著者
ASKEW David 金丸 裕一 北村 稔
出版者
立命館アジア太平洋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究プロジェクトの最終年度に、歴史としての南京事件を検討した。まず英・中・邦語文献で書かれている南京事件史の分析を行い、それぞれの異同、特に方法論の相違点などを明らかにすると同時に、それぞれの言語で書かれている南京事件史の長所・短所を明らかにすることを試みてきた。一次史料がどのように駆使されているか、歴史学方法の異同、神話としての南京事件との距離などといったテーマを考察した。なお、既に出版されたものなどに加え、以下の単著や編著を含む数々の研究の完成に取り組んできた。David Askew ed.,Buried Bodies,Cultural Treasure and Government Propaganda:Historical Footprints in Nanjing,1937-38,New York and Oxford:Berghahn Books(forthcoming).David Askew ed.,H.J.Timperley and the Nanjing Atocities,New York and Oxford:Berghahn(forthcoming).David Askew ed.,Documenting a Massacre:Smythe and Bates in and Around Nanjing,1937-38,New York and Oxford:Berghahn Books(forthcoming).これらの単著や編著に加え、英語や日本語などによる数々の学術研究論文が公にされており、また複数の共著が出されている。
著者
DAVID Askew
出版者
立命館アジア太平洋大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

本年度は、研究代表者の所属研究機関が、代表者の海外出張をなかなか許可しようとしないという問題が勃発し、海外における文献蒐集などを必要とする学術研究を行うには大変厳しい環境になってきた。とはいうものの、日本国内でできることを中心にして、研究はそれなりにはかどることができた。本研究プロジェクト「探偵物語・人類学・捜査科学--『法と文学』の接点に関する一考察」において、本年度は、前年度の研究成果を踏まえつつ、それに一層磨きをかけることを第一の目的としてきた。前年度中に得た結論を論文として形にし、残る課題の解明に努めつつ、新たに出てきた文献や、残る課題の解明に役立つと思われる文献の収集・解読に努めてきた。とりわけロンブローゾの学説を中心に犯罪人類学を検証して、またシャーロック・ホームズに焦点を絞って、コナン・ドイルの小説が、指紋という一科学捜査技法の正当化に果たした役割を検討することをしてきたので、この研究をさらに磨くよう心がけた。第二は、研究成果そのもの、または今後の課題を明らかにしていくことを目指して、二つの研究論文の執筆に専念してきた。一つは、犯罪人類学の小説化の理論的再構成を論証するものであり、二つは、これまでの英米圏の研究成果を踏まえつつ、小説という言説空間における犯罪捜査技法の正当化について考察を加え、研究成果を公にするものである。査読にはそれなりの時間は必要であるが、いずれは出版される運びとなろう。
著者
蓮田 隆志 内田 力
出版者
立命館アジア太平洋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

本研究は、1980年代以降の日本の中学・高校の歴史教科書に掲載されている朱印船貿易・日本町関連情報を記した図版を網羅的に収集する。その上で、記載内容の検討に留まらず、図版がどのような経緯をたどって掲載され、現在に至るまで流通しているのか、背景としての学界動向や学説史、教科書出版を取り巻く社会情勢の推移と関連させて明らかにする。
著者
ASKEW David
出版者
立命館アジア太平洋大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

リバタリアニズムとは、現代正義論を語る際に無視することのできない思想的立場であると同時に、民営化・規制緩和政策などを推進する「小さな政府」論の理論的基礎を提供する政治哲学でもある。これまで筆者は、個人の自由を非妥協的に擁護し、私有財産制度や自由競争市場を最大限尊重するリバタリアニズムの自由主義哲学を概観し、殊にリバタリアニズム陣営内の論争に着眼して、最小国家論と無政府資本主義との間の対立について論じてきた。今回の研究プロジェクトでは、近代国民国家の衰退と共に、戦争も含めて、かつて国家の正常な守備範囲内と目されてきた機能を果たすため、市場メカニズムをはじめ公共部門以外の部門が積極的に活用されるようになったことに着眼し、環境問題に取り組む市場メカニズムを分析することとした。市場原理の導入で公共財などの財やサーヴィス供給の改善や効率化、合理化がはかられている中で、環境問題や絶滅の危機に瀕している動植物の保護など、市場があたかも公共部門によって解決することのできない多種多様な問題を解決する万能薬と看做すことができるかどうかを検討してきた。そのためにも、従来注目されてきたエコ・ツーリズムなどといった事例ではなく、国立公園の民営化および絶滅の危機に瀕する植物の繁殖・販売を請け負う民間企業のような事例を取り上げることとした。研究の結果は、リバタリアニズム理論という理論枠組を更に展開する形で研究論文としてまとめられてきた。近刊のものを含めて、今年、来年に数本の学術論文が公になる予定である。
著者
ASKEW David
出版者
立命館アジア太平洋大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

