著者
茂木 暁
出版者
日本人口学会
雑誌
人口学研究 (ISSN:03868311)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.55-74, 2014-06-30 (Released:2017-09-12)
被引用文献数
3

本稿は,日本女性の結婚への移行について,夫婦がどのようにして出会ったかという「出会い方」の違いに注目しながら分析する。従来の研究では,移行元として未婚という状態から,移行先として既婚という状態への単一の移行を分析対象とする移行像(単一移行)を想定し,移行が起こりやすい年齢と,移行の発生に影響する要因(規定要因)について分析してきた。これに対して本稿では,夫婦の出会い方(以下,「出会い方」)の違いに対応して,移行が起こりやすい年齢と規定要因とが異なる可能性について検証する。具体的には,「仕事・職場」,「友人紹介」,「学校」,「インターネット・携帯」,そして「その他」という5種類の「出会い方」を想定した上で,「出会い方」別の結婚を,競合リスク事象として取り扱い,それぞれの結婚への移行ハザード率を,年齢と,初職属性や学歴などの規定要因によって説明するモデルの推定を行う。『働き方とライフスタイルの変化に関する全国調査』を利用した分析の結果,上記の可能性を支持する実証結果を得た。第一に,年齢の違いについて,「学校」は,移行が起こりやすい年齢区間が他の「出会い方」と比べて狭くなること,「インターネット・携帯」は,移行が起こりやすい年齢が他の「出会い方」と比べて高くなるという知見を得た。第二に,規定要因の違いについては,初職属性である雇用形態・企業規模・労働時間の3つが「仕事・職場」という「出会い方」での結婚への移行に対してのみ影響するという結果を得た。また,学歴の高さについては,「仕事・職場」や「友人紹介」での結婚を抑制するという結果を得たが,「学校」という「出会い方」についてのみ結婚を促進することが明らかになった。
著者
日野 治子
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.120, no.5, pp.993-1008, 2010-04-20 (Released:2014-11-28)
被引用文献数
1
著者
西原 克成
出版者
特定非営利活動法人 日本顎咬合学会
雑誌
日本顎咬合学会誌 咬み合わせの科学 (ISSN:13468111)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1-2, pp.58-75, 2011-08-30 (Released:2014-01-14)
参考文献数
35

医学研究の中に環境エネルギーを導入して著者はエネルギーに立脚した「顔と口腔の医学」を創始し出版した.今日のわが国の乳児期の育児法を新しい医学の観点から概観し,わが国の伝統的育児法にてらして誤った方法を正すことが急務である.誕生直後の赤ちゃんの主なふるまいは,吸啜と手足の動きをともなった鼻呼吸と排泄である.現代の従来型のわが国の乳幼児の育児法には,赤ちゃんに影響する環境エネルギーと哺乳動物の乳児の特徴に関する注意点が完璧に欠落している.すべての哺乳動物には,種特異性の母乳吸啜期間がある.ヒトの授乳期間は2歳半から3歳までである.ヒトの子が授乳期中に母乳の代わりに食物を食べれば,病気になり,重篤なケースでは死亡することもある.非常に早期に食物を幼児に与えても,咀嚼できずに丸呑みとなり容易に緑便となり,病気となる.その結果彼らは口呼吸となる.わが国では,多くの小学生が不活化し無気力化し,やがてひきこもりとなる.わが国では,1965年まで続けられていた伝統的な育児法を復活させなければならない.充分なる吸啜運動トレーニングを赤ちゃん時代に積んでいれば,鼻呼吸と吸啜運動がやがて正しい咀嚼運動に容易に受け継がれるのである.
著者
内閣統計局 編
出版者
東京統計協会
巻号頁・発行日
vol.第三十三, 1914
著者
松岡 瑛理
出版者
社会学研究会
雑誌
ソシオロジ (ISSN:05841380)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.59-76, 2016-02-01 (Released:2020-06-20)
参考文献数
31

