の理解・評価,(3)KR情報の伝達の三方向のコミュニケーションからなっていることを述べ,(1)では,受容反応と構成反応の区別,(2)では,形成的評価の重要性,(3)では,情報伝達とKR情報との適切な組み合わせの重要性を指摘している。大学における講義の改善法として,線結び式講義評価法,授業改善視点表を紹介し,大学生の講義に対する評価は,良い講義の判定は,講義の内容の良さによって,悪い講義の判定は,方法によってなされることを,調査結果に基づいて述べ,教育内容を系統づけ,充実する事が大切で,その上で,上手なプレゼンテーションの方法が,講義を悪いと評価されないために重要であると主張している。さらに,大学生の学習意欲,学習技能,創造性を測定する尺度を用いて,世界の主要国12カ国の学生総計3,500人の行動を調べ,学習意欲4因子,率先,挑戦,計画,追求,学習技能4因子,作業,認知,資格,調査,創造性4因子,組織,論理,実行,独創を見いだし,因子の特典を用いてチャーノフの顔を作成したところ,日本の大学生の顔は,たいへん情けなく,極めて成績の良くないことが示された。
著者
橋元 良明
出版者
札幌学院大学
雑誌
社会情報 (ISSN:0917673X)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.3-20, 2005-03-31

小特集 第14回社会と情報に関するシンポジウムSymposium on communication in the time of plural media
著者
滝沢 広忠 河崎 佳子 鳥越 隆士
出版者
札幌学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

1.聾学校、身体障害者更生相談所、精神病院で聴覚障害児・者に対してどのような心理検査が使用されているか、また施行法はどうか実態調査を行った。その結果、ウェックスラー式知能検査(特に動作性検査)が比較的よく使用されていること、実施にあたって、コミュニケーション方法で苦慮していること(口話、手話、指文字、身振り、筆談などさまざまな方法がとられている。)が明らかにされた。このことから、聴覚障害児・者に実施可能な視覚や動作を主とした心理検査の開発の必要性が示唆された。2.ろう学校で具体的に知能検査(WPPSI)がどのように実施されているか聞き取り調査を行なった。指文字と手話を主たるコミュニケーション手段としたトータルコミュニケーション教育を行っている奈良県立ろう学校教員の協力によるものである。この調査から、聴覚障害児を対象とした知能検査作成の具体的な課題が明確にされた。3.WISC-IIIの動作性検査にみられるろう学校生徒の特徴を明らかにした。ここでは絵画配列および符号問題を取り上げた。この結果、(1)絵画配列は聴児と比較して有意差は認められなかった。(2)符号問題は学年が上がるにつれ得点が低くなる傾向がある。(3)絵画配列より符号問題の得点が高い群は、手話をコミュニケーション手段とする人が多いことが分かった。このことから手話の意義が示唆された。4.WISC-IIIの動作性検査の手話翻訳版を作成した。これは手話を用いた知能検査のモデルとなるものである。
著者
井上 芳保
出版者
札幌学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

新自由主義的な経済政策の下で健康不安意識が煽られており、過剰な医療行為が多々発生していることが確認された。日本では医師をはじめとする医療の専門家集団の中からこの構造を批判する声はなかなか出てこない。というのは専門家集団自体が一つのムラ社会となっているからである。この構造を変えていかねばならない。不要な検査、薬の出し過ぎなどを吟味し、批判できるよう、普通の市民の医療に関するリテラシーを高める必要がある。

1 0 0 0 OA 情報の定義

著者
田中 一
出版者
札幌学院大学
雑誌
社会情報 (ISSN:0917673X)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.1-17, 2004-12-27

Three view points are proposed for the definition of the information. The 3 rd one is newly proposed, which tells that the information should be defined so as to be applicable to every kind of the information phenomena. The definitions of D.M.MacKay, G. Bateson and the author are checked and it is shown that the definitions of two persons, MacKay and author are similar but MacKay's one is too much general. The reason is given why we cannot define the information as the entropy.
著者
井上 芳保
出版者
札幌学院大学
雑誌
社会情報 (ISSN:0917673X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.53-56, 2003-03

