- 著者
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石川 巧
- 出版者
- 立教大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2016-04-01
これまでの研究成果の一部をまとめたものとして単著『幻の雑誌が語る戦争』(青土社、2017年12月)を刊行した。同書は本研究のメインテーマである戦後占領期のカストリ雑誌を研究するなかで新たに発見した雑誌資料をもとに、戦争末期から戦後占領期にかけての言論統制とそれに抵抗するようにして書き継がれた文学テキストを分析したものであり、出版文化研究の領域においても意義のある成果だったと考えている。また、この間、戦後の雑誌文化研究として『月刊「さきがけ」復刻版』(2917年~2018年、三人社)、『「国際女性」復刻版』(金沢文圃閣、2017年~2018年)、カストリ系探偵小説雑誌『「妖奇」復刻版』(三人社、2016年~2017年)の復刻版編集と解題執筆を担当しており、これまでほとんど顧みられることのなかった戦後占領期の大衆通俗雑誌、地方の総合文芸雑誌に焦点をあてる取り組みをしている。さらに、共著としては戦後ヤミ市の風俗・文化を探究した『〈ヤミ市〉文化論』(井川光雄・石川巧・中村秀之編、2017年、ひつじ書房)、福岡市史特別篇『近代福岡の印刷と出版』(2017年、福岡市史編纂室)などを刊行をした。メインテーマのカストリ雑誌に関しては、2019年3月の刊行をめざして、現在『カストリ雑誌総攬』(勉誠出版)の編集作業を進めている。同総攬は1945年~1949年にかけて日本国内で発行された大衆通俗雑誌(いわゆるカストリ雑誌)の図版、目次・奥付情報などを網羅的に蒐集した図録であり、完成すればこれまでの諸研究では類を見ない体系的な出版文化研究となるはずである。具体的には、(1)歴史に埋もれていた文学テキストの発見、(2)カストリ雑誌ブームとその衰頽に関する実態研究、(3)戦後占領期におけるGHQの検閲とそれに対抗する作家たちの文学的営為に関する研究、などの進展が期待できる。