著者
松尾 健太郎 張 樹槐 西脇 健太郎
出版者
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究は、農薬散布量の削減を目的に、植物の病害を早期に発見する方法の開発とその病害発生状況をマップ化するシステムを開発することである。1)分光画像取得システムの開発室内実験用の装置は、スペクトルカメラ、リニアスライダ、製作した通信用制御装置、パソコン、16個のハロゲンランプからなる。本装置はリニアスライダにラインセンサであるスペクトルカメラが取り付けられ、リニアスライダとパソコンを通信用制御装置で結んでいる。本装置の動作は次の通りである。パソコンに画像保存用の名前を指定することにより、リニアスライダが設定幅を動きパソコンにその位置の画像を保存する。この動作を自動で繰り返し行い、対象物全体を撮影する。また、このシステムでは、取得した画像を波長別の対象物画像を一括して合成することや、マウスでクリックした画像の位置の全波長データをtxt形式で保存することができる。2)病害検出方法の検討レタスに腐敗病を接種し、発病前から作製したシステムで撮影し、その画像から検出方法を検討した。接種したレタスでは、目視で病害の発生が識別できる前の段階で健全な苗と比較して近赤外域の反射強度が低くなる傾向があることがわかった。このことを利用して画像処理を行うと目視で識別できる段階以前の病害発生状況を画像化することができた。ただし、原因不明で苗が枯死していく場合でも同様の傾向がみられ、病原菌の特定をすることはできなかった。本システムでは照明の関係から近紫外域のデータを取得できなかったので、照明を改良し再度実験を行う必要があると考えられた。3)マップ化システムの開発GPSが出す信号の識別IDを画像名にして保存することにより、全撮影が終了後に識別IDと位置情報により圃場画像を作製することができるプログラムを作製し、スペクトルカメラを使って圃場全体を撮影することが可能となった。
著者
小池 説夫 林 高見 山口 知哉 吉田 均
出版者
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

通常の花が咲くイネに比べて、花が咲かない突然変異の閉花性イネは、暑さ(38℃)あるいは寒さ(12℃)の温度処理いて稔実歩合が高く、障害を受けにくかった。閉花性イネは、めしべの上に受粉する花粉の数が非常に多く、また発芽している花粉数が通常のイネに比べて多かった。閉花イネでは花の中の温度が外気温より2℃低いことが分かった。このことが暑さの害を低くしていると推測された。
著者
中嶋 光敏 HENELYTA Santos Ribeiro RIBEIRO Henelyta Santos
出版者
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

リコピンなどの健康機能性を有するカロテノイド粒子分散系は、機能性エマルションとして高い生体利用性を有しているが、従来の機械的攪拌乳化では均一サイズの機能性エマルションを作製することは不可能であり、安定性の面から難点があった。そこで安定性にすぐれた均一サイズのエマルション製造が可能なマイクロチャネル乳化技術を用いて、新規な均一サイズの機能性エマルションの作製とその基礎および利用特性の解明を試みた。具体的には、親油性生理活性物質として、カロテノイドやγ-オリザノール、また多価不飽和脂肪酸を用いて、溶媒置換と乳化拡散手法を用いた親油性生理活性物質を含有する機能性マイクロ・ナノ粒子の調製とマイクロチャネル乳化プロセスを用いた親油性生理活性物質を含有する機能性水中油滴エマルションの生産をおこなった。親油性生理活性物質のデリバリィシステムとしての新規調製法として、マイクロスケール及びナノスケールでの分散系をきわめてサイズを揃えて調製することに成功した。高分子またタンパク質ベースのデリバリィシステムは親油性生理活性物質を含有するマイクロ・ナノ分散系の安定性に寄与した。マイクロチャネル乳化は、均一サイズのエマルション作製に有効であり、この方法は強い機械的せん断力をかけずに液滴化が可能であるため、せん断力でこわれやすい成分の利用には効果的であった。得られた分散は5%以下であり、高い単分散性を示した。マイクロチャネルは、単分散液滴の製造に有効であるだけでなく、生体に吸収されやすい親油性生理活性物質を含有するエマルション製造にも有効であった。乳化拡散や溶媒置換法は、省エネルギープロセスであること、機能性成分の含有率が高いこと、また再現性が高いなどの特徴を示した。
著者
深澤 充
出版者
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、乳中のコルチゾル濃度とストレス刺激に対する個体差を明らかにすることを目的とした。乳中コルチゾル濃度に対する環境要因の影響を検討し、泌乳ステージの影響を受けることを明らかにした。ストレス条件下での行動特性と乳中コルチゾル濃度との関係を検討した。分娩牛を新奇群に導入した際の行動および同じ牛を乾乳後に隔離試験での行動では、行動反応と搾乳期中の乳中コルチゾル濃度との間に一定の関係が認められた。
著者
仁平 恒夫 金岡 正樹 久保田 哲史 森嶋 輝也
出版者
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