第16回社会情報調査の方法に関する研究会は「ローカル・メディア」を共通テーマとして2002年3月2日に開催された.例によって,社会情報学部の教員のみではなく,他大学の研究者など学内外から関心をお持ちの方が多く参加し,熱心な議論が重ねられ有意義な場となった.今回はマスコミ関係の仕事に就いておられる方も見えていた.この研究会は中澤秀雄教員と私の二人が責任者となって企画されたものだが,以下では,責任者の一人としてこの研究会の様子を簡単に紹介しておく.それと共に,この場をお借りして今回の企画に関連する若干の私見を述べさせていただくこととしたい.
著者
城下 裕二 岡田 久美子
出版者
札幌学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究においては、近年刑事司法におけるパラダイム転換を図る理論として注目されている「回復的司法」(修復的司法)モデルの、わが国での可能性について検討した。もっとも、「応報的司法」モデルが支配的である(と解される)わが国の現況を前提とするならば、「回復的司法」モデル急な導入は、却ってこのモデルを「変質」させるおそれも危惧される。その意味で、現行司法制度の枠組みを維持しつつ、「回復的司法モデル」の段階的に導入する方向が考慮に値するように思われる。「回復的司法」モデルの内容自体、多岐にわたるものであるが、特に注目すべき点は、犯罪への対応の中心に「被害者」を位置づけようとしたことにあるといってよい。そこで、本研究では、被害者との関係修復という要因を、刑事司法過程においていかに捉えていくべきかを検討することとし、その主眼は、「量的段階」におくこととした。同モデルをめぐる議論の焦点の1つは、「刑罰の意義・目的」との関係であり、それが最も先鋭化した形で現れるのが量刑段階であると解されるからである。量刑においてこの問題を検討する際に重要となるのは、刑種・刑量の決定に際して「被害者関係的事情」をどこまで、どのように考慮していくかである。本研究では、すでに実体刑法理論との関係で、従来の量刑基準に「被害感情の充足」を代置し、あるいは付加することには多くの疑問があることが明らかにされた。また、処断形成過程における減免事由、特に中止未遂規定の本質に「被害者関係的」な要因を見出そうとする(わが国およびドイツで主張されている)見解にも問題があることが判明した。もとより、現行の刑法体系と「訣別」して、量刑においても「被害者関係的事情」を全面的に考慮することが、将にわたって否定されるものではない。しかし、同モデルの実証研究が十分ではなく、内容自体も論者による多様性が認められる現時点においては、慎重な対応が求められよう。
著者
湯本 誠
出版者
札幌学院大学
雑誌
札幌学院大学人文学会紀要 (ISSN:09163166)
巻号頁・発行日
vol.82, pp.141-175, 2007-10

本校では,1990年代初頭から2000年代初頭までの時期にトヨタ自動車を定年退職したブルーカラーを対象として,企業内職場経歴・キャリアの特徴を事例研究のかたちで考察している。事例研究の対象である12ケースを到達した職位を基準に3つのグループに分類して,企業内職場経歴・キャリアにおける「重大な転機」に焦点をあてた事例研究を行なうとともに,同一グループに属するケース間の比較検討を行なっている。この12ケースが55歳を迎えた1980年代後半から1990年代半ばまでの時期は「職層制度」から「職能資格制度」への転換によって「職位解任制度」が廃止されていく時期と重なり,専門技能職制度が導入されていく時期でもある。こうした人事制度改革が個々の労働者の戦場経歴・キャリアに及ぼした影響という構造的な局面だけでなく,個々の労働者のキャリア形成への主体的努力や自己選択の局面も分析している。
著者
宇田 一明
出版者
札幌学院大学
雑誌
札幌学院法学 (ISSN:09100121)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.495-515, 2006-03-08
著者
富田 充保 Munn Pamela Johnstone Margaret
出版者
札幌学院大学
雑誌
札幌学院大学人文学会紀要 (ISSN:09163166)
巻号頁・発行日
vol.78, pp.175-194, 2005-11-18

この論文は,1990年における中等教育教員の無規律状態に関する認識を,1996年のそれと比較するものである。また,初等教育教員の認識に関する情報も提供する。これらの認識は,3つの調査から引き出されたもので,そのサンプル数は1990年においては中等教育教員883名,1996年は中等教育教員561名と初等教育教員825名である。1990年において中等教育学校でもっとも一般的であった問題行動は,1996年においても一般的でありつづけていた。「自分の順番ではないのにおしゃべりをしている」「学級のなかでの飲食」というような,典型的には低次元のものであった。「教員に対する暴力」は,1990年と1996年の両方においてまれであった。「学校の周囲での教師に対する言葉による迫害」が,統計上有意な差をもっているものであった。もしこれが真の変化を反映しているのだとしたら,学校の周囲での挑発的な行動にとってのより一層深刻な傾向を表していることになる。こうした所見は,無規律状態にかんする研究上の文脈のなかに,そして社会的排除と目標設定という政策のなかに,位置付けられることになる。