著者
田端 恒雄
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.461-470, 1992-06-01

昭和8年(1933年)に誕生した日本補綴歯科学会は,平成5年(1993年)に創立60周年を迎える.本学会は歯科の専門学会としては日本で最も長い歴史を有する学会であり,創立以来,補綴学研究と補綴臨床の中心として日本における補綴診療の進歩,発展に多大の貢献を果たしてきた.この機会に,創立以来今日に至る学会の60年の道のりを概観してみたい.
著者
宮島 和臣
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.640-649, 1996-08-01
被引用文献数
21

オールセラミックによる歯冠修復法の1つであるIPSEMPRESS(8)は陶材焼付鋳造冠と比較すると,メタルフレームを使用しないため,より自然歯に近似した光透過性を有する.しかしオールセラミックスの条件や支台歯の色調によっては最終的に装着した際,希望とする色調が得られない場合が多い.この問題点を解決するため,今回,前歯に多く使用されるレイヤリング法における一定の厚みでのデンテイン,エナメルの層の厚さの違いによる色調の影響,さらに支台歯への色調遮断効果について比較検討を行ったので報告する.
著者
石島 勉 平井 敏博 齋藤 実 近藤 ゆかり 平沼 謙二
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.116-125, 1992-02-01
被引用文献数
26 6

近年,コンタクトスポーツにおける顎口腔領域の外傷防止のためにマウスガードの使用が叫ばれている.しかし,マウスガードは咬合機能と密接な関係にあり,不良なマウスガードの安易な装着は顎口腔系のみならず全身への悪影響も懸念されるため,歯科医の十分な注意と管理が必要である.本論文は,各種カスタムメイド・マウスガード材料の厚さと荷重時の動態について検討したものである.
著者
村松 瑞人
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.564-573, 1996-06-01
被引用文献数
4

顎機能障害(TMD)患者の表面筋電図検査でみられる自発放電は,TMDの症状との関連が疑われているが,その発現する環境や臨床症状との関連様相においてはほとんど知られていない.本研究は,正常な機能を営む被験者に,ブラキシズム特にクレンチングを想定したかみしめ耐久試験を負荷し,その結果自発放電が誘発されるか否か,さらに発現したTMD症状を検討し,自発放電と症状の関係に言及している.自発放電の発現と筋症状の関連が明らかにされたことから,自発放電の発現性をパラメータとして,TMD患者の症状の予測,TMD予備群のスクリーニング,治療効果の評価などが可能となろう.
著者
平井 敏博 安斎 隆 金田 洌 又井 直也 田中 收 池田 和博 内田 達郎
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.1261-1267, 1988-12-01
被引用文献数
51 35

The purpose of this study is to evaluate the masticatory function of the complete denture wearers by examining the foods patients can eat with the dentures. A qustionnaire with listings of 35 foods was given to 39 patients who have been wearing newly made denture for 6 months and were asked to select the answer out of the following 5 categories. [figure] 1. Each answer was given a score (2, 1, 0). 35 foods were classified into 5 grades showing the difficulty by each total scores. 2. The "standard masticatory ability of complete denture wearers" was established as the diagnostic criteria by calculating the rate of food-taking ability in each grade. 3. Masticatory ability of each individual was shown as the "masticatory score". 4. Applying this qustionnaire to the alveoplasty case, the rate of food-taking ability and the masticatory score were correlated with masticatory ability and it was suggested that the qustioutnaire was useful for the evaluation of the masticatory function.
著者
後藤 忠正 五十嵐 順正
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.688-695, 1995-08-01
被引用文献数
14 3

義歯の設計概念の変化に伴って,近年パーシャルデンチャー臨床の様相が大きく変わってきている.なかでもリジットサポートに基づくコーヌステレスコープは,装着効果が確実で良好な予後が期待できることから,急速に臨床に普及し定着してきている.このたび,リジットサポートの基礎的検討そしてコーヌステレスコープの紹介,臨床応用および普及に,当初から携わってきた2人が,装着10年以上を経過した症例群を対象に経過の追跡調査を行った.その結果,総じて良好な経過を示しており臨床的な妥当性が確信され,また臨床応用上の多くの示唆が得られた.
著者
梶村 幸市 塩山 司 山森 徹雄 伊藤 創造 細川 貢 島崎 伸子 有住 達也 石橋 寛二 石沢 均
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.946-951, 1996-10-01
被引用文献数
13 12

チタンインプラントが顎骨内でより早期に安定することを目的として,チタン表面に対する種々の改良が試みられている.しかし,強度と化学的安定性からみて,いまだ問題点が多い.本研究は著者らが開発したチタン表面の新しい処理方法の有用性について組織学的に検討したものである.この新しい表面処理が埋入初期の骨形成に有用であることが示され,インプラントの臨床をより確実にするための一助になるものと期待される.
著者
牟田 成
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.340-351, 1987-04-01
被引用文献数
2

歯冠修復物のうちでブリッジの製作には, ワンピースキャスト法が確立している現在ではろう着操作は非常に重要な技工操作である. 本研究は, ろう着の適合精度に影響を及ぼすと考えられる諸要因の中から, 特に被ろう着体の固定法のうち, 埋没ブロックの大きさを取り上げ, 暑さ, 頬・舌幅および近・遠心幅の3要因を変化させ, ろう着した時のブリッジの適合精度にどの要因の影響が大きいか解明したものである.
著者
服部 孝治 畑 好昭 後藤 真一
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.980-992, 1996-10-01
被引用文献数
8 3