本稿の目的は二〇一三年以降、在日韓国・朝鮮人へと向けられるヘイトスピーチに対抗して起こった「カウンター」と呼ばれる抗議活動のなかの帰化者(日本国籍を取得した元在日)やダブル(日本人と在日を両親に持つ人々)が運動参加へと至った回路を提示することだ。 在日韓国・朝鮮人の反差別運動はこれまで国籍や氏名などの民族的要素を持った参加者が、日本社会から押しつけられる否定的イメージを肯定的イメージへと政治的に是正するアイデンティティ・ポリティクス(IP)の戦略にもとづいていた。しかし筆者が行った調査では、九〇年代以降増加の一途を辿る帰化者やダブルは属性ゆえに在日社会の境界に置かれ、IP型運動から離脱する傾向が強いことがわかっている。 一方でカウンター活動に参加する帰化者・ダブルへのインタビューから、運動離脱者との共通点・相違点が明らかになった。IP型運動への反発という点では共通しつつも、活動参加者らは日本社会で受けた差別経験から、出自への蔑視をより強く認識する傾向にある。さらに、活動における役割分担は機能的で、属性を問わない。出自を問う代わりに対ヘイトスピーチ活動に専念できることが、参加継続のサイクルを生んでいた。以上のように、本稿ではマジョリティ/マイノリティという二項対立にもとづき反レイシズム運動を分類する先行研究に対し、属性を越えて参加者がゆるやかに統合される新たな運動枠組みの可能性を提示した。
著者
髙橋 高人 松原 耕平 中野 聡之 佐藤 正二
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.81-94, 2018
被引用文献数
7

<p> 本研究の目的は,中学生における認知行動的な抑うつ予防プログラムの効果を標準群との比較,さらに2年間のフォローアップ測定から検討することであった。介入群を構成した51名の中学1年生が,プログラムに参加した。標準群は,中学生1,817名から構成した。介入内容は,全6回の認知行動的プログラムから構成した。プログラムの効果を測定するために,子ども用抑うつ自己評定尺度,社会的スキル尺度,自動思考尺度が,介入前,介入後,フォローアップ測定1(1年後),2(2年後)で実施された。結果から,抑うつについて介入前と標準群1年生の比較では差が見られなかったのに対して,介入群のフォローアップ測定1と標準群2年生の比較では,有意に介入群の抑うつが低いことが示された。また,社会的スキルの中のやさしい言葉かけとあたたかい断り方,ポジティブな自動思考に関して,介入前よりも介入後,フォローアップ測定において向上することが示された。ユニバーサルレベルの抑うつ予防プログラムが,中学生に対して効果的な技法であることが示唆された。</p>
著者
伊藤 拓 及川 恵 西河 正行
出版者
明治学院大学心理学会
雑誌
明治学院大学心理学紀要 (ISSN:18802494)
巻号頁・発行日
no.23, pp.123-136, 2013-03

本研究では,英国,米国の学生相談機関が行っている集団形式のプログラムの概要を展望し,日本の学生相談機関で精神的不適応の予防を目指した集団形式のプログラムを導入する際の要点を検討した。英国と米国の5つの大学の学生相談機関で行われている集団形式のプログラムの概要をインターネットを通じて収集した。それらの概要を展望したところ,英国と米国の学生相談機関では,不安の解消,コーピングスキルの獲得,抑うつに対処するためのスキルの学習,自信の獲得など,様々な課題を取り扱う集団形式のプログラムを実施しており,プログラムの実施期間も様々であった。展望に基づいて,日本の学生相談機関に精神的不適応の予防を目指した集団形式のプログラムを導入する際の要点として,(1)内容は認知行動療法に基づくこと,(2)ターゲットは抑うつまたは不安の予防であること,(3)集団形式のプログラムや学生相談機関に対する学生の偏見を軽減するなどして,プログラムへの学生の参加を促進する方法を組み込むことが推奨された。【資料/Short Report】
著者
荒田 玲子 田中 景子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.14, pp.76, 2002

