著者
福島 俊士 青山 繁 簡 章二 中村 幸博 伊波 侃
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.175-181, 1985-02-01
被引用文献数
2

歯型彫刻の目的は,立体的なものを思い浮べそれを石膏棒に再現することで,これが果して歯科技術の習得に役立つものかということと,この技術がくり返しの練習により身についたものになって行くかが,教育現場の人にとって興味あるところである。本研究は,5年次,6年次の同一人が彫刻した歯型彫刻の作品をみて,その1年10ヵ月間にどんな変化が生ずるかを130人の学生を対象に調査観察したものである。作品の判定者には,第1報で評価の安定している3人の指導者を選んでいる。その結果,5年次,6年次間では明らかに進歩がみられており,単に歯型彫刻のくり返し習練のみ怒らず,他の実習で蓄積した知識も反映しているためと考えられる。
著者
平野 恭吉
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.1142-1153, 1995-12-01
参考文献数
22
被引用文献数
3

口腔機能における口唇・頬などの口腔周囲軟組織の果たす役割は大きい.今後高齢化社会へ移行するに従い需要が高まると考えられる大型義歯には,これら軟組織との機能的調和が要求される.この観点がら当教室では軟組織の挙動を組織圧と変位の面から検索を行ってきた.本研究は口唇・頬の機能を把握する上で重要とされる1」角点に着目し,正常有歯顎者における各種食品咀咽時の口角の動きを3-DAutoTrackingSystemによって三次元時系列データとしてとらえ,同時計測した下顎運動とともに検討を行い,口唇運動が食塊形成にいかに関与しているかを考案したものである.
著者
豊田 將盟
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.433-441, 1996-06-01
参考文献数
41
被引用文献数
9 1

歯科臨床において,顎口腔系の状態変化などによる自律神経機能に及ぼす影響を評価することは,顎頭蓋機能異常患者などの診断および患者の不定愁訴に対する改善を把握する一助として,意義あるものと思われる.本研究は,医科の分野で自律神経機能の1つとして応用されている指尖容積脈波および心電図を用いて,顎口腔系の不調和による自律神経機能への影響を交感神経系,副交感神経系の両面から評価するにあたり,その有用性について検討を行ったものである.
著者
中本 宏 杉沢 肇 佐藤 友彦 島田 和基 五十嵐 孝義 深瀬 康公 西山 實
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.1084-1089, 1996-12-01
参考文献数
5
被引用文献数
3

歯冠修復物マージンの支台歯フィニッシュラインに対する適合性の良否は,その予後を左右する重要な因子である.本研究は,研究者によりまちまちに分類,表現されているこの適合状態を,その観察および測定するための方法,装置の進歩に伴い,これらを整理,統合し,より合理的に分類,命名することと,修復物の適合状態の観察,測定のために走査型レーザー顕微鏡の有用性を検討することを目的とした. 適合状態は,(1) Ideal,(2) Open-Closed,(3) Extra-Lined-Intra,(4) Overlapped,の4つの評価基準で,(1) Ideal,(2) Open-Extra,(3) Open-Lined,(4) Open-Intra,(5) Open-Extra-Overlapped,(6) Closed-Extra,(7)Closed-Intra,(8) Closed-Extra-Overlappedの8つの適合状態に分類,命名した.また,走査型レーザー顕微鏡はきわめて合目的性の装置であることが実証された.
著者
深瀬 敦 藤田 忠寛 青木 英夫 玉置 勝司 山村 雅章 山田 重雄 渡辺 英男 盛重 正仁 兼松 恭規 遠藤 ゆかり
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.1092-1101, 1992-10-01
被引用文献数
3 1

近年,コンピュータ支援による補綴物製作の手法が広く検討されているが,当講座においても,1984年頃よりCAD/CAM補綴のシステム化に関する課題に着手した.歯冠補綴物の変遷を考えると,CAD/CAMによる加工は"第三の波"ともいえるが,現在ではすでに製作方法も実用化の段階に入っている.しかし,補綴物は一般工業製品とは異なる多くの条件をもつので,その特殊性を考慮した独自のソフトウェアの構築が必要である.本論文は,CADによる歯冠形態設計の手法として,マスターモデルの修正法,支台歯マージンの設定法,エルミート曲線による軸面形態付与法について検討したものである.
著者
西本 公紀 高島 史男 多田 純夫 宮内 修平 堤 定美 丸山 剛郎
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.819-829, 1987-08-01
被引用文献数
12