水稲、畑作露地野菜、酪農の企業的農業経営体を、事業構造と展開過程、生産量等に基づき類型化し、費用・収益構造等の分析により競争優位の源泉を摘出しビジネスモデルとしてまとめた。また、農業生産法人のバリュー・チェーン構築に重要なブランド戦略を明らかにした。さらに、酪農のTMRセンターを対象にコスト低減のための飼料作物立地配置モデルや、企業的経営体の基幹従業員のモチベーション向上のため職務満足度が判断できる簡易手法を開発した。
著者
寳示戸 雅之 波多野 隆介 村野 健太郎 林 健太郎 神山 和則 荻野 暁史
出版者
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

<発生>農業に由来するアンモニア発生量を発生源別にできるだけ正確に見積もり、これを1kmメッシュ地図として示すとともに畑地、水田、草地からの発生量実態を観測した。<実態>国内27地点の大気中アンモニア、アンモニウム塩濃度を観測するとともに、栃木県の集約酪農地帯において湿性沈着、乾性沈着を観測し、地域内発生量からみた「大気を介した窒素循環」の実態を推定した。<影響>北海道標津川流域を対象として河川水の濃度と投入窒素量の解析から、流域に投入された窒素の一部は河川へ流出するものの残りは硝酸態窒素となり、脱窒を介して河川への炭酸イオンを増加させることを推定した。
著者
徳安 健 廣近 洋彦
出版者
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

イネの二次壁セルロース生合成に係る酵素遺伝子を部分的に改変したものを導入し、遺伝子組換えイネを作出することにより、茎葉の細胞壁のセルロース構造を部分的に改変し、酵素糖化性が向上した植物体とする可能性を検討することを目的として、本萌芽研究を実施した。イネ二次細胞壁セルロースの生合成に関与する三種類のセルロース合成酵素(OsCesA4,OsCesA7及びOsCesA9)をコードする遺伝子に対して、部位特異的変異が導入された配列をもつ3種類のベクターをイネに導入し、形質転換株を得た。その結果、表現型として、カマイラズ形質の株やそうでない株が混在することとなった。大量発現により、遺伝子発現そのものが抑制されている株が存在する可能性が示唆された。今回の実験では、ノーザンブロット法によりセルロース合成酵素遺伝子の発現量が多い株を選抜することとした。選抜株の茎葉を回収したのち、亜塩素酸処理と水酸化カリウム処理により粗セルロースを精製し、その酵素糖化特性を評価した結果、コントロールイネの茎葉と比較して、有意な効率化は観察されなかった。その一方で、組み換えイネ由来セルロースのX線散乱データでは、結晶化度には差は見られなかったものの、セルロースミクロフィブリル繊維の配向性には差が観察された。細胞や細胞壁構造の構築速度やバランスが異なっているものと推察された。予備的検討としての本研究では、結晶構造そのものが破壊されたことを示すデータは得られなかったが、プロモータの検討、セルロース合成酵素遺伝子の部位突然変異導入場所、セルロース合成酵素複合体形成の有無の確認手法の開発、選抜基準の確定などの各要素を検討することにより、研究を着実に前進させることが可能となる。また、酢酸菌のセルロース合成系等を活用した低次元の実験モデルで、その戦略の妥当性を確証し、植物へ活用することが望ましいと考える。
著者
國光 洋二
出版者
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

バイオエタノールの生産、利用は,温室効果ガスの削減,エネルギー自給力の向上、農村地域振興,といった効果が期待できる反面、食料との競合のような問題も指摘されている。本研究では,東アジア諸国においてバイオバイオエタノールの生産、利用の経済面・環境面の波及効果を産業連関モデル及び動学応用一般均衡モデルを用いて分析した。分析結果から、生産プラント建設投資段階に加え、プラント建設後のバイオエタノール生産段階でも、投入費用の2倍前後の生産誘発効果が期待できること、ガソリン価格と同等レベルの生産費用を実現可能な第2世代のバイオエタノール生産は、食料との競合を回避して、国全体の所得の増加をもたらす経済効果が期待できることを明らかにした。
著者
早川 文代 神山 かおる 佐々木 朋子
出版者
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

テクスチャーの官能評価において、「かたさ」「サクサク感」など評価項目に用いる用語は重要な役割を担う。しかし、用語選定は労力と時間のかかる過程である。そこで、本課題では、官能評価に有効なデータベースを作成し、官能評価の迅速化に資することを目的とした。テクスチャー用語はすでに収集した445語を用いた。文献調査、質問紙調査および官能評価によって、935品目の食物名を選定し、コレスポンデンス分析によって、用語間の関係、用語と食物名との関係、食物名間の関係の数値化を行い、食物からも用語からも検索できるデータベースを作成した。