海藻由来のアクアミネラルは、無味、無臭で、ほとんどの調理加工品に常法で手軽に添加することが出来る天然ミネラル素材である。また、現代日本人に不足しがちなカルシウムとマグネシウムを同時に、その上安全に摂取できるミネラルでもある。また、ミネラルの強化だけでなくチョコレートや、天ぷら衣、パスタ類のおいしさの向上や調製を容易にすることを確認した。その中でチョコレートにおける添加区の優位性を確認した。特に、シード剤を使用しない手作りチョコレート菓子の調製時の調温(テンパリング)が容易であり、カカオ脂の結晶状態も優れている。官能検査においても、その口溶けの良さ、なめらかさ、好みにおいて添加区の方が評価が高かった。
著者
西田 明美 宮本 めぐみ 宮崎 ひさみ 新塘 久美子
出版者
日本重症心身障害学会
雑誌
日本重症心身障害学会誌 (ISSN:13431439)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.205, 2017 (Released:2019-06-01)

目的 在宅で過ごす重症心身障がい児(者)(以下、重症児(者))に対する経管栄養がその重症児(者)にとって妥当なのか評価が難しい。先行研究では、経腸栄養剤はそれぞれ含有する栄養素が異なり、選択によっては微量栄養素の欠乏が起こり得ることがあげられている。当施設利用時のある重症児と接した際に、爪床の所見からセレン欠乏を疑い、セレン値を測定した。今回当施設通所中の重症児(者)の栄養評価を行ったので報告する。 方法 1. 研究対象者:2歳から27歳の当施設通所中の重症児(者)18で超重症児(者)10名、準超重症児(者)7名、経管栄養児(者)1名。疾患は脊髄性筋萎縮症1型、福山型先天性筋ジストロフィー、ウィルス性脳炎後遺症、染色体異常等。 2. 当施設通所者各々の1日の栄養を把握し、家族と相談しながら通所時に朝からの注入をセレン含有量の多い煮干し・かつおだしを含む味噌汁へ変更。味噌汁は当施設でだしを取っている。定期的に採血(セレン)を行う 3. 本研究は当施設の倫理委員会の承認を得て実施した。 結果 初回測定結果セレン値(正常値10.6〜17.4μg/dl)は8.0μg/dl未満は5人、8.0〜10.5μg/dlは5人、10.6μg/dl以上は1名でほとんどが低値であった。注入後約2カ月で8.0μg/dl未満は1名、8.0〜10.6μg/dlは1名、10.6以上μg/dlは2名とセレン値が上昇し、爪床の所見の改善も認められた。 結論 経管栄養だけでなく経口からミキサー食を摂取している重症児(者)のセレン値も低かった。セレン値が正常範囲である重症児(者)も含めて家族に煮干し・かつおだしを提案し、当施設での水分を味噌汁へ変更した。セレン値測定により自宅でのだしやミキサー食を試す家族が増えた。当施設利用者の10名がセレン欠乏を認め、通常の食材でのセレン補充で効果を認めたので報告する。
著者
水野 千恵 髙村 仁知
出版者
日本生物高分子学会
雑誌
食品・臨床栄養 (ISSN:21873259)
巻号頁・発行日
vol.e2016, pp.1-12, 2016 (Released:2019-02-12)

硬度の異なるミネラルウォーターを用いて無洗米を炊飯し、これらが飯の性状 と嗜好性に及ぼす影響を検討するとともに、Ca、Mg がどれだけ摂取できるか検討 した。官能評価の結果、Ca の多い Vittel(硬度 300mg/L)、Mg の多い海洋深層水 (硬度 330mg/L および硬度 700mg/L)を炊き水に用いた飯は、蒸留水で炊いた飯 と同様に好まれた。Contrex(硬度約 1,560mg/L)、および海洋深層水(3,200mg/L) で炊飯した場合は、色、味の項目で評価が低かった。Contrex では、b*値(黄み) が高くなった。無洗米炊飯の場合、Ca および Mg の回収率は約 100%であった。 無洗米をミネラルウォーターで炊いた場合、浸漬水に用いたミネラルウォーター のミネラルを補給できることが期待できる。