該当年度に実施した研究は(1)「初期H・G・ウェルズの進化論的社会主義」、(2)「ジョナサン・スウィフトにおけるユートピア主義思想の拒絶」、そして(3)「ユートピア主義思想史研究序説」の三つである。(1)「初期H・G・ウェルズの進化論的社会主義」についていえば、"One Part Prescient,Five Parts Puerile : The Life and Works of HG Wells"という書評論文をアイランドの権威ある雑誌であるDublin Review of Books に発表した。また「初期H・G・ウェルズの進化論的社会主義--『タイム・マシン』から『宇宙戦争』までのディストピア小説における政治思想」(『立命館経済学』)という論文には多大な時間を費やした。これは既に原稿用紙で数百枚を超える大作となっており、第1部から第4部が活字となって、2011年に第5、第6(完)で終了する予定である。これは終わり次第単著としてまとめて出版する予定である。(2)「ジョナサン・スウィフトにおけるユートピア主義思想の拒絶」についていえば、書評が一つ完成しており、アメリカの雑誌に投稿している。他に、"Not Pulling Punches : Jonathan Swift's Savage Indignation"(Dublin Review of Books)という書評論文を公にした。(3)「ユートピア主義思想史研究序説」を表題とする長い学術論文(やはり原稿用紙百枚くらい)は、2011年に、査読のため『社会システム研究』という学術誌に出す予定である。なお、ユートピア(ディストピア)思想あるいは実践については、他に、邦語では『蝿の王』で有名な英国の作家、ゴールディングについて論じた「神秘の人、ウィリアム・ゴールディング」(『立命館文学』第617号)などを手掛けた。このテーマで今後も更に分析を進め、今後早い時期の論文執筆、投稿へとつなげていきたいと考えている。
著者
イーズ ジェレミー (2009) EADES Jeremy S. (2008) EADES Jeremy Seymour (2007) KOVACS L. KOVACS Laszlo
出版者
立命館アジア太平洋大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

研究2年目は、主として、国内外のデータから人口に関するデータベース作成に携わり、日本を含む異なった国と地域における人口数および出生と、家族構成の変化における相違と類似性を明らかにした。これにより明らかになった傾向には目を見張るものがある。世界中のすべての地域において、人口全体に占める農村部の人口は急速に減少している。このことは、農村経済(地域経済)がどの程度まで持続されうるのか、また、農村部にみられる文化と知識はどこまで保護することができるのかという重要な疑問を投げかげている。一般的な傾向とは際立った相違がみられるのがオーストラリア・ニュージーランドを含むオセアニア地域である。この地域では都市化の動きが鈍化し、他の地域よりも農村部の人口減少がゆるやかである。これにより今後の提案として考えられることは、少数ではあるが安定した農村部の人口とそれに伴う都市部でのよりゆるやかな人口増加である。しかしながら、日本はさらに一段階進み、老齢人口(の全体に占める割合)の増加により、とくに農村地域での人口減少が確実となっている。これらの研究をもとに論文を作成し、国際農村社会学会による第12回世界農村社会学会議(テーマ:1950年以降の非農村化の推移と2030年までの予測、2008年7月6-11日韓国、高陽)と、International Symposium on Youth Unemployment:Preparation,Opportunities and Challenge(テーマ:経済情勢および出産・健康に関する決定への若年者失業の影響、30 October,2008,Beijing,China)に提出した。
著者
ASKEW David
出版者
立命館アジア太平洋大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