本研究は,市販12%金銀パラジウム合金のうち,銅20%を含む合金(GCW)および銅10%を含む合金(TKG)を用いて,歯科精密鋳造法に準じた方法で引張・硬さ・変色試験片および内壁に1/10テーパをもつ変形測定用試験片を作製し,歯冠修復物や鉤製作時の熱処理効果を検討した.試験片を700,750,800,850,900℃で10分加熱,溶体化処理したのち水中に投じて軟化熱処理を加えた.得られた測定値を溶体化処理温度について解析した結果,TypeIV鋳造用金合金に匹敵する強度を持たせるために最適の溶体化処理温度はGCW合金で700∼750℃,TKG合金で800∼850℃と推定され,12%金銀パラジウム合金では銅量の多い合金ほどより低温で溶体化処理したのち硬化熱処理を加えることが必要であることを明らかにしたものである.
著者
岡田 信夫 片平 太一郎 田中 進一 真尾 達哉 中野 千鶴子 大輪 正昭 大木 一三 西山 實 小山田 勝彦
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.231-238, 1984-04-01

無髄歯に歯冠補綴物を調製する場合には, その残存歯質のみでは支台歯としてその維持形態が十分得られない場合, あるいはそれのみでは従来破折する危険性が伴う場合に, 歯質の変わりに金属で支台を付与する post core の応用が多く行われている. この post core の作製に当っては, 従来石膏による間接作業模型上で, post 部と core 部とを作製しているが, この模型-埋没法によると post 部の蝋形成は省略できる. 本研究は, この単一化した作業による post core の適合性を検討するための第1段階として, 部位と専用液濃度の相違が, 作業模型上の post hole の口径およびその長さにどのように影響するかを検討したものである.
著者
松尾 有香 芝 〓彦 万代 倫嗣
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.870-880, 1995-10-01
被引用文献数
3

部分床義歯の支台装置としてコーヌスクローネが長期間にわたって適切な機能を果たすことが明白となり,今日臨床で広く適用されるようになった.しかし外冠前装部に陶材の適用が困難なため末だ審美性の問題が解決されず残されている.本研究は,コーヌスクローネの外冠前装部に陶材の適用可能な合金を開発するための当教室の一連の研究であり,本論文ではCo-Cr-Ti合金に微量添加物としてZrを用いた,Zrの添加量と合金の物理的性質,機械的性質および陶材焼付強度について検討したものである.
著者
大前 百子 塩野 英昭 澁谷 昌孝 渡邉 真哉 五十嵐 孝義 齋藤 仁弘 西山 實
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.133-140, 1996-02-01
被引用文献数
3

本実験はクラウンの合着時の浮き上がり量を最小限に抑える目的で,市販のグラスアイオノマーセメントの粉末を超微粉砕機によって微細化した微粉末セメントの諸物性を検討したものである.この結果,物理的性質の観点からは微粉末セメントは,被膜厚さの改善が認められたが,圧縮強さは低下し,硬化時間はやや延長した.また金型を用いたクラウンの浮き上がり量は大幅に改善され,保持力は市販品と同程度の値を示した.
著者
妻鹿 純一 川辺 弘之 水川 一廣 山口 秀紀 渋谷 鉱
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.217-222, 1996-04-01
被引用文献数
2

本研究は,診療姿勢が慢性心不全患者(心胸郭比-77.0%および59.0%)の全身状態に及ぼす影響をカブノモニターを用いモニタリングを行うことにより検討した.起座位において正常なカブノグラムを示したが,水平位では呼気平坦相に二峰性あるいは三峰性の波形が認められた.さらに,経皮的酸素飽和度(SpO2)についても水平位では低い値が認められた.本研究は歯科治療時の心不全患者の全身状態に診療姿勢が影響することを示したものであり,水平位を長時間強いた場合,歯科治療時に偶発症のリスクを増加させる可能性がある.
著者
小林 賢一 守澤 正幸 渡邊 竜登美 関田 敏明 長尾 正憲
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.94-105, 1989-02-01
被引用文献数
1 3

The purpose of this study was to develop a telemetry system and to analyze the occlusal contacts of complete denture during mastication. The telemetry system consisted of a trans mitter unit and a receiver unit. The transmitter allowed 6 channels of information of the occlusal contacts to be telemetered by time division multiplex communication method within the approximate distance of 2 m. The occlusal surface of the upper complete denture was made of metal and that of the lower denture was made of metal contact plates of 0.5mm in width with each space of 0.5mm. Then the transmitter was embedded in the lower complete denture. Occlusal contacts of 66 aged edentulous male were investigated both on the chewing side and on the nonchewing side in the premolar, the Ist molar and the 2nd molar regions.The results were as followed : 1. The occlusal contacts in the nonchewing side preceded those in the chewing side, with higher frequency and longer duration. 2. In the nonchewing side, the occlusal contact occurred at different time ; the occlusal contact was observed first in the 2nd molar, then 32-48 ms later in the Ist molar, and 2-48 ms later in the premolar regions. 3. It is suggested that the balancing contact should be considered for stabilizing the denture in mastication.