著者
勝田 茂 鰺坂 隆一 大森 一伸 奥本 正 久野 譜也
出版者
東亜大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究は、1999年に1回目の測定を行った超高齢エリートアスリートに対し、2001、2002及び2003年と測定を継続し、身体活動能力はどこまで維持できるかを検証することを目的として実施した。被験者は全国各種マスターズ大会や世界ベテランズ大会等で活躍している80歳以上(一部女性は70代を含む)の超高齢エリートアスリート33名(男性18名、女性15名)及びコントロール31名(男性9名、女性22名)、合計64名であった。測定項目は全身持久力、等速性下肢筋力、筋横断面積、骨密度、文部省新体力テストおよびライフスタイルに関する調査であった。その結果、この5年間で、文部省新体力テスト(高齢者用)においては、男性は筋力・柔軟性敏捷性は10%以内の低下率であったが、歩行能力は-20%以上、バランス能(開眼片足立ち)は-50%以上と最も高い低下率を示した。女性も同様の傾向であったが、低下率は男惟よりも小さく体力がよく保たれていた。等速性筋力では、男女とも高速(180deg/sec)における膝関節屈曲筋力の低下が著明で、これは筋横断面積において大腿四頭筋よりも屈筋であるハムストリングの低下率が大きいことと符合していた。VO2maxは20-25ml/kg/minで、5年間で約-20%を示し,男女とも同様の傾向を示した。骨密度の減少は数%に止まった。また、調査から多くのシニアエリートアスリートは、80歳代でも週2-3回、1回1-2時間の練習またはトレーニングを行い、年間数回の国内・国際大会に出場し、常に積極的に前向きに生きている様子が伺えた。これらの被験者の中には50歳代・60歳代になってからスポーツを始めた者も多く、高齢化社会にあって「スポーツも生きがいに足るものである」こと示す、よい参考例になるものであると考えらる。
著者
上寺 康司
出版者
東亜大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1994

本研究は,1970年代アメリカ合衆国公立学校財政の州集権化を,同年代に公立学校財政の財源負担割合を増大させた全米50州の中でも,10パーセントポイント以上の増大を示した19州について,実証的に解明することを目的として実施した。これらの19州の具体的に言えば,アラスカ州,カリフォルニア州,コロラド州,アイダホ州,インディアナ州,アイオワ州,カンサス州,ケンタッキー州,メイン州,マサチューセッツ州,ミネソタ州,モンタナ州,ネバダ州,ニュージャージー州,ノースダコダ州,オハイオ州,オレゴン州,ワシントン州,ウエストバージニア州である。これら19州の中で,ニュージャージー州,マサチューセッツ州,オハイオ州,オレゴン州,ワシントン州,カリフォルニア州,インディアナ州,モンタナ州について,特に詳しく分析した。公立学校財政における州集権化については,公立学校財政訴訟にもとづく裁判所の命令を受けた州公立学校財政関係法の制定に基づき,公立学校財政改革が実施され,その結果として公立学校に対する州の財政負担割合が増大したことを明らかにした。特に,州の公立学校財政の中心は,州が地方学区に対して配分する基礎教育補助金であり,この基礎教育補助金配分方式の改革が,州の公立学校財政改革の中心,ひいては公立学校財政の州集権化の鍵を握ることを明らかにした。加えて,その基礎教育補助金配分方式の改革にともなう,州と地方学区との基礎教育補助金の配分をめぐる政府間財政関係の変容についても明らかにした。
著者
矢野 潤
出版者
東亜大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1995