日本では無政府資本主義のみならず、リバタリアニズムに関する研究ですらも相対的に稀であり、これを取り上げること自体に意義はあろうと確信している。欧米諸国においても、無政府資本主義を唱える論考はあっても、無政府資本主義に関する学術的研究は多いとはいえず、特定分野における民営化という個別研究に留まる。本研究の学術的特色と意義は、実証研究と規範理論の両面から、統合的に無政府資本主義の意義と可能性を分析の俎上に登らせたことであろう。研究成果は、無政府資本主義の実証主義的・規範論的意義を確認する複数の学術論文の発表に加えて、現代国家の守備範囲の抜本的見直し、現代正義論の活性化に一石を投じることであった。
著者
アスキュー 里枝
出版者
立命館アジア太平洋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本プロジェクト「もう一つの精神史」の目的は、明治以来、来日した外国人の中でももっとも日本の心をよく理解したとされるラフカディオ・ハーンこと小泉八雲の日本における受容・表象のあり方を検証し、近・現代日本の隠れた精神史を明らかにすることにあった。この目的は大体果たせたのではないかと思う。具体的な研究成果としては、期間内にテーマに関する論文を三本書き上げ、そのうちの一本はニュージーランドの査読付き学術誌に掲載された ("The Politics of Nostalgia in Vestiges of Japan", NZAS, 2012)。残りの二本は査読付き学術誌での掲載に向けて準備中である。
著者
木村 力央
出版者
立命館アジア太平洋大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2009

本研究は、カンボジアのNGOリーダーはフォロワーによりよく仕えるために、どのようにリーダーシップを変革するかを考察し、以下のような発見があった。リーダーは、危機的な出来事やその他の経験を受け入れる用意があり、またそのような経験を進んで省察する態度が必要である。特に、これまで当然と考えてきた仮定や前提を吟味することが要求される。そのような振り返りから生まれた新しいリーダーシップのモデルを、自分が置かれている状況のなかで実験的に試みることにより、どのモデルがフォロワーに仕えるのに適しているかを判断することができる。
著者
井口 由布
出版者
立命館アジア太平洋大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究はマレーシアにおいて女性がどのように表象されてきているのかを、女性器切除(FGM)をめぐる言説をみることによって、植民地主義、ナショナリズム、多民族社会、イスラムとの関係から明らかにしようとした。本研究においてわかったことは大きく以下の二つである。第一に、マレーシアのFGMが近年のイスラム復興の動きの中であらためて見いだされかつ強化されており、その動きがマレーシアのマジョリティであるマレー系を中心としたナショナリズムと呼応していること。第二に、FGMの研究とそれにともなう言説がアフリカにおける状況を中心に形成されており、マレーシアの状況に合致しないことである。
著者
PAUL Close DAVID Askew
出版者
立命館アジア太平洋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本年度は、本研究プロジェクト「アジア太平洋の国際政治経済学と人権」の最終年度に当たる。今までの研究を包括する形で、単著『Asia Pacific and Human Rights : A Global Political Economy Perspective』をイギリスの名門出版社Ashgateから出版した。本書では、国際政治経済学という視点に立って、アジア太平洋地域における人権というテーマを検証した。本書同様、本研究プロジェクトでは、グローバルな文脈において、国際経済政治学の方法論・洞察に依拠しつつ、アジア太平洋地域における人権の展開を、個々の具体的なケーススタディを通じて、また普遍主義的な思想史的な視点から、論議してきた。その際、グローバルな文脈では特に政治的・経済的・文化的な過程としてのグローバリゼーション、また人権をめぐる言説における政治的配慮・政治的力学の存在に注目してきた。グローバリゼーション(特に文化的過程としてのグローバリゼーション)と国際政治経済学というテーマについては、上記の著書に加えて、『Football Goes East : Culture and Business of the Global Game in China, Japan and Korea』という共著も出版した。これらの具体的研究成果に加えて、2004年度には、他に、4本の研究論文、2冊の共著を公にしている。