歯冠修復物に対する審美的な要求は, 年々高まってきている. これに呼応して, 種々の材料が開発されており, その1つとして, キャスタブル・ガラス・セラミックスがある. ガラス・セラミックについては, 物性等は明らかになってきている. しかし, 臨床的な破折実験等も少なく, また力学的解析もほとんど行われていないのが, 現況である. 本論文は, コーニンググラスワーク社とデンツプライ社の共同開発による'DICOR'について, 力学的な検討を行った報告である. すなわち, 有限要素法を用い, 咬合力が正常または異常に補綴物に作用した状態を想定し, 応力解析を行い, 破折, 脱離等の可能性の有無について検討した.
著者
山口 泰彦 久恒 泰宏 木村 朋義 小松 孝雪 内山 洋一
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.1113-1120, 1995-12-01
被引用文献数
29 9

本論文は最近,咬合の診査に用いられはじめた工業用の感圧フィルムを応用したデンタルプレスケールについて検討したものである.咬合接触部位を診査する上で原理的には咬台紙を用いるのと似ているが,これの特徴は各々の咬合接触部位の接触圧が測定できることにある.したがって,顎の機能異常の診断などにその応用が期待されている.しかし,フィルムの厚さや物性によって,咬合のさせ方によっては本来の接触圧が正確に測定できない場合もあるので,本論文はその使用上の特性を明らかにし,それを踏まえて臨床で有効に使用しようとするものである.
著者
岩並 恵一 石原 正隆 坪田 有史 小林 和弘 松山 喜昭 小久保 裕司 福島 俊士
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.109-113, 1995-02-01
被引用文献数
17 1

日常の臨床における支台築造方法や築造材料の種類について,1977年(昭和52年)と1986年(昭和61年)に実施した調査報告に続く第3報である.特にレジン築造を含む成形材料による築造の頻度に注目したが,前回の28%から8%に減少していた.大学附属病院での調査であるため特殊な環境におけるものとの解釈もあろうが,意外の感は否めない.その他,鋳造体としての銀合金の使用頻度の減少や,合着用セメントとしてのリン酸亜鉛セメントの激減などのデータも得られている.
著者
石井 立人
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.363-371, 1994-04-01
被引用文献数
5

ヒトの頭部の側方傾斜に伴う,下顎位の偏位や咀咽筋の筋電図の応答についての報告は多数ある.しかし筋電図の反射性の応答については,緊張性頚反射や緊張性迷路反射が実験的な確証のないまま説明されている.本実験では,側方傾斜に伴って傾斜側外側翼突筋下頭と対側側頭筋後部の活動が冗進するパターンが認められた.そしてこの筋活動パターンが下顎に限局される重力に対応する下顎位の水平的な位置調節としての制御機能としての役割を果たしていることを明らかにした.特に側方体位をとらせて,頚部のみ水平面に対して垂直となるような姿勢,すなわち頚部屈曲位にて,頚部を屈曲させながらも,千顎の側方方向への重力の影響を取り除いた姿勢条件を用いたことがおもしろい.
著者
前田 芳信 栄村 勲 中村 公一 西田 圭 野首 孝祠
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.900-905, 1995-10-01
被引用文献数
14 2 2

近年,咬合と全身の運動機能との関連が注目されてきている.そこで本研究では,高齢者における咬合支持が全身の運動機能の制御,特に平衡調節機能に果たす役割について検討した.特に,従来まで行われてきた静的条件下での平衡度の測定に加え,動的刺激を与えた条件下での応答時間ならびに対称性の計測を行った.その結果,高齢者における咬合支持の有無は,全身の平衡調節機能のなかで,主として静的条件下での平衡調節に関与している可能性が示唆された.
著者
角江 信彦
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.1183-1193, 1996-12-01
被引用文献数
10

近年注目されているオールセラミッククラウンのエンプレスは,あらかじめ結晶化されたセラミックインゴットを用いるため,常に安定した強度と寸法精度を得ることを可能にした. 本論文は,このエンプレスによる客観的で優れた色調構築法を確立するために必要な光学特性を製作過程の条件に基づいて検討したものである.その結果,エンプレスは加熱加圧成型ならびに追加焼成に対して色彩学的にきわめて安定した材料であると評価された.
著者
一和多 寿樹
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.652-664, 1986-06-01
被引用文献数
5 5