(1)ポリ(o-フェニレンジアミン)のハロゲン化物イオンに対する会合定数の決定ポリアニリン類自身のハロゲン化物イオンに対する会合定数について検討するために,通常の有機溶媒に可溶なアニリン誘導体高分子を検索した.その結果,ドープ状態で可溶な導電性高分子ポリ(o-フェニレンジアミン)(PoPD)を見い出した.この結果はJ. Polymer.Sci. に公表した.このPoPDを用い,その溶存状態においてサイクリックボルタンモグラムを諸条件下で測定した.得られたブルタンモグラムのレドックス電位のハロゲン化物イオン濃度依存を解析することにより.PoPDの各ハロゲン化物イオンに対する会合定数を決定することができた.会合定数のデータが導電性高分子で得られたことは初めてであり,この成果はJ. Electroanal. Chem. に公表予定である.またこの結果を基にECDや固体電解質への応用を行ったところ有益な結果も得られた.これらはJ. Mater. Sci. Lett. に公表,J. Mater. Sci. に公表予定である.(2)電位応答型のハロゲン化物イオンセンサの作製カチオンサイトを有するアニリン誘導体高分子,ポリ(N, N-ジメチルアニリン)(PDA),にヨウ化物イオンを固定化させ,さらに電解酸化した膜は溶存するヨウ化物イオンとのNernst応答により,電位応答型のヨウ化物イオンセンサとして機能した.さらにそのPDA上にヨウ化物イオンの選択的膜透過機能をもつポリ(o-クロルアニリン)膜を被覆すると選択係数が向上した.この成果は,イオン電極研究に発表した.
著者
西村 伸子
出版者
東亜大学
雑誌
東亜大学紀要 (ISSN:13488414)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.17-34, 2009-01

キューブラ・ロスのOn Death and Dyingは1969年に発表され,アメリカの医療界だけでなく世界中に衝撃を与えた。アメリカでは,それ以後,死にゆく患者へのケアの取り組みが始まった。ロスの発表から30年以上を経て,この著書の中に示されている死までの5段階プロセスは,アメリカではどのように評価されているのだろうか。さらに,死にゆく患者への取り組みが直ぐに推し進められた背景にはどんなことがあるのか。一方,日本ではロスの5段階プロセスをどのように捉えてきているのか。日本が死にゆく患者への取り組みに遅れた理由は何か。これらを論証するために,ロスの5段階プロセスを基軸にしてアメリカと日本の文献から検討し,論じることにした。ロスの5段階プロセスについては,アメリカではこの30年間に各方面からの研究者によってその妥当性が論じられ研究が重ねられてきている。アメリカでは1960年代,活発な公民権運動が医療の分野にも波及した。さらに1970年代では,人格の尊重が医療倫理の指導原理となった。このような時代の流れの中でOn Death and Dyingは発表され,アメリカでは死に対する反省の契機となった。以後,死にゆく患者のケアは急速に進んだ。日本では1972年にOn Death and Dyingが翻訳されている。以後,ロスの死にゆく患者の5段階プロセスが医学書や看護の書籍で紹介され始めた。それは,2000年以後も記述にはあまり変化なく紹介されている。日本は,大戦後アメリカ医療への遅れを取り戻すための努力が継続され,先端医療の導入が最優先された。1990年代から少しずつ患者の人権尊重が意識され始め,2000年頃から,死にゆく患者へのケアが急速に論じられるようになった。死にゆく患者への取り組みとしては,アメリカに比較して約30年の遅れを生じることとなった。
著者
藤原 裕弥 小林 一生 古満 伊里
出版者
東亜大学
雑誌
総合人間科学 : 東亜大学総合人間・文化学部紀要 (ISSN:13461850)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.39-48, 2007-03

本研究は、課題に対する反応時間によって虚偽検出が可能であるか検討した。また、反応時間を指標とした虚偽検出に画像刺激と文字刺激のどちらが有効かについても同時に検討した。16名に模擬窃盗を行わせ有罪群とし、模擬窃盗を行わなかった16名を無罪群とした。模擬窃盗は、実験室に進入し、棚の中の財布からお金を盗むという内容であった。虚偽検出課題としてdot-probe探査課題を用いた。この課題では、刺激対を呈示し、その後それらの刺激対のどちらか一方に呈示されるドットの位置をボタン押しによって回答させた。刺激対は、画像刺激の組み合わせか、文字刺激の組み合わせを用いた。裁決項目に対する反応時間が速ければ、裁決項目に対して注意を向けたことを示す。実験の結果、財布画像を刺激として用いたとき、有罪群において無罪群よりも有意に裁決項目に対して速く反応することがわかったが、他の刺激項目では差は認められなかった。また、画像刺激対を用いた場合に、有罪群の裁決項目に対する反応時間が速くなる可能性が示された。このことから、反応時間を指標とした虚偽検出は、刺激の種類によって有効性に差がある可能性が示された。