著者
佐々木 丞平 淺湫 毅 降矢 哲男 末兼 俊彦 浅見 龍介 羽田 聡 上杉 智英 呉 孟晋 福士 雄也 降幡 順子 井並 林太郎 大原 嘉豊 伊藤 嘉章 池田 素子
出版者
独立行政法人国立文化財機構京都国立博物館
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2016-04-01

河内地域は大阪府の南部に位置し、古代より継続的に仏教文化が花開き、由緒ある古寺にもめぐまれている。四天王寺など、聖徳太子にゆかりの寺院も多く、本調査ではそれら聖徳太子ゆかりの寺院の中から、教興寺をえらび本尊弥勒菩薩像を中心に調査をおこなった。また、この地域は、南が和歌山県と境を接することから、高野山金剛峰寺とも近く、弘法大師空海およびその弟子たちによって開かれた真言寺院も多い。その中から、河内長野市の金剛寺と観心寺という二つの大きな寺に焦点をあて、悉皆調査をおこなった。その結果、金剛寺では重要文化財『遊仙屈』と一連のものとみられる未知の作がみつかるなど、多くの成果を上げることができた。
著者
呉 孟晋
出版者
独立行政法人国立文化財機構京都国立博物館
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

京都在住の漢学者にして書家の長尾雨山(1864-1942)が残した詩文の草稿や書簡、書画作品などの一次資料の整理をとおして、大正から昭和にかけて数多くの中国書画が日本にもたらされた背景には近世的な漢学から近代的な中国学への知識体系の転換があったことを明らかにした。これらの資料には、雨山の中国書画の鑑定にかかわる箱書きや跋文の草稿が多数含まれており、目録化した項目数はおよそ5000件にのぼった。これまで断片的な紹介にとどまっていた、雨山の業績と思想を総合的に理解するための重要な基礎資料のひとつとなるであろう。
著者
佐々木 丞平 西上 実 若杉 準治 山本 英男 山下 善也 大原 嘉豊 赤尾 栄慶 羽田 聡 淺湫 毅 中村 康 久保 智康 尾野 善裕 山川 曉 永島 明子 宮川 禎一 森田 稔 小松 大秀 村上 隆 呉 孟晋 水谷 亜希 難波 洋三 伊東 史朗 井上 一稔
出版者
独立行政法人国立文化財機構京都国立博物館
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、木を単に造形作品の素材・材料としての視点から捉えるのではなく、樹木そのものを信仰の対象として崇拝し、美の対象として描いてきた、日本人の樹木に対する精神のありようにまで踏み込んで調査し考察することが主たる目的であった。このような視点から調査研究を進めてきた結果、たとえば山形・熊野神社の伝十王坐像にトチ、静岡・建穂寺の千手観音立像にクスノキがあえて用いられている背景には、用材としての性能ではなく、信仰的な意味合いが強く意識されていたことなど、日本人と樹木の関係にかかわる貴重な成果が得られた。
著者
三島 貴雄
出版者
独立行政法人国立文化財機構京都国立博物館
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

本研究では宋代美術のうち、元照(1048~1116)の思想を元に作成された元照系統の観経変、特に長香寺と阿弥陀寺所蔵の重要文化財「観経十六観変相図」と、元照『観無量寿経義疏』及び関連著作との比較検討を行った。(1)元照系観経変について当麻曼茶羅や敦煌の観経変、十六観図との比較を通じて、元照系観経変は従来の観経変の作例を参考に作られているものの、十六観図のうち第一日観と第五池観にはそれまでの作例とは異なる特徴が見られることが判明した。この特徴から、新たに折本装の知恩院蔵「紅紙金字十六観経」一帖(高麗時代末~李朝時代)が元照系統の図像の影響を受けて成立したものであることが明らかとなった。また、同じく折本装の「大智律師禅観図」(明~清時代)のような作例もあり、これまでは観経変形式のものが注目されてきたが、それ以外にも元照系統の図像が流布し、用いられていたことが分かった。(2)「観経十六観変相図」について「観経十六観変相図」の図像については、元照の解釈にほぼ忠実であることが再確認された。他の系統の観経変に見られない図像として、日観の横の雲に乗った章提希の描写があり、韋提希を菩薩と解釈する元照の思想を反映したものと考えられる。対して、全体の構成に注目すると第七観の配置と題記は元照の解釈とは異なり、唐の善導(613~681)の解釈に近いものであることから、「観経十六観変相図」の作成にあたっては、善導系統の観経変が参考にされた可能性も高い。(3)今後の課題現存作例から考えると、朝鮮半島において元照系統の図像を用いた作例が多く作られたと推測出来るが、朝鮮半島の元照系統の観経変には『無量寿経』に基づく描写や、元照の解釈からは離れた描写などが付加されていることが確認された。朝鮮半島における元照の思想や観経変の図像の受容については今後の課題である。