自然歯に調和した歯冠補綴物を調整するためには,自然歯そのものの色彩を解明することが必要と考え,それを明らかにすることを目的とし,近年開発された分光放射測定装置を応用し,10代後半から20代後半までの男女の上顎前歯について詳細に測定し,L^*a^*b^*表色系において検討したものである。
著者
鈴木 卓哉
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.1102-1110, 1996-12-01
被引用文献数
22

咀嚼筋や顎関節に異常があると種々の運動障害が生じるが,その1つに下顎の側方偏位がある.そのため,開閉口時の下顎切歯路は重要な診査事項となっているが,これだけでは十分な診断根拠とはなりえない.この現象を理解するためには,関節円板の動態と顆頭運動を組み合わせて追究することが求められる. 本論文は,関節円板前方転位症例における開閉口時の顆頭運動を解析したものである.開口量は顆頭移動量に依存しており,開口量が45mm以上の場合には関節円板前方転位の影響がほとんどみられないことを示している.
著者
黒崎 俊一
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.588-601, 1992-06-01
被引用文献数
15

総義歯調製において,作業模型は,床下組織に対する解剖学的および補綴学的考慮の払われた口腔粘膜面形態を表現する必要がある.本研究では,形態および被圧変位性が無歯顎者の上顎顎堤に近似した上顎無歯顎シミュレーションモデルを使用し,印象材,トレーの圧接速度および保持圧の変化が,作業模型の形態へ及ぼす影響を断面形状と変位量の変化で検討した.その結果,圧接速度の影響を受けず,保持圧を変化させることによってポストダム部の変位量を調節できるシリコーンラバー印象材が,上顎無歯顎作業模型の粘膜面形態を表現するのに有効な印象材であることが示唆された.
著者
山下 敦 近藤 康弘 藤田 元英
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.28, no.6, pp.1023-1033, 1984-12-01
被引用文献数
35 25

歯科接着性レジンを用いて装着した接着ブリッジ等が, 長期間機能を営むためには, 従来のリン酸セメントによる装着法とは基本的に異なった被着歯面および金属の前処理が必要である. 著者らは先にNi-Cr 系合金と接着性レジンを強固に接着させる金属被着面前処理法を考案したが, 本法は貴金属合金に適していないため, 接着技法を補綴領域に広く発展させることを目的に, 貴金属合金に適した前処理法を種々検討した. その結果, 母合金表面にSn元素を析出させると強固な接着強さと耐求性の得られることがみい出させた. 本報告は, 歯科用金合金と歯科接着性レジンとの接着に関した基礎実験結果について述べたものである.
著者
松田 もと子 永井 成美 折笠 史明 多田 建造 辰巳 浩輝 藤原 麻紀 古川 良俊 石橋 寛二 井上 昌幸
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.588-595, 1994-06-01
被引用文献数
2 1

歯科用金属に起因すると考えられる金属アレルギーが注目されており,その診断にパッチテストが用いられている.しかし,判定は主観に頼り,皮膚の変化を的確,経時的に把握することは困難である.本論文はパッチテストにおける客観的な判定システムを開発することを目的として,パッチテスト後の皮膚色を分光測色し,色彩学的に分析したものである.その結果,皮膚の発赤反応に色彩学的に特徴のある変化が観察された.皮膚の発赤反応を判定する客観的指標を示したものとして興味深い.
著者
横堀 正純 清水 公夫 渡辺 秀昭 小司 利昭 森田 修己
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.249-254, 1996-04-01
被引用文献数
4

補綴臨床やスポーツ歯学において全身運動時における咬合接触や咬合力についての研究はきわめて重要と考えられるが,いまだ十分に明らかにされていない.そこで本研究は,握力発揮時にかみしめを自覚している男性を選択し,デンタルプレスケールシステムを用いて握力発揮時と最大かみしめ時の咬合面積と咬合力を測定し,比較検討した.この結果,握力発揮時のかみしめは最大かみしめ時とほぼ同じかみしめを行っている人が多いが,一部の人はこれと異なったかみしめを行っており,個人差が大きいという知見が得られた.